こんにちは、ピッコです。
今回は104話をまとめました。
ネタバレありの紹介となっております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
104話
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二人きり②
リプタンは眠気に襲われたマックをさっと抱き上げて膝の上に置く。
マックは自然に彼の胸に頭をもたげた。
彼女を少しでも楽にしてあげようとするかのように、彼がびしょ濡れの靴と靴下を一度に脱がせ、隅に突っ込んでおいては熱い手のひらでぶくぶくとした足を揉んであげた。
マックは疲れ果ててそのまま倒れてしまう。
やっと気がついた時は雨脚がひときわ細くなっていた。
彼女は眠そうな目つきでしとしとと降り注ぐ雨粒を眺めて頭を持ち上げる。
リプタンは樹皮に頭をもたせかけ、そっと目を閉じていた。
息もしないまま石像のように静かに座っている姿に突然胸がドキドキして沈んだ。
マックは彼の鼻の周りに手を当てる。
かすかだが柔らかな息遣いが感じられた。
彼女は安堵のため息をつき、彼の目を刺す髪を注意深く払いのけた。
表には出ていないが、やはりかなり疲れていたのだろうか。
ここ数日、無慈悲な行軍をしてまともに休息も取れなかったことを考えると、無理もない。
彼女は気の毒な気持ちで彼の張り詰めた頬を注意深く撫でた。
すると、リプタンがまぶたを持ち上げる。
明瞭な目つきにマックはびっくりして手を離した。
彼は瞳孔と虹彩の区別がつかない真っ黒な瞳で黙って見つめ、頭を下げて彼女の唇を飲み込んだ。
マックは首をすくめた。
さらさらした舌が優しく口の中を撫で、熱い手のひらが首筋を蛇のように包んできた。
まるで足もとでおとなしく横たわっていた猟犬にいきなり首を噛まれた気分だ。
うめき声をあげて彼の腕をぎゅっとつかむと、彼は彼女の唇の上に湿ったため息を吐きながら胸を包み込んだ。
マックは震える目で彼の黒い瞳を見る。
リプタンが分厚い舌をさらに深く押し込んで口蓋と舌を掃き下ろし、口の中に溜まった唾液を貪欲に吸い込んだ。
まるで水に落ちた時のように息がぐっと上がった。
リプタンも激しく息を切らしていた。
重い鉄の塊を身にまとい、険しい山を登りながらも息の音ひとつ乱れ負けなかった人がだ。
「雨がやんだね」
彼は突然唇を引き離し、森の中を眺める。
マックはすぐに彼の言うことを聞き取れず、まぶただけが震えた。
しばらくの間、何かを葛藤するような表情をしていたリプタンがため息をつきながら彼女を膝の上から下ろした。
「急がないと日が暮れてしまう。もう出発しよう」
彼は木の下から這い出て、脱いでおいた鎧を拾い上げた。
その時になってマックは朦朧として酔ったような気分から目を覚ました。
彼の言う通り、こんなにのんびりしている場合ではなかった。
魔物がうようよする山の中に二人きり残された状況ではないか。
マックは、体を巻いていた熱気が一気に沈むのを感じながら、急いで靴を手に取った。
湿っぽく濡れた湿ったブーツに無理やり足を入れて外に出ると、いつの間にか鎧を身にまとったリプタンが馬を引いて近づいてきた。
「歩ける?」
彼はいつ彼女を飲み込むかのように落ち着いていた。
彼女はふっくらとした目で彼を見上げ、ゆっくりとうなずく。
「じゅ、十分休みました」
「私にぴったりくっついてついてきて。もう少し行けば下り坂だから、それからはずっと楽になるだろう」
リプタンは向きを変えて雨に濡れた土の道を静かに歩いた。
マックは滑らないように注意を払い、彼の後をぴったりと追う。
雨が降ったおかげで暑さが和らいだが、全身がびしょ濡れの状態であり、冷たく冷えた空気がそれほど嬉しく感じられなかった。
彼女は寒気を振り払うために肩を抱える。
その姿を見たリプタンが周辺を注意深く見た。
「すぐにキャンプができそうな所を探すから、少しだけ我慢して」
マックは心配そうな表情で薄暗くなる山の中を見回した。
「や、山で・・・夜を過ごそうと思いますか?」
「下りる間に、すぐに真っ暗になるだろう」
「で、でも・・・無理をしてでも町に行ったほうが・・・」
彼の顔はこわばった。
「暗闇の中で山道を下るのは非常に危険なことだ。夜が明けるまで安全な所に泊まったほうがいい」
マックはこわばった顔でうなずく。
このような山の中で二人きりで夜を過ごすというのが少し心配だったが、彼の言葉に従うしかなかった。
彼女はふにゃふにゃとうなだれる。
たぶん、リプタン一人だったら、今頃もう山を下りて村に到着していただろう。
自分のせいで道が遅れたと思うと、石の塊が舞い降りたように胸が重くなった。
「もしかして・・・私が方向を間違えたんですか?とんでもないところに来てしまったせいで、目的地と遠くなったのでは・・・」
素早く木々の間を飛び上がっていたリプタンは、立ち止まって彼女を振り返る。
「一人で山を越えるつもりだったの?」
「この山を越えたら・・・村があるというので・・・」
自分の無謀な決断に彼が怒るのではないかと思い、もぐもぐと言葉を濁すと、リプタンが目を細めた。
しかし、リプタンはかっとする代わりに暗い林道を覗き込み、淡々とした口調で話した。
