もう一度、光の中へ

もう一度、光の中へ【127話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【もう一度、光の中へ】まとめ こんにちは、ピッコです。 「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となってお...

 




 

127話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 未来③

私たちがレチェに滞在している間、滞在先として使わせてもらった場所は、クロエのいとこが貸してくれた別荘だった。

別荘自体もとても素晴らしかったが、一番の魅力は花火がよく見える個人用の海辺に面していた点だった。

広場の騒がしい音と眩い光から離れた私は、思わずほっとため息をついた。

「大丈夫ですか?」

ビオン公子が私に声をかけてきた。

彼とは久しぶりだったので、友人たちは私たちが話しやすいように席を外してくれた。

ローズとアシュリーはまだ元気に海辺を走り回っていた。

「ええ。」

私はその様子を見ながら答えた。

すると公子は静かに口を閉じた。

私を見るたびに心配そうに濡れるその瞳。

私の寿命のことを気にしているのだろう。

彼に「そんなに心配しないで」と伝えたかったけれど、何を言っても無意味だということはわかっていた。

私は心の中で静かに微笑んだ。

せっかくの休暇なのだから、明るいことだけを考えたかった。

話題を変えようと、彼に質問した。

「領地に行かれるなら……」

彼は首を回して私を見た。

「以前のように頻繁には会えないでしょうね。寂しいです。」

「寂しい」という言葉は本心だ。

彼は兄の親しい友人でもあり、私は長い間彼を知っていたからだ。

爵位を授かった後は、彼もベルトモアの領主として領地の管理などに追われ、首都の屋敷にはなかなか来られないだろう。

しばらく沈黙していた彼が、ゆっくりと口を開いた。

「少し、不安です。」

「どんな点がですか?」

「自分がうまくやれるかどうか……」

私はつい笑ってしまい、こう言った。

「ビオン公子なら、もちろんうまくやれますよ。」

長い付き合いの中で、私は彼の真面目で誠実な性格を知っていた。

だから、どこに行っても、きっとその場でうまくやっていけると思えた。

「ありがとうございます、アイシャ様。」

その言葉を聞きながら、私は自分の服の裾をそっと握った。

彼にも、新しい場所で、新しい縁に出会えますように――そんな思いが胸に浮かんだ。

その言葉で、私たちはさっきのように再び静かになった。

あまり時間が経たないうちに、静寂が破られた。

花火が打ち上がり始めたのだ。

「わあ、始まった!」

遠くからエシュリーの叫ぶ声が聞こえてきた。

空に打ち上がる華やかな花火に私は思わず目を奪われた。

色とりどりの花火が黒い夜空に咲き誇る様子は、なんとも美しかった。

赤、オレンジ、紫、金色……でも一瞬のことだ。

花火はほんのわずかな時間しか存在しない。

何の予告もなくきらめいては、あっという間に空から消えてしまうのだ。

私はそれが少し寂しいと思った。

体をすくめて膝を抱えながら、空を飽きずに見上げていた。

あのとき、14歳の誕生日だったか。

あの時も、花火を見ながら願いごとをしたことを思い出した。

そんなことを考えていると、私はいつまでも——ただ花火を見つめていられるだけでも十分だと思った。

「……アイシャ様。」

花火の音が耳をつんざくように響き、私は自分を呼ぶ声に気づくのが遅れてしまった。

「アイシャ様。」

ビオン公子が私を呼んでいた。

私は彼の方を向いた。

彼の瞳はまっすぐに私を見つめる深い青色だった。

パン、パン。

もう一度、花火が空に咲いた。

空も、彼の横顔も、その光に染まっていた。

彼は口を開いた。私に伝えたいことがあるようだった。

私は、少し身構えてしまった。

もしそれがまた「運命」に関する話だったらどうしよう。

彼がいつまで私の秘密を守ってくれるのだろうか。

そんな不安が、ぐるぐると頭の中を巡っていた。

もし彼がそんなことを言ったら、私はどうすればいいのだろう。

実際には短かったが、私にはとても長く感じられた時間が過ぎ、ついに彼が口を開いた。

「嫌がられても構いません。」

「……?」

でも彼の言葉は、私には理解できない種類のものだった。

私は思わず目をぱちぱちと瞬かせた。彼はゆっくりと言葉を続けた。

「いつでも構いませんから……」

「………」

「もしもアイシャ様が助けを必要とされるなら、その助けになりたいのです。」

「………」

ビオンの言葉は続いた。

「突然寂しさを感じたとき、孤独なとき、つらいとき――歩くのがつらくなった時……」

「……」

「その時、たった一度でも私を思い出してくだされば、取るに足らぬ存在でも、いつでも駆けつけます。」

