こんにちは、ピッコです。
「悪女の皇后様に溺愛されてます」を紹介させていただきます。
今回は79話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

「この世界の未来を知っている者はどれくらいいるんだろ?」
シャルリーズのこと、シャルルはワンソールという国の未来を知っている。
というのはこの世界が彼女の読んだ本の中であるからだ。
シャルルは悪女の皇后の嫉妬を買って殺されるエキストラ役である… はずなのになぜか皇后に愛されている?!
皇后宮の侍女になったシャルルは今度は皇后様を守るために皇帝によって幽閉されている皇太子を味方につけようとする。
神獣の力を持っている皇太子こそこの本の真の主人公であるからだ。
5歳のシャルルが皇宮で生き残るために奮闘する物語。
シャルリーズ:本作の主人公。愛称はシャルル。皇后の侍女。
ローズ:皇后。シャルルを溺愛している。
ディアミド:皇太子。前皇帝の息子。
ヘイデン:皇后宮の侍女長。
ウェーバー:皇后宮の主任侍女。
ロチェスター公爵:ローズの兄。
シエナ・アンテス:原作のヒロイン。アンテス辺境伯の後継者。

79話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇帝の計算
私はその場で凍りついてしまう。
ただ革手袋を嵌めただけなのに、どうして手があんなことに?
「こ、これはどういうことですか!?」
震える声で尋ねる。
皇后様は固い表情で、もう片方の手袋を外す。
手袋を慎重に見ていた皇后様の眉間に、深い皺ができた。
「皇太子、どうしてこの手袋を素直に着用したのですか?」
「・・・」
「手袋の指先に針が刺さっているじゃないですか」
針だって?
私は息を呑んだ。
先ほど、手袋をしていたディアミドが止まっていた姿が浮かぶ。
ひっくり返した手袋の先には針がぎっしりと刺さっていた。
この手袋を嵌めたまま、お茶を飲んで、会話しながらも・・・。
ディアミドは眉毛一本も歪めなかったなんて。
どうしてそんなことができるの?
「私は大丈夫です、皇后陛下」
しかしディアミドは血まみれの指をしたままでも、淡々と微笑むだけ。
大丈夫って何が?
パッと見ただけでも凄く痛そうなのに!
私は思わず彼の手を抱きしめた。
「ど、どうしましょう?指先がメチャクチャです・・・」
「これくらいはすぐ治るから大丈夫」
「全然大丈夫じゃないです!」
無礼であることさえ忘れて、声を高める。
「どうしてティーパーティーが終わるまで手袋をずっと嵌めていられますか!?」
「あの、少しだけ落ち着いて・・・」
「どうして落ち着けますか?」
「シャルル」
「本当に、殿下は痛くないのですか!?」
悔しさに勝てなかった私は、唇をギュッと噛み締めた。
手袋を細かく開けてみるほど、皇帝の陰険さと悪意が丸見えに。
(もし血が流れても目立たないように、黒くて硬い革を使ったのね)
皇帝の計算は完璧に的中した。
誰もディアミドが針が刺さった手袋を着用していることに気づかなかったのだから。
しかも私さえもね。
狂いそうに腹が立ってしまう。
一体皇帝はディアミドはどうしてここまで虐めるの?
そもそも自分が皇位を略奪したくせに!
私をじっと見つめていたディアミドが、ため息のように囁く。
「こんな訳もなくあなたに心配させるんじゃないかと思って、手袋を外そうとしたのに・・・」
「余計な心配なんて、皇太子様のことを心配するのは当然のことです」
その時、皇后様が断固たる声で割り込んだ。
やっぱり私の気持ちを分かってくれる方は、うちの皇后様しかいない。
私はうるうるした目で皇后様を眺めた。
皇后様から複雑な面持ちで話を続ける。
「とりあえず指の治療から始めましょう。そして・・・」
皇后様が目を細めてディアミドを睨んだ。
「私たちのシャルルを泣かせたので、それに対する代価は十分に払ってもらいますからね」
私はディアミドの指を治療してあげた。
消毒薬を怪我した部位にかけると、彼は全身をすくめる。
「い、痛い・・・」
「我慢してください」
私は冷静に答えた。
私のツンツンした声に、ディアミドは両手を垂らして力なく問い返す。
「シャルル、私に冷た過ぎじゃない?」
「でも、針のついた手袋は平気で嵌めたじゃないですか?」
私は両目を補足する。
「そんな殿下が、せいぜい消毒薬には耐えられないですって?」
幸いなことに、ディアミドの傷自体はそれほど酷くなかった。
薬をよく塗って、2、3日ほど訓練を休めばよく治るだろう。
ディアミドはポツリと呟く。
「あの手袋を静かに嵌めるのが、一番いい選択肢だったからだよ」
「それはどういう意味ですか?」
「皇帝がなぜあえてその手袋を製作し、私にプレゼントする手間を選んだのだろうか?」
「・・・え?」
ディアミドはため息をついた。
「それにプレゼントをあげる場所まで繊細に選んだじゃん。人々の耳目が集まる場所としてね」
虚を突く言葉に、私は唇をギュッと閉じる。
そういえば、ディアミドがやられたこと自体がとても腹が立ったせいで・・・。
「その部分はまだ考えられなかった」
ディアミドは軽く肩をすくめた。
「私が皇帝に持つ服従心を試しているんだろう」
「・・・服従心ですか?」
「うん。皇帝にどれだけ服従するのか、不合理さをどこまで耐えているのかを調べるためだ」
ディアミドの言葉は、せいぜい13歳の少年が言った言葉とは思えないほど冷たい。
「あの手袋を素直に嵌めていなかったら、きっと皇帝に疑われていただろうね」
「で、でも」
「私が疑われるのは大丈夫。でも、あなたと皇后陛下にはこれ以上迷惑をかけたくない」
ディアミドは包帯を巻いた指先をじっと見つめながら呟く。
私はなんだか胸が熱くなった。
まだディアミドも幼いのに。
13歳の少年に、皇帝はなぜこんなに酷いのだろうか・・・。






