こんにちは、ピッコです。
今回は8話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
8話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 出発②
また退屈な時間が続いた。
マックは揺れる馬車の中で止めどなく木の数を数えている。
木の葉がどんなに豊かに茂っていても、今はほとんど光が染み込んでいない。
これ以上移動できないほど真っ暗になると、ついに騎士たちが馬車を止めた。
マックは彼らが馬車から降りる前に、周りに魔物や動物がいないかどうかを十分に確認してからだった。
彼女はランプをしっかりと握りしめ、かろうじて馬車の近くに小さなテントを張っている
リプタンに近づく。
騎士たちは皆、たき火を、中心に丸く円を描くように小さなテントを張っていた。
「森には夜明けになると霧が立ち込めるので、当たらないようにするためには、こんな粗末な屋根でも作っておかなければならない」
底にくさびを打ち込んで布をびんと固定させたリプタンが彼女を振り返り、説明してくれた。
マックは自分の腰の高さの三角形のテントをぽんやりと見下ろすと、腰をかがめて中をのぞき込んだ。
一人、横になるのもぎりぎりのように見える。
「ふ、2人が寝るには、せ、狭すぎないですか?」
首をかしげながら尋ねると、床の反対側に杭を打っていた男の手が止まった。
彼は困惑した目で彼女の方を振り返る。
「ここでは私一人で寝る。あなたは馬車の中で寝なさい」
脈がてんてこ舞いのように盛り上がった。
当たり前のように一緒に寝ると思ったのが恥ずかしい彼女はあわてて付け加えた。
「わ、私は・・・、ずっと一緒に寝て、寝て・・・、だからそうしないと・・・、と思って・・・」
「・・・ちょっと見てくれ。昨日もやっと我慢したと」
深いため息をつきながら言った言葉に、彼女は傷ついた顔で頭を下げた。
すると彼が悪口をつぶやき、彼女の手を握ってどこかに引っ張っていく。
マックはよろめきながら彼の後を追った。
キャンプから少し離れただけでも、四方が恐ろしいほど真っ暗に。
風が木の葉をざわざわと揺らす音や、丘のような鳥の鳴き声がひやりと聞こえてきた。
マックはおびえて彼の手をしっかりと掴む。
すると、男が大きな木の柱の後ろに自分の体をを押し付けて急いで唇を重ねてきた。
彼女は脈絡の分からない行動にあえいだ。
柔らかい舌が彼女の口に押し込まれ、彼女のものを激しく吸い込んだ。
奇妙な感覚に首をすくめると、彼が顔を包み込み、さらに深くキスをしてくる。
柔らかい髪の毛が額をくすぐり、大きな手が頬と首の周りを優しくなでる。
彼は首をひねって舌で口蓋に目を通し、頬の内側を優しくこすった。
かみ合った唇の間から粘っこい唾液が流れ落ち、あごを濡らす。
彼はそれを舐めて呟いた。
「私は一晩中こんな状態でいなければならないということだ」
リプタンは私の手をつかんで体のどこかに持っていった。
マックは手の下で男の体が硬く膨らみ、うごめくのを感じ、身震いする。
急いで取り出そうとしたが、しっかりとつかまった腕はびくともしなかった。
「この状態で何もせずにおとなしく横になっているのがどんなに大変か知ってる?」
男は再び飲み込むようなキスを浴びせた。
マックは木の柱と彼の体の間に挟まってあえぐ。
彼が両手でお尻をぎゅっと握りしめ、引き寄せて膨らんだものを腹の上にこすりつけると、触れ合った体があっという間に熱くなった。
そんな自らの反応に慌てて、マックは強く体をひねる。
「い、いやです・・・。こ、こんなところで・・・」
「・・・やばいな」
彼は弱音を立てて木に頭をぷつけた。
男の眉が大きく上下するのを感じながら、彼女はとても緊張した。
