シンデレラを大切に育てました【１４７話】ネタバレ

「バーンズ夫人」

エレナはため息をつき、ミルドレッドに向かって身を乗り出す。

彼女もミルドレッドの噂を聞いていた。

娘たちを脅迫しようとした男を殺そうとしたという噂はふくらんだとしても、自分に無礼に振る舞った男の足首を蹴って折ったという噂まで加わると、彼女の性格が半端ないということが分かる。

「奥さんは私の命の恩人です。しかし同時に、私の姉も愛しています」

真剣に考えるために深刻だったミルドレッドの表情がエレナの要請に優しく解けた。

自分の子供たちもこうしてほしい。

年を取ってもお互いがお互いの面倒を見る仲の良い姉妹として過ごしてほしい。

「お姉さんに変なことをするなと言ったのですが、念のため訪ねて来ました」

姉のために、そしてミルドレッドのために彼女に知らせに来たというエレナの心遣いがミルドレッドは気に入った。

エレナなりに最善を尽くしたのだろう。

ミルドレッドはため息をついて分かったと言おうとする。

だが、それより先に誰かが玄関から内側に走ってくる音が聞こえてきた。

「ダメです、奥様！奥様！」

これはどういうこと？

驚いたミルドレッドとエレナは飛び起きた。

反射的にミルドレッドの頭の中にアシュリーが浮かんだ。

アシュリーは数日前に誘拐されるところだった。

あの子をまた怖がらせることはできない。

「バーンズ夫人！」

ミルドレッドがアシュリーの元に駆けつけようとした時、誰かが応接室のドアをバタンと開けて押し寄せた。

びっくりした二人の前に飛び込んで来たのはマリアンヌだった。

彼女はミルドレッドの肩をつかんで息を切らしながら言った。

「ごめんなさい。返すから男爵様にお父さんには手を触れないでくれと言ってください。お願いします」

これはどういうこと？

ミルドレッドは当惑してマリアンヌを見る。

彼女はとても忙しなく走ってきたので、帽子も手袋もなかった。

「何をおっしゃっているのか分かりません」

ミルドレッドはマリアンヌから離れて言った。

申し訳ないというのは、アイリスヘの謝罪のようだ。

しかし、何を返すというのか、父親は手を出すなというのがどういう意味なのか分からない。

ミルドレッドの頭の中に彼女が持つべきだったが、失ったものが浮かんだ。

ロニー・ハリスはフレッド・バーンズの遺体を彼の依頼人に宝石をもらって渡したと言い、依頼人が誰なのかは知らないと言った。

しかし、代理人から見て、依頼人が貴族である可能性が高かった。

「私は、私は・・・」

自分が何をしたのかを説明するマリアンヌの前で、ミルドレッドの表情がますますゆがんだ。

まさか？

その時、退いていたエレナが口を開く。

「マリアンヌ、どういうこと？」

その時初めてマリアンヌはエレナがこの部屋に一緒にいることに気づいた。

その瞬間、マリアンヌの体がふらつく。

一番保護したかった妹が事実を知ってしまった。

彼女は素早くソファの背もたれに手をつけ、息を切らす。

「2人で話せますか、バーンズ夫人？」

マリアンヌの要求にミルドレッドは目を細める。

しかし彼女が答える前にエレナは激しく反対した。

「ダメ！私も一緒に聞くよ！バーンズ夫人、私もそばにいさせてください」

「だめです、お願いします、バーンズ夫人。他の人がいても大丈夫です。ですが、エレナだけは送ってください」

マリアンヌの哀願にミルドレッドは胸の前で腕を組んだ。

悪い考えが浮かんだ。

フレッドの遺体を隠した人、偽のフレッドを送った人。

それが全部マリアンヌだという推測に繋がる。

「バーンズ夫人、言われたことなら何でもします」

マリアンヌの哀願にミルドレッドは固い表情で彼女を見た。

（あなただったの？）

マリアンヌはミルドレッドの難問で目を閉じて開ける。

世界中の人が自分を非難しても構わない。

エレナさえ保護できれば。

ミルドレッドは唇をかみしめて深呼吸をしてから吐き出した。

そしてエレナとマリアンヌに言った。

「ガスさん、すみませんが、ここでちょっと待ってもらえますか？そして、スチューワード伯爵夫人、あなたは私と書斎に行きましょう」

不安そうな表情のエレナを応接室に置き、ミルドレッドはマリアンと一緒に書斎に向かう。

マリアンヌは書斎に入るやいなやミルドレッドに感謝の意を表した。

「エレナがいないところに連れてきてくれてありがとう」

「勘違いしないでください。あなたの話を聞いてて、手が上がりそうで二人人きりのところに来たんだから」

ミルドレッドの言葉にマリアンヌの表情が再び固まる。

しかし、彼女は深々と息を吸い込み、頭を上げながら言った。

「関係ありません。あなたは私を殴るに値しますから」

そして、再びため息をつく。

ミルドレッドに殴られる覚悟はしてきた。

事をやらかす時は被害者に恨まれる覚悟はしてやらかすのだ。

マリアンヌはそれでも気にしなかった。

エレナさえ幸せなら。

「ハリスさんがフレッドに変装したのですか？」

ミルドレッドは拳を握ったまま尋ねる。

返事次第でマリアンヌを本当に殴るつもりだった。

マリアンヌは目を閉じて、目を開けてうなずいた。

「はい」

「フレッドの遺体を宝石で買ったのもあなたですか？」

「はい」

「ハリスさんにこの家に侵入してアシュリーを拉致するように言ったのもあなたですか？」

「ええ、な、何ですって！？あの男が何をどうしたと？」

ロニー・ハリスがアシュリーを拉致しようとしたのは、マリアンヌの指示ではなく、彼の自主的な判断だったようだ。

しかし、ミルドレッドは怒りが収まらなかった。

彼女は胸の前で腕を組んで話した。

「アシュリーに父が生きて帰ってきたと接近して、あの子を幸せにした後、拉致を試み、その子の父を二度殺したのが、あなたの仕業ではないんですって？」

マリアンの顔が真っ青になる。

彼女はロニーがそんなことをするとは思わなかった。

彼女が指示したのはできるだけ長くフレッド・バーンズのふりをすることだけ。

しかし、フレッド・バーンズは結局、アシュリーの父親だ。

彼女が指示したのは、できるだけ長くアシュリーの父親のふりをしろという言葉に他ならない。