こんにちは、ピッコです。
「ジャンル、変えさせて頂きます!」を紹介させていただきます。
今回は99話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
99話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- クリケット②
試合はリューディガーのいるチームの勝利で終わった。
リューディガー一人で点を取ったのだから、当然といば当然の結果だ。
見事な勝利の主役となったリューディガーは、先王と私のいる貴賓席に近づいた。
先王は歯ぎしりしながら席を立つ。
彼は慌てて席を立とうとしたが、リューディガーが到着するのが先だった。
ヘルメットを脱いで近づいてきたリューディガーの乱れた髪の毛には汗がぽろぽろと滲んでいた。
その姿に思わず心臓がドキッとする。
リューディガーは先王と私に丁重にあいさつした。
「先王殿下とレディー・マイパウムにお目にかかります」
「ふん」
先王は聞いたふりをせずあごを上げた。
年をいったいどこに取ったのか、全く大人げない態度だ。
しかし、いつまでも無視するつもりはないようで、先王はリューディガーに脅しをかけた。
「お前がこんな風に出ても私は絶対許せない」
「宴会場での仕事がかなりロコミで広まっていましたね」
「許せない」という先王の言葉に、リューディガーはとんでもない答えをした。
(これは不安なんだけど・・・先王に何か一発食らわせようと準備運動してるんじゃないの?)
案の定、まもなく続くリューディガーの自然な言葉の一言一言がくさびのように先王の胸に突き刺さった。
「このクリケット競技場はどうですか?大体でも宴会場以上の人が集まっているようですが。・・・おそらく噂がもっとよく回るのではないでしょうか。それが王家の醜間ならなおさらです」
「こ、こ、こ、こいつめ!今王室の名誉を持って脅迫をしているのか!?」
「脅迫だなんて。こういうものでは瞬き一つしない方だということはよく知っています」
「そんな奴がこんなことを仕立てろ!こんな風に私の心を変えようとしても何の役にも立たない!」
そうだ、このように自尊心争いに行っても、先王の意地がさらに強くなるだけだ。
私は心配そうにリューディガーを見た。
彼の滑らかな顔は揺らぐことなく堅固で、その点がさらに先王の心を掻く。
リューディガーは平然と答えた。
「先王様の心を変えるつもりはなかったのですが?」
理解できないリューディガーの発言に私は目を見開いた。
先王もまた、リューディガーの意中が全く見当がつかないのか、眉間にしわをたくさん寄せた。
「ユディットさんがクリケットが好きなのは私も知っています。だからクリケット選手たちに魅力を感じる可能性もあるでしょう。では、私がクリケットでクリケット選手よりもかっこいい姿を見せたら、ユディットさんの目に他の男が寄りますか?ユーディットさんは結局私を選択することになるでしょう。そうするしかありません」
リューディガーは自信満々に断言する。
自分がプロ選手よりかっこいい姿を見せる自分も、私が彼を選ぶという自信で溢れていた。
実際にもそうだったし。
(ああ・・・本気でホームランを打った時、二度惚れたわ。運動ができる男は最高だよ)
「それから私がここへ出たのですから、王家にユディトさんへのプロポーズが入ることは決してないでしょう。だから、水面下で貴族の青年たちを物色して歩くのは諦めた方がいいと思います」
「は、お前はとても自信満々だな。傲慢なやつめ。あえて王家ですることにああしろこうしろなんて!」
先王は火のように怒った。
しかし、内心一歩たじろぐのが感じられる。
リューディガーがもともと図々しく出ると、勢いで負けたらしい。
(気合いはリューディガーの勝ちか・・・勝って何が得られるかは分からないけど)
棋戦で負けたとはいえ、先王は依然としてリューディガーに対する敵意を隠さず露にした。
そのような先王の敵意を黙って盤々と耐えていたリューディガーは、隣の従者のように見える人に向かって手招きする。
あまりにも自然で従者だと思っていたが、よく見ると他の選手だ。
選手は先王にきれいに折りたたまれた新間を渡した。
「・・・これは何だ?」
「直接ご覧になった方がいいかと思います」
リューディガーの答えに先王の片方の眉が不満そうに持ち上げる。
先王は、リューディガーが渡した新間が毒杯でもあるかのようにうんざりした。
しかし、好奇心に打ち勝つことはできなかったようだ。
先王はしばらくして、リューディガーに八つ当たりするように新聞を荒々しく取り上げた。
それからガサガサと新聞を開く。
新間の一番前、白い余白に私の拳ほどの大きさの文字がちりばめられていた。
<ユディット・マイバウムさんにプロポーズする人には、ラムガート王国軍中央司令部陸軍大佐でザクセン子爵、リューディガー・ヴィンターヴァルトが決闘を申し込むことを宣言する?
