こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

104話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戦場へ④
そんなことを考えながら歩いていると、私はある天幕の前で足を止めた。
そこは医務官たちが詰める治療所だ。
中では、医務官が負傷した兵士たちに薬を塗り、包帯を巻いていた。
私はただ、その光景を静かに見つめた。
今回の戦には、何人かの神官たちも志願して加わったと聞いている。
しかし、それでも負傷者の数は減ることなく、治療所は常に満員のようだった。
どれほどの神聖力を持つ者でも、傷ついた兵を癒せる範囲には限界がある。
さらに、この幕舎の雰囲気は想像以上に重苦しかった。
おそらく、いまだ厳しい冬の寒さが影響しているのだろう。
冬は薬草の確保が難しく、加えて水すら不足しがちだ。
「まだ足りないからだ。」
彼らを助けたかった。
私は天幕へと向かった。
私の存在に気づいた役人が、驚いた表情で私を見つめた。
「こ、皇女殿下?」
「助けます。」
私はルーを召喚した。
空中に明るい光が広がり、その中からルーが飛び出してきた。
「ご主人様!お久しぶりです!」
ルーは召喚されるとすぐに、私の顔に飛びついた。
久しぶりに見るルーの姿がとても嬉しかった。
「私も、また会えてとても嬉しいよ。」
私はルーの毛並みを撫でた。
するとルーは嬉しそうに「へへっ」と笑った。
『本物のルーを召喚できたらよかったのに。』
再びルーン様のことを思い出すのが怖くて少し戸惑ったが、ルーは私の長年の友人だった。
ルーの顔を見た瞬間、数ヶ月もの間、彼とまともに会えなかった日々がまるで霧のように儚く感じられた。
私は手のひらに伝わるルーの温もりをそっと握りしめた。
彼はただにこにこと笑っているだけだった。
私は彼に頼んだ。
「ルー、あの兵士を治療してくれる?」
「はい!」
ルーはふわりと飛び、傷ついた兵士のそばへ降り立った。
刃物で切られた傷に黄金色の輝きが落ちると、その傷が少しずつ癒えていくのが目に見えた。
私は、そんなルーの姿を一瞬たりとも目を離さず見つめ続けた。
どれほどの時間が過ぎたのだろう。
兵士の傷がゆっくりと塞がっていくのを確認したところで、私はルーを呼び戻した。
「ルー、戻っておいで。」
本当は、すべての傷を癒してあげたかった。
だが、負傷者はあまりにも多く、一人ひとりに対応している時間はなかった。
他のことに気を取られる余裕はなかった。
この程度の止血と縫合が終われば、今後傷が治るのに大きな問題はないだろう。
私は医務官に尋ねた。
「ここの患者たちを助けたいのですが、よろしいでしょうか?」
戸惑っていた医務官の顔が明るくなった。
「あ、も、もちろんです!これ以上ないほどの光栄です!」
私が治療した兵士が、信じられないといった様子で自分の傷を見つめ、私に深々とお辞儀をした。
「か、感謝します!皇女殿下!!ありがとうございます、うう……!」
「まだ完治していないので、無理に動かないでくださいね。」
私は彼を優しく諭して立ち上がった。
その後、私は医務官とともに治療を続けた。
今日は戦闘がなかったせいか、幸いにも重傷を負った者はいなかった。
私は絶え間なく働き続けた。
冬だというのに、汗が流れるほどだ。
髪をざっと束ね、袖をまくったまま、患者の治療に集中していた。
どれほどの時間が経ったのだろうか?無心で作業を続けていたその時——
「アイシャ皇女殿下!」
突然、誰かが私の名前を呼んだ。
驚いて振り向くと、そこには濃紺のフード付きマントをまとった人物が立っていた。
ついさっきまで見回りの兵士はいなかったはずなのに……。
「誰……?」
私は思わず眉をひそめた。
その声にはどこか聞き覚えがあったが、フードのせいで顔を確認することができなかった。
しかし次の瞬間——彼は静かにフードを下ろした。
最初に目に入ったのは、ひときわ長く伸びた赤い髪。