自分を拒否したからと怒っているのではないかと緊張しているところ、男がゆっくりと身を引き離す。
「・・・君がそばにいるとこうなるから、馬車の中で一人で寝なさい。分かった?」
彼はほっぺたを軽くたたきながら、まるでおぽろげな子供に言い聞かせるように言った。
彼女は辛うじて頷く。
男が再び私の手を握ってキャンプのあるところに歩いて行った。
帰ってくる彼らの姿を見て岩の上に腰かけて火に当たっていた大柄な騎士がにやにやにや笑いを漏らす。
「団長、思ったより早いね?そっちの包丁は振り回してからずいぶん経ったからさびがついたんじゃないの?」
リプタンが足を止め、男に向かって殺気立った覗線を飛ばした。
しかし、騎士は怯えた様子もなく、くすくす笑いながら叱った。
その姿を見て、木に寄りかかって黙々と剣を手入れしていた騎士が軽蔑しているようにつぶやいた。
「俗っぽい奴」
「リカイド家の坊ちゃんはどんなに高潔なの?」
「少なくともお前よりは高潔だろう」
「へっ、自分の口できれいだと言うやつにしてはまともな人間がいない。こんな奴が後ろに行ってはつまらないことをする・・・、あっ!この野郎・・・!」
金髪の騎士に足を蹴られた男が立ち上がり、剣を抜いた。
金髪の騎士も手入れしていた剣を持ち上げる。
突然の状況にマックは驚いてリプタンの背中にびたりとくっつく。
リプタンは彼女の肩を片腕で抱き,彼らに向かって猛烈に目を向けた。
「元気が出るようだから、不寝番は二人で交互に立てばいいね」
「「団長!」」
リプタンは二人の抗議は聞くふりもしない馬車に向かって歩いた。
マックは肩越しに死のうとお互いをにらみ合っている男たちを心配そうにちらりと見る。
リプタンは彼女の頭を前に向けながら言った。
「あいつらは気にすることないよ。毎回お互いに死のうと吠えるから」
彼女はぼんやりとうなずいた。
同じ騎士団にいるからといって、皆が仲が良いわけではないようだ。
リプタンは彼女を馬車の中に置き,再びテントを張る作業を終え始めた。
彼女は彼が作業している間,馬車の入り口に腰掛けてランプを照らす。
彼がテントの内側に適当に寝袋を押し込んだ後、その横に飛び出ている木の根に腰掛けて剣の手入れをし始めた。
しばらくして、周囲に偵察に出た騎士2人が、手にガチョウほとの大きさの真っ黒な鳥3羽を握って帰ってきた。
彼らは鳥の羽を握りしめてねじり、羽の付け根を引き裂いて皮をむいた。
マックは衝撃で凍りついた。
引き裂かれた翼が床に無造作に放り出される。
騎士たちが短刀で鳥の足をばっさりと切って、うずたかく積もった現毛の上に投げた。
彼女は上がってくる吐き気を抑えながら急いで馬車の中に飛び込んだ。
リプタンは焼きたての鳥肉を持ってきたが、どうしても食べる気にはなれなかった。
彼女は、ーロだけ食べるようにしつこく勧めるのを断って,ほとんど石ころのようなパンにチーズを少しずつ添えて口に含む。
リフタンは不満そうにその姿を睨んだ。
「体力をちゃんと蓄えておかないと」
「・・・ はい、よく食べますので」
倉べないと休まず小言を言うので、本当に無理やり口の中に押し込んでいた。
男が何か言いたいように片方の眉をつり上げたが、すぐ諦めたようにため息をついて食事をするのに熱中する。
マックは意識的に火のそばにうずたかくもっている羽毛に親線を与えないように努め、食事を終えて馬車に戻った。
夜が更けるにつれて、空気はひんやりと重くなった。
他の騎士たちがテントの中に入って横になると、マックも馬車の座席の上に寝袋を厚く敷いて横になる。
動物の鳴き声や木の葉のカサカサという音が時々聞こえてきた。
背筋に不気味な寒気がするのを感じながら、彼女はこっそりとドアを開けて、リプタンが横になっているテントを見下ろした。
テントの外に突き出ている彼の長い脚を見ると、なぜか安心する。
彼女は寝袋に頭を寝かせて再び寝込んだ。
