こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

82話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母との面会
フィローメルは南宮の庭園で書類を眺めながら印鑑を押していた。
「ううん。」
ウィリアムが現れてから、すでに数日が過ぎていた。
彼女はここ数日、ハウンズ商団に関する書類の確認を進めていた。
ホワイトが帰った翌日、ハウンズの臨時商団主という人物がフィローメルを訪ねてきた。
思ったより若い人物だった。
地位の高い職員たちはウィリアムの不正行為に加担していたらしく、ほとんど全員が解任されたという。
彼女はフィローメルに頭を下げながら、懇願した。
「どうか、レディ・フィローメル様、この書類を見てください!」
フィローメルが戸惑った表情を見せると、彼女はほとんど哀願するように付け加えた。
「危機に陥った我々の商団を救ってくださるお方はレディしかいません!」
訴訟はまだ進行中だったが、人々はすでにフィローメルを新たな商団主として扱っていた
『無理もない。私が商団主になれば、商団が崩壊するリスクは少しは下がるはず。』
様々な違法行為のせいで、ハウンズ商団の評判は地に落ちていた。
拷問台に罪があるかを綿密に調べ、取引先は次々と縁を切っていると聞かされた。
それでも、フィローメルが新しい主になるという予測に、これくらいの動きは当然だと仮の商団主は説明した。
なにせ、皇族の貴族が所有する商団なのだから。
「レディが商団主として正式に確定されれば、状況はきっと良くなります!どうかハウンズの主になってください!」
その目があまりにも切実に見えて、つい書類を受け取ってしまったけれど……。
フィローメルはプイッと顔を背けながら声をあげた。
「私は商団なんて興味ないんだから!」
向かい側で肘をついて座っていたルグィーンが尋ねた。
「じゃあ、なんで訴訟したのさ?あの弁護士は気に入らなかったかもしれないけど、知らん顔もできたでしょ?」
「うーん……実は、ウィリアムの財産を妖精たちに渡すつもりだったの。ほんの少しでも、あの子たちが受けた被害を償えたらって思って……」
「ああ、少し前に妖精の女王に連絡を取ってくれって言ってた理由はそれだったんだね。」
「そうなんです。でもセレフィアネが断ったんです。」
彼女は澄んだ声で言った。
「お気持ちだけいただきます。人間の金なんて私たちには特に必要ありません。ただ、かわいいフィローメルをください。」
ルグィーンは苦笑した。
「それでも多少は良心があるんだな。フィル、それならお前が受け取れ。この際だから商団でももらっておきなよ。」
「私がそんな器なんですか?」
「なんでダメなの?君なら十分できるよ。僕が全力で支えるから。」
「はは……」
魔塔主の支援があるなら、大陸最高の商団の座も夢ではないだろう。
問題は、フィローメル自身がまったくその気がないという点。
彼女の本来の目的は、あくまで本の真実を突き止めること。
そして、すでに十分な財産も持っていた。
そして何より……面倒くさがりなのだ!
最近のフィローメルの暮らしは、わずかな間にすっかり“のんびり”が染みついてしまっていた。
ほんの一季節前までは、皇帝の後継者として息つく暇もないほど忙しくしていたのに——
最初はこの余裕に慣れなかったが、今では慣れてきた。
いや、慣れるどころか、とても気が抜けてしまっていた。
『ああ、もう訴訟なんてやめてウィリアムの家族にでも全部渡してしまおうか。』
だが、それすらもできない。
商団は本来、カトリーヌに渡るべき財産なのだから。
「にゃーん。」
フィロメルがぼんやりと考え込んでいる間、ルグィーンは猫になっていた。
彼が突然そうなるときは、大抵誰かが訪ねてくるときだった。
いつの間にか庭園に入っていたネンシが告げた。
「フィローメル様、ポルラン伯爵様がお見えです。」
フィローメルとポルラン白爵は、庭園の奥で向かい合っていた。
テーブルに広げられた書類を見た伯爵が、柔らかく言った。
「おめでとうございます。」
……何を祝ってるの?
「それと、ご心配なさらずに。良いことは良いこととして、私があちらこちらにうまく伝えておきますので。」
彼もまた、フィローメルが当然ハウンズ商団の新しい主になるものだと思っているようだった。
「は、はい。ありがとうございます……」
フィローメルは気が引けながらも、書類を丁寧に片づけた。
そしてポルラン伯爵と軽く会話を交わした後、自分がここまで足を運んだ根本的な理由を思い出した。
「カトリーヌとの面会が可能になりました。彼女が現在いる場所は東側の塔。今お会いになりますか?」
「ついに。」と思いながらフィローメルは首を縦に振る。
再び彼女に会う時が来たのだ。
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東の塔。
それは皇宮の敷地内で東側に位置しているという理由からつけられた直感的な名前で、細長い塔の一つを指していた。
昔から皇帝たちが様々な理由で世間に見せたくない者たちを閉じ込めていた場所。
誠実に自分の愛人を抱えた皇帝もいたし、反対に自分の子どもに偽装して愛人を囲った皇帝もいた。
そして現在の皇帝ユースティスは、自分の妻の親戚であり、国家の罪人でありながらも、娘を育てた養母でもあり……とにかく複雑な関係のカトリンをここに送り込んだ。
フィローメルは呆れたように、塔の長い階段を上っていた。
「……やけに高いわね。」
その言葉に、兵士が驚いたように反応した。
『“やけに”だなんて……ルグィーンやジェレミアと一緒にいるから、口調がうつったのかな。』
正直、自分でも最近くだけた話し方になっているとは思っていたが、“やけに”なんて言葉を選んでしまうとは、ちょっと品がなくなってきたかも……。
『気をつけなきゃ。』
2人のようになるわけにはいかなかった。
ところがある瞬間、フィロメルの呼吸が楽になった。
体に力がみなぎった。
「にゃおーん。」
猫の姿で後ろからついてきていたルグィーンが、いつものように身体強化の魔法をかけてくれたようだ。
フィローメルは自分を追い越していった堂々とした尻尾を見ながら思った。
『こういうとき、とても便利な魔法使いだわね。』
間もなく、2人は塔の一番奥の階に到着する。








