こんにちは、ピッコです。
今回は83話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
83話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 派兵命令
それから十日後、ルースの予想通り王室から派兵命令が下された。
リプタンは伝令から勅書を受け取り内容を確認した後、直ちに騎士を招集して議論を始めう。
マックは不安そうな顔で部屋の中をうろつきながらリプタンが帰ってくるのを待ちわびていた。
彼がどんな決断をしたのか気になったのだ。
他の騎士に遠征を任せるつもりだと言ったが、勅書に書かれた内容によって心を変える可能性はいくらでもある。
ルーベン王が逆らえないほど強硬にリプタンに固執して出た可能性もある。
マックは祈るように手を合わせて握った。
彼が遠い旅に出るかもしれないという考えだけでも気が気でない。
そのように息を殺しているのはいくらだろうか、がたんとドアが開く音が聞こえてきた。
マックはさっと顔を上げる。
リプタンは疲れた顔をして部屋に入ってきた。
彼女は風のように彼の方へ走って行く。
「あ、どうやって・・・することになりましたか?勅書に何とか、書かれていましたか?ア、アナトールを離れるつもりはありませんよね?」
「おい、落ち着けよ」
リプタンは驚いた顔で彼女の肩をつかんだ。
マックは彼の前腕をつかんで背伸びする。
「リバドンにしゅ、出発するのですか?」
「そんなつもりはないと言ったじゃないか」
彼の口元にかすかな笑みが浮かんだ。
リプタンがマックを少し離し、腰につけた剣を解き、スタンドの横に置く。
マックは彼の後ろに尻尾のようにくっついて質問を投げ続けた。
「それでは・・・誰が行くことにしたんですか?」
「ウスリン・リカイドが代表で行くことにした」
リプタンはいすの上に座り、首の後ろのこわばった部分を揉んだ。
「ニルタとリカイド、2人がお互いに行くといがみ合って、今までかかった。男2人がずうずうしい声で言い争うのを3時間聞いていたら耳が痛いね」
顔を合わせると、天地元帥のように戦う2人の騎士を思い浮かべながら、マックは彼に同情の視線を送る。
二人がまともに争えば、その叫び声が雷のように鳴り響くほどだったのだ。
「今回は・・・リ、リカイド卿が勝ったようですね・・・」
「最初からニルタが不利な戦いだった。各国の騎士たちと連合戦線を形成することになるが、傭兵出身の指揮官は反発を買いがちだ。リカイドのように優秀な血統を持つ人間が代表として行った方が格好も悪くないだろうし」
「優秀な血統」と言う時の彼の音声には妙な嘲笑が漂っていた。
リプタンは軽く舌打ちをして話し続ける。
「ニルタの反発が激しかったが、あえて摩擦を起こして良いことはないという話を間いて、結局納得してくれた。熊のような図体に似合わず理性的なやつなんだ」
マックはいつもしなやかな態度を失わないヘバロンを思い浮かべながらうなずいた。
「そ、それからまた誰が出るんですか?」
「エリオット・カロンとロンバルドがリカイドを補佐するだろう。そして騎士10人に修行騎士20人、騎馬兵30人に魔法使い1人・・・総勢64名がリバドンに行くことになった」
「私が・・・別に準備するものはありませんか?」
彼女の質問にリプタンはかすかにしかめっ面をした。
「あなたは何も気にしなくていい。遠征隊が勝手に荷造りをするだろう」
「それでも・・・何かひ、必要なものがあれば用意しておきます。遠い旅に出るのに・・・まあ、何でもいいからしないと・・・」
「それでは、下男たちに夕食でも豪勢に用意しておくように伝えてくれ」
彼は突然苦笑いを浮かべた。
「明日一日の遠征準備を終えて、その翌日の明け方にすぐに発つことにした。送別会をするには明日の夕方しか時間がないだろう」
