こんにちは、ピッコです。
「死んでくれと言われて」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

33話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 最初の協力⑨
尻尾を噛み合って絡まった厄介な思考は、外部からの邪魔でぴたりと止まった。
「……何してるの?」
いつの間にか、だらしなく垂れていた彼女の襟をきっちり整えていたチェフが、彼女の顔を覗き込んだ。
彼は何の表情もない顔で答えた。
「吐きそうな顔してるよ。ちょっと横になったら?」
呆然と目をぱちぱちさせていたリンは、チェフに尋ねた。
「どうして分かったの?」
「何が?」
「さっき本当に吐きそうだったんだよ。」
うん。困ったような表情で背中をさすった彼は、すぐさま応急処置室へと向かい、洗面器を持ってきた。
「吐きそうだって。ちゃんと見てて。」
「う、うん……。」
「じゃあ、行くよ。退屈になったら呼んで。こっちも暇だから。」
吐きそうだからってさっさと逃げていく彼を見て、あきれて笑い、ふと勇気を出して声を張り上げた。
「ちょっと、チェフ!待ってよ!」
しばらくして。
チェフが壁の向こうからひょこっと顔を出した。
「具合悪い子が何で叫んでるの?」
様子を見ていたリンが、慎重に尋ねた。
「ジハード様の剣術授業さ。僕も聞いていい?」
「それは僕じゃなくて、レテ後継者に聞かないと。聞いた話だと、家門ごとに一人ずつ……」
コンコン。
「……誰か来たみたい?」
突然のノック音に、オルガが慌てて応接室に走っていった。
少しして、彼はすっかり顔色を失くして戻ってきた。
「フ、フレンヒルディ様がいらっしゃいました。な、なんで来たんでしょう?あ、具合が悪くて倒れたって伝えましょうか?」
誰だって?
「フレンヒルディ?あいつがなんで?」
「私が知るわけないでしょう!」
「とにかく中に入って。あと、チェフ、君は……」
出て行け。
と言おうとしたリンの要求は、あっけなく無視された。
チェフは部屋を出るふりをして、素早くベッドの下に身を隠したのだ!
慌てて頭を下げてベッドの下を覗くと、床にぴったりくっついているチェフがにやりと笑っていた。
「君……今何してるの?」
「協力。」
それもまた妙な……。
「おい。」
その時、廊下の向こう側から冷たい風とともに挨拶の声が聞こえてきた。
まるで何事もなかったかのように、落ち着いた態度で話しかけてきた。
まるで普段通り冷静なチャリムのフレンヒルディのように。
リンは目の前に現れた機会に、わずかに顔をしかめていた。
「こんにちは、お姉さん。」
「挨拶はいいから。とりあえずこれ受け取って。あらかじめ言っとくけど、好意だなんて勘違いしないで。手ぶらで来るのもなんだから持ってきただけ。」
リンの視線は、テーブルの上に「トン」と置かれた小さな箱に向けられた。
見た感じ、キャンディかゼリーが入っているようだ。
「ありがとう」と言う間もなく、フレンヒルディが本題に入った。
「ねえ、あそこに私は何のために呼ばれたの?」
あそこ?
『クッキー事件のことを言ってるんだろうな。』
リンは肩を軽くすくめながら答えた。
「からかうために呼んだんだよ。」
「からかう?」
「お姉さんが嫌っている人たちが困ってる姿、見たかったから。実際に侮辱しようとして呼んだの。ああ、好意だなんて思わないで。大運河に突き落とされそうになったことへのお礼だから。」
「……は?」
フレンヒルディの表情は一瞬固まったが、それは紛れもない本心だった。
彼女の助言を受け入れて大運河に物を投げたおかげで、二番目の地主夫婦がリンに急襲することはなかったではないか?
