こんにちは、ピッコです。
「悪党たちに育てられてます!」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

102話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 親友との再会⑦
「あの、公女……」
「この子と話をしたいのなら、まず私と話をするべきです。」
クルノー・エタムが近づいてきた貴族の前に立ちはだかり、そう言った。
「エイリン・エタム。」
「はい?」
「ずっとここにいるつもりはないだろう?」
去る前に、クルノー・エタムは言葉を残しながら困った様子の貴族を自然に連れて行き、離れていった。
『私もずっと守られてばかりではいられない。誰か一人を捕まえておかないとな。』
そう考えて、私はゆっくりと周囲を見回す。
誰もが忙しそうで、さらに助けを求められる相手はいなかった。
その時だった。
またあの不快な視線を感じた。
こっそり視線を動かすと、昨日見たあの男がまた私を見つめていた。
目が合うと、今度は私に近づこうとしているのが見えた。
男が壁から体を離した瞬間だった。
宴会場の入口から、見慣れない誰かが入ってきた。
『あの人、なんでここにいるんだ……?』
それでも、ちょうど良かった。
私は不快な男を避けて人混みをかき分けながら、急いで足を運んだ。
「院長様!」
アルビオンがヒル・ローズモントと共に静かに入場していた。
私の胸元に二人の視線が集まった。
実は二人だけではなかった。
正確には、私に視線を向けていた全ての人々の視線が一気に集中したように思えた。
『……誰かは分からないけど、今日のことが終わったら、お父さんに話さなきゃ。』
あの不快な男が何かを仕掛けそうな気がする。
「…エイリン?」
「院長、ここで何をしているんですか?」
「以前話していた甥が、一人で行くのが怖いから一緒に来てくれと言うので来たんだ。」
ヒル・ローズモントか?
『一人で行くのが怖いって?』
何の詐欺を堂々とやってるんだ?
唖然とした表情でアルビオンの隣に立つ少年を見た。
制服を着たヒル・ローズモントが、俺を見て嬉しそうに目を大きく開き、そして満面の笑みを浮かべている。
「ここで会えるなんて、本当に嬉しいです、お嬢様!」
ヒル・ローズモントが明るく笑いながら近づいてきて、私の手を掴んで激しく振った。
『再会が嬉しいなんてただの幻想……』
とはいえ、私は誰だ?
ビジネスの民ではないか。
私は営業スマイルを浮かべながら、ヒル・ローズモントの手を握った。
「はい、先生!お久しぶりです!」
ヒル・ローズモントの肩越しに視線を向けると、あの不快な男が私を見つめているのが目に入った。
「そんなにじっと見つめるんですか?」
ヒル・ローズモントがふっと私の顔の前に自分の顔を近づけ、笑った。
「いえ、何でもありません。」
「エイリン、どうして一人なんだ?保護者は?」
アルビオンが眉をひそめ、軽く舌を打ちながら尋ねた。
どうやら彼は、児童虐待を憎む人間のようだ。
「ちょっと用事ができたって言うから、一人で探索してました!院長はあの方のいる場所へ無事に行ってきましたか?」
「……ああ、行ってきた。手紙も受け取って……。」
アルビオンの声が重くかすれていた。
「あの子は、私を恨んでいなかったんだな。」
アルビオンの声が微かに震えていた。
重く沈んだ目を見つめていると、何となく落ち着かない気持ちになる。
「すみません、もう少し早く届けるべきでしたが……。」
「お前がいなければ、一生知ることはなかった。感謝しなければならないことだ。」
「それでも、ごめんなさい。」
私がもっと早く言葉を発していれば、もう少し早く会うことができただろうに。
5年前の約束をあまりにも遅れて守ってしまった。
申し訳なさに頭を深く下げると、頭上からアルビオンの声が聞こえた。
「離れ離れになっていた家族と再会し、死を免れた友人もいたと聞いた。その代わりに長い眠りに落ちたとも聞いた。目を開けたとしても、しばらくは正気を保てなかっただろう。」
いいえ、私は違いました。
その一言を言ってあげるために、普段は口数の少ないこの男が長々と話を続けていることに驚きつつも感謝した。
