こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

87話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エレンシアの日記帳②
人の処理は終わったので、次は物の問題だった。
小屋には、カトリンとエレンシアのものと思われる品々があった。
家具や道具がぐちゃぐちゃに散らばっている。
なぜかここに捨てていくのは気が引けた。
フィローメルがそれらの物をもう一度家に持ち帰ろうかと提案すると、ルグィーンは「君って本当に優しいね」と言いながらも結局協力してくれた。
そうして森を進んでいた二人は、ほどなくして村を見つけた。
少しして、彼らはエレンシアとカトリーヌの家に入った。
フィローメルは主にエレンシアのものと思われる品々を選んで持ち、2階へと向かった。
ルグィーンは1階を任された。
ところが、エレンシアの部屋には先客がいた。
「ひゃっ、びっくりした!まさかこの村で私たちを見つけるとは!やっぱり殺されるかと思ったよ!」
さっき逃げ出した連中の中に、逃げ遅れた一人がいた。
彼は震える手で小さなナイフを差し出した。
「やっぱりここに来ると思った。目的はエレンシアの持ち物だろ?」
フィローメルとルグィーンを、彼らと同じ盗賊だと思っているようだ。
『本当にめんどくさいわね。目を離した隙に逃げたくせに。』
持っていた物を床に置いたあと、彼女は言った。
「それくらいは、捨てた方がいいですよ。そんなの持ってたら危ないじゃないですか。」
「ふざけるな!どうせ魔法か何か妙なもんなんだろ!」
「私は何もしてないから怖くないんだけど?」
「そ、そうか!」
フィローメルの落ち着いた態度に、相手は動揺した様子だった。
近づいて見てみると、彼は思ったより幼い顔をしていた。
男というよりは、ちょうど青年になったばかりの少年?
フィローメルは最後に警告する。
「ナイフを下ろしたほうが身のためよ。」
「くっ、怪我しないうちに大人しくしてろ!お前が叫んだら、あの男が来る前に俺が手を下してやるからな!」
ふっと、笑いがこぼれた。
「武器を抜くなんてその程度だろうな。自分より強い相手には飛びかかる自信もない臆病者め。」
「いぃぃぃぃ……!」
明らかに自分がナイフを持っていたのに、男は怯えながら彼女に飛びかかってきた。
パパパパッ!
その瞬間、フィローメルの周囲の空気がうねり、強烈なスパークが弾けた。
「ぐはっ!」
男の身体は吹き飛ばされ、壁にぶつかるように叩きつけられた。
頑丈だった肉体は、意識を失ったのか、ぐったりと動かなくなった。
それは、ルグィーンが以前にかけておいた自動防御魔法が発動したものだった。
魔法は最後にテストされた時と変わらぬ威力を誇っていた。
フィローメルがナイフを持った相手を前にしても、まったく動じなかった理由だ。
男を見下ろしていた彼女は、すぐに納得したようだった。
「だから危ないって言ったでしょ。私じゃなくて、あっちのことよ。」
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「ふむ、それでこいつが君の命を狙ったって?」
男を見つめるルグィーンの目には、殺気がこもっていた。
少し前まで気丈だったその男は、震えながら前にぺたんとひれ伏した。
「何でもします!お願いです、命だけは助けてください!」
ルグィーンはフィローメルに尋ねる。
「何でもするってさ。何かやらせたいことある?」
「特にないです。」
「じゃあ、容赦なく。」
ルグィーンの指先から光が放たれた。
「ちょっと待ってください。聞きたいことがあります。」
「何を?」
「エレンシアのことを聞きたいんです。この人は同じ町に住んでいた住民じゃないですか。何か知っているかもしれません。」
すると、ルグィーンは男に向かって手を下ろした。
「聞いたよな?持ってる情報を出さなかったら、お前は……」
「知ってることはすべてお話しします!あまり知られていない皇女様についての情報が欲しいんですよね?僕は年が近くて、皇女様とはほとんど兄妹のように過ごしてきました。」
――嘘っぽいけど。
だがここまで来たからには、とりあえず話を聞いてみることにした。
男は早口で続けた。
「皇女様の趣味は山に登って野生動物を観察することでした。お好きなものはおいしい料理、特にこの田舎では手に入らない高級デザートを召し上がりたがっていました。それから……」
フィローメルがルグィーンに言った。
「特にありません。やりたいようにしてください。」
「うわあっ! まだあります!それに、皇女様が南の池によく通っていた場所を知っています!」
ちょっと哀れだった。
「どこですか?」
「そっちに少し下っていくと池がひとつあるんですが、その隣に“ぺったんこ岩”って呼ばれる岩があります。ぺったんこ岩に座って、深く物思いにふけっていた皇女様を何度か見かけました!」
「どのくらいかかります?」
「およそ5分くらいです。」
それくらいの距離ならすぐに行って戻って来られる。
フィローメルは男が示した方向へ歩き出した。
「散歩がてら軽く行ってきますね。」
男の襟首をつかんでいたルグィーンが尋ねた。
「一人で大丈夫か?」
「子どもでもないし、平気ですよ。ルグィーンがかけてくれた魔法もありますし。」
それだけでなく、フィローメルには自動魔法がかけられており、発動すればルグィーンはすぐに察知できるようになっていた。
「そうか。気をつけて行ってきて。」
まるでフィローメルがいない間に処理したいことがあるかのように、彼は軽く手を振った。
男が示した方向へ少し進むと、フィローメルの前に本当に小さな池が現れた。
水が澄んでいて、ひっそりとした美しい池だった。
そしてその隣には……。
「星みたいな形の石で、まるで星だらけの岩場みたい。本当に星が落ちてきたみたいだね。」
不思議なことに、その岩は五角形の星の形をしていた。
「よいしょ。」
フィローメルは、エレンシアがそうしていたと聞いたように、その岩の上に座る。
「わざわざ来たけど、岩の形が特別なだけで、他には何もないね。」
岩の表面は、誰かがわざと削り取ったかのように滑らかだった。
少し疲れていたフィローメルは、星型の岩の上に体を横たえた。
『エレンシア、あなたはここに座って一体何を考えていたの?』
あなたはいったい誰なの?
どこからか涼しい風が吹いてきた。
おかげで彼女のまぶたが重くなった。
そしてその瞬間。
ティリリン。
どこかで一度も聞いたことのない荘厳な音楽が流れてきた。
「……!」
驚いて体を起こしかけたフィローメルの視界が歪んだ。
世界が一面、淡いピンク色に染まる。
しかし、それは一瞬だった。
「え?」
彼女の視界はすぐに元に戻った。
「なに?いまのは一体……?」
フィローメルはしばらくその場に静かに座っていたが、さっきのようなことは起こらなかった。
『疲れているからかな?』
そういえば午前中に東の塔の果てしない階段を上ったせいでかなり体力を消耗していた。
フィローメルは考えた末、「うっかり寝て夢でも見たのかも」という結論にたどり着いた。
「でもまあ、とりあえず記憶は解いておこう。」
そうつぶやいたあと、フィローメルは岩から下りてエレンシアの家の方へ向かう。