しかし、グルグルグルと鳴く鳥の鳴き声が凄惨に食べられた同僚たちを哀悼するようで、なかなか眠ることができなかった。
マックは頭のてっぺんまで毛布をかぶって耳をふさいだ。
明け方になってやっと眠りについたマックは、騒がしい音にばっと目を覚ます。
明け方の青みがかった光の中で、騎士たちが一つ二つ鎧を着ていた。
彼女は急いで顔を洗い、手で髪を梳かす。
パンと水で大まかに食事をした騎士たちが、まもなく出発を知らせた。
彼女も水とパンで軽く食事を済ませ、座席上に座る。
しばらくして馬車が勢いよく転がり始めた。
マックはガタガタする馬車の中でうとうとした。
あれほどおびえていたのが顔負けするほど旅路は順調に流れていく。
魔物たちの出没にしっかりと備えていた騎士たちは気が抜けたようで、ありふれた森のゴブリン一匹が見えないと不平を言う。
彼女は心の中でゴブリンなんか見たくないと反論した。
半日ほど休まず走ったのだろうか、彼らは小さな泉で昼食を食べた後、再び馬車に乗って走る。
一日中揺れる馬車の中で転ばないように取っ手をしっかり握っていたら、腕と肩がずきずきし、頭がずきずきした。
しかし、少しだけ休んで行ってはいけないかという話はできなかった。
頭痛をぐっとこらえながら耐えることをまた半日、四方が真っ暗になると安堵感さえする。
彼女はリプタンが渡す食べ物を食べたり飲んだりして、馬車の床に毛布を敷くとすぐに眠りについた。
ぐっすり眠れたおかげか、次の日はずっと楽だった。
彼らは早朝から移動し、日が中天に昇った頃には、ユディカルの森を抜け出す。
馬車の揺れがはっきりと減ったことを感じながら、マックは安堵のため息をついた。
地形が不揃いで非常に険しいユディカル森とは異なり、アナトリウムの平原は道がよく整備されている。
彼女は窓を開け,なだらかな丘の上を覆う緑の芝生と白い野花を眺めた。
しばらくうんざりするほど木だけを見ていたせいか、広々とした視野が視界をスッキリさせる。
「あの山を越えるとアナトールだよ」
先頭で騎士たちを率いていたリプタンが馬車の横に近づき、声をかけた。
彼女は窓の外にしっかりと頭を突き出して前方を見る。
広い平原の先に白い山峰が垣根のように長く並んでいた。
「もう少し我慢して。明後日は・・・、いや、旱ければ明日の夕方には到着できると思う」
危うく安堵感にうめき声を上げるところだった。
今日一日だけ耐えれば明日はベッドで寝ることができる。
熱いお湯をいっばい入れた浴槽に体を漫した後、焼きたての柔らかいパンととろっとした野菜スープ、ジャムをたっぷり入れたパイと香りのいい果実酒でお腹をいっぱいにし、綺麗で温かいベッドの上に横になって眠る想像をしながら、彼女は半日をさらに耐えた。
馬車は日が沈み始める頃にやっと止まった。
マックは馬車から降りるとすぐにリプタンを探す。
まるで迷子になったように茫然とした気分になったのだ。
彼女はキャンプの準備をしている男たちの間を注意深く通り抜けた。
リプタンが川沿いで馬たちに水を飲ませているのが見えた。
そこへちょろちょろと駆けつけると、男が怪訝な顔で振り返る。
「どうかした?」
マックは腰をかがめて手を洗うふりをしたが、「あなたが見えないので追いかけてきた」とは言えなかった。
リプタンは彼女のそばにしゃがんで、手と汗で濡れた首筋を彼女の後に洗い流した。
彼の長くて雄大な首筋が夕焼けのように赤く焼けた銅のように輝いている。
マックは風で乱れた髪の毛を濯れた手でかき回し、大雑把に整理してこっそり盗み見した。
今更、彼の美しさが胸に染みた。
「ほら、スカートがびしょびしょだよ!」
彼は突然彼女の足元を見つめながら言った。
ぽんやりと彼を見つめていたマックは、びっくりして体を起こす。
