こんにちは、ピッコです。
「メイドとして生き残ります」を紹介させていただきます。
今回は66話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

ラーメンを作っていたはずが、気がつくと読んでいた小説の脇役メイドになっていた!
国王は美しい魔性の男「ユルーゲル」に夢中で、王妃を冷遇しており、小説では病気で亡くなるまでそれが続いていた。
王妃付きの平凡なメイドの私が細く長く生き残ることができるの!?
アス・トケイン:主人公。ラーメンを作っている途中で異世界のメイドに。王子の乳母になる。
ミカエル:王子。
ユルーゲル:王に愛される若くて美しい男。
エバンス:若くて強い王。
ミナ:アスのルームメイト。
アレックス・ミュヒート:王妃が里から連れてきた護衛騎士。
ミオ・ゾディアック:幼い王子の護衛騎士。
スサ:メイド長。
セヤ・リョーミン:男爵。アスの家庭教師。スサの従姉妹。
クライン・カペラ:王の親友。国が誇る最強の武将。
シエル:大魔法使い。
セサール・カジック:伯爵。

66話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- side クライン・カペラ
血を流しすぎた。
体がゾクゾクして、手足はもう冷たく、頭痛が止まらない。
10年以上もの間、戦場を彷徨ってきたクラインの目にも、左腕の損傷は深刻に見えた。
この腕でまた剣を握ることができるのだろうか?
手を動かそうとすると、すぐに全身を伝って激痛が発生する。
痛いということは、まだ神経は生きているということだろう。
魔力で手を保護すべきだった。
しかし、アス・トケインの頭上に建物が崩れ落ちた瞬間、他のことは考えられなかった。
この手が剣を持つことが出来なくても、彼女を守るべきだと。
この手と腕の存在意義はただそれだけ。
使えなくなったとしても、アス・トケインを保護したのならそれで十分だ。
残念なことがあるとすれば、この腕で彼女を抱え、この手で彼女の顔を触ることが不可能かもしれないということだけ。
しかし、アス・トケインが生きてさえいれば、自分はそれだけで満足だった。
彼女がいてこそ、自分も生きていけるのだから。
「伯爵様、血を流しています」
しかし、予想できなかったその瞬間がとても甘く感じた。
アス・トケインの目が自分を見た瞬間、彼女の黒い目には自分だけがいた。
彼女から心配されているという感情が、自分をここまで困惑させるほど甘い気分にさせるとは思ってもいなかった。
部屋全体でシエル・カッパーフィールドの魔力が胎動している。
あの気弱で怠慢な魔法使いが、戦場でもこれほど力を入れて魔法を使うのを見たことがなかった。
もしも大魔法使いがこれほどまでに気を遣って魔法を使用していれば、王国は勝利していただろう。
部屋の中の別の気配が気に障り始めた。
周囲をうろうろしながら落ち着かない女とむずがる子供。
そして、微弱な息までもが気になった。
「アンナ、落ち着いて」
そう、アンナ。
そんな名前だ。
アス・トケインが優しい声で何度もアンナと呼ぶのを聞いた。
彼女はアス・トケインのお気に入りだ。
乱暴せず、高圧的にならず、そして優しく振る舞わなければならない。
それを忘れるほど愚かではなかった。
しかし、微弱に続く息づかいが気になり始める。
ミオ・ゾディアック。
ミカエル王子の護衛騎士で、アス・トケインに会いに王妃宮を行き来するたびにすれ違う人物。
アス・トケインが嬉しそうに「ミオ卿」と呼ぶ者。
そして生意気な者だ。
『彼女を私に渡してください』
あの日のことは今も忘れない。
アス・トケインに再び出会った日のことだ。
イディカがこの世を去って3年後、アス・トケインを探して2年が経った後だった。
3年前の自分は正気ではなかった。
エバンスが自分を戦場に送り、そこで1年を過ごしてようやく落ち着くことができた。
その時から私は、アス・トケインを探し回っていた。
しかし、その1年の間に、セサール・ロジックが先に、アス・トケインを隠したのだった。
大陸に住んでいる女性一人を探すのは不可能に近かった。
彼女はなぜ私を訪ねてこないのか?
身を寄せる場所はあるのか?
私が探していることを知らないのだろうか?
彼女のイディカ・ロジックが恋しい日があるのではないのだろうか?
あらゆる考えと根拠のない憶測が毎日のように交差する。
しかし、彼女は生きていると信じなければならなかった。
この世のどこかで彼女が生きていると信じているからこそ、私も生き残ることが出来たのだから。
この切迫した感情はどこから来るのだろうか?
ある瞬間から、私が懐かしむこの思いが、イディカ・ロジックへの思いなのか、アス・トケインへの思いなのか、自分自身にも分からなくなっていた。
あの時は、アス・トケインに会えば、その全ての答えが解けると信じていた。
久しぶりに帰ってきた王宮で、「アス・トケイン」を見たときは夢だと思った。
彼女に再び会った瞬間、世の中のすべての騒音が消え、彼女の心臓の音だけが聞こえるような沈黙の世界が自分を抱きしめたのだ。
かつて3年前に失った天国を思い出させる。
『あなたが安全のまま、私のそばにいてほしいのです』
嘘ではない。
やっと見つかった救助船を、もう一度失くしたい人はいないだろう。
『私たちってそんな関係なのですか?』
戦場で脇腹を槍で貫かれた時の痛みもここまでではなかった。
心臓を棘で刺されたように感じて、しばらく息をすることが出来なかった。
私たちがそういう関係なのかって?
当然だ。
セサール・ロジックが最後までアス・トケインを隠していたならともかく、そうでない瞬間から、クライン・カペラのすべてはアス・トケインのものだから。
奴隷が女王に慈悲を懇願するのは当然のことだ。
なぜ彼女を探していたのだろう。
最初は理由が分かっていたが、いつの間にか自分でさえ忘れていた。
毎日アス・トケインの無事を祈っていた心が、いつからか彼女に会いたいという感情に変わっていた。
水中で冷たくなったアス・トケインの体を抱いている間、私は幸せだった。
それなのに。
『彼女を私に渡してください』
気を失ったアス・トケインを抱えて湖の外に出たとき、彼がいた。
微弱なくせに宴会場で自分を警戒していた騎士。
彼を見つめていたアス・トケインの表情は、優しく、親しみのある顔をしていた。
一緒に宴会場を抜け出したときも、彼女が見つめていたのは彼だった。
アス・トケインは自分の知らない歴史を持ったようだ。
自分の知らない人間と。
今回からクラインの心情です。
彼がどれだけアスを大事にしているのか分かります。
とても独占欲が強いのは分かっていましたが、本当に彼はアスだけがいればいいのですね・・・。
その感情は本人にも分かっていないようですが。




