こんにちは、ピッコです。
今回は17話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
17話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 露呈②
マックは涙ながらにルースを見上げる。
「な、何が、ま、間違っているのか、お、教えていただければ・・・、な、直します・・・」
男は帳簿をのぞき込みながら眉間をぎゅっと押さえた。
マックは叱られた子供のように落ち込んだ顔で彼の顔色だけをうかがう。
しばらく帳簿と代金明細書を探していた魔法使いが深いため息をつきながら荒々しく顔をこすった。
「何から指摘すればいいのか、見当もつきません」
彼女は地面を掘って這い込んで行きたい気持ちだった。
「品物購買内訳書は全部お持ちになりましたか?」
「私、全部持ってきました!そ、そこに束が・・・」
ルースは羊皮紙の山を見て目を細め、すぐに帳簿をバタンと覆う。
「遅い時間だから、明日から始めましょう」
男は厳粛に宣言した。
「い、今、お、教えてくだされば・・・」
「この帳簿の状態からすると、1日か2日で済むことではないようですが?」
歯ぎしりする言葉に彼女は口をつぐんだ。
何も言うことができない。
マックはしょんぼりとうなずいた。
「早く来たんですね」
翌日、目が覚めるやいなやあたふたと図書館に駆けつけてきたマックにルースがあくびをする。
彼は昨日と変わらないくたくたな姿で図書館の隅に横たわっていた。
マックは目を細める。
彼女は使用人たちの前で恥をかくことを恐れて朝が明けてくるやいなや、おしぼりで顔だけ適当に拭いてこっそり抜け出したところだった。
一方、彼は昨日、あれほど怖がらせた人とは思えないほど悠々自適に見える。
「まず、購入項目から見てみましょう。不要な注文は急いでキャンセルしなければなりませんから」
彼は席から立ち上がり、椅子をすくって机の前に引き抜いた。
マックは彼の向かいの席に座り、一度も髪をとかしたことのない髪を指でざっと落とす。
「きょ、今日、午後に、取引中の商、商団が来ます。お、教えてくれれば、すぐにキャ、キャンセルします」
「いいでしょう」
男が日付順に羊皮紙を整理し、一つ一つ几帳面に調べ始めた。
彼が記録に目を通している間、彼女はスカートをしっかりと掴んで待つ。
「まず」
彼は久しぶりに口を開いた。
「この大理石・・・、12リラムは書き間違えたんですね。大理石の縦横2クベットで12デルハムなら、とんでもない高額ではありません。いや、施工費用まで含まれていることを考えると、むしろ安い方です」
彼女は安堵のため息をつく。
しかし、彼の話はそこで終わりではなかった。
ルースは指先でパチパチと机を叩きながら厳しい言葉を続けた。
「しかし、ホールと宴会場の床をすべて大理石に交換することが必要なのか疑問ですね。石板の底も取り替えてから何年も経っていませんが」
彼は長いため息をついた。
「すでに工事が入っているので仕方がないですね。カリプス卿なら、この程度の贅沢を享受する資格があるので大丈夫でしょう」
「そ、それでもホ、ホールの工事は、ま、まだ始まってないんだから・・・、い、今からでも・・・、と、取り消し、できると思います」
「そうしていただけれは幸いです」
ルースは無味乾燥に返事をし、次の項目を調べ始めた。
「それ以外は無難ですね。階段の手すり、バルコニーの手すり、窓枠、カーテンとカーペット、絨毯、家具、シャンデリアと彫像、噴水台。・・・噴水台!?」
淡々とすらすらと読み上げていたルースの声が鋭く上がった。
マックは背中でも殴られたようにぎくりとする。
彼は首を回してさっと目を細めて彼女を見つめた。
マックはその目をまともに見ることができず、忍び寄る声で弁解する。
「あの、庭で、設置したら、す、素敵だろうと・・・、そ、それで・・・」
「噴水台の管理だけで、どれだけ手間がかかるか知っていますか?水を引いてくることからが大工事ですよ!それに大理石とクリスの毛で作った噴水?この滅びる商人が、カリプス城を奪い取るつもりであるに違いありません!」
