こんにちは、ピッコです。
「ニセモノ皇女の居場所はない」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

102話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- この世界は④
「この人たちが私にこんな好感度を持っているって?」
皇帝はそうは言っても、三人の信頼できる人たちが妙に思えた。
まずナサールとジェレミアの好感度がゼロだという点が信じられなかった。
ナサールはフィローメルに告白までした人で、ジェレミアは最近彼女と特に親しくなった関係だった。
それに対して、キリアンであれば、恐らくデビュー当時、エレンシアと踊っていた騎士キリアンを指しているようで、フィローメルとは顔しか知らない程度。
そんなキリアンの好感度がなんと76%もあるなんて……。
「あっ!」
気づくのが一歩遅れた。
これはフィローメルではなくエレンシアの好感度の話だった。
それなら当然落ちる。
それはそうとして……。
『ナサールはエレンシアに一ミリの好感度もなかったんだな。』
なぜか少し気分が良くなった。
同時に、すでに彼を拒絶した立場でこんなことに喜んでいる自分に呆れた。
そのとき、いつの間にか後ろに近づいてきた女性が話しかけた。
「案内板の下に描かれている手の形の表示に手をかざすと、プレイヤー様の好感度が表示されます。」
女性が隠していた場所には、確かに手の形の絵があった。
「私の好感度……」
他人の気持ちを丸ごと覗き見するようで少し気が引けたが、正直に言うと興味があった。
『この人たちは私のことをどれくらい好きなんだろう?』
フィローメルはドキドキと心臓の鼓動を感じながら、そっと表示に手をかざした。
すると、数値とグラフが変化した。
-ユースティス(家族):91%
-ナサール:94%
-ジェレミア(家族):88%
-キリアン:0%
総合好感度:273
期待よりずっと高い数値が出てしまった。
フィローメルはなぜか恥ずかしくなって壁をドンドン叩く。
『……ちょっとこれ信じていいの?』
ところがふと疑念がむくむく湧き上がった。
『みんな私のことこんなに好きだって?なんか間違ってない?』
人の内面的な感情を数値化するなんて、最初からあまりにも突飛なことだったが……。
そんなふうに考えると、この商店の存在自体が、アリス・エレンシアの記憶からして非現実的だった。
フィローメルは少し考えたが、結局受け入れることにした。
彼女は自分が思っていた以上に愛されていることを感て、胸がじんわりと熱くなる。
しばらくして、展示台の前に戻ったフィローメルは、異変を発見した。
「え?商品が変わった?」
確認してみると、黒一色だった商品にいくつかの色がついていた。
しかも、どれも普通に触れることができた。
その中には「上級知恵の秘薬」もあった。
料理に薬草を加えて調理していたフィローメルは、それを解禁する条件が表示されているのを見つけた。
『好感度は200以上だと言ってた。』
記憶によればエレンシアの好感度は158で、自分のは278だった。
好感度が上がったので、自然とロックされていた商品も解放されたのだ。
「不思議だね。」
フィローメルは素直に感心しながら、ほかの商品も見て回った。
知恵の秘薬の横には力の秘薬があった。
容器は同じだが、薬の色だけ赤い系統だった。
「そして幸運の秘薬、体力回復薬、愛の妙薬……。」
ウィンドウに出てくる説明を読んでいるうちに、時間が経つのを忘れた。
そんな中、一つのアイテムが目に留まった。
「……上級確証器。」
確証器の販売禁止はいつ解除されるのだろう!
確かにエレンシアはそう考えていた。
「確証器」という名前からすると、彼女の知る「確証石」と似た役割を果たすもののようだった。
タッチすると、ウィンドウが開かれた。
【上級確証器 (2/2)】
説明:使用者に関する疑念を広く解消し、信頼度を高めます。
持続時間:30日
価格:2500ゴールド
フィローメルは眉をひそめた。
『信頼度?好感度と同じようなもの?』
妖精に聞いてみると、信頼度が高いと好感度が上がりやすくなり、ゲームもスムーズに進められると答えた。
『いろいろあるんだね。でもそれより気になるのは……。』
色がついた上級確率機とは違い、下級と中級確率機は依然として黒かった。
エレンシアの言葉通り、販売不可のようだ。
理由も書かれていた。
【下級確証器】
不正使用が頻発しており、現在販売が中止されている商品です。
中級確証器の説明もこれと同じだった。
「不正使用?」
不正使用と言われても、何かそんなことがあるだろうか。
疑いではなく悪口であっても表示されるのだろうか。
「でも、わざわざ自分の悪口を表示するだろうか……」
ふと、頭に浮かんだ考えに思わず独り言を漏らした。
『自分の疑念を表示できるなんてことが……』
ポルラン伯爵が以前言っていた。
フィローメルに関する悪い噂が異常なほど早く広まったと。
ジェレミアと中央広場に外出したとき、偶然耳にした民衆の会話の内容も気になっていた。
ある人は妙に偽の皇女に対して否定的な感情を抱くようになったと言っていた。
「調べる価値はありそうだ。」
フィローメルは上級確率機を買うことに決めた。
好感度が見られるなら商品を買うことも可能になるはず。
しかし問題があった。
「……お金がない。」
ポケットを探ってみたが、2500ゴールドはおろか、2ゴールドすら出てこなかった。
そもそも外出する気持ちもなく、持ってくる理由もなかったのだ。
フィローメルは気まずい気持ちで、なんとなく店員の隣でモジモジした。
「これを買いたいんですが……お金がなくて……。取り置きはできませんか?必ずまた来ますので……。」
「2500ゴールドです。」
「はい、2500ゴールドなのは分かるんですけど、今はお金が……。」
「プレイヤー様の所持金は132万8972ゴールドです。」
「百三十二万……え?」
「132万8972ゴールドです。」
132万だなんて、金庫に保管してある現金を全部合わせても到底足りなかった。
『もしかして他の財産の現金価値まで全部合わせた金額なの?』
以前ユースティスが自分に譲った財産と、時々くれた高価な品々を合わせればそのくらいになるのかもしれない。
フィローメルは自分でも計算していなかった、正確には知らなかった財産の価値をこの機会に知ることになった。
思わず口がぽかんと開いた。
『(2/2)という表示からして、買える上級確率機はたぶん全部で二つのようだ。』
『エレンシアがこれでごまかせないように、二つとも買わなきゃ!ちょっと待って……。』
彼女は陳列台を一通り眺めた後、店員に尋ねた。
「売り切れた商品はいつ再入荷されますか?」
「約3か月後です。」
では今、自分が購入可能な商品を全て買い占めたら、エレンシアはどう思うだろう?
