こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

120話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 大きな罪③
ホールは驚愕に包まれていた。
ついさっきまで美しい銀髪と金色の目をしていたマリアンヌが、瞬く間にカラスのような黒ずんだ姿へと変わってしまった。
それだけでも十分衝撃的だったが、私にとってさらに大きな衝撃を与えた理由は別にあった。
『あれは……』
私は自分の袖口をぎゅっと握りしめた。
「……私じゃない……」
皇族たちが不審そうな顔で私を見つめてくるのを感じた。
しかし私はその視線に気を取られている余裕などまったくなかった。
カラスのように黒くて粗い髪と、苔がかったような緑色の瞳、そしてその顔立ちまで──それらすべてが、私が前世で「アリサ」だと感じていた姿とまったく同じだった。
『でも、どうして?』
なぜ彼女が私と同じ顔をしているの?
私はこの事実をどうしても理解できなかった。
その時、ルーン様がまるで宣言するように言った。
「さっきまで彼女がしていたその顔は、彼女のものではなかった。」
「……!?」
人々の視線が一斉にルーン様に向けられた。
彼は静かに言葉を続けた。
「他人を惑わせ、見た目をごまかすなど造作もないことだ。すでに亡くなっている者であれば、なおさら模倣はたやすかっただろう。」
「……死んだ人って?」
震える声でアドリンがルーン様に尋ねた。
「分かっているんじゃないか?」
ルーン様は静かに微笑んだ。
「ここで死んだ、アリサ・デル・イデンベレのことを言っているのさ。」
ああ、その瞬間、私は大きな頭痛が脳を貫くように感じた。
同時に脳裏には自然と映像が再生された。
目を閉じてもその光景は消えなかった。
『ここは……』
映像を見つめながら、私は目を見開いた。
私が最後に裁判を受けた、あの大きなホールだった。
そこでは人々が私を見て、「処刑」すべきだと口々に言っていた。
ラキアスは私を殴り、皇帝は私に冷たい水を浴びせろと命じた。
エルシスも私が自殺さえできないように私を止めたのは、ただ私がマリアンヌを殺そうとしたからだった。
明らかな証拠を持って、私が彼女を毒殺しようとしたから……。
『でも、私はそんなことしていない。』
あの時も今も、私は胸を張って言える。
私は決してマリアンヌを殺そうとしたことはない。
侍女の証言はただの誤解か、他の人にそそのかされた結果に違いないと、私は主張したかった。
もし家族が私の言葉に耳を傾けてくれていたなら…。
でも彼らは不思議なくらい、まったく私の言葉を聞こうとしなかった。
いや、妙なことは他にもあった。
そもそもマリアンヌという子は一体どんな子だったのか?
『……誰からも愛される子。』
そう思った。
誰もがあの子に目を向け、その声に耳を傾けていた。
彼女は愛らしい容姿に金色の瞳、優しい性格を持っていた。
私とは違って……
『……本当に?』
以前ならこの考えに少しの疑いも持たなかっただろう。
しかし今、この考えにはわずかな揺らぎが生じていた。
そしてまるでひび割れたガラスのように、外側にかすかな光が見えた。
本当にそうなのか?マリアンヌはそんな子だったのか?
