こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

89話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 神の書②
「ま、まさか、そんな!」
慌てたフィローメルがうろたえた。
自分はただ手を伸ばしただけだった。
指輪は何も反応しなかったのに!
しかしそんなことには関係なく、神の書はゆっくりとフィローメルの目の前まで来た。
その瞬間、皇帝専用の書庫は宮殿内でも最も神聖な場所の一つだという事実を思い出した。
そう思ってみると、重厚に設えられた書庫そのものが、神聖な気配で満たされているように感じられた。
『そして、この指輪には皇帝の神聖力が込められている。』
どうやらこの本の封印を解く鍵は、皇帝の神聖力のようだ。
『どうすればいいの……?』
そう思っても、はっきりした答えは出てこなかった。
「……それと、これはどうやって元に戻せばいいの?」
侍従が言っていた、“時間が経てば元に戻る”という『すべての本』にこの本も含まれているのだろうか。
そうに違いなかった。
神の書は皇帝にだけ許された書物だった。
たとえ後継者であっても、帝位に就く前には決してこの本を見ることはできなかった。
この本を触ったと知られたら、今回は本当に処刑されるかも……。
フィローメルは歯を食いしばった。
いずれにせよ、もう起きてしまったことだった。
今逃げたら二度と神の書の内容を確認する機会はないだろう。
決心した彼女は、震える手で本を取り、片腕には辞書を抱えたまま、ゆっくりと本を読み進めていった。
「……読めるじゃない?」
内側の内容は比較的平凡に見えた。
古い形態の帝国語ではあったが、読めないほどではなかった。
しかし「読める」ということと、「意味を理解する」ということはまったく別の領域にあった。
『あまりにも哲学的すぎる……』
たとえば、「現在は現在であり、また過去であり未来でもある」といった類の曖昧な文章の連続だった。
「万物は……夢、夢見る者の生命の動きは夢だが、夢見る者も……またその夢の一部……もし夢を見なくなったら……夢そのものになる?」
幸運だと言うには曖昧な言葉だけではなかった。
明らかに後日の危険を警告するような予言も一緒に目に飛び込んできた。
「異世界から来た侵入者を警戒せよ。それはあらゆる種類の酒を注ぎながら別の存在の肉体を奪った。真の勇者だけがそれを退けることができる。」
……異世界?
以前ルクオンが言っていた「エレンシアの魔法薬」についての言葉が頭の中に浮かんだ。
『皇女エレンシア』と魔法薬の瓶は、この世界の物質ではない可能性が高い。
もしそうなら、それらは異世界から来たものだと彼は推測していた。
その後も調査は続けられたが、それによって得られた見解は今のところ変わっていないようだった。
フィローメルは持ってきた筆記具を取り出し、「別の世界」について言及した文節を書き写した。
他の印象的な文節も一緒に。
そんな中、お腹が「ぐぅ」と鳴る音がして、ペンを握っていた手が止まった。
昼食も取らず、ずっとここにいた。
あまりにも長くとどまっていると、管理者に怪しまれるかもしれない。
『今日はこのへんにしておこう。』
ユースティスはフィローメルに、今後1週間はここに出入りしてもよいと許可を与えた。
幸いにも壊れた装置たちも壁から徐々に復旧していた。
ならば、神の書もまた元の場所を見つけただろう。
本はそのままテーブルの上に置き、席を立ったフィローメルはドアの方へ向かった。
そしてそのまま書庫を出ようとドアを開けた……。
足音が聞こえた。
皇帝とポルラン伯爵の声も一緒に。
彼らは真剣な顔で、ある話題について議論している最中だった。
「……確かにモンスタウェーブの前兆かもしれんな。」
「しかし、前回のモンスタウェーブが終わってからまだ5年しか経っていませんよ?少なくともあと10年はないと……。」
「だから今、その関連記録を調べに行くんじゃないか。200年前にも似たようなことが……。」
フィローメルは素早く扉を閉めると、息を整えた。
『どうしよう、どうしよう、どうしよう?』
突然現れたモンスターフェイブの襲来も大したことではなかったが、彼女にはもっと重要な問題があった。
神の書がまだテーブルの上にあるのだ。
皇帝が書庫に入ってくる瞬間を思い浮かべた。
視線が届けば、あの奇妙に空中に浮かんでいた本が消えていることに気づかないはずがない。
転移魔法で逃げたのだろうか?
だが、仮にそうだとしても、それが彼女の仕業だという証拠はない。
ならば、今すべき行動は……。
「そうだ。逃げるなら逃げるにしても、まずは後片付けしよう。」
フィローメルは微笑みを浮かべたまま、書庫の外へ出た。
その直後、皇帝が彼女を見つけた。
「フィローメル、お前ずっと書庫にいたのか?」
「はい。時間が経つのも忘れて、本に夢中になっていました。」
「そうか。昼食はまだ済ませていないだろう。すぐ来て食べなさい。」
「へ、陛下と一緒にですか?」
「……?」
「昼食はお済みですか?」
「いや。ポルランとの話が長引いていたし、その途中に別の会議まであってね。」
書庫の扉の前へ向かうユースティスの前でフィローメルが彼の行く手をふさいだ。
「何か言いたいことでもあるのか?」
「お急ぎのご用でなければ、お食事を先にされた方がよいかと。ご健康を損なうのではと心配です。」
「食事を一度抜いたくらいで健康は損なわれない。」
彼がドアノブをつかもうとしたそのとき、フィローメルは急いで皇帝の手首をつかんだ。
「ご一緒にお食事しましょう。今すぐに。」
すると皇帝の目に少しの驚きが浮かんだ。
「……久しぶりだな。君の方から先に誘ってくれるのは。」
そして、皇宮に戻ってきてからたった一度だけだったが、彼女が先に食事やティータイムに彼を誘ったのは。
彼女が座ることになった食事の席は、皇帝が、そしておそらくエレンシアがフィローメルに勧めたことによって設けられたものだ。
今さらこんなことをするのは、あまりにも不自然に見えるかもしれない。
「……もしかして、お食事を取っていらっしゃらないのですか?」
フィローメルは慎重に尋ねた。
「いや、いいだろう。今、食事を準備するように言ってやる。」
実際に、皇帝はポルラン伯爵の背後に立っていた侍従たちに、できるだけ早く座席を準備するよう命じた。