「お前何者だ?」
首をかしげたフレンヒルディは鋭い視線でリンを見つめた。
「死にかけたって話は前に聞いたわ。それで人が変わったってこと? それにしても、あまりにも一瞬で別人みたいになったんじゃない?」
「バカみたいな質問ね。お姉ちゃんだってよく知ってるでしょ?私がどんなふうに、どれだけ必死に生きてきたか。まさか一生あのままだと思ってた?」
「………」
「もう、そんなふうに生きたくなかっただけよ。」
腕を組んでいたフレンヒルディが、彼女をちらりと見ながら答えた。
「……まあ、そうね。君の言うことも一理ある。人は一瞬で変わることもあるし。四年前のジハード家の坊ちゃんだってそうだった。でも、それでも私は納得できない。どうやったらそんなに簡単に心変わりできるの?」
『ジハード?』
その名前が唐突にここで出てくる理由は何だろう。
「ジハード家の坊ちゃんが変わったって………。」
そのときだった。
「お嬢様!」
突然、乱暴に飛び込んできたオルガが慌てた顔で呼びかけた。
「い、今回は二番目の奥様からのお呼びです!なぜ、なぜ、なぜ来たんでしょう?どうしたんですか?あまりに苦しんで必死だったと伝えましょうか?」
はあ。フレンヒルディに続いて、今度はキャロン?
『今日は何の日だ?』
別に捨てられたわけでもないのに、まるで名簿から名前がどんどん消えていくような気分だ。
リンと同様に、キャロンの訪問を聞いたフレンヒルディの顔もわずかに引きつった。
「私はこれで帰るわ。」
だが、リンはフレンヒルディを引き止め、彼女の手をぎゅっと掴んだ。
敵の敵は味方、という言葉もあるではないか?
「隠れて。」
「え?」
「隠れてってば!」
慌てたフレンヒルディをベッドの下に押し込んだ。
機転の利くチェフが下から彼女をぐいっと引き寄せて、簡単に隠すことができた。
『あっちより部屋もベッドも大きいからってこと? 利用しやすいってこと?』
ベッドの下から「ぎゃっ、な、なによ?」という慌てた声が聞こえたが無視した。
そしてそれほど時間も経たずに——
「体の具合はどう?ヤナ?」
第二夫人のキャロンが部屋に入ってきた。
彼女に続いて入ってきた侍女が、花一輪をテーブルにそっと置いてすぐに姿を消した。
キャロンは侍女が置いていった花をちらりと見たあと、チェフが座っていた椅子に腰を下ろした。
まるで優しい心の持ち主のような、劇団の俳優でも真似できないほど自然な温かい微笑みを浮かべながら。
「顔色が悪くて心配なの。」
こんな女性を相手に、初対面で好感を抱いたとは。
ほんの数日しか経っていないのに、すでにどこか気詰まりに感じる感情だった。
「心配しないでください。大丈夫です。花束は贈り物ですか? ありがとうございます。」
「感謝だなんて。昨日あんなに消耗して驚いたんだから。胃腸が弱いって言ったでしょ? だから警告したのに。古い食べ物は絶対に口にしてはいけないって。」
「すみません。」
「そのクッキーは私に渡して。自分の手で処分しないと気が済まないから。」
クッキーの箱を大主君に渡したというチェフの言葉が思い出されたが、それをそのままキャロンに話すつもりはなかった。
「心配しないでください。胃が痛んだ後、すぐに処分しました。」
「この奥様の前では嘘をついちゃダメだよ、ヤナ。侍女たちがゴミをひっくり返して調べたけど、あのクッキーの箱は見つからなかったらしいね。そんなにクッキーが惜しかったの? 欲しいなら、いくつでも作ってあげるよ。」
「そんな……私は本当に捨てたんです……。誰かが持って行って捨てたんじゃないでしょうか?」
素直な顔で釈明したものの、キャロンは少しも信じていないようだった。
彼女は探るようにゆっくりとリンの顔を見つめながら、懐から何かを一つ取り出して差し出した。
それは——手紙だった。
「ビルヘルムからよ。」
……ビルヘルム?
『それ、誰?』