『違う。』
私は闇の中で目が開いたように、ようやく真実を見つめられるようになった。
映像の中には、私が裁判を受けたあの日の姿が映っていた。
長い銀髪を垂らした少女が、膝を抱えて座っていた。
一週間の監獄生活で体は傷ついていたが、黄金の瞳だけは変わっていなかった。
マリアンヌはその時、まばゆいばかりに光を放っていた。
「アリサ」の姿だった。
アリサは皇后の娘であり、幼い頃から人々の関心を一身に集めていた。
その金色の瞳と優しい性格のおかげで、彼女は「聖女」として崇められていた。
それに比べ、マリアンヌは静かで何を考えているのかわからない子だった。
侍女の妹としてやってきたあの子は、初めから人々の好感を得るのが得意ではなかった。
だが、その二人が入れ替わってしまった。
人々は知らず知らずのうちに錯覚に陥った。
アリサの姿を持つ者をマリアンヌと思い、マリアンヌの姿を持つ者をアリサと思い込んだ。
それは容姿だけの問題ではなかった。
立ち居振る舞いすら、そっくりだったのだ。
アリサは、「聖女」であるマリアンヌを毒殺しようとした罪で裁かれていた。
皇族たちは、そんな彼女に冷たい視線しか送らなかった。
それも当然だろう。
みんなに愛されていたはずの美しいマリアンヌが、思いがけずアリサを殺したのだった。
しかし人々は知らなかった。
彼らがマリアンヌを深く愛し、かけがえのない宝物のように大切にしていたその子が、実はアリサだったことを。
アリサは自分の無実を訴えたが、誰も彼女の言葉を信じなかった。
マリアンヌはそんな姉の姿を見て「怖い」と言って震えていた。
すると彼女の父親がアリサを引き離してくれた。
あろうことか、アリサの看守に無礼を働いたのだ。
状況はますます悪化していった。
結局アリサは再びあの独房に閉じ込められた。
そして一週間後には死刑に処されることになる。
こんなにも簡単だった。
すべてを欺いてアリサを殺し、マリアンヌは自分が聖女の座に就く。
地下監獄へ再び引きずられていくアリサ、マリアンヌはその姿を見て、くすくすと笑っていた。
その瞳は毒のような緑色をしていた。
誰も、誰一人として、彼女を止めることができなかった。
「……はっ。」
私はぼんやりと映像から抜け出した。
まるで漫画を何時間も見続けた後のように、目の前がくらくらした。
胃のあたりがむかむかして、吐きそうだった。
そしてあの映像を見たのは私だけではなかったようだ。
このホールにいた者なら、皆がその姿を見ただろう。
マリアンヌがアリサの身代わりとなり、彼女を陥れて、ついには死刑にまで追いやったその姿を。
「……これ、全部何なんですか?」
私はルーン様に直接問いかけた。
彼ならこの問いに答えてくれるはずだと思った。
その時、彼の瞳がかすかに揺れたように見えた。
「これ全部……」
一体どういうことなのか。
ルーン様は私に説明してくれた。
「見た通りだ。ここで起きた記憶を読み取り、お前たちに見せたのだ。」
「じゃあ……」
「この記憶が本物で、お前たちが見ていたのは洗脳された偽の記憶にすぎない。どうやって植え付けられたのか、十数年もの間ずっと続いていたとはな。」
洗脳されていたのか。
胸が締めつけられるように苦しくなった。
どれほど強力な洗脳だったから、これほどまでに長く効果が続いていたのだろうか。
私はゆっくりとホールを見回した。
マリアンヌを除いた皇族たちは泣いたり信じられないというような様子で、壇上にほとんど倒れこむようだった。
私も強烈な頭痛を感じたが、彼らほどではなかったし、エルミール側の人々は軽く目を伏せた程度だった。
たぶん、洗脳されていた期間が長かったからだろう。
抜け出そうとすればするほど、苦しくて辛かった。
そのとき、悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「そ、そんなはずないじゃないですか!」
私はぼんやりと振り返って、彼女を見た。
アドリンだった。
頭の激しい痛みのせいか、それとも別の理由か、彼女の顔は真っ赤になっていた。
彼女はしっかりとした声で言葉を続けた。
「私たち全員、洗脳されてたなんて……いっそ、あなたが見せたあの映像が偽物だって言ってくれた方が……」
彼女は嗚咽をこらえるように頭を抱え込んだ。
他の皇族たちや、強靭な剣士であるエルシスまでもが苦しみながら床を這っている中、彼女だけが口を開くことができたのはなぜだったのだろう。
私はふと、彼女がすでに結婚して宮殿を離れていたことを思い出した。
おそらく、宮殿を長い間離れていたため、唯一彼女だけがマリアンヌの洗脳からわずかに自由になれたのだ。
アドリンの言葉にも一理あった。
しかしルーン様は彼女の言葉を一言で打ち消した。
「それでは、お前たちの前にいるこの姿は何だ?」
それを隠していたのはマリアンヌだった。
彼女はもう肩をすっかり落とし、手で顔を隠していた。
まるでそうすることで、自分の姿を隠せるかのように。
アドリンはその問いに答えられなかった。
ただ、ただでさえ青ざめていた顔がさらに真っ青になっただけだった。
ルーン様が言った。
「洗脳されていたことを認めたくない気持ちは分かるが、お前の目の前にあるものが真実なのだ。」
「……あ、あなたは何者なの?」
彼女はすでに震える声で尋ねていた。
「突然現れて……あなたを信じる理由なんてない……!」
「……」
