こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

95話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 家族会議⑦
どちらもとても綺麗なドレスだった。
「えっ、どっちも素敵じゃないですか?」
「え?でも選ばなきゃ。皇城の宴会にドレスを2着着て行くわけにはいかないから!」
「皇城の宴会は数時間続くんだから、途中で着替えればいいんじゃない?」
ソファに沈み込んでいたチャルニエルが、いつの間にかクルノ・エタムの後ろから口を開いた。
「……!それいいね!」
アクレア・サファイルがこまを回した。
「私の分、お姉ちゃんの分、末っ子の分、そしてクリムの分、残りは……」
アクレア・サファイルが期待に満ちたハイエルの視線と、チャルニエルの渋い表情を見つめた。
「最後はこれがいいな。」
突然、舞踏会の扉を開けて入ってきたのはデバンヌだった。
彼女は侍女を従えており、その侍女が持っていたドレスは、淡いピーチピンクの色合いがとても美しいドレスだった。
「わあ……。」
私が見ても、思わず感嘆の息が漏れるほどだった。
「アイツが星ほどの価値があるドレスを注文しようとしていたから、途中でちょっと口を挟んでみたんだ。気に入った?」
「はい!」
派手すぎず、それでいて私の好みにぴったりの色だ。
夕暮れ前のパステルカラー。
夜が訪れる直前、星が輝くような銀色の模様もとても美しかった。
「じゃあ、最後の件は決まったんだな。」
「はい。」
「冗談じゃないわ!母さん、疲れてるのね。こんなに突然決めちゃうなんて。」
アクレア・サファイルの言葉にデバンヌが笑った。
「僕たちに何も言わずに、こんなパーティーを準備してたなんて驚きだよ?」
「それは……。」
「レア、勝てない喧嘩はするなって姉さんが言ってたろ? チェリナ、お前も昔から全然ひるまないよな。」
「……うわ、お母様、本当にイライラします。」
アクレア・サパイルがそっぽを向く。
不満そうに膨れた頬を見て、デバンヌが笑った。
しぶしぶ顔を戻すと、シャルニエル・エタムはなんとも言えない表情で真っ青になっていた。
あまりにも嫌そうな様子だ。
みんな、一体どうしたというの?
「初めて孫娘を送り出す場だから、しっかり飾りつけしないとね。あなたたちも同じよ。」
「わかっています。」
「少し早いけど、シャルネのデビュタントも一緒に準備するから、みんなで手伝うように。」
「おお……。」
ネリア・ジャルダンとアクレア・サパイルが同時に驚いたように声を上げた。
「じゃあ、家主様を着飾ったことだし、今度はシルフィ姉さんの娘を飾ってみようか?」
二人の女性が慌ただしく礼服を選んでいるシャルネを捕まえた。
「きゃああっ!な、何ですか?!」
「ふふ、服を選ばないとね?」
「もう考えていた服が……きゃっ!」
父が私を腕に抱えた。
「この騒がしい市場みたいなところから出よう。」
「はい。」
さすがに私も疲れてきていた。
『今、何時だっけ?』
私はそっと手を動かし、父の机の引き出しに手を差し込み、自然な流れで懐中時計を取り出した。
『ちょうどいい時間ね。』
明日は市場に行かなきゃと考えながら時計を持ち上げると、父が私を見つめていた。
嫌な予感がして、時計をそっと引き出しに戻すと、彼は微笑んだ。
「そこに時計があるって、どうして分かったんだ?」
あぁ、そういうことね。
なんとなく、そこにある気がしただけ。
これもドラゴンの力なのだろうか?
「ただ……あると思いました。」
「そう?」
「はい。」
私がもじもじと慎重に答えると、父が私の額にそっと口づけた。
「昼寝にはちょうどいい時間だな。」
「……はい。」
実際、もう十歳なので昼寝が必要な年齢ではないが、父はどうしても私を寝かしつけようとした。
『こんなことしてたら、甘やかされすぎちゃうな。』
そんなことを思いながらも、まぶたがパチパチと閉じ始めた。
父の肩に額をもたせかけ、私は目を閉じた。
「おやすみなさい、娘よ。」
その声がどれほど優しかったことか。
私は深い闇の中へと落ちていった。
・
・
・
皇城での宴の準備はあっという間に終わった。
私の参加がやや急遽決まったせいか、すべてがあまりにも素早く進んだ。
気がつくと、すでに2週間が経っていた……。
『ここはどこ?私は誰……?』
ぼんやりと馬車に揺られながら、私はきちんと身支度を整えた父を観察していた。
エタム家門はどういうわけか全員が参列する模様で、動きはまるで数万、数十の部族が集まったようだった。
ほとんど行列に近いレベルだ。
私は父とカラン、シリアン、そしてシャルネと共に馬車に乗った。
『本当にみんなかっこいい。』
ふと窓の外に目を向けると、周囲の人々が私を見て「お飾り」だと思う理由が少しわかった気がした。
もちろん、私が客観的に見ても相当可愛い方ではあるけれど……。
ここにいると、妙に平凡に見えると言うべきか?
