こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

25話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最初の協力
ふたたび2階の東側廊下に戻ったリンは周囲が空いているのを確認した後、適当な椅子に座ってぼんやりと待った。
どれくらい時間が経っただろう?
「ヤナ・トゥスレナ?」
ぱっと目を開けたリンが首を巡らせた。
廊下の端に、ボサボサの金髪の少年がぽつんと立っていた。
ふわふわと髪を揺らしながら近づいてくる姿は、まるで黄金の血統を継ぐ後継者の姿を思わせた。
「こんにちは、チェフ・ネーガ。」
近づいてきたチェフは、しばらくリンの顔を見つめたあと、かなり真剣な顔つきで尋ねた。
「君……まさか今、その壺に捕まってしまったところなの?」
まだぎこちない相手に向かって投げた質問だったが、彼の声はかなり柔らかかった。
「やっぱり大きすぎるよね?歩くたびにこっちに――」
重みがずっしりとかかる感覚がした。
「落ちても頭が割れることはなさそうだね。」
近くの部屋に入り、チェフがリンから箱を受け取って持ち上げた。
素早くドアを閉めたリンは、衣服の下に隠していた銅の箱を取り出した。
「僕を探しにきたんだよね? 受け取って……それ、何?僕を思って持ってきたものなら、断る理由はないよ。」
「断る理由なんてないわ、それはあなたのものじゃないから。最近の試験の優勝者に授与された賞品よ。」
「賞?それならネネベル・トゥスレナが受け取ったんじゃない?」
「ネネベルじゃなくてニナベル。彼女が私に預けたものよ。あの部屋に持っていって置いておいて。」
無表情でリンを見つめたチェフは、リンの腕と腰の間に挟まれた箱に目を留めた。
「じゃあ、これは?」
「それは君へのプレゼントじゃないよ。チョコチップクッキー。毒が入ってるから食べちゃだめ。」
「……ヤナ・トゥスレナ。君はここで一体どうやって過ごしているんだ?」
リンは答えず、ソファに座って背中をもたせかけた。
テーブルの上にあったブドウの房を黙ってかじっているうちに、いつの間にか隣に座った少年と目が合う。
「ねえ、チェフ。黙ってやられる人間は助けてやらないと……まだそのルールは生きてる?」
短い沈黙のあと、周囲をうかがっていたチェフが深くため息をつきながら、リンに小声でささやいた。
「ようやくわかったよ。毎朝訓練してたのも、そのせいだったんだな?よし、話してみろ。今回は俺がどう手伝えばいい?」
無鉄砲でもかまわない、というような、わずかに好奇心を帯びた瞳だった。
ためらいのない屈辱に言葉を失いかけたリン。
今度こそ真剣に彼の本心を尋ねた。
「前にも聞いた質問だけど、もう一度聞くよ。チェフ、どうして私を助けようとするの?
君が傷ついたらどうするつもりなの?」
再び短い沈黙が流れ、チェフは黙り込んだ。
思ったより長い沈黙。
「……何も考えてないんだ。」
「それよりも、どう答えれば同じ質問を三度も聞かずに済むか、ちょっと考えてた。」
「それで、どう答えるつもりなの?」
「ネズミが猫について考えるみたいなもんさ。」
短い皮肉。
わずかな感情も感じられない冷たい視線がリンを突き刺した。
その妙な苛立ちは、すぐに騒がしい笑い声に紛れて、跡形もなく消えていった。
「……それはうちの母の口癖でね。正直に言うと、僕は君に良い印象を与えようとすごく努力してるんだ。」
彼との最初の出会いを思い出したリンは、あっさりと拒否した。
「悪いけど、私はあなたと結婚するつもりはないから。」
チェフは気にした様子もなく笑った。
「誰がいるって?こうやって借りを作れば、将来君が僕のお願いを断れなくなるだろ?」
借り?
そんな理由で私を助けようとしてるの?
思いもよらなかった失望感がリンを包んだ。
『まあ、そうよね。子供も大人も純粋な好意なんてあるわけない。』
軽く笑ったリンは、ソファから立ち上がり、像と箱を抱えた。
「いいわ、今の話はなかったことにしましょう。」
「うわ!待って。落ち着いて、もう一度座って!」
立ち上がったチェフが銅像と箱を取り出して再びテーブルの上に置いた。
そしてとても真剣な表情でリンを説得し始めた。
「そんなに焦らなくていいだろ?暴力的な意味合いなんてないんだ。ただ単に、お互い助け合って生きようって意味だったんだよ、ヤナ・トゥスレナ。」
「それで、何を頼みたいわけ?」
チェフは深い苦悩に沈んだ表情で、ただ口をパクパク動かしていただけだったが、最後にはようやく言葉を絞り出した。
「まだ……言えない。」
「そうか、じゃあバイバイ。さっきの会話はなかったことにしよう。」
「変な頼みごとをすると思って警戒してるんだろ?安心して。この場で約束する。君に大きな迷惑をかけるような頼み事は、絶対、死んでもしない。小さな迷惑なら……かけるかもしれないけど。でも基本的にはしない。」
リンの前に立ちはだかったチェフが、小指を突き出してせかした。
「早く。」
断る余地はなかった。
『まるで魔法の契約でも結ばされるみたいに……。』
今はこれくらいしか信じられない。
借りを作るしかないじゃない。
リンがぼんやりと立ち尽くしていると、チェフはリンの手を強引に取り、小指を絡めた。
震えたが、とにかく受け入れることにした。
『まあいいか。まだ子供だし、大したことないだろう。』
チェフは欲に満ちた目でヤナを見つめた。
「よし、ヤナ。じゃあ、俺が何をすればいいか教えてくれ。大人たちの言うことを盗み聞きするとか?それとも何かを盗んでくるとか?」
やっぱり子供だな。
ヤナは銅像と箱を手に持ったまま、ベッド横の棚へと歩いていった。
「何もしなくていいよ。」
そして一番下の引き出しを開け、二つの物をしまった後、再び閉じた。
「君はただ……この場所にこれらの物をずっと置いておけばいい。」
「……置いておくだけでいいの?」
「うん。」
「暗殺者みたいに静かで機敏な任務じゃないの?」
失望した気配がありありとにじむ昼間のリンを見つめながら、リンは淡々と答えた。
「ごめん、私、まだ14歳なんだよ、チェフ。」
「俺は15歳。兄さんって呼んでみる?」
「嫌だ。」
「断られると思った。」
ソファにどっぷりと沈み込んだチェフは、両足をぱたぱた動かしながら、惜しそうに言った。
「なんか物足りないな。せっかく協力関係になったんだし、何か一緒に始めてみない?あ、体力づくりのコツでも教えてあげようか?」
リンは目を細めた。
まさか私にそんなことを教えてくれるって?
何か言いかけたが、ソファに置いてあった銅像と箱を見て、もう一度堪えた。
「いや、そんなのいらない。……それよりも、予想される質問に対する答えをいくつか覚えてほしい。」
「予想質問?うわ、なんでもやるんだな?いいよ、聞かせて。」
こうして二人の最初の協力が始まった。










