ロクサナ〜悪女がヒロインの兄を守る方法〜【２２７話】ネタバレ

「黄の首長！もう少し落ち着けないのか？」

我慢しきれなかったヒアキン・フィペリオンが机を叩きながら叫んだ。

リセルとバドリサも、冷たい表情でノエルの行動を眺めていた。

「本当にまあ、こんな斬新な病身が・・・」

ジェレミーの小さい呟きが私にだけ聞こえる。

「このままでは進まないね。人形を片付けろ」

「そうだね、その方がましだ。そこ、早く人形を連れて出なさい」

結局、リセルとバドリサの口からニックスを片付けるよう命令が下された。

「ニックス！ニックスをまたどこに隠そうとしているんだ！ニックスは私の人形だ、私のものだ！」

ノエルはもう一目も気にしていないのか、大声を張り上げる。

理性というものが少しも残っていないような姿に圧倒され、みんな言葉を失ってしまった。

「今すぐ、ニックスを、こっちへ、よこせ・・・！」

結局、席を立ったカシスがノエル・ベルティウムの急所を打って彼を気絶させた後になって、ようやく大会議場内の騒ぎが静まった。

「医務室に連れて行ってくれ」

そのようにして、ニックスとノエルはドアの外に姿を消す。

「はっ、なんというざまだ」

ヒアキン・フィペリオンは首を横に振りながら唸り声を上げた。

バドリサは人を呼んでノエルとニックスを見守るようにさせて、リセルはカシスに尋ねる。

「黄の首長は、以前にもこのような姿を見せたことがあるのか？」

「ユグドラシルに到着した時から多少不安定な状態ではありましたが、こんな風に理性を完全に失った姿を見せるのは初めてです」

ジェレミーはそれを聞いて舌打ちした。

そうするうちに、ふと彼は悟ったように私の方を振り返り、再び演技を披露する。

「姉さん、驚かなかった？ただでさえ体が弱いのに。さあ、この水を飲んで」

いつから私が病弱になったかは分からないが・・・、私もただ胸を撫で下ろすふりをしながら大人しくジェレミーがくれたコップを受け取った。

実はダンテが死んだという知らせを聞いた時から、心の片隅では少しもったいないと思っていた。

ノエル・ベルティウムは腹心のダンテに想像以上に頼っていたことは明らかだ。

だから、もしユグドラシルの中で幻想蝶を使うことができたなら、ノエルに死んだダンテの幻影でも見せて、彼をさらに不安定にすることができたはずだ。

しかし、今見ると、別にそうする必要がないようで残念な気持ちに。

カシスを見ると、彼は何を考えているのか分からない表情のない顔をして、再び席に戻っていった。

そもそもカシスに私の本性を隠して優しいふりをしたかったわけではないが、それでもこういう時には彼に人の心を読む能力がなくて幸いだという気がした。

「当事者はいないが、それでも事の経緯について聞かざるを得ない」

首長たちが散漫な雰囲気を取り戻した。

今になってノエルがいないと席を解散させることもできず、さっきに比べて大会議場の中の雰囲気が深刻になったりもしたので、ひとまず今回のことに関連した人々の話でも聞くことにしたのだ。

「ペデリアンの後継者に、まず話を聞いてみることにしよう」

最初にカシスに発言権が与えられた。

表面的にベルティウムの人形について首長たちに一番最初に知らせたのが彼だったので、当然と言えば当然だ。

「普段、ユグドラシルで会議が開かれるたびにベルティウムが頻繁に欠席していたことを覚えているでしょう」

カシスが落ち着いた口調で話すと、それに首長らがうなずいて肯定した。

「それで会議の結果を受け取る使者が、代わりにユグドラシルを訪れたりしていたね」

「今春に開かれた会議でも同じでした。ところが、長い道のりを走ってきたために気力が衰えたのか、ベルティウムから来た使者が回廊の前で意識を失って倒れていたのです」

カシスは意外にも自然に上手く嘘をつく。

倒れているベルティウムの使者をカシスが偶然発見したのではなく、わざと気絶させたという事実を私も後でイシドールに耳打ちで聞いていたのに。

「そうして休息を取るようにした方がいいと思い、彼を使用人に任せ、私が代わりに会議の結果を盛り込んだ書信を伝えるために、腹心と共にベルティウムに向かうことになりました」

「そうだったのか」

カシスはそこで一拍子言葉を止めた後、再び口を開いた。

「ところが、私が到着するやいなや目撃したのは、ベルティウムの人形がロクサナ・アグリチェさんを攻撃する姿でした」

少し前と同じような騒音が、再び聴衆の間に漂う。

すでに昨日の夜、口から口へと密かに伝わった話ではあるが、それでもこのようにカシスの口から直接聞くようになって心の中に響いたという程度が違うようだった。