こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
今回は37話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
37話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母親として②
窓際に置かれたチューリップ、色鮮やかな黄色い花びらの上に砕ける日差し。
美しく完成した絵を見ながら、アンジェリーナが震える声で話した。
「レイシスは天才だ。ただの天才でもなく、世紀の天才よ!」
決して息子への愛が手厚い母親の大げさではなかった。
シアナも王女だった時代、数多くの名画を見たので分かった。
(筆のタッチや描写がごつごつしているが、それさえも芸術的に感じられる)
生まれつき才能があるのはごく一部だけだということは明らかだ。
シアナは突然「あの子」を思い出す。
レイシスと同じ様相を持っていたあの子にもこのような才能があった。
(他のことはとても未熟だが、ピアノ演奏だけは素晴らしかった)
レイシスのようにとてつもない才能ではなかったが、他の人なしに日常生活も大変な彼がもっともらしくピアノ演奏をする姿は驚いた。
(あまりにも驚いて思わず言った。「他の人と感情を分かち合えない存在を哀れに思い、神からの賄り物のようです」と)
そんなシアナに向かって、その子の母親はビンタを飛ばした。
「よくもあなたなんかが私の息子をかわいそうに思うものか。私の息子は同情を受けるような存在ではない」と。
急に頬がずきずきするような気がした。
シアナはその時の考えを振り払いながら口を開く。
「本当にすごいですね。すごい才能です」
「ええ。ちゃんと習ったことがない子がそんなに絵を描くなんて信じられない。それに半日も休まず集中して絵を描くなんて」
子供が並外れた才能を持っているという事実は彼女を興奮させた。
しかし、すぐにアンジェリーナの顔が暗くなる。
「・・・ところでそんなに長い時間一緒にいてもレイシスは一度も私を見ないのね」
アンジェリーナはレイシスの隣にずっと座っていた。
最初は恐ろしく、少し時間が経った後には慣れ、もう少し時間が経った後には少し期待ができた。
少しでもレイシスが私に関心を持ってくれるかなと。
しかし、そのような奇跡は起きなかった。
レイシスはアンジェリーナに一抹の関心も示さず、絵だけを描いた。
シアナは青白いアンジェリーナに向かって言った。
「気を悪くしないでください。私が見るにはとても肯定的な状況ですから」
「どういうこと?」
「皇子殿下は、普段はおとなしいけれど、嫌なことははっきりと表現するとおっしゃったじゃないですか。皇妃様が嫌だったら、あっち行けと大声を出したり、布団の中に隠れたと思います」
「・・・」
「でもそうしなかったということは、それだけ皇妃様を気楽に思っているということです」
アンジェリーナの顔が一気に明るくなる。
「そう思う?」
「もちろんです」
にっこりと笑ったシアナは両手を握りながら爽やかに言った。
「そういう意味で今日も頑張ってください、皇妃様!」
「うん!」
アンジェリーナはうなずいてレイシスの部屋に向かう。
部屋に入ることさえ大変だった昨日と比べると、大きな変化だった。
最近アンジェリーナはレイシスの部屋で1日の大半を過ごしていた。
特別なことをしたわけではない。
レイシスと一緒に絵を描いて(アンジェリーナはレイシスを見物する時間がはるかに長かったが)食事をして、夜になるとおやすみの挨拶をして部屋を出た。
もちろん、すべての日が順調ではない。
「ウアアッ!アアアッ!」
レイシスは訳の分からないことを言った。
それでも怒りが解けないのか、ナイフで絵を描いていたキャンバスをびりびりと引き裂き
始めた。
「レイ!」
不気味な光景にアンジェリーナは口を塞いだ。
このような息子を見たのは初めてではない。
時々、侯爵家の邸宅でも、レイシスはしばしばこのようなやり方で興奮した。
その度に父親のヴィルヘルム侯爵は、火のように怒って叱った。
[すぐにやめなければなられない!]