その熱い告白に、私はしばらく何も言えなかった。

茫然としたまま、ようやく口を開いた。

「……いつでも?」

「はい。」

花火が上がる音が、夜空に何度も響いた。

ビオン公子の顔はそれまで以上に真剣だった。

私は、その心に申し訳なさを感じてしまった。

「……ビオン公子は、私にはもったいない方です。私は、そんなに価値のある人間じゃありません。」

ビオン公子は、黙って私をじっと見つめていた。

まるで彼の顔が「そうではない」と語っているかのようだったので、私はもう一度言った。

「……ビオン公子が幸せになってくれたら嬉しいです。新しい場所に行かれるんですから、なおさら……」

初めて会ったときから今まで、ビオン公子は私にとってありがたい存在だった。

ただ兄の友人だと思っていたけれど、数年の間に知り合って多くの情が生まれていた。

彼に少しでも報いることができたらいいのに。

彼の想いを受け入れられないのが、胸が痛いだけだった。

けれど、私の表情を見たビオン公子は首を振って言った。

「私は幸せです。」

「………」

「だから、アイシャ様も一番幸せになれる道を見つけてくださると嬉しいです。」

彼の言葉に、胸の中で波紋が広がるのを感じた。

彼はすでに私の気持ちを…まるで何かを決意したように、彼はその青い瞳で私をじっと見つめていた。

しばらく互いの顔を見つめ合い、私は目をそらした。

「……ありがとう、ビオン公子。」

彼は意味深な笑みを浮かべただけだった。

花火はしばらく続き、終わる頃にはすでに遅い時間だった。

私はビオン公子に、友人たちもいることだし、今夜はこのまま星章(別荘)に泊まってはどうかと提案した。

けれど、ビオン公子は「遅くなると祖母様がご心配されるでしょう」と穏やかに断った。

私は馬車に乗り込む彼に最後のあいさつをし、友人たちと一緒に星章へ戻った。

「ふぁ〜あ、ねむい〜」

星章に入ると、エシュリーが大きなあくびをした。

今朝到着してから一日中歩き回っていたので、さすがに疲れたようだ。

「もう寝ようか」と言おうとしたとき――私より先に口を開いたのは彼女だった。

「まさかもう寝ようとしてるんじゃないよね?!」

「………」

すでに寝ようとしていた私はぎくりとして口を閉じた。

そんな中、ローズの手にはいつの間にか一束のトランプが握られていた。

興奮したローズが叫んだ。

「初日を寝て過ごすなんてありえない!私は休暇の一分一秒だって無駄にしないつもりよ!」

「休暇は休むためのものだけど、徹夜したら休暇の意味があるかな?」

「何言ってるのよ。遊ぶのが休むことよ。」

クロエの反論にローズは彼女の腕を掴んでソファに座らせた。

やがて私たちは応接室のソファに自然と集まった。

そして言葉を挟む間もなく、ローズは水が流れるようにカードを切りながら一枚ずつ配り始めた。

「じゃあ、この人には明日一日中“お姉さん”って呼ぶことね。」

なんとも突拍子もないルールだった。

でも私たちは、いつの間にかトランプ遊びに夢中になっていた。

まあ初日だし、まだ遊び足りなかったし、友達と遊ぶのはやっぱり楽しかったのだ。

星章の使用人たちは忙しくお菓子や飲み物を運んでくれ、私たちはゲームを何回も繰り返した。

その合間には秘密の話をしたり、理想のタイプを語り合ったり、社交界の噂やゴシップを遠慮なく話した。

話題は尽きることがなかった。

自分でもこんなに話せるんだと驚くほどだった。

どれだけ楽しい時間を過ごしていたのだろう。

気づけば夜がどんどん更けていった。

「次のターンは……」

「………」

カードをゆっくりと混ぜていたローズが、次の番であるエシュリーの名前を呼んだが、エシュリーは返事をしなかった。

私は半分閉じた目でエシュリーを見ていたが、あきれて言った。

「……エシュリー、寝てるの?」

自分の名前を呼ばれてもエシュリーはまるで気づかずに寝ていた。

「座ったままよく寝るわね。」

「ほんとに……」

ぐらぐらと揺れていたエシュリーの手からカードが落ちそうになる寸前だった。

隣に座っていたクロエがエシュリーをつついたところ、エシュリーはびくっとして目を覚ました。

「きゃっ!」

手に持っていたカードはすべて落ちて、テーブルの下に転がっていった。

カードの束がばらけて見えた。

当然、みんな酔っ払っていた。

状況が把握できないアシュリーは首をかしげながら尋ねた。

「え、えっ?なにがあったの?」

酔っぱらっていたのはアシュリーだけじゃなく、私たち全員が軽く正気を失っていたようだった。

私はため息をついて提案した。

「そろそろ寝ようか?」

「そ、そうだね?」

アシュリーは顔色を変えた。

かなり眠そうだった。

ローズも限界だったのか、欠伸をしながら言った。

「じゃあ、最初に寝ちゃったアシュリーが次の番ね……」

一番真剣にゲームをしていたクロエは、肩をすくめながら立ち上がった。

そして何かを見つけたようで、言った。

