こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

101話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 始まりと終わり②
不満を滲ませた視線をまっすぐ向けながら、国王はアスラン公爵をじっと睨みつけた。
沈黙が重くのしかかる。
まっすぐ玉座の前に近づく足音が、妙に不吉に響いた。
無意識にぴくりと身を震わせた国王は、すぐさま自らの反応を恥じ、さらに冷ややかに背を正した。
タッ。
ついに、壇上の目前まで近づいた公爵が足を止めた。
「ふん!そうか。いくら取り巻きたちが持ち上げたとしても、公爵、お前の立場はそこだ! 私を見上げるのが臣下のあるべき姿だ。」
壇上による視線の高低差が気に入った。
おそらく、宴会に遅れた理由を弁明しに来たのだろうと考えた国王は、公爵の挨拶を受ける代わりに、すぐさま冷たい言葉を投げつける。
「公爵!なんという無礼か!陛下が主催する宴会に遅れるとは、これはすなわち陛下を軽んじるということ—」
「黙れ。」
格式ばった礼儀とはまるで異なり、少し苛立った様子で言葉を紡ぐ公爵の声に、国王は思わず口を開けたまま固まった。
宴の席での些細な無礼には目を瞑るつもりでいたが、ここまで大胆に礼儀を無視するとは思っていなかったからだ。
「な、何を言っているのだ?」
異例の事態に戸惑いを隠せず、国王は言葉を詰まらせた。
この身分である限り、何をしようと誰も彼を咎めることなどできなかった。
誰も彼にこうした態度を取ったことはなかったのだ。
それゆえ、まっすぐに見つめる公爵の黄金色の瞳が一切の感情を含まず、ただ静かに揺るがないことが余計に不気味に感じられた。
『何だ、何なんだ……?この男、何かが違う……』
これまで、彼に対して公然と逆らう者はいなかった。
もちろん、強引で忠誠心のない者たちは、今は押さえつけられているが、そういった不忠者たちを排除する前に——
彼らが私の言葉に反対し、「こうしなければならない」「それではだめだ」と主君に向かって声を荒げるとき、そんな連中の目には激情が宿っていた。
しかし、そうやって感情をむき出しにする者たちと、目の前の公爵はまるで違っていた。
憤り、悔しさ、挫折感といったあらゆる感情。
「あなたが国王ならば」と、何かを期待して自分を見上げる臣下たちの切実な視線とは異なり——
『この目は、路上の石ころを見るのと変わらないではないか!』
青ざめた自分は、彼らの不忠を今さらながら悟った!
内心焦りながらも、なんとか本能的な危機感を抑え込もうとした国王は、ゆっくりと口を開いた。
「今、それが宴の主催者に対する礼儀か?無礼な上に…今日は挨拶もしたくない、下がれ!」
明らかに一歩引かせるような言葉だった。
どうも、この男と対峙するたびに嫌な予感しかしない。
だが、それを怖れとは認めたくなく、強引に振り払おうとしたのだった。
公爵が退かなければ、自分の機嫌が悪くなると言わんばかりに、国王は自ら席を立ち、場を離れることも考えていた。
しかし、その時だった。
「私は宴の主人ではなく、この国の国王を見るために来ました。」
「な、何だと?」
国王の「陛下」という言葉はどこへ消えたのか。
「なんと無礼な奴め…!」
そう内心毒づきながらも、国王は思わず席を蹴って立ち上がった。
「フン、公爵は礼儀作法を学び直すべきだな。私にはふさわしくない場だ、これで—」
「ストーム領地。」
たびたび体を震わせる不吉な予感に、慌てて席を立とうとした国王を引き留めたのは、公爵が発したたった一言。
「まったく、公爵閣下らしいですね。」
「まっすぐ面前に問題を投げつけるとは。」
「その噂のせいで、わざと遅れていらしたのですか?問題の深刻さを示すために?」
「果たして……!これは、公爵閣下の言葉にどんな返答が返ってくるか、楽しみですね。」
いつの間にか、宴の視線はすべて一点に集まっていた。
貴族たちのひそひそ話ははっきりとは聞こえなかったが、揶揄するような表情だけで、おおよその内容は察することができた。
宴のあちこちでささやかれる噂を感じながら、国王は唇を噛んだ。
「最悪だ!」
荒々しく再び身を翻し、公爵を睨みつけた国王は、歯を食いしばりながら言った。
「今すぐそのくだらない噂話を、私の前から消し去れ!」
「それはただの噂に過ぎませんか?」
本当に?
