こんにちは、ピッコです。
「ちびっ子リスは頑張り屋さん」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

105話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 始まりと終わり⑥
国王が裁判にかけられた。
アストルム王国の歴史上、前例のない事態だ。
人々は混乱に陥った。
「聞いた?今回はあの高貴な方が裁判にかけられたんだって!」
「え? 直接裁判を開くって? まぁ、たまにはあることだろうけど、なんだか慌ただしいね…」
「違う違う、国王が裁判を開いて判決を下すんじゃなくて!その裁判に被告として立つんだよ!罪を裁かれるんだ!」
「何?」
「ふん!いい気味だよ。あの話、聞いた?あの哀れなストゥム領地の人々を、王という立場で直接売り払ったんだろう!」
街では誰もが裁判の話をしていた。
ある者は、それが本当に可能なのかと疑い、顎を撫でながら考え込み、またある者は、それが極めて正当なことだと納得し、目を細めて頷いた。
貴族たちの反応もまた、様々だ。
「まあ、子爵夫人も今回は残られるのですね。」
「ええ。この件を前にして、どうして先に領地へ帰ることができるでしょう?」
通常、社交シーズンの最後の宴会が終わると、貴族たちは荷物をまとめ、それぞれの領地へと戻るのが一般的だ。
しかし、今回は例年とは異なり、多くの貴族が都に留まることを決めていた。
王の裁判という、前代未聞の出来事を見届けるために。
「果たして、どうなるのでしょう?」
「アスラン家があの剣を抜いた以上、すでに断固たる決意のもと準備されていたはずです。」
「とはいえ、それでも陛下ですからね。かつて一度もなかったことですが、果たして実質的な処罰となるのでしょうか?」
「さあ… どうなることやら。」
興味津々に口を開く会話の中には、妙に意味深な話まで混ざっていた。
「え?」
「公開裁判でどんな結論が出るのか… これまでになかった裁判だからこそ、想像もつかないような処罰が下される可能性もあるんじゃない?」
「まさか、その話は……」
「しっ!何も言ってませんよ?」
そうして首都全域がざわついていた頃。
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「ふむ?」
一度も開かれたことのない国王に対する公開裁判のために、会場の設営や手続き、形式などを細かく練り上げた公爵が、補佐官の報告書を読んでいた。
ベアティは静かに高下駄を持ち上げた。
「始まったのかな?」
「ええ。何かを察していたのか、それとも事前に話が通っていたのか。新星帝国の使節団の宿舎はすっかり空っぽでした。」
今回の裁判に深く関わる者として召喚するために人を送ったが、誰も見つからず戻ってきた。
すでに都中を探し回ったが、まったく手がかりがないという報告を受けたベアティは、無意識に舌打ちしながら尋ねた。
「まだ王国を出てはいないはずよね?」
「はい。ほんの少し前まで王宮内で目撃されていましたから。完全に逃げるには時間が足りなかったはずです。」
「よし。」
小さく頷きながら、ベアティは口を開いた。
「では、捕まえてこなければね。」
この数年間、さまざまな名目で王国各地に情報網を張り巡らせていた。
そのおかげで、どこにでも指示を出せば即座に情報を得られる十分な手段を確保していた。
すでに王国は、うっそうとした樫の森のようには見えなかった。
「できる?」
「はい!」
当然のように無垢な幼い声で問いかけるアガシに、スハは目を輝かせて自信満々に答えた。
スハを送り出し、一人になったベアティは考えに沈んだ。
『それで、これからするべきことは……』
すっ。
机の上の書類をめくっていた黒い瞳が、窓の外に向かう
遠くに王宮の屋根が見えた。
今まさに頭を抱えている誰かの姿を思い浮かべながら、ベアティは指先で机を軽く叩きながらつぶやいた。
