こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

84話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戻ってきた日常③
ティーテーブルで向かい合って座ったものの、アリスとグレイスはそれぞれ似たような考えを抱いていた。
『お茶を一杯飲ませて、すぐに送り返すべきよね。』
『お茶を一杯飲んだら、すぐ帰らせるべきだわ。』
しかし、グレイスが特に深く考えることなく放った一言で会話が続いた。
「まだ婚約者がいないのね?」
その言葉に、アリスは眉をひそめた。
グレイスが余計な小言を言い始めるのだろうと考えたからだ。
「王女なら一刻も早く相手を見つけなさいだとか、家門にとって役に立つ男性を見つけなさいだとか、そんな話よ。」
しかし、グレイスが続けた言葉は予想外の内容だった。
「羨ましいわ。できるだけ婚約は遅い方がいいし、できればしない方がもっといい。」
予想外の展開に、アリスは目を見開いた。
グレイスはクッキーを口に運びながらさらに続けた。
「婚約なんてしても、良いことなんて一つもないわ。特に若いころの婚約は最悪よ。」
「……どうしてですか?」
「年をとると、相手が若かった頃とは全く違って見えるのよ。昔は童話に出てくる王子様みたいに素敵だったけど、今は大きなイカみたいに見えるだけ。はぁ、こんなことになると分かってたら、婚約なんてしなかったのに。」
アリスは集会で何度か見かけたグレイスの姿を思い出した。
彼女はいつも婚約者にぴったりと寄り添っていた。
でも今になって婚約を後悔するとは。
『それに外見もすっかり変わって。』
アリスは初めて姉に対する疑問を抱いた。
「婚約者と何かあったんですか?」
「決定的に何かがあったわけじゃないけど、つまらないのよ。ずっと自分だけを見て、いろいろと面倒なことばかり要求してくるの。」
「……」
「王女たるもの、常に自分をきちんと管理して、美しい外見を維持しなければならないのよ。」
アリスがグレイスの言葉を受けて続けた。
「王女はレースが付いたひらひらのドレスを着て、声は鳥のように優雅で穏やかでなければいけません。」
今度はグレイスの番だった。
「王女はどんな瞬間でも優雅で上品に振る舞わなければならない。絶対に叫んだり、不適切な言葉を口にしてはいけない。」
「王女は百編の教養ある詩を暗唱でき、刺繍にも長けていなければならない。」
それは礼法書に書かれている王女の行動規範だった。
何度かやり取りを交わした後、二人は同時に声を上げた。
「そんなに言うなら、自分たちでやってみればいいじゃない!」
少し離れたところで二人を見ていたチュチュが肩をすくめ、シアナに小声で言った。
「思ったより二人とも話がよく合うみたいだね。」
シアナは笑いながら答えた。
「お二人とも王女ですから、共感できることが多いのでしょう。」
そんな時、ルビー宮に2番目の客人が訪れた。
アンジェリナ皇妃とレイシスだった。
長い間閑散としていたルビー宮に人々が戻ってきたと聞き、訪ねてきたのだ。
アンジェリナ皇妃はグレイスを見るなり、厳しい表情を浮かべた。
「先客がいらっしゃるのですね。私は次の機会に伺うことにします。」
アンジェリナはグレイスと親しい間柄ではなかった。
さらに、レイシスも同席していることで気まずい場を作りたくなかったのだが……。
「なぜ私をそんな風に見ているのです?」
グレイスは視線を向けてくる、目を輝かせたレイシスを見ながらそう言った。
アンジェリナが当惑した顔で答えた。
「レイシスが王女を描きたいようです。」
「……!」
その言葉に、グレイスは目を大きく見開いた。
ラシードの肖像画が公開された後、皇族や貴族たちの間でレイシスは有名人となった。
幼い天才画家として。
レイシスの絵にすっかり魅了された者たちの中には、彼女に自分の肖像画を描いて欲しいと頼む者も少なくない。
しかし、どれほど高額の金額を提示されても、レイシスは注文を一切受け付けなかった。
『私の目に映る輝いて美しいものだけを描くからです。』
それを知るグレイスの目が輝いた。
「私が美しいと言うのね。」
こうして短く切った髪で、化粧もせず、シンプルなドレスをまとい、手にはクッキーを持っているだけの姿で。
グレイスは愉快そうに笑いながら叫んだ。
「さあ、一度やってみて。私をどれほど美しく表現できるか見せてちょうだい。」
腕を組んだグレイスは、自信に満ちた顔でレイシスを見つめた。
グレイスが了承したことを察したレイシスは、目を輝かせながらペンを取り出した。
「わあ、兄様が絵を描くのを久しぶりに見るわ。」
アリスはやや困惑した表情でレイシスの背後に立ち、状況に備える準備をした。
突然の展開に驚いて目を見開いていたアンジェリナは、シアナに向かってささやいた。
「これ、どこかでよく見る光景じゃない?」
アリスも、ラシードも、そしてレイシスを初めて見たときも、同じようなリアクションをしていた。
それを思い出したシアナは笑いながら答えた。
「皇室の伝統のようですね。」
アンジェリナはその言葉を理解できず、さらに驚いた表情を浮かべた。