「方向をちゃんと見出したね。こっちにずっと行くと村が出てくるよ」
その言葉に意気消沈していた心が、やや軽くなる。
彼らはゆっくりと暗くなり始めた山の中を黙って歩いた。
四方が真っ暗になる前に、リプタンは小さな洞窟を一つ見つけた。
彼は洞窟の中に虫やコウモリ、ヘビなどが隠れていないか隅々まで調べた後、彼女に入ってこいというように手招きする。
マックは真っ暗な洞窟の中を忌まわしい覗線で眺めて、膝で這って内側に座った。
「馬の背中から鞍を下ろしてくるよ。ちょっと待ってて」
マックはひざを抱えてうなずいた。
彼は外に這い出て、目の届くところに馬をつるした後、荷物を持って再び洞窟の中に入ってきた。
「少し湿っぽいけど、そんなに濡れてはいない。服を脱いで、これを巻いて」
彼は革のバッグから毛布を取り出す。
マックは目を丸くした。
「ここでですか・・・?」
「夜には気温がぐんと下がるだろう。濡れた服をそのまま着ていると低体温症になることもある」
彼は毛布の裾をしっかりと渡し、服を脱ぐように背中を向けた。
マックは暗い洞窟の天井と緑に染まっていく森の中を不安そうに眺めていて、だんだん酷くなっていく寒気に耐えられずにおとなしく服を脱いだ。
肌にぴったりとくっついていた湿ったチュニックとだぶだぶのズボンを脱いで素早く毛布を巻くと、一層快適な気分になった。
彼女はブーツを脱いで片側に置き、足首まで毛布を巻く。
「できました」
リプタンは彼女の姿を肩越しに確認し、さらにかばんから何かを取り出した。
マックはそっと彼のそばにしやがんだ。
リプタンはチュニックの袖を破って丸く丸めておき、その上に火打ち石をぶつけて火花を散らしていた。
「魔法で・・・ひ、火をつけましょうか?」
「いい、無駄に魔力を浪費するな」
リプタンは鋭く言い返し、黙々と火打ち石を打ちつける。
数回の試みの末、布の上からかすかな煙が立ち上り始めた。
彼がその上に慎重に息遣いを吹き込んで火種を育て、カバンから松ぼっくりをいくつか取り出して炎の上に積み上げた。
松ぼっくりにすぐ火が燃え移り、小さなたき火が作られる。
「この辺で使えそうな燃料を探してくるよ。ここで、じっとしてて」
一体、自分がこうしてどこに行くと言っているのだろうか。
マックは毛布を体に巻きつけ、膝を抱えて座り、暗い森の中に歩いて行くのを見守った。
リプタンは彼女の視界の近くで折れた枝を拾い上げて戻ってきた。
「雨水に濡れて・・・ひ、火がつきますか?」
「水気をあまり吸わない木の枝だけ選んできた。表面に濡れた部分を削れば焚き物として使えるよ」
彼は洞窟の片側に座り、ベルトから腕くらいの長さの剣を抜いた。
マックは上手に樹皮を剥がすのをぼんやりと見る。
リプタンは水を含んだ部分を厚く切り取った後、白く素肌を現した木の枝を火の中に重ねて積み上げた。
小さな火のついた薪を飲み込み、洞窟の中に入る。
明らかになるほど激しく燃え始めた。
「濡れた服はこっちにちょうだい」
マックは床に適当にしまっておいた服を拾って彼に渡した。
リプタンは服から水気をぎゅっと絞った後、ばたばたとはたいて熱気がよく当たるところに広げておき、濡れたブーツもひっくり返して火のそばに立てておいた。
マックはかばんをかき回して食べられるものがないか調べた。
リプタンはその姿をちらりと見て、かばんから小さな包みを取り出す。
「急いで追いかけてきたので、これしか持ってこなかった」
硬いパンと乾燥させた長いソーセージ。
マックは水分というものは残っておらず、パサパサしているパンと石ころ同然のソーセージを深刻に見下ろした。
パンは噛んでどうにか首の穴にこもることができるだが、ソーセージは到底食べる方法がなかった。
豚の腸に中をぎっしり詰めて作ったソーセージを残念な目で見下ろすと、リプタンがソーセージを細かく切って空の水筒の中に詰めた。
それから薪として使って残った木の枝を皮ひもであちこちに編んで、あっという間に掛け台を一つ作って水筒を火の上に置く。
しばらくして、ジュージューと油が沸騰する音がした。
「薬草の包み、こっちにちょうだい」
マックは静かに薬草の入った袋を渡した。
彼はソーセージから流れ出た油にハーブと作るための根、そしてパンを細かく砕いて作った粉を入れた後、筒を振りながらよく混ぜ合わせた。
香ばしい油の匂いにマックはよだれを飲み込んだ。
リプタンがおいしそうに炒めたソーセージの上に水を注いでぐつぐつ煮ると、わずか十分余りでおいしそうなスープが作られた。
「スプーンがないから具はパンですくって食べて」
彼は水筒のふたにスープをいつばい取って渡す。
マックは湯気の立つ熱いスープをふうふう吹いて慎重に一口味わった。
ソーセージの塩気が適度に広がったおかげで、かなり塩気があった。
マックはリプタンが短刀で平たく切ってくれたパンをスプーンの代わりにして柔らかくふやかしたソーセージをすくって食べた。
お城で食べた料理に比べるとみすぼらしい食事だったが、こんな山の中できちんとした料理が食べられるということだけでも感激だ。
気まずい雰囲気での二人の行軍。
リフタンがいるから安全ではありますが、マックも居心地が悪いのではないでしょうか?