マックは注意深く彼の顔色をのぞき込んだ。
リプタンは部下たちを見送るのが気に食わない様子だった。
それも当然のこと。
生死苦楽を共にしてきた騎士たちを険しい路程に送るその気持ちが楽なはずがない。
マックは明日の夕食のテーブルに上質なスパイスと上質なワインを残しておくようにシェフに頼むべきと意を決して力強くうなずいた。
「最高においしい料理ばかり・・・準備するように言います」
「お願い」
彼はかすかな笑みを浮かべながら厚い革のブーツを脱ぎ、チュニックを絞めた腰ひもをほどいた。
マックは靴を拾って壁にきちんと置き、ルディスを呼んでお風呂の準備をするように指示する。
リプタンは窓の前に立ち、冷たい夜風に体を冷やした。
暗くなった城壁を眺める彼の顔は冷たく沈んでいる。
箱を開けて彼のパジャマを持っていたマックは、立ち止まってその姿を眺めた。
彼の広い背中はいつもよりもっと硬く硬直して見え、鋭い顔には濃い陰が垂れ下がっている。
疲れて落ち着かない様子に胸が締め付けられた。
あまりにも多くのことが彼の肩を押さえつけている。
王の家臣としての義務、領主としての義務、騎士団長としての義務・・・いくら鋼鉄のような人でも疲れないはずがない。
彼女はためらい、ゆっくりと彼のそばに近づき、彼の腰に手を置いた。
リプタンは彼女を見下ろし、かすかな笑みを浮かべる。
「何だよ、誘惑してるのか?」
「た、ただ・・・気分が悪そうで・・・」
彼女は彼のチュニックからほこりを取り除くふりをして顔を赤らめた。
彼の口から軽い笑い声が聞こえた。
リプタンはしっかりとした腕で彼女を抱き締め、頭頂部にキスをする。
「最近になって可愛いことが増えたね。生きがいを与えてくれる」
マックは彼を覆っていた薄暗い雰囲気が消えたことに安堵し、彼の広い胸に額をこすった。
騎士には申し訳ないが、マックは彼が危険な場所に行かないことをただ喜んでいた。
「君の髪の毛からいい匂いがする」
彼は満足そうなうめき声を上げ、彼女の肩に顔をうずめる。
マックは頬を赤らめ、「バラの香油を何滴か塗っておいてよかった」と心の中で喜んだ。
「大きな体に完璧に包まれている気分」という言葉では説明できないほど悦惚としていた。
彼の滑らかな髪の毛が額と鼻などを柔らかくくすぐり、柔軟でしっかりとした腕が痛くないほどの絶妙な力で隙間なくぎゅっと抱きしめてくる。
彼女は彼の耳の後ろに指を入れ、髪の豊かさを撫でて細いうめき声を上げた。
全身が溶けているようだった。
その気だるい熱気に酔っていると、コンコンと慎重なノックの音が聞こえてくる。
「領主様、お風呂のお湯を持ってきました」
片手で彼女の胸を包み、白く露出した肩の上にキスをしていたリプタンが長いため息をついた。
「こうなると思った。うちの使用人たちは毎回、呆れるほどよく合わせるんだよ」
彼はぶつぶつ言いながら彼女を床に降ろした。
「入れ」
大きく響く彼の声にドアが開き、使用人たちが浴槽を持って中に入ってくる。
リプタンはその横に近づき、チュニックを頭上に放り投げた。
そして、マックに向かって誘惑するような笑みを浮かべて見せた。
「久しぶりに一緒にお風呂に入ろうか?」
「わ・・・私は先に入ったのですが・・・」
マックは浴槽の中に冷水を入れて温度を合わせる使用人たちをちらつかせながら這い入る声でつぶやいた。
「寂しいこと言わないでこっちに来い」
彼が指を浴槽に浸して適当に温度を確認し、使用人たちに出て行っても良いと手招きする。
使用人たちがどっと外に出ると、マックは勝てないふりをして彼の前に近づいた。
リプタンは彼女のドレスの紐を解き、満足そうな笑みを浮かべる。
とりあえず今回の遠征にリフタンは出場しないようです。
ルースも対象に入っていなかったので、しばらくはマックの訓練に参加できる?