「結局、国王は新聖帝国と交わした正確な取引条件を明かさなかった。」
公開裁判が請求された日。
まさか自分にこんなことが起こるとは信じられないとでも言いたげに、国王の顔は青ざめ、一瞬呆然としていた。
ベアティの一言に対して、国王は何の返答もせず、ただ体調がすぐれないと言い訳をして、そのまま宴会場を後にした。
『それで、国王は一体何を取引したんだろう?』
考えを巡らせながら無意識に唇を噛み締めつつ、ベアティはこれまでに得た情報を整理した。
『当時、新星帝国が要求したのは聖遺物だったが、国王が実際に渡したのは遺体だった。』
以前、国王と敵国の使節団が密かに取引していた話は確かに記憶にあった。
『だが、その新しい遺体を敵国側が直接持ち帰ったところを見ると、単なる出来合いの品ではなさそうね。では、新星帝国は聖遺物ではなく、私たちの王国民の遺体を持ち帰って何をするつもりなの?』
新聖帝国の連中は、大戦争以降、事実上の敵国第1号として依然として慎重に監視されている対象であったが、もう少し注意深く調査すべきだと考えながら、ベアティは思考の焦点を移した。
『国王もあちらから何かを受け取るために取引をしたはずだ。その新聖帝国から受け取った対価とは何なのか?』
アストルム王国の国王が敵国と手を結ぶほど欲していたものが何なのか、いまいち思い当たることがなかった。
そして、その対価をすでに受け取ったのか、一部だけ受け取ったのか、それともまだ受け取る前なのかさえも、今のところは分からなかった。
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数日後。
ベアティの期待に応えるかのように、難なく新聖帝国使節団の行動を突き止めたスハが報告を上げた。
首都を離れた使節団の移動経路を確認。
その後の進路を予測し、使節団の親衛隊を確保。
だが、確保した使節団のメンバーの中で、裁判のため召喚されるべき人物を確認している最中……
「何?」
ベアティは驚き、喉を鳴らしながら思わず反応した。
「一番背の高い男がいなかった?」
「はい。馬車を含めてすべて捕らえましたが、移動中に抜け出したわけではなさそうで……」
この程度のミスで主人を失望させるとは。
萎縮した護衛の目が、恥ずかしそうに伏せられた。
『使節団の中で最も背の高い男。誰なのか見当がつく……』
最初に宴会場で目にした、金色の瞳が思い出された。
敵国の人物でありながら、アストルム国王の部屋を気軽に出入りしていた新しい従者。
使節団をこっそり捕まえてきたにもかかわらず、目立たなかったとすれば、単独行動している者が一人だけだという結論に至った。
『あの男だけが単独で行動していたの?』
最初から使節団とは別の動き方をしていたのだ。
何のために彼が随行者と別れて行動したのか、一つ一つ可能性の高い事柄を考えながら、ベアティは呟いた。
「何か気になる。」
「も、申し訳ありません!」
「ん?」
命令を完璧に遂行できず、主人を困らせるとは!
すっかり涙目になって床にひざまずいて許しを請うスハを、ベアティは別の考えをしていたが、独り言だと言って優しくなだめた。
スハが扉を閉めて出て行き、彼が提出した報告を手に取った。
ベアティは再び手にした文書を読み、目に留まった一節を声に出した。
「ウルトゥル・ラモン。爵位は特になし。神殿騎士団所属?」
神殿騎士団に入団すると、世俗との関係を断つことを意味し、貴族であっても何の爵位も名乗れないという説明が添えられていた。
報告書に小さく描かれた鷲をかたどった従者の印章を確認したベアティの黒い瞳が鋭く光った。
「この従者を探さなければならない。」
執務室の鐘を鳴らし、指示を出してから間もなく、彼女が呼びつけた人物が扉を開けて入ってきた。
久々に顔を合わせた相手を見て、ベアティは微笑みながら口を開いた。
「シャクランテ。『神の手』の名のもとに調査を依頼したい件がある。」








