こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

45話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 姉の面影②
そしてドアを開けた瞬間、向こうからやってきたベッキーと鉢合わせた。
「まあ、お嬢様!ちょうどよかったです!食事の時間です。食堂へご案内しますね。」
「……うん。」
レリアは再び部屋に戻り、バスケットを置くとベッキーの後に続いた。
ほかのことはともかく、食事の時間を逃すわけにはいかなかった。
『ごはん食べてから、作戦開始だ。』
たくさん食べて力をつける必要があった。
レリアは決心して、食堂に入った。
「領主様、奥様はちょっと出かけられました。夕食は一緒にするそうなので、心配しないでとのことです。」
ベッキーの朗らかな言葉にも、レリアは少し緊張した。
食堂内にすでに席を取っている人物がいたからだ。
上座に座っていたカリウスもまた、レリアを見るやいなや顔をしかめた。
レリアは気圧されそうになりながらも、毅然と歩き、カリウスと対角線上の席に座った。
「………」
カリウスの座る席から最も近い場所だった。
彼はレリアを見つめながら、視線をそらした。
二人は互いに「君のせいで食事の時間が台無しになったらどうするんだ。」という表情で見つめ合った。
ここで数ヶ月を過ごしたものの、二人が一緒に食事をするのは初めてだった。
カリウスは、レリアが公爵夫妻と一緒にいる時以外は、絶対に食堂に現れなかったからだ。
そんな中、ちょうど食事が運ばれてきた。
「本日の昼食は、お嬢様が一番お好きな料理をご用意しました。あ、それと、カリウス様もこの料理がお好きなんですよね?」
料理を直接運んできた料理長がにこやかに言った。
その言葉にカリウスの眉がぴくりと動いた。
使用人たちは料理長が運んできた料理をカリウスはレリアの目の前に、たっぷりと食事を盛り付けてくれた。
「この料理が好きなんだって?」
カリウスが鼻で笑いながら尋ねた。
「はい。」
レリアは『それが何か?』という表情で答えた。
「………」
この料理は首都ではなかなかお目にかかれない一品だった。
シュペリオン領地でのみ栽培される、特別な香りのブドウを使ったワインが要となっている。
そのワインで熟成させた牛肉と、香り豊かなキノコを一緒に煮込んだ料理だった。
誰もが抵抗なく、美味しく食べられる料理だ。
しかし、カリウスは食べ方が少し違っていた。
彼は、遠く海を越えて輸入された特別な香草を添えて食べるのを好んだ。
カリウスは香草が入ったガラスの小皿を手に取った。
そして乾燥した草のような香草をステーキの上にパラパラと振りかけた。
彼が小皿を置くや否や、レリアも手を伸ばして香草をパラパラと振り始めた。
「はっ……!」
カリウスは呆れたようにレリアを見つめた。
この香草は、強い苦味と独特の香りを持っていた。
口の中をすっきりさせる効果があるが、普通の人々にはあまり好まれない風味だった。
なのに、この幼い子が香草を食べるって?
カリウスはしかめっ面をしながらレリアを見つめた。
正直なところ、ここ数か月の間、カリウスもレリアへの疑念が少しずつ薄れてきていた。
この少女が本当に姪の娘なのか、疑わしく思う瞬間が何度もあった。
それでもカリウスは、絶対にそんなはずはないと自分に言い聞かせた。
その裏にある罪悪感が恐ろしくて、無意識に疑いを振り払っていたのかもしれない。
「………」
カリウスはゆっくりと目を細め、レリアを見つめた。
この子は、本当に味をちゃんと感じ取れているのだろうか、と。
それともただ興味本位で真似しているのか、カリウスは気になった。
正直、この香草は普通の人々、特に子どもには美味しく感じにくいものだった。
シュペリオン城でこの香草を食べるのはカリウス一人だけ。
両親である公爵夫妻もこの香草は好まなかった。
レリアは大きく切った肉を、香草をたっぷりとまぶして口に運んだ。
「……うん……。」
肉をかみしめると、レリアはすぐにうっとりした表情で肉を呑み込んだ。
その様子を見ていたカリウスの表情がこわばった。
子どもがこの香草をこんなに美味しそうに食べるのを初めて見た。
演技か?