それでもレイシスが行動を止めなかったため、使用人を呼んでレイシスを捕まえた。
その後は厳しく叱った。
子供にひどいのではないかというアンジェリーナに侯爵は言った。
『分別のないことを言うな。あんなこましゃくれたことをやる時はすぐに叱らなければならない。そうしてこそ私が間違ったことを知って二度とあんなことをしないのだから』
まさか自分もそうしなければならないのかと思い、アンジェリーナの顔が青ざめる。
そんな彼女のそばにシアナが近づいてきた。
シアナが部屋の隅っこに立って何も言わずに二人を見守っていたのは、こういう状況が生じた時のためだ。
シアナはアンジェリーナに低い声でささやく。
「心を落ち着かせてください、皇妃様。そして、皇子殿下を詳しく見てください」
「・・・」
アンジェリーナはシアナの言葉に従い、両手を握りしめレイシスを見た。
アンジェリーナはあまりにも奇怪で恐ろしくて、レイシスが怒る姿をまともに見たことがなかった。
けれど・・・。
シアナの声がアンジェリーナの耳に染み込んだ。
「皇子殿下は今何かが気に入らなくて感情を表現するだけです。誰かを傷つけようとしているわけでもなく、傷つけようとしているわけでもありません」
「・・・」
本当だった。
キャンバスを破って、絵の具を投げて、大声を出して・・・。
レイシスの行動は広範囲に及んだが、その怒りは決して他人に向けられたものではなかった。
ただ腹が立っただけだ。
アンジェリーナはそれを初めて知った。
シアナは言った。
「皇子殿下に近づいてください。そして、強く抱きしめてください」
「・・・」
「抱きしめながら言ってください。大丈夫だって、落ち着いてって」
「でも・・・」
レイシスは言葉をよく聞き取れない。
正確に言えば言葉の意味は分かるが、その言葉を受け入れることができなかった。
特に、明確な指示語ではない感情表現はなおさらそうだ。
レイシスは大丈夫、という言葉をまったく理解していないだろう。
シアナはアンジェリーナが何を考えているか知っているかのように言った。
「「大丈夫」という言葉の意味を完全に受け入れることができなくても、きっと感じると思います」
「・・・」
「誰かが私をこんなに抱いてくれるんだ。暖かい声で何かを言ってくれるんだ・・・私の味方がいるんだって」
アンジェリーナはうつむいた顔でシアナを見つめ、ゆっくりとうなずく。
一歩、アンジェリーナがレイシスに向かう。
それまでレイシスはナイフでキャンバスを引き裂いて変な音を立てていた。
アンジェリーナは勇気を出してレイシスを抱きしめる。
「落ち着いて、レイ」
しかし、レイシスには彼女の声なんて少しも聞こえないようだった。
むしろ、突然自分を縛り付けた力が不快なように、さらに激しく反応する。
「ウアアアッ!アアアッ!」
白目がきらめく目つきはぞっとし、泣き叫ぶ音は獣の音のように怖かった。
アンジェリーナは逃げ出したかった。
そうすると、いつものように侍従たちが近づいてきて状況を収拾してくれるだろう。
あるいは時間の力を借りてレイシスが自らを落ち着かせるだろう。
アンジェリーナは歯を食いしばる。
(・・・だけど、そうしてはいけない)
そうし続ければ、自分は永遠にレイシスのそばに近づくことができず、レイシスは一人で闇の中にいなければならない。
か細い彼女からかつてない力が出た。
アンジェリーナはレイシスを抱いた両腕にカを与えて言った。
「やめなさいって、レイ。そのうち怪我するよ」
「ウアアア!」
もがいていたレイの手に握られていたナイフがアンジェリーナの顔をかすめる。
真っ白な顔に引かれた傷から血が漏れた。
ぽたぽたと落ちる血の滴にレイシスが止まった。
向こうで二人を見守っていたシアナも、驚いて近づこうとした瞬間だった。
アンジェリーナは笑いながら言った。
「大丈夫」
アンジェリーナはレイシスを抱き締めながら
もう一度言った。
「大丈夫」
「・・・」
「大丈夫だよ、レイ」
多くの意味を込めた言葉。
大丈夫、レイ。
母はちっとも痛くない。
大丈夫、レイ。
お母さんがそばにいる。
大丈夫、レイ。
これからは絶対君を一人にしないよ。
「・・・」
そうして、どれだけ大丈夫だと囁いただろうか・・・。
レイシスの泣き叫ぶ声は消え始めた。
レイシスはもう悪態をつかなかった。
アンジェリーナの懐から逃れようともしなかった。.
レイシスはアンジェリーナの腕の中におとなしく入っていた。
まるで生まれたばかりの赤ちゃんのように。
息を落ち着かせるレイシスを眺めながら、アンジェリーナは目元が熱くなる。
「こうやって抱いてあげればいいのに。そしたらこんなにすぐ大人しくなる子なのに・・・」
私があなたのことをあまりにも知らなかった。
これまで放置してきた息子への申し訳なさ、懐に入ってきてくれた息子への感謝。
いろいろな感情が入り混じって胸が痛んできた。
アンジェリーナの母親としての行動に感動しました!
少しずつですが、レイシス皇子の行動も改善しているのではないでしょうか?
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