「子供にはその資格がある。申し訳なく思う必要はない。死んだ人より生きている人の方が大事だ。」
アルビオンが私の頭を軽くトントンと叩いた。
髪が乱れないように配慮しているのも、彼なりの気遣いなのだろう。
その時、ヒル・ローズモントがそっと割り込んできた。
「おじさまは、公女様ととても親しいのですね。」
「昔に少しだけ知り合ったことがあるだけだ。」
「そうなんですか?私よりも親しいように見えました。私たちは血のつながった家族なのに、もちろん長い間会っていませんでしたが。」
「……。」
「両親が亡くなってから、誰も私たちを助けてくれなくて、本当に大変でした……。」
ヒル・ローズモントの言葉に、アルビオンの目がわずかに揺れた。
彼の憂鬱と罪悪感を刺激するような行動に、私はヒル・ローズモントを見つめた。
「……叔父がいたら、そんなこともなかったでしょう。」
「……すまない。」
アルビオンの表情が暗くなった。
ヒル・ローズモントは見えないように微笑んだ。
『ずる賢くて、性格の悪い奴め。』
性格が悪いのは知っていたが、帝国の栄誉まで利用しようとしているとは。
アルビオンは、その正体を簡単に察していたようだった。
『それと……。』
ヒル・ローズモントの後ろで、そわそわしているこの子は一体誰だ?
さっきから指をもじもじさせながら、視線を泳がせているのが見えた。
ヒル・ローズモントは私の視線が向かったことに気づくと、後ろにいた子供の手首をつかみ、私の前に引っ張り出した。
「お嬢様、ご紹介させてください。私の弟、フィル・ローズモントです。」
「あ、ああ、こんにちは……フィル・ローズモントと申します。」
素朴で、ころころとした目をした少年。
ヒル・ローズモントと同じ薄灰色の髪と、彼よりもさらに淡いオリーブ色の瞳が特徴的だった。
くっきりした目元に比べて、ふっくらとした丸い顔立ちは、まさに草食動物そのものだ。
「エイリン・エタムです。」
「え、え、エタム令嬢!あ、兄上から話はたくさん聞い、聞いていましたが……。」
目を合わせることすらできない様子は、演技とは思えなかった。
『ヒル・ローズモントがこんなに間抜けなキャラクターをどこで作り上げたんだ……。』
私の弟を見て、急に態度を変えたのか?
「フィル。」
ヒル・ローズモントがフィル・ローズモントの肩に手を置くと、フィルの肩を軽く二度叩いた。
「言い訳ばかりしてるなって兄貴が言っただろう。無視する気か?」
「い、いや、兄さん。」
アルビオンは目をそらして小さく震えているようだが、私には全部聞こえている。
「言ったよな、そうやって言い訳したところで、誰もお前を好きにはならないって。」
またガスライティングか。
「院長、新しい患者の時間は?」
外から職員の声が聞こえ、その直後に名前が呼ばれると、アルビオンが口を開いた。
「娘にも会えたことだし、そろそろ戻らないと。」
「……戻るんですか?」
私がちょうど返事をしようとしたとき、ヒル・ローズモントが口を開いた。
「そうだね、あの子たちも僕を待っているだろうから。」
「……じゃあ、私も必要なんですか?」
ヒル・ローズモントの言葉に、アルビオンの口が閉じられた。
確かに、彼の立場からすれば、地位も、財産も、名誉も持って成人式を済ませた貴族の令嬢よりも、何も持たない孤児院の子どもたちに会いに行くことの方が意味があると考えているのだろう。
しかし、罪悪感があって、それを口にすることはできなかった。
実際、彼が罪悪感を抱く必要などない。
彼は貴族から捨てられ、平民になった身だったのだから。
英雄として称えられ、戦争に参加していたから気づかなかったのだろう。
『ヒル・ローズモントは……いつも人を試していた。』
小説でも、彼は信じられる人を求めていた。
だからいつも誰かを試し、弟を手元から離さず、ヒロインに“覚悟”を見せたワイバーンを求め、「君を信じる」と言ったヒロインを望んでいた。
しかし実際、ヒル・ローズモントが物語の中で得たものは何もなかった。
『このイチジクのように裏切られてばかりの人間にも、これほどまでに酷く搾られた理由があるんだろうな。』









