こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
66話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犯人は誰?⑦
漆黒の艶やかな髪、白玉のように滑らかな肌、豊かなまつ毛に包まれた宝石のように輝く紫の瞳。
「最も美しい皇女」との異名にふさわしいグレイス皇女の美貌は驚くべきものだった。
彼女の前に用意されたテーブルには料理が並べられていた。
アスパラガスとトマトが入ったサラダ、焼き鳥、揚げ物。
皇族の食事らしく、か弱い女性一人では到底食べきれないほどの量だった。
しかし、それには意味がなかった。
というのも、彼女は出された料理のごく一部しか口にせず、ほとんど手を付けないのが常だからだ。
グレイス皇女は無表情な顔でまずはグラスを手に取った。
黄色いレモンで作られたお茶を飲もうとして、グレイスの目が大きく見開かれる。
『これは・・・』
グラスの下に小さな紙片が隠されていたのだ。
グレイスはその紙を取り出し、開いた。
小さな紙には短い文章が書かれていた。
[宮廷の食事を密かに盗んで食べた本当の犯人を知っています。犯人のヒントは「花で作られた王冠」です。]
「・・・!」
グレイス皇女の顔が険しくなった。
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シアナは落ち着かない表情で、食材管理室に座っていた。
『そろそろ来る頃なんだけど・・・』
しばらくすると、険しい表情を浮かべた女性が現れる。
それはグレイス皇女の宮廷に仕える侍女、ビビだった。
ビビは顔をしかめながら言った。
「グレイス皇女様があなたに会いたいと仰っています。一体何をしでかしたのかは知りませんが。」
シアナは目を輝かせた。
『成功だ!』
今朝、グレイス皇女の宮殿でシアナが訪れたのは、第3厨房を管理している侍女だった。
その厨房で作られた料理を食べていたのは、他でもないグレイス皇女。
シアナはその侍女に、グレイス皇女が目にするよう小さなメモを仕込んでほしいと頼んだ。
当然ながら、侍女は警戒した。
一目で怪しげに見える頼みに巻き込まれたくなかったからだ。
しかし、侍女はシアナを拒むことができなかった。
ジャンヌの事件のせいで、シアナの目を気にせざるを得ない状況だったからだ。
【オホホ、誰の頼みだと思ってるの?もちろん受け取るわよ!】
侍女はぎこちない笑みを浮かべながら、シアナから渡されたメモを受け取った。
こうして頼み事は成功したようだった。
シアナはビビの後に続き、グレイス皇女の宮殿に向かった。
部屋の前でビビが言った。
「皇女様、侍女シアナが到着いたしました。」
部屋の中から冷静な声が聞こえた。
「入れ。」
シアナは扉を開ける。
華やかな花で飾られた部屋の中には、花よりも美しい女性が座っていた。
グレイス皇女だ。
皇女に近づいたシアナは、腰を低くした。
「尊敬する皇女様にご挨拶申し上げます。侍女のシアナでございます。」
「・・・」
グレイス皇女は、シアナの挨拶にすぐには答えなかった。
シアナは頭を下げたまま、黙って返答を待つ。
皇族に挨拶をした後には、返答を聞いてから頭を上げるのが宮廷の礼儀だった。
どれほどの時間が過ぎただろうか。
グレイス皇女が口を開いた。
「あなたが送ったメモを読んだわ。私の宮殿にいた泥棒はチュチュではなく、別の人間だと書いてあったわね。」
それを聞いたシアナは頭を上げ、グレイス皇女と視線を交わしながら答えた。
「はい、その通りです。」
「あなたの宮のことでもないのに、こんなメモまで見せるなんて。あなたの状況が気になって、ここに呼びました。」
グレイス皇女は視線を下ろしながら尋ねる。
「話してごらんなさい。本当の犯人は誰なのか?」
シアナは両手を組み、謹んだ態度で答えた。
「グレイス皇女様でございます。」
「・・・!」
グレイス皇女の美しい顔が一瞬固まる。
しかし、彼女は動揺を見せず、声を荒げることもなかった。
グレイス皇女は眉をひそめ、笑いながら言った。
「面白いことを言うわね。チュチュがあなたの親しい友人だという話は聞いているわ。それで彼女の味方になりたくて仕方がなかったんでしょう。でも、こんなことをしては困るわ。軽率にも皇女を罪に陥れようとするなんて。」
「・・・」
