こんにちは、ピッコです。
「影の皇妃」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
フランツェ大公の頼みで熱病で死んだ彼の娘ベロニカの代わりになったエレナ。
皇妃として暮らしていたある日、死んだはずの娘が現れエレナは殺されてしまう。
そうして殺されたエレナはどういうわけか18歳の時の過去に戻っていた!
自分を陥れた大公家への復讐を誓い…
エレナ:主人公。熱病で死んだベロニカ公女の代わりとなった、新たな公女。
リアブリック:大公家の権力者の一人。影からエレナを操る。
フランツェ大公:ベロニカの父親。
クラディオス・シアン:皇太子。過去の世界でエレナと結婚した男性。
イアン:過去の世界でエレナは産んだ息子。
レン・バスタージュ:ベロニカの親戚。危険人物とみなされている。
フューレルバード:氷の騎士と呼ばれる。エレナの護衛。
ローレンツ卿:過去の世界でエレナの護衛騎士だった人物。
アヴェラ:ラインハルト家の長女。過去の世界で、皇太子妃の座を争った女性。
329話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 慌ただしいスケジュール④
馬車に乗り移動している間、エレナは一言も発さず窓の外を眺めていた。
風景が次々と移り変わる中で、エレナの目にはそれらがほとんど映らなかった。
「はあ。」
自然とため息が漏れた。
一日中、何とも言えない気分だ。
これまでの人生とは明らかに変わった現状で生きていながら、変わることのないカリフとケイトを見ると、ますます心が乱れていった。
「お姉さん。」
「うん?」
「お姉さんは、好きな人とかいないんですか?」
「どうして急にそんなこと聞くの?」
ルシアは頬をふくらませながら答えた。
「お姉さんは綺麗で知的じゃないですか。私が男だったら、お姉さんを見た瞬間に一目惚れしてますよ?でも、見てるといつも男の人を遠ざけてる気がします。」
「遠ざけてるわけじゃないの。ただ慎重なだけよ。」
傷が癒えたとはいえ、完全に吹っ切れるには時間がかかるものだ。
ルシアは理解できないという様子で、可愛らしく首を傾げながら笑う。
「どうして慎重になるんですか?男の人ってたくさん会ってみる方がいいって言われましたよ!そうしないと誰が運命の人か分からないって。」
「誰がそんなこと言ったの?」
「本で読んだんです!」
ささいな会話を交わしているうちに、馬車はノブレス通りに到着した。
大公家が没落し、皇室に所有権が移ったノブレス通りは、昼間にもかかわらず荒廃し、侘しい雰囲気が漂っていた。
サロンとバシリカが観光客に押されて競争力を失ったこともあり、ここに店を構えていた芸術家や商人たちが次々と去り、今やほとんど空き店舗ばかりになっていた。
「話は長くならないと思います。ここで待っていてください、卿。」
ふんわりと微笑むヒュレルバードが軽く頭を下げた。
「ルシアを見ていてください。」
「わかりました。」
「私、子どもじゃないですよ?一人でも大丈夫ですから。」
エレナは微笑みで返事をし、会議室へと足を踏み入れた。
ノブレス通りの処理を議題に、皇室から派遣された人物や貴族たちが一堂に会していた。
エレナが席に着き、間もなくして本格的な会議が始まる。
「確かに処理は厄介な問題です。処分したところで、その価値に見合う利益を生み出せるとは思えません。」
「他に活用する方法はないのでしょうか?」
皇室でもノブレス通りは厄介な存在だった。
潜在的な活用価値はあるように思えるが、実行可能な計画はまだ存在しなかった。
「方法が全くないわけではありません。」
「L様、何か良い案をお持ちですか?」
周囲の期待に満ちた視線を受けながら、エレナが口を開いた。
「ノブレス通りをホテルへと改築する提案です。」
「宿泊業を始めるつもりですか?」
「一つの案に過ぎませんが・・・。」
言葉を紡ぐのが難しく、一瞬ためらいの声が上がった。
しかし、エレナは自分の意見を曲げなかった。
「最近、首都を訪れる貴族の数が少なくありません。縁故があれば問題はありませんが、そうでない貴族はホテルに滞在せざるを得ません。その問題点は、貴族が求めるレベルに合う宿泊施設が全く不足していることです。」
「確かにそうですね。遠方から来る者たちが滞在先がなく、我々の家にまで頼ってきます。」
「私はノブレス通りをひとつのホテルに改築することを提案します。そのデザインは帝国建築の伝統と、タルク国の王族に相応しい格式を取り入れたものにするつもりです。これによって貴族たちに我々の地位と優雅さを示す良い方法になるでしょう。」
エレナは冷静に意見を述べた。
ホテルに改築することで、ノブレス通りの建築スタイルが新しい価値を得ると考えたのである。
食事を整え、王室の財政に大いに役立つ提案だ。
もはや無駄に資金を消費するだけの状態にはさせないという決意が込められている。
「サロンを訪れる訪問者の宿泊にも適した施設だ。」
このようなアイデアは、エレナがサロンを運営する中で直面した課題から生まれた。
サロンの名声が帝国内外に広まり、皇族や貴族の訪問者が後を絶たない中、首都の宿泊施設の不足は長年の問題となっていた。
エレナの提案を受けて会議が開かれた。
賛成と反対の意見が交錯し、互いに慎重な態度を取りながら議論が進んだ。
しかし、反対派は他に有力な代案を提示できないのが現状だった。
(廃墟をそのままにしておけばよかったのか?)
そんな疑問がよぎるが、エレナはその考えをすぐに振り払う。
(いや、道筋を示すのが正しい。)
エレナが直接手を下せば、物事は迅速に解決する可能性がある。
だが、その一方で恩恵を受ける人々にとって、彼女自身が直接関与することで予期しない影響が出る可能性も否定できなかった。
そこで彼女は、慎重な手続きを進めるために信頼できる人々を介しながら計画を進めるべきだと結論付けた。
それは無意味な話だ。
エレナはそのような噂に巻き込まれたくなかった。
それが理由で、不快な思いをしたが、このような不便さを受け入れた。
会議が終わると、宮殿で行われた集まりに参加していた人々は明るい顔で戻ってきた。
側にいた人々は満足そうに喜んでいる様子だ。
馬車に乗ったエレナは学術院へと向かう。
会議が長引いたこともあり、疲れる暇もなかった。