そうでなくても数日間着替えることができず、埃でまだらになったスカートが水を含んでぐったりしていた。
彼女は当惑した顔でスカートの裾をつかみ、真っ黒に汚れた泥を払い落とした。
その姿をじっと見下ろしていたリプタンが彼女の前に片膝をついて座る。
「私がやってあげる」
「だ、だ、大丈夫・・・!」
びっくりして後ろに退こうとすると、男がちらっと睨んだ。
大丈夫だという言葉が口癖なのかとぶっきらぼうに聞いていたことを思い出し、彼がスカートをつかんで泥のついている部分を川の水に濡らして軽くすすぎ、水気をぎゅっと絞った。
彼女は途方に暮れて彼の後を追った。
騎士たちは名誉を命より大切にする種族ではなかったのか。
忠誠の誓約をした主君の前でなければ、むやみに頭を下げないのが騎士だった。
ところが彼はともすると彼女の前で身をかがめた。
賤民出身だったので、体を低くすることに抵抗がないのだろうか。
マックは、他の騎士が彼のように取るに足らない女性の前に身をかがめているのを馬鹿にしないではないかと心配した。
「体が冷めた。戻って体を温めるようにして」
リプタンは平然と汚れた手を洗いながら言った。
彼女は彼が綺麗にしてくれたスカートの裾がまた汚れないように注意深く丘を登る。
冷えた夜風が野原を荒々しく走り回り、西に向かって飛んでいった。
彼女はフードをしっかりとかぶり、髪がなびかないようにし、彼が馬に水を飲ませるのを見ていた。
いつの間にか日は山の後ろに移り、四方に藍青色の闇が沈んでいた。
「・・・雨期が始まりそうだね」
馬たちを率いて帰ってきたリプタンが空を見上げながら言った。
彼女は彼について視線を移す。
星々が煌びやかにきらめく澄んだ空があるだけだ。
首をかしげると、短刀で乾いた薪を細く割って火の中に投げていた騎士が淡々と同意を示した。
「風の季節に入ってからずいぶん経ったので、そろそろ吹きつける頃でしょう」
「想像しただけでも憂鬱だね。雨の中で山をかきわけて歩くのは本当にひどいし。鎧も無駄に重く感じられて地面はドロドロで・・・」
ガントレットを脱いで手の甲に明かりを当てていた別の騎士がブツブツ言った。
「その前にアナトールに着くはずなのに、余計に」
「忘れたの?アナトールに到着するやいなや、数日以内にまた王都に行かなればならないんだ」
眉をひそめてぐちぐちとしていた男が、リプタンのそばにアヒルのように中腰に立っているマックをちらりと見ながら、こっそりと眉をひそめた。
「訳もなく遠回りしたせいで、そうでなくても時間を遅らせたのに・・・。ルーベン王をここでもっと不機嫌にしていいことはないじゃないか?」
「梅雨が始まったら仕方のないことだ」
馬の手綱を杭の上に縛りつけ、彼女の隣に座り込んだリプタンは生意気に言った。
その言葉に黙って座っていた金髪の騎士、先日リカイドと呼ばれた男があからさまに呆れた表情をする。
「今、光龍を退けた勇士が、暴雨のため王の呼びかけに応じないということですか?」
「誰が応じないと言った。少し遅延させるということだけだよ」
「国王陛下をこれ以上待たせるわけにはいきません。私たちはすでに十分に無駄なことで時間を無駄にしたんです!」
男の声は鞭のように背中を打つようだった。
マックは青ざめた顔でスカートをぎゅっとつかんだ。
リプタンの顔は恐ろしくこわばる。
「言葉に気をつけたほうがいい」
何かと言い放つように唇を甘やかしていたリカイドが、その威圧的な声に口をギュッと閉じた。
重い沈黙が落ちる。
積み重なった薪がパチパチと火花を散らす音だけが響き渡るのをしばらく、軽薄に感じられるほど快活な性格の騎士が頭を掻きながら話した。
「私は団長の意見に賛成だ。雨に降られた子犬のように雨にびしよびしょになった格好で入場するのは嫌なんだ。3年間その苦労をしたが、どうせならびかびかした姿で入場してこそ格好がつくじゃないか」