フィローメルはにっこりと笑い、指で陳列台をなぞるようにした。
「ここからあそこまで全部ください。」
こうして彼女は、手に入る商品を一つ残らず購入した。
「エレンシアがなぜまとめ買いしなかったのか分かったわ。」
山のように積み上げられた商品を見て、フィローメルはそう思った。
持って行くには量も多く、とても重かった。
「でも、この商品があれば問題解決!」
彼女はさっき買った商品の中からひとつを取り出した。
『インベントリ拡張機能』というちょっと変わった名前のバッグだ。
不思議なことに、フィローメルがバッグに物を入れると、入れた分だけちゃんと収まった。
ルグィーンのローブの主ポケットと似た仕組みのようだった。
「さあ、行こうか。」
バッグを背負って出発する前に、フィローメルは店の商品棚を見回した。
もう残っているのは、いくつかの黒い商品だけだった。
『キャラクター別スペシャルコスチューム、1回目クリア特典、隠しエンディング解放券、イベントスキップチ…』
名前だけ見ても、何の商品なのか全く分からないものばかりだった。
その中の一部は、解禁条件として「一つ以上のエンディングを見る」や「全てのエンディングを見る」などを求めていた。
エンディングが何を指しているのかは分からないが、現時点では手に入れられないものだった。
『もし手に入れることができたら、また後で来て考えてみよう……』
幸いなことに、フィローメルが持てないということは、エレンシアも持てないということだった。
「エレンシアがどれだけ頑張っても、200以上の好感度を得るのは難しいだろう。」
ジェレミアはエレンシアを嫌っていたし、ナサールも直接的には表現されなかったが、そんな感じだった。
残念ながら今取れる手段はこれですべてだ。
もう帰る時が来た。
彼女を待っている家族のもとへ。
「さようなら。」
去る前にフィローメルが挨拶すると、妖精は手を振った。
「プレイヤー様、またお越しください。ゲームシステムを利用すれば、どこからでも商店に入店できます。」
「システムって何ですか?」
「さまざまなシステムを適切に利用して、ゲームを楽しくプレイしてください。」
マニュアル的な返答だった。
「それでシステムって何?」
フィロメルは結局答えを得られないまま、最初に来た方向へと戻っていった。
しばらく歩くと、周囲の霧が晴れてきて、あっという間に視界がクリアになった。
最初に目に入った光景は……
「ルグィーン、待て!」
「もう少しだけ待って!」
「ここであまりにも大きな力を解放したら、宮廷魔法使いたちに見つかってしまいます!」
ジェレミアは背中を、カーディンは左腕を、レクシオンは右腕を父親の体にしがみついて押さえつけていた。
三兄弟が父親の体にしがみつき、彼を引き留めようとしているところだった。
「……何してるんですか?」
フィローメルの問いかけに、彼らは彼女の存在に気づいた。
「フィル!」
ルグィーンは駆け寄ってきて、娘の様子を細かく調べた。
「どこか怪我はない?この間どこにいたんだ?」
「私は大丈夫です。ただちょっと疲れただけです。」
フィローメルは娘が何の魔法もかかっていないことまで確認した後、彼はようやく安心した。
レクシオンが尋ねた。
「そもそも急に消えた数十分間、いったい何があったんですか?」
フィローメルはびくっとして後ずさった。
「十五分ですか?一時間じゃなくて?」
「十五分です。」
体感的には少なくとも一時間は商店で過ごした気がした。
フィローメルが自分が経験した奇妙な現象を説明しようと言葉を選んでいると、ルグィーンが先に言った。
「顔色が良くないね。まずは今日は休んで、明日話そう。」
確かに体に痛みはなかったが、すぐにも寝てしまいたいほど疲れていた。
それもそのはずで、旅から戻ってきてすぐにエレンシアの記憶を見せられ、星光商店に行ったりと、フィローメルはずっと緊張状態が続いていたのだ。
とりあえずルグィーンの言う通り、一晩休んで明日話をすることにした。