「そ、そうよ。あなたは……魔法使いなのよね?だからこんな幻を見せたんでしょう?私たちを騙すために……!」
ルーン様はアドリンに一歩近づいた。
アドリンは驚いて身を引いた。
しかしルーン様は、穏やかだが確信に満ちた口調で言った。
「私の名前は、ルミナス。」
「……!!!」
「人間たちが“光の神”として崇める存在であり、この世界の光を司る、光の精霊王だ。」
その言葉にアドリンは衝撃を受けた。
神の名を軽々しく口にすれば天罰を受けるというのは有名な話だった。
正気でなければ、ルミナスの名を名乗るなどあり得なかった。
さらにルーン様はすでに自分の超越的な能力を見せていた。
ようやくアドリンは彼の言葉を少しは信じ始めたようだった。
「あ、あなたが……?」
アドリンは呆然とルーン様の顔を見つめた。
信じがたい話ではあったが、それでも否定できず、ルーン様にはその話を信じさせるだけの圧倒的な存在感があった。
「……それが本当なら……」
彼女はついに震える声で言葉を続けた。
「それが事実だというの……?」
「そうだ。これから洗脳されていた記憶は徐々に戻ってくるだろう。」
わずかな物音も聞こえるほど、王族たちの沈黙がホールを支配していた。
マリアンヌは依然として肩を深くすぼめていた。
アドリンはしばらく、そんなマリアンヌの様子を見つめていた。
「……アリサなの?」
彼女の瞳は激しく揺れていた。
彼女は何度も口を開けては閉じることを繰り返した。
「……マリアンヌ、マリ。お願いだから、何でもいいから言って。そんなことなかったって、全部嘘だったって……」
しかしマリアンヌは口を開かなかった。
アドリンを一瞥することもなく、ただ黙って口を握りしめているだけ。
沈黙が続くうちに、アドリンの表情はだんだんと青ざめていった。
「……どうして、なんで何も言わないの? どうして……?」
マリアンヌはそれでも何も答えなかった。
アドリンの顔はさらに歪んでいった。
「一言でいいの。たった一言でいいから。マリ、お願い……」
依然として、何の返答もなかった。
そこでようやくアドリンは徐々に現実を悟ったようだった。
「……そんなはずない。」
彼女は頭を抱えてうろたえた。
「そんなはずない……マリが、ああ、アリサが……」
私はただ黙って彼女を見守るしかなかった。
彼女は自分が何を口にしているのかすら分かっていないようだった。
「……私たちが、あの子を殺したって?」
彼女の目は真っ赤に充血していた。
しばらく何も言えずにいた彼女がマリアンヌの手を払いのけたのは一瞬のことだった。
「違う! 嘘よ! マリ、何か言って! 違うって、全部嘘だって言って!!」
さっきまでは息が止まるほど静かだったのに──。
マリアンヌに執着していたアドリンだったが、洗脳が解けた後の彼女の行動には一切のためらいがなかった。
彼女はマリアンヌの腕を強く振り払った。
「わ、私たち、いったい……!!!」
私は言葉を失ったようにその場に立ち尽くした。
すべてが混乱し、部屋の中はいつの間にか修羅場と化していた。
『そうか、そうだったのか。』
一瞬で態度を変え、私の言葉に一切耳を傾けようとしなかった家族たちを、私はそれほどまでに恨んでいた。
でもそのとき、ピシャリという音とともに、マリアンヌがアドリンの手を振り払った。
その容赦ない動きにアドリンの手は真っ赤になった。
アドリンは信じられないというように目を見開いた。
「……マ、リ……」
「気持ち悪い。」
今までずっとフードをかぶっていたマリアンヌが、ゆっくりとフードを取った。
黒髪に隠されていた顔は、驚くほど冷ややかだった。
「それで?」
「……!!」
「それで何だっていうの?」
彼女の赤い唇に微笑が浮かんだ。
「今さら真実を知ったところで、何か変わるとでも?」
「……お前っ!!!」
「その時は正当な罰を下そうって、あんなに怒ってたくせに、今さらどうしたっていうの?」
アドリンの顔が青ざめていくのに対し、マリアンヌは本当に何とも思っていない顔だった。
彼女はさらに言葉を続けた。
「後悔してるんだね、お姉ちゃん。」
「お、お前って一体……」
マリアンヌは、自分にしがみつくアドリンに全く気を留めなかった。
彼女は静かに席を立ち、床に座っていた自分の兄弟姉妹たちを見つめた。
マリアンヌは、彼らが無邪気で愛おしい存在であるかのように、かすかに笑った。
「でも、そんなに気にしないで。もう過ぎたことだもの。」
「……!!!」
「そうでしょ?あなたたちがアリサを処刑台へ追いやったという事実は、変わらないわけだから。」
その不気味な笑みに、背筋がぞっとした。
ああ、私はようやくこの目でハッキリと見ることができたのだ。
マリアンヌの赤い目は、まるで血を飲んだように光っていた。
『過ぎたことは、もう過ぎたこと。』
私は拳を握りしめた。
マリアンヌの言葉が、頭の中で反響していた。
そうだ、過去は過去。
私はもうアリサじゃない。
それに、イデンベレの皇族たちは私が目の前にいるのに全く気づかなかった。
『私はアイシャだから。』
私はただ、ここに復讐しに来ただけだった。
誰かに騙されて事件を起こしたのではない。
ただ——彼女の言う通り、アリサはすでに死んでいた。
だから私のするべきことは、イデンベレの皇族たちを皆殺しにし、過去の出来事に終止符を打つことだけだった。
それはよく分かっていた事実。
だけど……。
『……なぜ。』
なぜ私は足を踏み出せないのだろう?
