こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

108話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 精霊王④
しっかり立っていたはずのアイシャは、紙人形のように横に崩れ落ちた。
ルミナスは、そんな彼女が地面に倒れないよう、自分の腕にしっかりと抱きかかえる。
同時にルミナスは少し眉をひそめて言った。
「……ふう。」
彼女の体があまりにも軽かったのだ。
そうなるのも無理はない。
彼女はまだ15歳にも満たない少女。
ルミナスは自分の契約者がたくましい人物であることを特に望んではいなかったが、今回ばかりはアイシャが幼くて弱い存在であるということが、なぜか引っかかった。
しばし感慨にふけるルミナスの前に、人影があった。
「……まさか、あなたは……」
深い金髪に、緑色の瞳、見覚えのある顔立ち。
ルミナスは彼を一目見てすぐに気づいた。
アイシャのただ一人の兄、イシスだった。
ルミナスは目を細めて彼を見つめた。
彼がかなり特別な存在であることはよく知っていた。
今、他の人々がルミナスの存在感に圧倒され、息を整えるのも難しいのに比べ、イシスの能力は本当に卓越している。
「何者だ?」
だが、だからといってわざわざ彼に親切にする理由はない。
ルミナスは冷淡な声でイシスに短く尋ねた。
さっきまでアイシャに向けていたあの温かな表情は跡形もなく消え、今のアイシャにそれを指摘する余裕はなかった。
イシスはその力に圧倒されて奥歯を食いしばったが、それでもひるむことはなかった。
彼が妹を並々ならぬほど大切に思っているのには、それなりの理由があるのだろう。
「……あなたはどなたですか?以前は確かに神殿で神官としていらっしゃいましたよね?」
イシスは慎重に口を開き、ルミナスに問いかけた。
ルミナスは曖昧な答えを避けた。
今や彼は完全にアイシャの契約者であり、隠す必要は何もなかったからだ。
「私は光の精霊王であり、君たちが“光の神”と呼ぶルミナスだ。君が言ったのは、私が人間界にいたときに一時的に姿を変えていた姿のことだろう。」
「……光の精霊王!? ルミナス様!?」
イシスは大きく驚いた表情を浮かべた。
「は、しかしどうして……?!」
ルミナスは周囲の人々の顔を見回した。
皆が困惑し、その存在感に圧倒されていたが、その中でただ一人、全く動じない人物がいた。
それはまさしくビオンだった。
ルミナスは自身の存在感を静かに抑えながら、彼を見つめた。
「君は私を知っているようだな。」
「……っ!!」
他の人々の視線が自分に集まると、ビオンは少し緊張した様子だった。
ルミナスは特に表情を変えずに彼に命じた。
「言ってみろ。」
「……はい。精霊王様。」
ビオンは慎重に口を開いた。
「……精霊王様は人間の世界に興味を持たれて、一時的に地上にいらっしゃることになり、その間、神官としてエルミールに滞在しておられました。」
……正確には『エルミール』ではなく『アイシャ』の契約者だが、ルミナスはあえてその部分には触れない。
ビオンが続けて言った。
「……その後、精霊界に戻られましたが、アイシャ皇女殿下が精霊王様を正式に召喚され、ここに再び降臨されたと聞いております。」
「その通りだ。」
「えっ、アイシャが……?」
イシスは明かされる真実にこれ以上ないほど驚いたようだった。
しかしルミナスはイシスには興味がなかった。
ひと通り説明が終わると、自分の契約者を安全で心安らげる場所に連れて行きたいという思いだけがあった。
もともと彼があまり愛想のよいタイプの精霊王でないことも一因だ。
しかし人間たちの考えは違っていた。
「そ、それではアイシャ様が、まさか精霊王を召喚なさったというのですか……?!」
「世界に……そんな……!!!」
もちろん、彼らが驚くのも無理はなかった。
これまでの歴史の中で、精霊王を召喚した人間はただの一人も存在しなかったのだ。
つまりそれは、アイシャが並外れた精霊使いであるという事実を証明していた。
人々がアイシャを見る目が変わった。
今や彼らは大きく歓迎していた。
その契約者と契約を交わしている間に、いつの間にか夜が明けて朝になっていた。
そのまばゆい光と、彼らを守護する神に向かって、人々は一斉に感謝の祈りを捧げた。
「偉大なる精霊王様と、世界にただ一人しかいない精霊王の契約者、皇女殿下に万歳を!」
「万歳!!!!」
その歓声がどれほど大きかったのか、今まで起きなかった幕舎の他の人々も目を覚ました。
すぐに目を覚ました人々が事情を聞いて合わせたその歓声は、さらに大きくなっていく。
その中で、イシスはルミナスに向かって両手を差し出した。
気絶している妹を自分の手で運ぼうとしたのだ。
だが、ルミナスはその手を無視した。
イシスが言った。
「私の妹です。」
「私の契約者だ。」
ルミナスはそう言って、アイシャに対する権利を主張した。
イシスは唇をぐっと噛みしめて彼をにらんだが、彼にできることは何もなかった。
イシスはしばらく彼を見つめたあと、尋ねた。