そう問いただすような黄金の瞳から放たれる圧迫感が、まるで体を押しつぶすかのようにのしかかる。
国王は一瞬、口を引き結んだ。
「ちょっと待て!公爵、それは陛下に対する無礼ではないのか?」
顔をこわばらせた国王の表情を見て、第二王妃は柔らかな笑みを浮かべながら話し始めた。
「陛下も、そんな不穏な噂のせいでどれほどお悩みになられていることでしょう。陛下のご心労を取り除くこともできぬまま、こんな場でこのような話を持ち出すとは。」
彼女はほんのりと涙をたたえ、伏し目がちに見せた憂いの表情が、まるで演技のように会場を包み込んだ。
「本日の宴は、ちょうど社交界に足を踏み入れた若き貴族やご令嬢のための儀式、そして彼らのための場でもあります。美しい物語が交わされる、社交の季節なのです。もしかするとここで結婚という新たな始まりの種を蒔いた者たちにとっては、本当に人生の大きな意味を持つ……。」
公爵の登場がなくても、すでに宴会場はにぎやかな歓談の場ではなく、ひそひそとした噂話が飛び交う沈んだ雰囲気だった。
そんな現実にはまるで目もくれず、第二王妃はまるで若い貴族たちが心を砕くべき話題の盛り上がりを気にする優しい王妃のように、微笑ましい表情を浮かべた。
「それにもかかわらず、こんな素晴らしい場を、くだらない噂話で台無しにしてしまっていいのですか?」
「……。」
公爵の片方の眉がぴくりと上がった。
「くだらなくなどない。」
夫婦は一心同体だと、普段からどのような考えを持っているのかをよく見せつけるのが彼らのやり方だった。
多くの王国民に関わる問題を、彼らがどのように捉えているのかを再確認した公爵は、何のためらいもなく口を開いた。
「王国民の命に関わることが、些細なことなどであるはずがありません。」
「ふふ……。では、公爵がここにいるのも……結局は社交界の儀式を楽しむためではないのですか?」
噂だ何だと言いながら、結局あなたもそれよりも貴族の儀式を重要視しているからここに来たのでしょう。
言葉に棘を含ませる第二王妃は、ふとヒルク公爵の後ろにいたアスラン嬢を見つめ、わざと柔らかい口調で言った。
「令嬢もここにいらっしゃるのですね。初めてのデビューの喜びを心ゆくまで堪能できるようにしてあげないと。」
『……突然、私?』
ベアティの目が大きく見開かれた。
公爵の娘をぴたりと見つめる第二王妃は、意図を隠しきれない影のある笑みを浮かべながら言った。
「まあ、こんなに可愛らしく美しいお嬢様を見ていると、私の社交界デビューの日を思い出しますわ。」
第二王妃は、自分なりに最高の賛辞を送ったつもりだったが、アスランにはまったく通じなかった。
外見上はどこかへ行ったり来たりするような落ち着きのなさを感じたカリーの表情がこわばった。
否定的な反応には気づかなかった第二王妃は、ベアティに恩恵を施すかのように優しく語りかけた。
「その年頃なら、いろいろな貴族たちと踊るのが楽しいものよ。それで、夢のように素敵な未来の旦那様と出会えるかもしれないわ。」
その言葉に、すでにあまり気分の良くなかった使節たちの機嫌が完全に底を突いた。
「あら、どうかしら?初めてのダンスを私たちのリテルと一緒に踊ってみたら?」
「今、私は。」
それ以上聞く気もなく、第二王妃の言葉をぴしゃりと遮り、公爵が口を開いた。
「私は宴に参加しに来たのではなく、国王に会いに来たのです。」