敵たちはあんなに無防備に倒れている。
望めば剣を振り下ろすこともできるし、彼らに毒を盛ることもできる。
あるいは光も差さない地下牢に閉じ込めて飢え死にさせることもできるのに。
なぜ私は。
その時だった。
背中に温かい感触が伝わってきた。
反射的に首を振り返ると、そこにはイシスお兄様がいた。
お兄様の翡翠色の目が、まっすぐに私を見つめていた。
その色はマリアンヌの濁ったような、嫉妬で曇った緑ではなく、夏の日の木々のように無垢で澄んだ緑色だった。
「……お兄様?」
私は呆然として言葉を失った。
「アイシャ。」
彼が優しく私の名前を呼んだ。
「はい、お兄様。」
そう、私のたった一人のお兄様、イシス・ド・エルミール。
彼は、私がエルミール帝国に転生してからというもの、いつも私の人生の希望であり続けた人だった。
彼がいなかったら、私は幼い頃に本当に死んでいたかもしれない。
世の中に絶望し、すべてに悲しみを感じたからだ。
だけど、彼がいたから多くのことが変わった。
兄さんは「この世界はお前を愛しているんだよ」と言ってくれた。
そして、その言葉が真実であるかのように、毎日のように私に愛を注いでくれた。
天気の良い日には、わざわざやって来て花をプレゼントしてくれたり、声をかけてくれたりした。
どれほど頻繁に会っていたのか、時には母よりもよく顔を合わせていたほどだった。
彼がいなかったら、私は本当に死んでいたと思う。
そんな彼が、私を見つめていた。
「自分の心のままに行動しなさい。」
最初はその言葉の意味が理解できなかった。
今でも完全には分からないけれど、自分の心のままに行動すべき理由は何だろう?
しかし私は、その瞬間に気づいた。
言いたいことがあった。
変わりたいことが、ひとつあった。
あの時、もしもう一度彼らに会えたなら、絶対に伝えたかったことがあった。
「あなたには、チャンスがある。」
私は無意識のうちにルーン様を見上げた。
彼が顎を軽く上げた。
イシスお兄様の言葉は正しかった。
私には、チャンスがあった。
「……ラキアス、エルシス、アドリン、そしてルルス。」
一人ひとりの名前を口にすると、彼らは私を見つめた。
その顔に刻まれていたのは、洗脳の苦痛、そして――「アリサ」への哀しみ。
私の昔の家族たち。
かつてもっと優しく彼らの名を呼んだことがあった。
一緒に笑いながら、「また明日ね」と言って別れたこともあった。
私は口を開いた。
「私はかつて、このイデンベレ帝国の皇女でした。」
「……?」
人々の目が虚ろになった。
私はゆっくりと言葉を続けた。
「ラキアスの腹違いの妹であり、第4皇女でもありました。」
「………」
「……十四歳という幼い年齢で命を落とした私を憐れんだ神様が、もう一度機会を与えてくれたかのように、私は再び生まれることができました。」
彼らの顔には徐々に驚愕の色が浮かび上がった。
「エルミールの皇女として生まれた私は、私を殺した家族に復讐するために、力を蓄えてきました。」
私が生きてきた15年の歳月がゆっくりと記憶の中で蘇った。
それ以前の14年の記憶たちもだ。
しばらく息を整えた私は、口を開いた。
「アリサ・デル・イデンベレ。私がその本人です。」
「……えっ、なに?」
人々の驚いた顔が見える。
私は続けて口を開いた。
「そして私は——」
いつからだっただろう。
誰にも信じてもらえなかった、私の真実。
「私は……マリアンヌを殺そうとしたことは一度もありません。」
私はもう一度、はっきりと口にすることができた。








