こんにちは、ピッコです。
今回は25話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
25話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 女主人の役目⑦
彼らが近づいてくるのを見て、衛兵の一人があたふたと駆け下りてきた。
「いらっしゃいましたか!」
城門の前に着いたルースと老騎士がひらりと馬から飛び降りる。
何とか追いついたマックは衛兵に支えられて馬から降りてきた。
「リバドンの貴族だと主張するやつはどこにいる?」
「城門の外にいます。こちらへ・・・」
「奥様、こちらへどうぞ」
マックは固い足を動かし,彼らに沿って壁の上に登る。
棒の前に立つと馬の上に座った31人の男たちが目に入った。
みんな黒く焼けた顔に、大きなローブをまとい、腰には長剣を着けている。
ルースは彼らに向かって身を乗り出して大声で叫んだ。
「誰がリバドンの貴族ですか」
「私がリバドンの貴族、ロブ・ミダハスだ」
赤い茶色の馬に乗った男が答えた。
マックは注意深く彼を見る。
薄い金褐色の髪の毛に丈夫な体格を持つ30代半ばの男。
彼は目を細め、壁の上に立っているルースをくまなく探した。
「お前がアナトールの主か?」
「私は雇い人に過ぎません。ここにいらっしゃる貴婦人が領主様の代理人です」
ルースはマックを指して言った。
男の鋭い視線が自分に届くと、マックは無意識のうちに後ずさりする。
男がそのような行動をあさ笑うように片方の口角を持ち上げた。
「お会いできて嬉しい。すでに話は聞いていると思いますが、私はリバドンの西の地カイサを支配するロブ・ミダハスです。ドラゴンを退けた勇士に関する噂を聞いて、親睦を深めるためにここまで長い道のりを経てきたのだから、ぜひ門を開けて歓迎してほしい」
彼女はルースの顔色をちらりと見る。
彼は、様子を見るように腕を組んでいた。
自分の代わりにやってくれるつもりはないようだ。
なんとか自分でこの問題を解決しなければならない。
マックは硬い舌を口の中で転がして十分にほぐした後、ゆっくりと口を開いた。
「み、身分をしょ、証明できる・・・、も、物がないとききました。身元不明の方をりょ、領内に入れることは・・・、できません」
「身分牌は旅行の途中でなくしました。私たちを中に入れてくれれば、私はすぐにアナトールの教区神官を通じて身元を確認してもらう」
「あ、アナトールは・・・、み、身元不明の訪問者はう、受けいれられません。他の領内のきょ、教区の神官を通じて、み、神分牌を受け・・・、も、もう一度お越しください」
ともりながら必死に続いた言葉に男が顔をしかめ、ややいらいらした口調で答えた。
「まったく何と言っているのか分からない。まともな対話相手はいないのか!」
面と向かって受けた侮辱に顔から血の気が引く。
ルースはこわばった彼女を庇うように一歩前に出た。
「この方はこの地の女主人です!無礼な態度は遠慮ください」
「間き取れないから聞き取れないと言っただけだ!」
マックはすぐにでも逃げ出したい気持ちを振り払うように腕をぎゅっと握りしめながら必死に叫んだ。
「じょ、城門を開けな、ないと言いました!み、身分碑を持って、また訪問してください!」
「ここにたどり着くために、我々は魔物の巣窟を越えてきた。今、長い旅で疲れた人たちに、その険しい道をまたさかのぼって行けというのか?」
男の口調が威嚇するようにだんだん険悪になる。
その高圧的な態度に萎縮し、マックは唇だけ震えた。
男が顔を荒々しく歪めて、すぐに四方がりんりんと鳴るように突き放す。
「アナトールの女主人は、一抹の寛容さもないのか!」
「わ、私は・・・」
「どうしても門前払いをするなら、リバドン騎士数百人を率いてまた来るつもりだ!こんな侮辱的な扱いは我慢できない!」
「み、身分証明書がないから・・・、ど、どうしようもできません・・・!」
「教区の神官に身分を確認してもらうと言っているではないか!」
男の声はだんだん険悪になった。
その気高い態度にマックはすっかり萎縮してしまう。
慣れた恐怖で体は凍りつき、額には冷や汗が流れた。
