メイドとして生き残ります【１５７話】ネタバレ

「アスさんには宿題を出します。毎日、日記を書いてきてください」

「それをまさか先生が読んでみるということではないのでしょう？」

セヤは静かに口元に力を入れながら微笑む。

読むってことだね。

私のプライバシーはどこに行ったの？

その時、床をぶらぶらしていた王子が突然立ち止まり、じっと何かを眺めた。

ただの小さなシミだが、王子の目には不思議に見えるようだ。

王子はもうずっしりしていて、床から抱き上げるには心の覚悟が必要だった。

小さな胸が驚いてドキドキしている。

しかし、抱いて何度も軽く叩いてあげると、王子の心臓が少しずつ遅くなり始めた。

そのすべての姿をセヤが春色のような目で優しく見守っている。

「抱いてみませんか？」

「いいのですか？」

セヤは凍った冬にカイロを抱くように王子を抱きしめた。

「王妃様は王子様の名前をユジンと名付けたかったそうです」

背後からミオ卿の嘆きに似たため息が聞こえる。

でもまあいいじゃない。

その中に込められた心が何であれ、王妃が王子の名前でユジンを考えたのは事実なのだから。

いい名前じゃないか、ユジン。

呼びやすいし、賢く見えるし、適度に中性的で。

私以外にもう一人くらいその名前を知っていてもいいでしょ。

「こんにちは、王子様？つけられなかった名前も王子様とよく似合いますね、ユジン」

予感がした。

セヤは王子をとても愛するようになり、その愛の中で王子は皆に愛される子供に育つと。

そして私は、おそらく私は王子が好きになると思う。

愛してはいない。

相変わらず王子は私にとって面倒で手に余る荷物だが、時には可愛くて時には気の毒に見える。

今もこんなに大変だから、成長するほどもっと面倒で手に余ると思うだろう。

だから一生愛することはないが、それでも私以外の人と王子を知っている全ての人に愛されてほしい。

そう育ってほしい。

こんなことを考えているのを見ると、私は王子が好きではあるようだ。

「先生、愛することと好きなことの違いは何でしょうか？」

「その心を持った人が、どっちの心と考えるかによるものでしょう」

王子は人の髪を掴むのが好きだ。

その勢いでユルーゲルの髪の毛を引っ張ってくれればいいのに。

「あ、そうだ。先生、これを召し上がってください」

忘れていたプリンの器をセヤに渡す。

セヤは首を傾げながらプリンを少しすくって、すぐプリンカップに中身を吐き出した。

「先生？」

「あ、すみません。これは傷んでいるみたいですね、アスちゃん」

「いいえ、今朝作りました！」

「腐った卵を使ったようですね」

何が問題なんだろう。

私の口には合っているのに、どうして私の世界のレシピ通りに作った料理だけがこんなに不評なの？

知らないことは知らないことで、時にはそのようなことは知らないまま放っておけば、何事もなかったかのように無事に過ぎ去ることもある。

しかし仮説というものがあった。

「ひょっとしてそうではないか」と試験して確認してみたくなる仮説が私にはあった。

「アス」

ドアを開けてシエルが入ってくる。

夜だった。

ドアの外はすでに明かりを灯しており、シエルの白金髪が暗いところでも輝いていた。

「ミオ卿がアスのことを心配しています」

「私がちょっと変だと思いまう、魔法使いさん」

「うーん、こんな言葉は少しアレですが・・・。あなたはいつも少し変でした」

いつの間にか近づいてきた柔らかい手が私の頬を撫でる。

剣を握るクラインの手とは違って、誰も怪我をさせたことのないミカエル王子の手のひらのように柔らかいだけの手だ。

しかし、この手が人を殺したことがあることを私も知っており、彼も知っている。

「私がバカになったようです」

「アス」

その呼びかけは優しくも聞こえ、残念そうにも聞こえた。

「変な気がしました。それで料理を作ってみたのです。ここの食べ物は私にとっても他の人にとっても美味しいですが、私の世界の食べ物は私だけに美味しいんです。魔法使いさん、これはなぜでしょうか？」

「新たに得た記憶と、そうでない記憶の違いです」

シエルは私の前に跪いて座ったが、椅子に座っている私より少し目線が高い。

彼は腰を立てて私の顔を両手で覆った。

顔全体に私のものではない体温が感じられる。

「知らないふりをしていれば永遠に分からないことです、アス」

「ホラー小説を読んだことがありますか、魔法使いさん？途中で止めてしまうと、犯人と動機について永遠に分からなくなるじゃないですか」

シエルがどんな顔をしているのか分からない。

彼が私にしてくれるように、私も彼の頬を手で覆った。

彼に触れた私の手は冷たい。