その鮮烈な色は一瞬で視界に飛び込んできた。
私は驚きと戸惑いが入り混じったまま叫んだ。
「ビオン公子!」
「……殿下!」
彼はその特徴的な青い瞳で、驚きと戸惑いを隠せないまま私を見つめていた。
ビオン公子がベルモア公爵とともに戦争に参加しているという話は何度か耳にしていたが、まさかこんな場所で遭遇するとは思わなかった。
私はあまりの驚きに言葉を失った。
しばらく唖然としていた彼が、ようやく口を開いた。
「……皇女殿下がいらしたと、イシス総司令官殿から先ほど聞きました。」
「ええ。」
私は苦笑しながら応えた。
「お兄様はまだ私のことで心配されているのでしょうね?」
「……戦場は危険ですから、仕方がありません。イシス総司令官殿のお言葉通り、ここでは何が起きるかわかりません。お戻りになるのがよろしいかと存じます。」
「そのつもりはありません。」
私の短い返答に、公爵はしばらく沈黙した。
無表情ではあったが、長年彼を見てきた経験から、彼が困惑していることはすぐに察することができた。
「……皇女殿下。」
そして、ようやく彼が重い口を開いたが——
「同じことを言うなら、もう聞きません。」
私は彼の言葉を遮った。
彼は言葉を失い、口をぱくぱくとさせた後、ようやく意を決したように口を開いた。
「それでは、せめて私が皇女殿下の幕舎へご案内いたします。遅い時間ですし、一日中飛び回っておられたでしょうから、休息が必要です。」
私は朝に到着したはずなのに、すでに遅い午後になっていた。
その言葉を聞いた途端、忘れていた疲労が一気に押し寄せてきた。
「……そろそろ行きますね。」
医務官に挨拶をすると、彼は何度も深くお辞儀をした。
「ありがとうございます、皇女殿下!」
私は天幕を出て、ビオンとともに陣営の中を歩いた。
ビオンは慎重に尋ねた。
「現在、総司令官殿は会議中です。食事は恐らく一人で取られることになるでしょう。」
「問題ありません。」
私は子供ではないのだから、一人で食事をするくらい何でもない。
それよりも、彼の言葉の中に気になることがあった。
「……とてもお忙しいのですか?」
私は慎重にお兄様について尋ねると、彼は静かに顎を引いた。
「数日後の攻城戦に備えて、新たな戦略を練っておられます。私もすぐに戻らなければなりません。」
私は拳をぎゅっと握った。
ビオンは直接言葉にはしなかったが、お兄様が私の提供した情報を活用して、新たな戦略を立てていることは明白だ。
ビオンは私を幕舎の前まで送り届けてくれた。
私は彼に挨拶をし、幕舎の中へと入った。
もともと兵士たちのための幕舎だったこの場所は、戦場にあるとは思えないほど清潔で、快適な空間だった。片隅には簡素な寝台が置かれ、広くはなかったが、必要なものは十分に揃っていた。
私は静かに寝台へと歩み寄り、そっと身を横たえた。
疲れていたが、眠気はなかなか訪れなかった。
イシスお兄様も、ビオン公子も、私に休むように言っていた。
首都の皇城にいる両親の顔、私を心配していた多くの人々のことが頭をよぎった。
しかし……
『戻ることはできない。』
もう後戻りはできなかった。
ベッドにじっと座っていた私は、静かに立ち上がった。
この場所へ来ると決めた瞬間から、この運命はすでに定められていたのかもしれない。
たとえ寿命を削ることになっても、私はルーン様を召喚したかった。
召喚しなければならなかった。
『……ハイネン様に頼もう。』
私は祈るように両手を組み、ハイネン様の名を何度も呼んだ。
彼は精霊界から私を見守っていると言っていた。
だから、こうすれば届くような気がした。
私の直感は間違っていなかった。
そっと目を開けると、私を静かに見つめる青緑色の瞳と目が合った。
その姿を見た瞬間、喉がかすかに震えたのを感じた。
私は決意したものの、心の奥底には重苦しさが残っていた。
「……ハイネン様。」
「心は決まったか?」
私は静かにうなずいた。
そして彼に尋ねた。
「”精霊王を召喚する方法”を。」