彼女が途方に暮れて体を震わせてばかりいると、見るに見かねたルースが出てきた。
「無理も程々に振舞ってください!身分札を紛失した本人の過失をなぜこちらにかぶせるのですか?武装した30人を一体何を信じて領内に入れるんですか!」
「はっ!アナトールの警備は、たった30人が怖くてドアに鍵をかけるほどお粗末だというのか!領主がいないと何もできない臆病者の巣窟みたいだね!」
「何だと!?」
その言葉に、黙って後ろに立っていたオバロンが飛び上がる。
「ルース!今すぐ城門を開けろ!私があの生意気なやつの胸ぐらを直接取る!」
「オバロン卿!」
剣を抜く老騎士に向かって自重するようにという意味で鋭い視線を放ったルースは、次の瞬間、稲妻のように体を回して空中に向かって手を伸ばした。
しかし、彼が対処する間もなく、巨大な火炎が城門に向かって飛んでくる。
マックは悲鳴をあげて、衛兵たちはびっくりして後ずさりした。
「できるなら私の首を取ってみろ!」
剣を抜く男の叫び声が響いた。
ルースはさっと気がついたが、彼女の腕をつかんで壁の下に駆け下りた。
彼の後をついてふらふらと歩いていたマックは、悲鳴を飲み込んだ。
城門が粉々になったまま地面に散らばっていたのだ。
「シールド!」
ルースは手を広げて叫んだ。
すると、風の障壁が侵入者たちの前に立ちはだかる。
しかし、ロブという名の騎士が剣を振り回すと、シールドが一瞬にして破壊された。
「高位の騎士です、オバロン卿!」
「私に任せなさい!」
城壁の上から飛び降りたオバロンが,「こいつら!」と大声で叫びながら重い大剣を振り回した。
剣がぶつかる音が空気を引き裂くような激しさで響く。
マックは動揺しながら後ろに下がって、誰かに押されて倒れてしまった。
「カリプス夫人!」
城壁の周りに防御壁を作るために手が縛られたルースが後ろを振り向いて叫んだ。
マックは怯えた顔であたりを見回す。
オバロンという名の老騎士と衛兵が侵入者を塞ぐ間、城門の近くに集まった領地民たちは悲鳴を上げながら右往左往していた。
その混乱した風景を呆然と眺めていると、ルースの鋭い声が間こえてきた。
「奥様!早く安全な場所に避難してください!」
「で、でも・・・」
「すぐに避難してください!奥様がいたって何もでき・・・」
激しく叫んでいたルースがふと口をつぐんだ。
マックはかすかなコッヘルの音を間いて、頭をさっと上げる。
その瞬間、城壁の上に上がって矢を射ていた衛兵の一人が大声で叫んだ。
「レ、レムドラゴンの騎士団だ!領主様が、領主様がおいでになりました!」
場内が一瞬、冷ややかな静寂に包まれる。
押しかけた侵入者たちは当惑した顔で後ろを振り返った。
丘の向こうから銀色の鎧を着た騎士たちが嵐のように押し寄せてきた。
その先頭に立った人を目で確認すると、ぴんと張っていた緊張の紐がぷつんと切れた。
マックは世界のどんな困難も毅然として切り抜けるようなリフタンのたくましい姿を誇らしげに眺める。
わずか3週間ちょっとの間離れていたにもかかわらず、数ヶ月ぶりに会ったように感じられた。
「留守の間にお客さんが訪ねてきたようだね」
ついに城門の前に到着したリプタンが黒い服の騎士たちにざっと目を通して言った。
風で乱れた真っ黒な髪の毛の下で冷酷な目元が激しく細くなる。
「招待したこともないお客さんのことを、何て呼ぶんだっけ?」
彼が片手を上げると、後を追ってきたレムドラゴンの騎士たちが一瞬にして敵を取り囲んだ。
彼らの手に持った長剣が光を受けて恐ろしい威光を放つ。
「招かざる客です、団長」
「それよりは強盗にもっと近いんじゃない?」
騎士たちが興奮で焦って前足を使う馬を足で制圧して落ち着かせ、一言ずつ手伝った。
マックは彼らの対峙を息を殺してと見守る。
あれほど勢いよく暴れていた黒い服の騎士たちが威圧感に押しつぶされたようにじっとしていた。
リプタンはゆっくりと彼らの前に軍馬を走らせる。
「あえて自分の地に押しかけてきて騒ぎを起こすほどの度胸だ。「命を惜しまないその愚かさと大胆さに賛辞を送る」と墓碑にはそのように刻んであげよう」
彼はぞっとするほと優しく剣を抜いた。