「ふむ……。」
「お答えください、国王。」
わずかな敬意すら期待するなと言わんばかりに、無礼とも言える態度をとった公爵は、国王をまっすぐ見つめながら言った。
国王は黄金の威圧感に思わず息を呑んだ。
「我々の王国民を売り払うとき、一体何を考えていたのですか?」
その言葉は、まるで猛獣が吠えるように耳元で響いた。
「な、何を言うのだ!余がそのような馬鹿げたことをするわけが……。」
本能的な恐怖に肩を震わせながら、国王は意識的に痩せ細った体を奮い立たせ、動揺を隠そうとした。
しかし、公爵の毅然とした表情を目の当たりにした瞬間、何かを思い出した国王は、怒りに満ちた黄色い目を大きく見開き、声を荒げた。
「黙れ!余計な口を叩く臣下どもの噂話に惑わされるな!それで……今、証拠もなしに無理やり罪を着せるつもりか!」
「そうか。このように言葉を投げかけて、私の反応を観察しているのではないか。」
何も持っていない公爵の空いた手を見つめながら、国王は徹底的に自分に有利になるように頭を回転させた。
「このような状況を作り出せば、わずかでも証拠を得られると思ったのかもしれないが……甘い!私がそんなに簡単に動揺するとでも思ったのか!」
心の中で公爵を見下しながら、得意げに微笑んだ国王の唇がわずかに持ち上がった。
その表情が時に似つかわしくなく浮かび上がるのを見つめていたベアティは、扉の方へと手を伸ばした。
小さな足取りで数歩進み、父の隣に立ったベアティが、小箱を掲げた。
「証拠をお探しですか?」
「は? 今どこで余が話していると——」
ただ大きな体格が目に入った瞬間、それまで威厳を取り戻そうと怒鳴っていた国王の声は自然としぼんだ。
ベアティに向けた声が大きくなった途端、国王を見つめる公爵の目に殺気が宿ったからだ。
思わず首をすくめた国王の耳に、冷たく響く声が届いた。
「お探しの証拠を、今すぐお見せいたします!」
ギイィィ——
わずかに開いていた宴会場の巨大な扉が、勢いよく開かれた。
ベアティの視線の合図を受け、「証拠」を持ってくるために動いたカリーが、奇妙な表情を浮かべた男を引き連れて入ってきた。
『あ、あいつは……!』
その瞬間、国王の瞳孔が大きく揺らいだ。
その動揺を見逃さなかったベアティは、国王の口元を観察しながら口を開く。
「見覚えのある顔ですね?」
「……ふむ。さまざまな国政を処理するのに忙しく、すべての臣民の顔を覚えている余裕はないのだ。」
国王はわざと疑わしげに言葉を濁しながら、視線をそらした。
しかし、それはベアティにはまったく通じなかった。
宴会場の全員にしっかりと聞こえるように、ベアティは声を大きくして言った。
「王室の臣下であり、国王に代わりストゥム領地に派遣された管理人、ガステ・ナムザクです。」
『あの噂のストゥム領地!その管理人であるなら……噂の真相についても知っているはず。』
『果たして、アスラン家は彼を通じて確かな情報を得ていたのか?』
ベアティが明かした男の正体に、宴会場の貴族たちはざわめき、視線を集めた。
証拠を見せると言って連れてこられた男。
この「生きた証拠」の意味を、ベアティはすぐに理解した。
『公爵閣下があの者を追い詰めるだけの確信があったということね。すでにすべてが明らかになっているのよ。それでも相手は国王陛下。これからどうなるのかしら……。』









