こんにちは、ピッコです。
今回は24話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
24話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 女主人の役目⑥
城の新装がすべて終わると、カリプス城は本格的に冬の備えに入った。
使用人たちは井戸が凍らないように周囲に厚い木版を当てておき、馬小屋を丈夫に修理し、日照りと薪を十分に準備して倉庫にいっぱいに満たしておくなど、しばらくも休まず仕事をした。
女中たちも忙しいのは同じ。
彼らは洗濯室にしゃがんで指が赤く腫れ上がるまで洗濯をし、部屋の中に積もったほこりを掃き出し、織機室に閉じこもって織物を織った。
冬の寒波が押し寄せる前に衛兵たちに防寒服を支給しなければならないため、少しも休む暇がない。
結局見ていられなかったルディスが慎重に提案をしてきた。
「奥様、どうも時間が足りないようです。商人を通じて織物を購入するのはどうですか?」
マックは快く承諾する。
彼女の目にも女中たちは過重な労働に苦しんでいたから。
「あ、あとどれくらい・・・、ちゅ、注文すればいいですか?」
「半分くらいは用意しておきました。残りの半分を・・・」
マックは織機の片側に積まれている織物に目を通す。
中途半端な注文書を出したら、おせっかいな魔法使いがまた何か小言を言うかもしれない。
彼女は衛兵の数と防寒着を作るのに必要な織物の量を羊の皮紙に書き、織機室に積まれている織物の量を几帳面に計算した。
「これくらいの織物でい、いいですか?」
「はい、十分です。そして、服の形をしっかり整えるのに必要な革紐と糸、そして、針ももっと・・・」
「奥様、お忙しいですか?大きな問題が生じました」
羊皮紙にほとんど鼻を突っ込んでルディスの言葉を書き留めていたマックは、さっと頭を持ち上げる。
ロドリゴは急いでドアのそばに立っていた。
「な、何のも、問題ですか・・・?」
「リバドン南部の土地の封建領主だと主張するロブ・ミダハスという男が、騎士30人を率いて村の入口にたどり着きました。ところが、この男が身分証明書を持っておらず、問題が浮き彫りになったようです」
「口、ロブ・・・、ミダハス?」
マックは見知らぬ名前に眉をひそめる。
リバドンはウェデンの西欧同盟国で、七国の中でも最も頻繁な交流が行われるところだった。
しかし、そうだとしても、ウェデンの貴族たちがすべてのリバドン領主の名前を把握しているというわけではない。
まして貴族社会から隔離されたまま生きてきたマクシミリアンが名前だけ聞いて相手の身元が分かるはずがない。
彼女は困った顔をした。
「リ、リバドンのき、貴族が、あ、アナトールには・・・、な、何の用事で・・・?」
「領主同士の親睦を図るために、長い道のりを歩んできたそうです」
「そ、そしたらそ、そのままい、入れてあげれば・・・」
「身分のはっきりしない武装集団を下手に領内に入れることはできません」
ロドリゴは珍しく断固とした口調で話した。
「アナトール周辺にあまりにも多くの魔物が生息しているため、ほとんどの訪問客が武装したまま領地を訪問してきますが、彼らが城門を通過するためには必ず身分証明書や家門の文章を提示しなけれはなりません。もしかすると、領主が不在の隙を狙って略奪を敢行しようとする群れがいるかもしれないので、注意を払っているのです」
マックは顔から血の気が引くのを感じた。
女中たちが背後で不安な沈黙の中で息を殺すのが感じられる。
初めて体験することに一瞬頭の中が真っ白になったが、マックは努めて心を引き締めて毅然としたふりをした。
「そ、そこまで警戒する必要があるのでしょうか?誰があ、あえて・・・、レ、レムドラゴン騎士団が、しゅ、守護する土地を・・・、りゃ、略奪しようとして、い、いるのでしょうか」
「そのように断言することはできません」
突然割り込んできた声にマックは首をかしげた。
知らせを間いて走ってきたのか、ルースが深刻な顔をして廊下の向こうから走ってきた。
「レムドラゴン騎士団が王の祝宴に出席したことを知らない人はいません。領主が席を外した隙に親睦を深めると来た底意が疑わしいですね」
マックは顔を真っ青に染めた。
