もう一度、光の中へ

もう一度、光の中へ【106話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【もう一度、光の中へ】まとめ こんにちは、ピッコです。 「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となってお...

 




 

106話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 精霊王②

いつの間にか、うたた寝をしていたのかもしれない。

目を開けると、周囲はすっかり静まり返っていた。

警備の兵士たちは交代で見張りをしているはずだが、起きている人の気配はなかった。

外の空気は冷え込んでいたので、私はマントをしっかりと体に巻きつける。

決して上質なものではなかったが、持ってきた服の中では一番まともだった。

マントを羽織り、私は幕舎の布をそっとめくりながら周囲を確認した。

夜間の警備にあたる兵士たちは、通常、陣営の最も外側に配置される。

中央に位置する幕舎の近くには、警備兵の姿はなかった。

私は慎重に幕舎を抜け出した。

万が一、誰かに見つかれば「眠れずに夜の散歩をしていた」と言い訳するつもりだ。

巡回している何人かの兵士を見かけたが、うまく避けて通った。

やがて私が到着したのは、陣営の片隅にある広い広場だった。

ルーン様を召喚するには自然の光を浴びることが重要なため、少し外に出てきたのだ。

空が開けたその広場には、月明かりだけが静かに私を照らしていた。

私は深呼吸した。

精霊王召喚陣は、すでに何十回も見ていたので、目を閉じたままでも描けるほどだ。

私はふと、胸の上のあたりが痛むのを感じた。

今日はとうとう、長い間願ってきた精霊王を召喚するのだ。

土の上に木の枝で召喚陣を描いた。

私はハイネ様がくださったあの魔法陣を思い出した。

魔力と生命力を交換する魔法陣。

私はその魔法陣を思い浮かべながら、ゆっくりと手を上げた。

ちょうどそのときだった。

「姫様。」

聞き慣れた声が、背後から私を呼んだ。

私は思わず驚いて後ろを振り返った。

いつの間にか私のあとをつけてきたのか、そこにはビオン公子が立っていた。

暗がりの中で、ビオン公子の髪は暗赤色に見えた。

「……ビオン公子?」

私は震える声で彼の名を呼んだ。

まさか彼が私のあとをつけてきたなんて信じられなかった。

彼はためらいもせず私に近づいてきた。

「もしかしてと思ったけど、やっぱりですね。」

「……ビオン公子!」

彼は私の指差すほうへと歩み寄り、ぎょろりとした目で私を見つめた。

普段は彼の髪が燃えるような赤だと思っていたけれど、それはどうやら私の思い違いだったようだ。

私は、あのように澄んだ青い瞳が燃え上がるような怒りを抱くことがあるのだと、初めて知った。

彼が鋭く問いかけた。

「……精霊王を召喚なさるのですか?命を引き換えにして?」

私はたじろぎながら、一歩後ろへ下がった。

私の声は風鈴のようにかすかに揺れていた。

「……知っていたのですか?」

私の内心を見透かしたような声に、彼は口を閉ざした。

「……魔法陣を最初に見たときには確信が持てませんでした。もしかしてと思って、自分の書斎で本を調べてようやく分かったのです。」

「……ビオン。」

しばらく彼は何かを言おうとした。

だが結局彼は諦めたようだった。

代わりに兄のことを口にした。

「……総司令官様のことも考えてください。もしあの方が、姫様が命を懸けて精霊を召喚していると知ったら、黙ってはいないと思いませんか?」

彼が兄のことを口にすると、私は心臓が締めつけられるように感じた。

分かっている。

私がこうすることが、私を愛する人々を悲しませるということくらいは。

「……でも……。」

私は彼に訴えた。

「戦争に勝ちたくないんですか?」

私の言葉に、ビオンは身を震わせた。

彼が昔から心の温かくて優しい人だということは知っていた。

それに彼は兄の長年の親友でもあり、兄にとって唯一の妹である私にも――

彼もきっと気を揉んでいたに違いない。

私は、彼が戦争を心から憎んでいることも知っていた。

小さな動物さえも大切にする彼にとって、たとえ敵であっても人を傷つけることはとても辛いはずだ。

それは彼だけではない。

多くの人々が戦争を嫌っている。

だからといって、自分の命を代償にすることをためらう理由にはならなかった。

でも、さらなる被害が出る前に、そして私の復讐を果たすためには、他の選択肢はなかった。

だから、私は決意したのだ。

「精霊王を召喚するわ。」

私は彼に、まるで自分に言い聞かせるようにそう告げた。

