こんにちは、ピッコです。
「政略結婚なのにどうして執着するのですか?」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
73話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 気恥ずかしい光景
それからしばらく後、人間地域アラゴンの領地にて。
ノバート・マイアーとその一行がウィンターフェルに到着した。
訪問の理由は、前侯爵家の功績を祝うためという名目だった。
もう少し正確に言えば、それを口実にした交渉のためである。
マイアー家の体面を保つための使節だった。
困窮する状況で食料の支援を求めてやってきたことが近隣に知られるのは避けたかったのだ。
食料を無償で分け与え、さらにはその体面を守るという提案には、驚きを禁じ得なかった。
「やはり北部の支配者はウィンターフェルが唯一だ!ウィンターフェルでなければ、いったい誰が北部家門たちをまとめることができるというのか?」
今回の機会にウィンターフェルとの確固たる同盟関係を築くことを誓った。
そう心に決めた彼は馬車の中から微笑みを浮かべた。
「侯爵閣下!その間お元気でしたか?」
多くの人々が歓迎のために立ち並んでいるのが見える。
その中でもっとも目を引いたのは、銀髪を持つ端正な青年だった。
「真ん中に立っている彼が当主だろうか。」
後継者時代、父親に付き添って公式の席に座っていた少年は、いつの間にか堂々とした若者に成長していた。
すぐには彼だと気づけないほどだ。
しかしノバートは、まるで十年来の友人にでも会ったかのように満面の笑みを浮かべていた。
「ウィンターフェルで起こったことはすべて聞きましたよ。まるで自分のことのように嬉しいですね。ウィンターフェルの繁栄は北部全体の喜びではありませんか? ハハハハ!」
食料を支援してくれたことは、たいして大変なことではない。
グレンが自分の息子くらいの年齢だということも、それほど重要な問題ではなかった。
全力で笑い続けるノバートに、グレンは乾杯を提案した。
「久しぶりですね。ほぼ10年ぶりですか? 私の父があなたの家族と親交を深めた頃が懐かしいです。」
「先代侯爵がマイアー家をよく扱ってくださったんですよ。そのことがどれほどありがたかったか!」
「私が嬉しかったかどうかは分かりません。でも、先代侯爵様もこの場にいらっしゃいますか?」
ノバートは凍った笑顔を浮かべながら周囲を見渡した。
しかし、アイザックの顔はどこにも見当たらなかった。
「父は私に爵位を譲った後、完全に一線を退きました。一つの家に決定権を持つ者が二人いてはいけないとおっしゃっていました。」
「なるほど、それは非常に賢明なご決断です。」
家臣たちの中には見覚えのない顔も多い。
数十年間執事長の職に就いていたゴードンや、先代侯爵の親友で信頼厚かったジスカラといった人物がそうだった。
しかし、時の流れとともに初めて見る顔も存在していた。
グレンから少し離れた場所に立っている若い女性がその一人だった。
「・・・誰だろう?」
柔らかな茶色の髪が目を引く、上品な佇まいの若い女性だった。
その着ている服装から察するに、侍女や一般の行政官ではなかった。
「まさか・・・。」
グレンには女性の兄弟はいない。
それならば、この女性の正体とは――
「もしかして、侯爵夫人でいらっしゃいますか?」
「はい、そうです。私がナディア・ウィンターフェルです。」
「・・・!」
まったく予想外だった。
北部全域の元帥であるバラジット公爵の娘が目の前に立っているのだ。
「は、初めてお目にかかります、夫人。私はマイアー家のノバートと申します。」
「お噂はかねがね伺っております。以前からウィンターフェルの頼れる盟友でいらっしゃると。」
軽くお辞儀をする彼の顔には、動揺の色が隠せなかった。
(・・・一体どうして公爵の娘がこんな地位にいるんだ?)
彼女はバラジット公爵が送り込んだ刺客だ。
しかし、公的な場で彼女が徹底的に排除されるのは不適切ではないのか?
この場は、ウィンターフェルとマイアー家門の同盟をさらに強固にするための重要な場だ。
刺客が簡単に切り抜けられるような場ではない。
(彼女が北部家門たちが揺らぎ始めていることを父親に伝えようとしているのだろうか・・・)
しかし、不安を感じているのはノバートだけだった。ナディアは笑顔を浮かべながらさらに声を張り上げた。
「アラゴンに飢饉が訪れたという話はご存知ですか?」
「ええ、気が進まないようでしたら、まずは本題を解決するところから始めましょう。倉庫に行くのはいかがですか?」
「・・・え?」
ノバートの目が驚きに揺れた。
ウィンターフェルの物資が保管されている倉庫にバラジット家の者を連れて行くだと?
驚くべきことはそれだけではなかった。
ナディアの手には装飾の施された鍵束がきらめいていたのだ。
「こ、これは・・・。」
「ああ、倉庫の鍵ですよ。私が管理しています。」
「え?」
家門の財産を・・・公爵の娘に任せるって?
目を疑いたくなるような驚きに言葉が詰まる。
しかし、彼女の言葉を遮る者は誰もいなかった。
彼は助けを求めるようにグレンを見つめた。
「こ、これは一体・・・。」
「私の妻は時間の無駄を嫌う性格なんだよ。少し唐突だけど、まず重要な部分から解決していこうか?」
やたらと意味深なことを言ってくる彼女の態度に、ノバートの立場からすると、納得しかねるところが多かったが、逆らう術も見当たらなかった。
例外的に一つだけ理解できない点があった。
「閣下、もっと侯爵夫人に関して・・・」
「私の妻がどうかした?」
「・・・。」
グレンだけでなく、他の人々も同じような反応を見せた。
何が問題なのかを問うような戸惑いの表情だった。
「あ、何でもありません・・・。」
支援を受ける立場で不満を口にする勇気は、彼にはなかった。
ノバートは結局、意を決して言葉を呑み込み、グレンを追いかけながらドアを閉めた。
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倉庫に向かう途中も会話は続いた。
「それにしても、君の家族のことを尋ねるのを忘れていたね。」
「はい、皆元気にしています。末娘が去年成人の儀式を終えました。」
「末娘の名前は・・・アラベラだったか?婚約の話は進んでいるのか?」
「まだです。末娘なので、なかなか相手を見つけられないようで、ははは。」
ノバートはグレンの左側に立ちながら歩き、彼の質問に忠実に答えていた。
一方、グレンは右側を見つめていた。
目の前に立っていたのは、当然のごとくナディアだった。
意識的に視線を外そうとしたが、どうしても彼女を見てしまうことを避けられなかった。
すれ違う使用人たちがナディアに対して非常に丁寧に挨拶をしていたためだ。