「どんなに小さく愛らしい侍女でも、皇女を侮辱した罪は重いわ。命を失うことになるかもしれない。」
グレイス皇女の声は、小鳥のさえずりのように静かだった。
しかし、その中には抑えきれない怒りが静かに燃えているのが見えた。
シアナは皇女の怒りを敏感に感じ取り、慎重に答えた。
「謀反ではありません。皇女様が最もよくご存知のはずです。」
「いいえ。私には、あなたが何を言っているのかまったく分かりません。」
グレイス皇女の表情は、まるで何も知らない無垢な顔のように澄んでいた。
それはシアナが予想していた通りだ。
グレイス皇女が宮殿の食料を盗み食いしていたという証拠は一つもなかった。
容疑をかけられたのはチュチュの証言だけで、他には何もなかった。
それどころか、チュチュ自身もその事実を誰かに話すつもりはなかった。
『もしチュチュが気を変えて、皇女様が犯人だと言ったところで、誰も信じてくれないだろう。』
それでも、グレイス皇女は自身が疑われる可能性を完全に排除しようとしていた。
そこでシアナは、グレイス皇女を説得するために準備した言葉を口にし始めた。
「数日前、調査を行っていた際に、皇女様をお世話する侍女たちから話を伺いました。」
「・・・」
「皇女様は普段、極めて少量の食事しか召し上がらないとか。」
「・・・それが?」
貴族や皇族の中には、華奢な体型を維持するために食事の量を制限することが多い。
しかし、それを考慮しても、グレイス皇女が摂る食事量はあまりにも少なかった。
普通の人間であれば栄養失調で倒れてしまうほどだ。
だが、グレイス皇女は倒れたことが一度もない。
体重もこれ以上減ることがなかった。
まるで、他の場所で食べ物を摂取しているかのように。
この言葉にグレイス皇女は言葉を失ったようだった。
「まあまあ、聞いてるだけで恥ずかしくなるような弱々しい理屈ね。」
グレイス皇女は腕をそっと差し出した。
その腕は子供のように細かった。
「あなたの言う通り、私があれほどの食べ物を全部食べた犯人だというなら、どうしてこんな体でいられると思う?本当に豚みたいに太るはずでしょ?」
しかし、シアナはこの現象を説明できる知識を持っていた。
「貴族や皇族の中には、華奢な体型を維持するために極端な方法を選ぶ方がいらっしゃいます。」
「・・・!」
グレイス皇女が眉をひそめた。
「いくつか方法がありますが、そのうちの一つは食べ物を摂取して・・・」
シアナは言葉を止めて、自らの指を口元に持っていく仕草を見せた。
「このように吐き出すのです。」
「・・・!」
「この方法を使えば、どんな食べ物を食べても絶対に体重が増えることはありません。」
穏やかだったグレイス皇女の瞳に混乱が宿る。
まるで急所を突かれたかのようだった。
シアナが続けて話した。
「ですが、それは正常な方法ではありません。身体に負担をかけますから。」
「・・・」
「繰り返される嘔吐で喉が傷つき、食べ物を飲み込むだけでも痛みを伴い、吐き気の残りが口内にとどまり歯が溶けます。・・・さらに恐ろしいのは、精神が次第に蝕まれていくことです。」
「・・・!」
「少しでも食べれば太るのではないかという恐怖心から嘔吐を繰り返します。その瞬間は喜びを感じますが、その後は空腹に苦しみ、一日中食べ物のことだけを考えるようになります。そしてある瞬間、理性を失い食べ過ぎてしまい、またそれを吐き出します。それが延々と繰り返されることで、正常な精神を保つことができなくなるのです。」
それを知るはずがなかった。
グレイス皇女の顔からは赤子のような平静な表情が完全に消えていた。
グレイス皇女は震える声で尋ねた。
「・・・あなたがどうしてそんなことを知っているの?」
「私が経験したからです。」
「・・・!」
「だからこそ、私は同じ経験をした人を助けることができます。その地獄から抜け出した経験があるからです。」
シアナはグレイス皇女の前にひざまずいた。
「もう一度お願い申し上げます。皇女様、ご自身が罪人ではないことを明らかにしなくても構いません。ただ、その無実のチュチュを解放してください。」
「・・・」
「ご承諾いただければ、私にできることは何でもいたします。」
それは哀願ではなかった。
むやみな要求でもなかった。
これは取引だった。
「あなたを助ける方法を教える代わりに、私の要求を聞いてほしい。」
グレイス皇女はすぐには答えず、シアナをじっと見つめた。
その表情には複雑な思いが浮かんでいた。