「情けない奴!空の風が吹いているだけで・・・!」
「リカイド卿、ニルター卿の言葉も一理あります。どうせなら、レムドラゴン騎士団の威容を首都にしっかり刻印させなければなりません」
隅で黙って座っていたルースがの自分の意見を付け加えた。
すると、「ニルタ」と呼ばれた騎士が意気揚々と鼻を高く上げる。
「あら。魔法使いも私の言うことが正しいと言うじゃないか」
「まずは推移を見てみましょう。雨季が始まるまでに時間があるかもしれませんからね」
金髪の騎士が不満そうな顔をすると,ルースはなだめるように言った。
緊張した空気が和らぐと,マックは安堵のため息をつく。
会話を聞いていると、どうやら彼らはクロイソ公爵領を訪問するために予定よりかなり遅れたようだ。
マックは、かつて城の図書館で見たロビーデン大陸の地図を思い出した。
リフタンの領地、アナトールは南西の端、イシリア南濤に向かって蛇の頭のように伸びている小さな半島に位置していた。
四方が険しい山地で囲まれており、南側には広々とした大陸が広がっているところだと聞いたのがぽんやりと頭の中に浮かんだ。
ウェデンの王都ドラキウムはアナトールよりずっと上の西北部に位置していた。
ドラゴン討伐戦があったアランタルから王都へ行く最も早い道は、セリウム川をまっすぐ遡ること。
地理については生半可な知識しか持っていないが、彼らが遠回りをしていることは明らかだった。
王の怒りを買うかもしれない。
私のせいで・・・。
マックは金髪の騎士、ウスリー・リカイドという名の男がなぜあんなに焦っているのかぼんやりと理解できた。
リプタンは娘を手放すという王の厚意を断った。
それでも足りず、討伐戦の功を称えるための呼びかけにも応じていないのだ。
マックは胃がねじれてくるのを感じた。
(いや、私のせいじゃなくて・・・。何か他の理由があるはずだよ。妻を家に連れて帰るから、王の呼び掛けを後回しにする騎士が、世の中のどこにいるんだ)
彼女はすぐにずうずうしい考えを振り払う。
自分のためにそこまでするというのは話にならない。
中央権力が弱体化した諸侯の時代になってからは、広い土地とその土地を維持するのに必要な軍事力を持つ者が王よりも強い影響力を行使することが多かったが、ウェデンは他の6つの国より王権が安定している国だった。
そのうえ、ルーベン3世は強大な指導力を誇示し、数百人の高位騎士から忠誠誓約を受けた聖王。
そんな偉大な君主を自分のために後回しにするわけがない。
(さあ、余計なことで元気を取らずに食事にしましょう)
少し離れたところでナイフでチーズの塊を均等に切っていた騎士が食糧を分け与え始めた。
彼女はリフタンからもらったワインと麦パンを一緒に食べた。
塩漬けした肉をパンとチーズと一緒に食べた後は、馬車の中に入って眠りにつく。
ひどく疲れたにもかかわらず、理由もなく、そわそわしてなかなか眠ることが
できなかった。
明日の夕方には新しい巣に到着できるだろう。
アナトールはどんなところだろう。
マックは予期せぬ方向に流れ始めた自分の人生について考えた。
数日前まではそのように恐怖に震えていたが、今は彼女は胸の片隅で希望が湧き上がるのを感じていた。
もしかしたら、新しいところで新しい人生を始められるかもしれない。
彼女はその期待を意識的に抑える。
がっかりするのが怖かった。
ずっと良いことばかり起きるはずがない。
離婚の危機から脱しただけでなく父の暴挙から逃れた。
恐ろしく見えた夫が、実はそんなに冷酷な人ではないように見える。
いや、優しい人だと思う。
その間、十分なほど良いことばかり起こった。
そして、彼女は幸運の女神がそんなに頻繁に微笑んでくれないことをよく知っていた。
マックは首まで毛布を引きつけ、「これから何が起ころうとも、しっかり心を決めておこう」と誓った。