新聞の1ページを丸ごと書いた全面広告。
余白から感じられる覇気が強烈だった。
ザ・フレーズ。
この世界の常識が多少足りない私も知っているほど有名な新聞社だ。
そんなところに1面全面広告を載せるなんて・・・。
私が新間に広告しようかと皮肉を言ったことがあったが、本当に実践するとは。
金額よりもそうできる実行力に驚いた。
(とても噂と放送媒体を利用するのに憚りがないんだよ。扇動と脅迫・・・リューディガーのもう一つの才能ではないか)
こうなると、純粋に感嘆ばかり出た。
新聞に自分の名前が載ることに特に興味はなかった。
ああ、リューディガーがまたやらかしたんだなと思うだけ。
いざ私の件であるにもかかわらず、私が一歩離れた位置で観照するように眺めるのとは異なり、先王は侮辱でもされたようにぶるぶる震えていた。
「たかがこんなことで王家を牛耳ることができると思ったら誤算だ!ザ・フレーズ!マスコミというやつらが資本に買収されてこんな様だなんて、あいつらを直ちに・・・!」
先王は、ザ・フレーズに公正性違反という罪をかぶせることを考えたかのような顔で叫んだ。
先王がそうしようがしまいが、リューディガーは隣で照れくさそうに立っている選手に手招きした。
選手は先王の機嫌を伺いながら躊躇し、すぐに新聞の山盛りを先王に渡す。
「ザ・フレーズ、ジェネラル、ブルーイェン日報、デイジェイト・・・その他の数十種のタブロイド紙も含まれています。このすべての所を公正性違反で罪を問われたら、かなり騒々しいでしょうね」
見てみると、ザ・フレーズだけじゃなくてランガートにあるすべての新聞に全面広告をかけたのだった。
いくら無謀な先王だとしても、この対策のない状況を予想することはできなかったようだ。
ただ口をぽかんと開けたまま何も言えず、リューディガーをぼんやりと見つめた。
リューディガーは平然と語り続けた。
「結婚式がいくら遅れても構いません。私はしつこい方ですし、忍耐心では誰にも負けたことがありませんから。元々最後まで粘るやつが勝者だと言うじゃないですか。私が先王殿下より長く耐えれば良いことなので単純です。どうしても先王殿下より私の方が長生きするのではないでしょうか?」
わぁ、本当に強いね。
これをどうやってまとめればいいのか見当もつかないほどだった
頭がぼうっとする。
もちろん32歳のリュディガーと80歳を超えた先王のうち、どちらが長生きするかというと、リューディガーだろうけど・・・。
(でも、順番がないっていう話もあるじゃん。実際、原作でリューディガーが死んだ時期を考えると、2人が似ていたようだけど)
原作の内容を知っている私は、複雑な目でリューディガーを眺めた。
そんな私の心情を知らないリューディガーは、殺しても死なないように首を強める先王と対峙していた。
言葉が出ない先王の顔が真っ赤になる。
何か一言打ち付けてあげたいが、想像以上の強い一撃になかなか言葉が続かないようだった。
そのように先王が戸惑っている隙を狙って、リューディガーが突然懐柔策を試みる。
「それなら、かえって早めに結婚を許していただいて、ユディットさんの結婚式に出席されたほうがいいのではないでしょうか。先王殿下は、ユディットさんの唯一の家族ではありませんか。結婚式でユディットさんの手を握ってくださらないと」
リューディガーは確かに路線を決めたようだった。
先王が自分を良く見てくれることを期待するより、ただ自分を受け入れるしかないように状況を統制し追い込もうとする下心であることが明らかだ。
実際に効果があった。
残り少ない年と共に私の結婚式の話を聞くと、先王の心が揺れるように見えた。
鞭とニンジンで先王の精神を魅了する腕がとても上手です。
しかし、簡単にはそうならず、先王の自尊心が強すぎた。
すぐに気がついた先王の濃い琥珀色の瞳が燃え上がる。
「行こう、ユディット!」
先王はリューディガーの傲慢な言葉に何の返事もしないまま、訳もなく怒って私を催促した。
どうやら、リューディガーと言葉を混ぜれば混ぜるほど損だということに気づいたようだ。
私はこっそりと先王を見る。
前だけをまっすぐ見つめる先王の横顔が乱れていた。
(あれ、これはまさか・・・このまま押し続けたら押されるかな?)
絶対に心を変えないかのように振舞った先王だ。
そんな彼が揺れるという事実に私の心も動揺する。
ここで先王が戻ってメンタルを再整備する時間を与えるのが得なのか、それとも損なのか。
私はそろばんを弾いてみた。
しかし、相次ぐリューディガーの攻勢に苦しめられた先王は、乾いたキュウリのようにしわくちゃになっていた。
がっちりした肩も気力なくたるんだ姿。
ここでさらに追い詰めるという意見を破るのではなく、先王の命綱が折れるような気がした。
(そうだね。とりあえず、もう少し考える時間を与えた方がいいと思う)
ところで、気難しい先王をここまで追い詰めたリューディガーも本当にすごいんだよ。
「・・・」
私は先王の後を追ってリューデイガーをちらりと見る。
私と先王が帰る姿を淡々と眺めていた彼と視線が合った。
私は小声で口の形をして言った。
<よくできました>
それと同時に、リューデイガーの口元ににっこりと笑みが広がる。
私も彼を見てにやりと笑った。
先を行く先王の後ろに私たちはそのように微笑で別れを告げる。
リューディガーの行動が規格外すぎます!
まさか全新聞社に広告を載せるとは。
先王が少しずつ追い詰められていますね。