「ル、ルースも・・・、ア、アナトールを・・・、し、侵略しにき、来たとお、思いますか?」
「可能性がないわけではありません。カリプス卿はセクトを討伐するのに決定的な活躍をした勇士です。その貢献を認められ、ドラゴンレアの宝物の相当部分を譲り受けました。その宝物に目がくらんだ誰かがレムドラゴンを敵に回す危険を冒すことを決心したかもしれません」
「そ、そしたら、た、戦わなければならない、ということですか?」
「彼らが強硬に出るなら、武力を使ってでも追い出さなけれはなりません。ですが30人の騎士とは・・・」
彼は頭が痛いらしく眉間にしわを寄せた。
「ロブという名の貴族がいる人たちが本当の騎士なら、相手にするのは容易ではないでしょう。下級の騎士でも衛兵10人分ができますからね」
完全に武力衝突を前提としているような言葉に、マックは乾いた唾をごくりと飲み込んだ。
ルースは落ち着いて話し続ける。
「それに、本人の主張通り、リバドンの封建領主なら、問題はもっと深刻ですね。門前払いに恨みを抱いて政治力を利用して報復しようとすれば、紛争に広がる危険もあります。七国平和協定が結ばれたとはいえ、領主間の小競り合いはいつも絶えませんからね」
「じゃ、じゃあどうしよう・・・」
「奥様はどうなってほしいのですか?」
ルースはじっと見つめながら問い返した。
リプタンがない今、領地を守らなけれはならない責任は女主人である自分にある。
「わ、私は・・・」
みっともないことに歯ががたがた震えてきたが、彼女は唇をかみしめて落ち着きをかき集める。
「ま、まず・・・、私がじょ、城門に行って、は、話をして、してみます。ど、どんな人たちなのか・・・、か、確認してみ、みてからき、決めます」
「確かに、どんな人物なのか直接確認してみる必要がありますね」
ルースは快く彼女の決定を受け入れた。
「それでは私が遂行します。もしかしたら武力衝突があるかもしれないので、城の衛兵たちも連れて行きましょう。ロドリゴ、今すぐオバロン卿とセブリック卿にこのことを伝えてください」
「わ、わかりました!」
ロドリゴは急いで廊下を走り出た。
「奥様は私についてきてください」
彼はさっと身を乗り出す。
マックは持っていた羊皮紙を隣に立っていた下女に渡し、急いでその後を追った。
走るように庭に出ると、クネルじいさんが馬2頭を引きずって出てくるのが見えたルースは素早く手綱を引き取った。
「乗馬はできますか?」
「は、はい・・・」
実はこんなに大きな馬に一人で乗ったことはないが、彼女は首を縦に振る。
すらりとした茶色の雌馬の前に立つと、使用人が馬に乗るのを手伝ってくれた。
彼女は鞍の上に座り、しっかりと手綱を握り、太ももで馬の鞍をきつく締める。
その姿を注意深く見守っていたルースが合格点だと思ったのか、軽く残りの馬に
飛び乗った。
「衛兵たちは練兵場に整列しているはずです。ついて来てください」
それから一気に庭を横切る。
城門を一つ通過すると、30人ほどの衛兵が秩序整然と並んでいるのが見えた。
彼らの先頭に立った白髪の老騎士がルースを振り返り力強い声で話す。
「気の抜けたやつが城門の前で騒ぎ立てるんだって?」
彼は馬に乗った状態で腰についた長剣をとんとんと叩く。
「久しぶりに血の味がするね」
「卿のすべきことは、戦うのではなく貴婦人を保護することです」
「何?」
老騎士がつまらないかのように顔をしかめながら彼女を振り返った。
マックは萎縮しようとする体を引き締めて、馬を駆ってその前に進んだ。
「よ、よろしく・・・、お願いします」
用心深い挨拶に、老騎士が太い指で頬を掻いて、きまり悪い顔で答えた。
「このオバロンがいる限り、大きな問題は起こらないだろうから、安心してください、奥様」
そして先頭に行って、騎士たちを率いて疾風のように城門を通過した。
ルースは後を追って彼女に頭をもたげた。
けたたましい馬蹄の音に心臓が震えてくる。
木々が生い茂った道を走っている間、不安はますます高まった。
彼女は舌を噛まないように口を固く閉ざして急な丘を下りて、ごった返して
いる広場を一気に横るた。
こんなに早く馬を走らせたことがないので、死ぬほど怖かった。
震える手で手綱を死ぬほど握りしめて、夢中で衛兵たちを追うことをしばらく、城壁がますます近づいた。