「……殿下。」

「心配しないで。私はもう覚悟を決めたから。」

私をじっと見つめていたビオンは、口を開きかけた。

私は身がすくんだ。

彼がこれ以上私を説得しようとするなら、何も聞くつもりはないと思っていた。

しかし続いたビオンの言葉に、私は大きな衝撃を受けた。

「……その精霊王というのは、もしかしてルーンというあの神官様ですか?」

「……!!!!」

私は返事をすることも、平静を装うことも忘れてしまった。

指先がひんやりと冷たくなった。

震える目でビオンを見つめた。

「……それを……どうして……」

自分でも分からずに口ごもると、ビオンは寂しそうな顔で視線を伏せた。

「やっぱり、そうだったんですね。」

その言葉はどういう意味だろう?

いつからそれに気づいていたの?

あまりにも多くの疑問が胸の中で渦巻いていて、何も言葉にできなかった。

混乱した私の顔を見たビオンは静かに口を開いた。

「気づいたのは最近のことです。ただ、もともと怪しいとは思っていました。ある日、ふと現れたのですが、神聖力は大神官様に匹敵するほどなのに、平民とは思えない態度や振る舞いをしていたのです。」

「………」

「……にもかかわらず、あれほど目立つ人物なのに、この世で彼を知る人は一人もいなかったのです。おそらく彼の存在に疑念を抱いた人は私だけではないでしょう。でも、宗教に帰依した者の過去には触れないのが礼儀ですから、私もそのまま流そうと思っていました。……『あの件』さえなければ、ですが。」

「……あの件って、もしかして……?」

「以前、イデンベレに向かう道中で襲撃された時、一緒にいた貴族たちがこう言っていました。ルーンという使者が突然現れ、彼らと皇女様を連れて姿を消したと。」

「………」

「その日まで、彼は宮廷の司祭としての職務を果たしていました。ところがあんなに突然、あのように大陸を越えてしまったという事実に驚き、調査してみました。彼から魔力を感じたことは一度もなかったので、魔法使いではなく、新しい人物の可能性に注目したのです。」

「……それで?」

「皇女様に関連する人物として、最も妥当な推測は『精霊』に関係しているというものでした。家門の古文書をひっくり返して調べるうちに、精霊王たちの容姿や能力について知ることになりました。その中で、私は確信したのです。彼の正体が……」

「………」

「“光の精霊王”だということを。」

私は口をつぐんだ。

彼の推理は正しかった。

イデンベレへ向かう途中で襲撃を受けてからは、その衝撃のせいで何も考えられなかった。

気が動転していて周囲のことを顧みる余裕もなかったのだ。

その能力を見て、その正体を疑う者が一人や二人いてもおかしくないはずだ。

私はビオンに尋ねた。

「……他の人もこの事実に気づいているのでしょうか?」

すると別の疑問が湧いた。

両親やイシス兄さんもルーン様の正体を知っていたのではないか、ということだ。

もし知っていたのなら、私のために知らないふりをしていたのだろうか?

私の言葉に、ビオンはゆっくりと首を横に振った。

「それはないと思います。もちろん王宮で起きたすべての責任者である皇帝陛下が、宮廷の使者が姿を消したことについて疑いを持ち調査されたかは分かりませんが……あの方の正体を見抜くのは簡単ではなかったでしょう。」

「でも、ビオン公子は見抜いたのでは?」

「……入念に調べましたから。それに、皇女殿下が精霊の愛を受けておられる以上、信じがたくても、ルミナス様ご自身が皇女殿下のそばをお守りになることもあるのではと、そんな考えがよぎりました。ですが普通、そう考えるのは簡単ではないものですよ。」

その言葉に私は苦笑いを浮かべてしまった。

「おっしゃるとおりです。彼は非常に頑固な精霊王です。ただ、人間の世界に対する好奇心から、しばらく滞在してみようと思われたのでしょう。」

ビオンはしばらく口を閉ざした。

いくら慎重だったとはいえ、真実として自分の推測が的中したことに衝撃を受けているようだった。

二人はしばらく沈黙を保っていた。

ビオンがルーン様の正体を事前に把握していたことは驚きではあったが、考えてみればいずれにしても明らかにすべきことだ。

私が彼を召喚することになれば、その存在について説明しなければならないのだから。

その時、ビオンが再び口を開いた。

「殿下。」

私は首をかしげた。

「また私を説得しようとしているのなら……」

「そうではありません。」

彼は私をただ真摯な目で見つめていた。

その青い瞳は深い海のように静かで、揺らぎひとつない。

私は思わずその目に見入ってしまった。

 



 

 

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