そんな考えも頭をよぎったが、レリアはカリウスを気にも留めず、ひたすら肉にかぶりついて一生懸命食べ始めた。
さらにレリアはもうひと口すくい、スープとサラダにまで香草を振りかけて食べた。
「………」
カリウスは肉を置き、自分の皿を見つめた。
そして、ふいに込み上げる涙をこらえきれずに流した。
ふと、自分の幼いころを思い出したからだった。
シュペリオン公爵家で、この香草を好んだのはエリザベスとカリウスだけだった。
他のみんなが嫌っていた香草を、二人はメインディッシュはもちろん、サラダにもスープにも入れていた。
公爵邸に香草が持ち込まれるのは、純粋にこの二人兄妹の特別な嗜好のためだった。
幼い頃のカリウスは、姉と自分だけに共通点があると感じ、それをとても特別に思っていた。
「……」
カリウスは押し寄せる感情を抑え、再び肉を手に取った。
一方、レリアはカリウスを気にする様子もなく、すでに食事をほぼ終えていた。
香草が山盛り入っていたガラスの器も、気づけば空になっていた。
カリウスは揺れる瞳でレリアに視線を向ける。
この数ヶ月間、レリアに感じていた“ある思い”――これと似たような点がひとつ、またひとつと思い浮かんでいった。
もしそれが一つか二つ程度だったら「たまたまだ」と軽く流せたかもしれない。
けれど――あまりにも多かった。
言葉にならないほど。
単なる偶然を超えて、心臓がドクン、ドクンと大きく跳ねるのを感じる瞬間が何度もあった。
今日も同じだ。
これまで積み重ねられていた共通点に、今日さらにひとつが加わり、どうしようもないところまできてしまった。
小さな点がひとつ、またひとつと集まって、ついには大きな円を描いたように。
頭では否定しても、胸の奥では認めたくなかった思いが、一気に崩れ落ちた。
「………」
食事を終えたレリアは、ようやくおそるおそるカリウスを見た。
『なにさ、一口も食べてないじゃない。』
カリウスの前に置かれた料理は、手つかずのままだった。
『私と一緒に食事するのがそんなに嫌なの……?』
正直、戸惑った。
まさかここまで自分を嫌っているとは思わなかった。
『一緒にご飯を食べるのも嫌って、死ぬより嫌ってことじゃない。』
少し大げさではあったが、レリアにとって最も大切な価値の一つが「食事」だった。
しかも、カリウスの目元にはうっすら涙まで浮かんでいた。
泣いているのだ。
『大人の男が泣くほどなら……よっぽど私が嫌われてるってことよね。』
レリアはぼんやりと髪をいじりながら、空になったガラスのお皿を見つめていた。
『それか、私が全部あの香辛料を食べ尽くしたからかも……。』
思ったよりも繊細で、傷つきやすい人なのかもしれない。
レリアはそっと立ち上がった。
そして、ベッキーの手を取り、食堂を出ようとした。
「ちょっと待って。」
カリウスがレリアを引き止めた。
「………」
レリアが振り返ると、カリウスはしばらく口ごもってから言った。
「もしかして、エクレアを食べたことはある?」
「……」
エクレアって何?
レリアは肉を切りながらベッキーを見た。
「いえ、お嬢様はエクレアを召し上がったことはありません。」
「……」
いつの間にかカリウスは膝に置いていたナプキンを払い、席を立った。
そしてレリアに「ついてこい」と言わんばかりに無言で促した。
「………」
今、何をしようとしてるの。
レリアは庭がよく見えるテーブルに座っていた。
目の前のテーブルにはデザートが並んでいる。
食後のデザートタイム。
レリアが食事の後に楽しみにしている時間だった。
でも今日は、カリウスと一緒だった。









