こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

102話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戦場へ②
その後も私は考えに沈んでいた。
ルーン様と別れた後、私は自分が死んでしまうのではないかと思った。
正確には死ぬわけではないが、だからといって残りの人生でルーン様を忘れることができるだろうか?
それはきっと永遠に不可能なことだろう。
アルセンの話を聞いたとき、私はただ単純にルディオンに乗って飛び、情報を伝えれば済む話だと考えていた。
しかし、ハイネン様の言葉は正しかった。
彼の言葉通り、ルン様の力があるのなら、お兄様を助け、戦争を早く終結させることができるかもしれない。
そして、私が長年願ってきたこと──つまり復讐を果たすことも、可能になるかもしれない。
そして……
『会いたい。』
私は微笑んだ。
ルーン様に会いたかった。
それだけが、私の心の底からの願い。
私は護衛の騎士と侍女たちを連れて再び部屋へ戻った。
夜は更けていくが、どうしても眠ることができなかった。
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翌朝、皇宮は夜明けから騒がしかった。
数十年ぶりに、神官たちに新たな神託が下されたからだ。
大司教に届けられたその神託は、すぐさま皇宮にも伝えられ、皇宮会議が開かれた。
神託の内容はこうだった。
『アイシャ聖女を、一切の遅れもなく戦場へ送り、勝利の女神とせよ。』
本来、信託は曖昧な場合が多かったが、今回の信託は違った。
ハイネン様は解釈に時間をかける余裕を減らすために、こうして明確な信託を下されたのだろう。
私にとっては都合の良いことだったが、信託を受けた両親にとってはそうではなかった。
両親はどうにかして信託から逃れる方法を探そうとした。
しかし、いくら帝国で最も尊敬される人物であろうと、信託に背くことは不可能だった。
それは神の意志に正面から逆らう行為だからだ。
我が帝国のように国教が存在する国で、ましてや数十年ぶりに下された信託ともなればなおさらだった。
結局、朝から終わりの見えない会議を続けていた両親は私を呼ばざるを得なかった。
こうして早く結論が出たのは、おそらく「一瞬の迷いもない」という言葉のおかげだったのだろう。
母と父は、私をじっと見つめるばかりだった。
「アイシャ……」
母は言葉を続けられなかった。
「なぜ……どうしてお前が……」
「アイシャ、お前が望まないなら、この神託を拒否し、行かずに済むようにしてくれ。」
父は私の手をしっかりと握りしめながら言った。
「お前はこれまで十分に聖女としての役目を果たしてきたではないか。たとえ神の意志であろうとも、お前にこれ以上のことを求めるのは酷だ。ましてや、危険な戦場へ向かうなど……。」
母と父の瞳には、計り知れない葛藤と憂慮、愛、そして不安が宿っていた。
その気持ちを理解しないわけではない。
私もまた、イシスお兄様が戦場へ行くことをどれほど悲しんだことか……。
しかし、私は固く決意していた。
両親の心を痛めることになったとしても、私はこの戦争に行かなければならなかった。自らの意志で。
「心配しないでください。」
「……でも……」
「大丈夫です。」
私は精一杯、笑顔を作ろうとした。
「信託でおっしゃったでしょう?『勝利の女神』になれと。」
「……アイシャ……。」
「神様が私を見守ってくださるはずです。だからこそ、このような信託を下されたのだと、私は信じています。」
私の言葉に、母はついに涙を流した。
私は母をしっかりと抱きしめながら、ルディオンに乗って北へ飛び立つと伝えた。
父は私のために護衛の騎士たちを選んでくださった。
しかし、私はただ静かに頭を下げた。
私が自由に動くためには、むしろ護衛騎士たちがいない方が好都合だから。
両親との話を終えた後、私はすぐに戦場へ向かう準備を整えた。
時間を無駄にするつもりはなかったが、それでも二人を安心させることができないまま離れるのは、胸が張り裂けそうなほど辛かった。
ただ、神託がもたらした幸運もあった。
皇宮と神殿が正式に神託を発表すると、エルミールの人々の士気が驚くほど高まったのだ。
神託が民衆に告げられてからすでに数時間が経過していたが、都の人々は今もなお街中で私の名前を唱え続けていると聞いた。
私は戦場で勝利の女神となるのだ——。
まるで、誰も疑いの目を向けることさえしないような雰囲気だった。
それもそのはず、数十年ぶりに下された信託であり、しかもそれを受けたのが成人した皇女である私なのだから。
人々が私に期待を寄せるのも当然だった。
私は急いで準備を終え、皇宮の庭へと出た。
耳を澄ませば、この場所では、皇宮の外の人々の声さえ聞こえてきそうなほどだった。
—なんとも壮大な歓迎だな。
ビロードの袋に入れた通信用具から、アルセンの低い声が囁くように響いた。
私はその袋を大切に抱えた。
アルセンが言うには、この通信用具には防護魔法がかけられているため、簡単には壊れたり損なわれたりすることはないとのことだったが、念のためだった。
彼にはすでに、私が戦場へ単身で向かうことは伝えてあった。
だが、信託を受けたことまでは、まだ言っていなかった。
いよいよ出発の時が来た。
ルディオンに乗り、大空へ飛び立つ前に、私はエルミール皇宮を見上げた。
広がる青空は、どこまでも澄み渡り、美しく輝いていた。
しかし、それがかえって緊張を募らせた。
私は、これからあの地へ向かうのだ。
イシスお兄様がいる、あの戦場へ。
『……きっと、うまくやれる。』
そう心の中で自分を励ましながら、私は静かに視線を落とした。
庭園の前には、私を見送るために集まった人々がいた。
侍女長のユモ、宮殿の侍女たち、従者たち、そして——母と父。
「そんなに心配しないでください。」
私は彼らを安心させようと、明るく微笑んだ。
しかし、母の微笑みには、隠しきれない不安が滲んでいた。
「……光の神が、きっと私を見守ってくださるはずです。」
どうかこの決断が誤ったものではないことを願うばかりだった。
『いいえ、信じよう』
私の決断を。
私はルディオンの背にまたがり、大きく深呼吸をした。
そして、標識も目印もない青空へと飛び立った。
風が吹き、私の銀色の髪をやさしくなびかせた。