マックは彼の憤慨した叫び声にうなだれた。
一晩で背が半分に減った気分だ。
彼の指摘はそこで終わらなかった。
「そこに、城のすべての窓に、こんな高品質のガラスをつけるという発想は、いったいどこから出てきたのですか?ロエム時代の皇帝が享受した好事ですよ!ガラスがどれほと高価なものか知っていますか?」
「ク、クロイソ城のま、窓は・・・、み、みんなガラスで・・・」
「それはクロイソ公爵だから可能なのです!夫人のお父さんは、七国をひっくるめて10本の指の中に入るお父さんなんです!」
彼は息苦しそうに胸をたたいていた。
「購買力の有無にかかわらず、窓ガラスは実用的ではありません。保温が全くできないので窓を開けておくのとあまり差がない上に、城の裏庭では騎士たちがよく訓練を行います。力自慢するために興奮した馬鹿たちがあちこちに剣技でも飛ばす日には、せいぜい高いガラスをつけておいてもガチャンと割れてしまうでしょう。それに傷もつきやすく管理するのも大変ですよね。毎回、磨き上げるために使用人の手も何倍もかかるでしょうし、そうでなくても足りない人手がさらに足りなくなるでしょう」
思いもよらない問題を指摘すると、マックは呆然とした。
彼は明細書を最後まで見て、しわくちゃになった眉間を少し伸ばす。
「まだ全体の注文をしたわけではないんですね。それでは本城の中央ホールと宴会場の窓、そして客室数ヶ所だけ高品質のガラスに交換するようにして、残りの部屋にはバルトグラスを付けたり二重の蓋をかぶせたりします。冬には雨戸をつけておいて、たまに開けて換気するほうがずっと実用的です。訪問者に富を誇示するための目的なら、その程度だけでも十分です」
彼は新しい羊皮紙を取り出し、大まかに城の構造図を描いて印をつけた。
マックはうつむいてうなずく。
「わ、わかりました。そ、そうつ、伝えます」
「クリスタル噴水台は在庫の価値もないですね」
彼がもう二方の手に持っていた羊皮紙はさっと投げ捨てた。
そしてペンにインクをたっぷりつけて、彼女に差し出しながら、帳簿の新しい
ページを開いて見せる。
「やりすぎはさておき、もう一度記録してみください」
マックはこわばった顔でペンを見た。
間違いなく彼が帳簿を代わりに整理してくれると思っていたのだ。
「また・・・、ま、間違えたら・・・」
「これから直接管理しなけれはならないじゃないですか。間違った部分は直しますので、一応記入してみてください」
彼女は呆然と帳簿を見下ろす。
頭の中が真っ白に空っぽで、知っていることも思い浮かばなかった。
マックは当惑して明細書をあれこれ調べる。
とりあえず何でも使わなけれはならないようだった。
やっと落ち着きを取り戻し、最も古い日付の記録から商品名を書き、内訳を記録し始めた。
単純に物品の個数と価格を記録することにとどまらず、雇用した働き手の数字と支払わなければならない賃金、契約期間まで計算しようとすると記録がますます複雑になっていく。
たじたじの様子をじっと見守っていたルースが、眉間に思いきりしわを寄せて言った。
「もしかしてと思って聞いて見るのですが・・・、貨幣単位をご存知ではないのですか?」
「あ、し、知ってます・・・!」
彼女はペンを持ったまま急いで否定した。
ルースは目を細め、疑い深く彼女をにらみつける。
マックは乾いた唾を飲み込んで付け加えた。
「た、ただ・・・、じ、じっさいに、おかねをつかって、つかったことがないから・・・、こ、こんがらがって・・・」
「60リラムをソルデムに交換すると何枚ですか?」
「え・・・、そ、それは・・・」
「・・・デナール24枚はソルデム何枚の価値がありますか?」
「そ・・・、そ・・・」
「リラム10枚をデルハムに両替すると何枚になりますか?」
マックは涙を流す寸前まで追い込まれた。
男の薄暗い目が自分をじっと見つめている。
羞恥心と侮蔑感で顔が焼けるように熱くなった。
全部間違ってる。
天下にかけがえのない馬鹿者であることが全部ばれてしまった。
もう言葉もどもるし、頭も悪い情けない女だと悪口を言うだろう?
リプタンにそう言われたらどうしよう。