「……気になることがあります。」
ルミナスは話してみろと言わんばかりにあごを少し動かした。
本来なら答えるつもりはなかったが、それでも自分の契約者であるアイシャが無性に可愛く思えて、少し甘くなってしまったのかもしれない。
「どうして……ルミナス様は身分を偽ってまで人間界に滞在されたのですか?」
その唐突な質問に、ルミナスは静かに笑う。
そして視線を落とし、自分の腕の中に抱いた契約者を見つめた。
「大切な存在を守るために。」
イシスはしばらく彼を見つめた。
朝の日差しが二人を照らしていた。
・
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夢を見た。
その夢の中で私はアリシャで、私の隣にはラキアス兄さんがいた。
そして、その前にいたのはーーマリアンヌだった。
あの日はマリアンヌが宮殿に来てからあまり経っていなかった頃だった。
ちょうど彼女の誕生日が今日だと聞いた私は、彼女の誕生日を祝うために、私は彼女を自分の宮殿に招待した。
私がいちばん好きな兄であるラキアスと一緒にティータイムを過ごすためだ。
マリアンヌは侍女の妹の皇女だった。
幸いにも彼女は皇室の一員として受け入れられることができたが、侍女の母までそうではなかった。
外見が優れていた彼女の宮殿は当然のように皇宮で最も華やかな構成となり、皇宮の人々にとって彼女はまるでペットのようになってしまった。
他の人々はわざわざマリアンヌに気を使う必要はないと言ったが、私の考えは違った。
あの子はもう私の家族だ。
私は彼女にとって良いお姉さんになりたかった。
それにちょうど皇宮に入ってきたばかりで、何も知らずおどおどしているあの子を思うと、胸が痛んで、何かしてあげたくなった。
マリアンヌはいつ来るのだろうか。
私はにこにこしながら、マリアンヌが来るのをただ待っていた。
その日はとても天気がよかった。
青い空と温かい日差しが重なり、人々の心をほっこりさせてくれるような日。
私はどれほどその子を待っていたのだろうか。
ラキアスお兄様と庭のテーブルに座って、他愛もない話をしていた時、遠くにその子の姿が見えた。
私は急いで席を立ち、その子に向かって手を振った。
「マリアンヌ!こっちだよ!」
するとマリアンヌは、慎重にこちらへ歩いてきた。
そんな彼女に付き添う侍女は、たった一人しかいなかったが、その少女もまたとても緊張した表情だった。
私はマリアンヌに会えたのが嬉しくて、彼女に満面の笑みを向けた。
「元気にしてた?」
「……はい。」
その子の視線はティーテーブルに釘付けになったように固定されていた。
心の中で微笑んだ私は、その子がデザートをじっと見つめていたことに気づいた。
「こっちに来て、一緒にお茶を飲みましょう。」
私はマリアンヌを連れて自分の前に座らせた。
私の侍女が彼女の膝にナプキンをかけ、香りの良いお茶を彼女のカップに注いでくれた。
ラキアス兄さんはマリアンヌを見て厳しい表情をしていたので、私は急いで兄さんの脇腹をつついた。
すると兄さんはかなり痛そうな顔をした。
「……会えてうれしいよ。」
まるで太陽熱で動く人形のように、ラキアス兄さんははいつも通り無表情だった。
そんな兄を横目に見ながら、私は用意しておいたプレゼントをマリアンヌに手渡した。
「マリアンヌ!」
私が彼女を呼ぶと、彼女は不安そうな目で私を見た。
「これ、君の誕生日プレゼントだよ。」
「……誕生日プレゼント?」
「うん!早く開けてみて。」
私はにっこり笑いながら言った。
マリアンヌは戸惑いながらも、慎重に箱の包装を解き始めた。
私は嬉しい気持ちでその様子を見守っていた。
箱の中に入っていたのは、ぬいぐるみのペアだった。
青とピンク、それぞれの色で作られたかわいらしいクマのぬいぐるみが二つ。
マリアンヌはそのプレゼントを見て、目をぱちくりとさせていた。
「私は人形を抱いて寝ると、よく眠れるの。」
私はにっこり笑いながら言った。
「宮廷に来てつらかったでしょう? たぶん慣れないうちは、あまり眠れなかったかもね。
つらいことがあったら、いつでも私に相談していいのよ。」
マリアンヌはしばらく私を見つめていた。
「うん?」
私が促すと、マリアンヌは視線を落とした。
「……ありがとうございます。アリサ皇女様。」
「皇女様だなんて、私たちはもう家族でしょ?“お姉さん”って気楽に呼んで。」
私の笑顔に、マリアンヌは私の目を見つめながら口を開いた。
「……じゃあ、お姉さん、ひとつ分からないことがあるの。
「どうしたの?」
マリアンヌは、彼女に渡されたティーカップを戸惑いながら体で隠した。
「これ、どうやって飲むのかわかりません。それに、これも……」
続けて彼女は、テーブルの上に出されていたデザートを手で覆った。
「……全部、生のものばかり。」
そう言って肩をすくめる彼女は、まるで叱られるのを恐れる子どものようだった。
私には当たり前のものでも、この子にとっては生まれて初めて見るものばかりなのだと思うと、胸が痛んだ。
加えて、彼女の怯えたような態度も。