周囲がまぶしすぎて、自分の顔がぼやけると言うべきか?
「お嬢様。」
「はい?」
「何を考えているのですか?」
「ただ、ドキドキしているだけです。こういう場に参加するのは初めてなので。」
実際、誕生日パーティーのようなものを開いたこともなく、そういう場に招待された経験もほとんどなかった。
呆れる弟たちは、私が幸せだと何がそんなに気に入らないのか、仲の良い友達のところに行って愚痴っていたのだから。
「エイリン。」
「うん?」
「あなたは最高よ。心配しないで。今回の宴の主役はあなたなのだから。」
シャルネが私の手をぎゅっと握りながら言った。
温かい手が心地よくて、思わず微笑んだところで、向かい側に座っていたカランが冷静な口調で口を開いた。
「俺はお前が言ったことを全部済ませた。そして疑う余地もない。みんな、お前に一度会うために来た連中だ。」
「そうなの?」
「うん、お前が参加するっていう話が一週間前に広まったんだけど、その時から今日まで、首都に入ってきた馬車の数が普段の七倍だ。」
カランの言葉にシリアンが説明を付け加えた。
正直、想像もつかない数だったので、思わず目を丸くした。
「そうなんだ……。」
そう答えたものの、まだよく分からなかった。
「私がドラゴンだから?」
「まだそうだとは言えないわね。あなたが家主の座を継承したエタムと皇族の血を引く者であることは、皆が知っている話だから。」
これほどまでに関心を持たれたことがなかったので、少し驚いた。
手のひらで頬を軽くつまんでみた。
「え?この子、頬がふっくらしたぞ。」
「本当?」
「マジで……。」
シャルネと二人の兄弟がじっとこちらを見つめながら近づいてきた。
私が戸惑い、そわそわしていると、突然、体が宙に浮かんだ。
「お父さん……?」
空中でふわふわ揺れる私を見つめるエルノの目には、驚きの色が浮かんでいた。
エタムが窓の外を見ながら、ぽつりと口を開いた。
「……到着した。」
遅れて気づいた理由を言い訳として押し通そうとする感じに、思わず肩がすくんだ。
「奥様も本当に……。」
「お父様……。」
「降りなさい。」
背後から聞こえてくるため息混じりの声には構わず、父は私を腕に抱えたまま、一気に馬車から飛び降りた。
馬車を降りたエタム家の人々を見渡して、少し戸惑った。
あの列の真ん中に自分がいるという事実が、少し信じられず、私は父の腕の中で静かに固まっていた。
私は胸に顔を埋めた。
『こうして逃げるのも許されるのか……』
まだ家主であることが公にされていないのだから、問題ないだろう。
後ろを振り返ると、クルノ・エタムも気まずそうな表情を浮かべていた。
白い礼服を着ていない側近たちは、少し気楽そうに見えた。
「エルノ・エタム家主様とエタム家の一員がご入場されます!」
場内が静まり返り、その中で父は堂々とカーペットを踏みしめながら歩いて行った。
「エイリン、私たちのそばから離れないで。」
「うん。」
宴会場に到着すると、すぐに集まる視線に息が詰まりそうになった。
そんな私の前に、カラン・エタムとシリアン・エタムが立ちはだかった。
「こっちにいよう。」
二人は宴会場の空いている場所に私を立たせ、まるで守るようにその場を動かなかった。
二人の視線があまりにも鋭かったせいか、人々は私の方に顔を向けたものの、すぐに視線をそらしてしまった。
近づこうとしていた人たちも自然と距離をとり、私たちの周りにはまるで虫一匹すら近寄らないような空間ができてしまった。