「わあ、こんなのもあったのね。」

彼女が持っていたのは、瓶に入った赤い色の飲み物だった。

クロエがその瓶に興味を示すと、ローズが尋ねた。

「それ、何?」

クロエは答える前にラベルを見せてくれた。

そこには雑に書かれた文字でこう書いてあった。

「……いちご酒?」

ローズは突然目が覚めたようだった。

目がキラキラし始めたのでそう思ったのだ。

クロエがゆっくりと説明した。

「アルコール度数が低いから、一本くらい持ってきたのよ。」

私たちの年齢くらいになると、食事のときにグラス半分くらいのワインを飲んだり、宴会でカクテルを少し飲んだりすることは、そんなに大きな問題ではなかった。

「これ、一杯だけ飲んでみる?」

ローズの提案に、私は思わず目をぱちくりさせた。

「大丈夫かな?」

「うん! イチゴのお酒ならそんなに強くないでしょ?」

私が止める間もなく、ローズは瓶を持ち上げて手のひらサイズのグラスに注ぎ始めた。

「おいしそう。」

私はどきどきしながらそのイチゴ酒を見つめた。

最初は眠くて頭がぼんやりしていて飲む気にもならなかったけど、注いだとたんに香りがとても良くて、「ちょっとだけなら飲んでみたい」と思い始めてしまった。

――このときまでは、私が自分でお酒に弱いことを全然自覚していなかったから、そんな考えが浮かんでもおかしくなかった。

「じゃあ、一杯だけ飲もう。旅の記念に!」

ローズがにこにこと笑いながらグラスを差し出した。

楽しい夜はまだ続いていた。

少し悩んだ末に、私はそのグラスを受け取った。

「一杯くらいなら、大丈夫よね。」

前回お酒を飲んだときに記憶に残っているのは、そのお酒があまりにも強かったということだった。

これくらいの軽いお酒なら大丈夫だろうと思いながら、いちご酒を口にした。

ほかの友達も同じように飲んでいた。

いちご酒は、お酒というよりただの飲み物のようだった。

甘酸っぱいいちごの香りが口の中にふわっと広がり、苦味は最後にほんのわずか感じる程度だった。

私はあっという間にグラスを空けてしまった。

あまりにも美味しくて、もう少し飲みたくなったかもしれない。

私以外にもグラスを空けた友達が少し名残惜しそうにしていた。

でもここで最年長のクロエがきっぱりと言った。

「一杯だけって言ったんだから、もう寝ましょう。」

「……うん、わかった。」

少し名残惜しい気持ちもあったけれど、眠気には勝てず、私たちは素直に上の階へと上がっていった。

ゆっくりと階段をのぼって、シャワーを浴びて、ベッドに横たわるまで、思ったより時間はかからなかった。

シニアスタッフが寝床を整えてくれて、「おやすみなさい、ぐっすり休んでね」と静かに声をかけて部屋を出ていった。

部屋には私一人だけになった。

けれど、ひとつ問題があった。

――あれ?

部屋の壁がなんだかゆらゆら揺れているような……ぼんやりしたかと思えば、急にくっきりしてきたり。

これは単なる眠気ではない気がした。

まさか……。

私は何度もまばたきした。

「私……もしかして、お酒にすごく弱いのかな?」

今になってようやくその事実に気づいたが、もう遅かった。

私はすでにほろ酔いの状態になっていたのだ。

それでも以前のように意識を失わずにいられたのは幸いだった。

酔いと心地よいぼんやり感が混ざっていた。

でもなぜか眠くならなかった。

私は思わずベッドの上で体を起こした。

なぜかとても気分がよかった。

私は自分でも知らないうちににっこり笑っていた。

「えへへ……」

何がそんなに嬉しいのか自分でも分からないが、とにかく全部がよかった。

旅行に来たのもよかったし、友達と遊ぶのもよかったし、花火もよかったし……

「そっか。」

私は毛布をぎゅっと抱きしめた。

海。海もすごくよかった。

久しぶりに見た海に、とても大きな喜びを感じた。

もし来た場所が海辺じゃなかったら──もし誰かが部屋にいなかったら、私はきっとここに来ていなかったかもしれない。

『夜明けの海って、きっとすごくきれいだろうな。』

私は以前、ルンさんと一緒に見に行った夜明けの海を思い出した。

朝日が昇る光景は、本当に感動的だった。

『行ってみようかな?』

ふと、そんな考えが頭に浮かんだ。

普段の私なら、絶対にそんなこと思わなかっただろう。

一人で夜明けの海を見に出かけるなんて、危ないに決まってるし、それに私は今、酔っているのだ。

でも、酔っている人って、なぜか妙に大胆になるもの。

酔った気分に酔っていた私は、その思いをあっという間に行動に移してしまった。

そうして、私はバルコニーを抜けて、別荘からつながるプライベートビーチへと向かったのだった。

その途中、私はドキドキしながらリミエを呼び――私を窓の下に下ろしてくれとまで言ったのだから、リミエがどれほど慌てたかは言うまでもない。

到着した海はさらに美しかった。

静かな中に波がさざめきながら寄せてきていた。

『……まだ日が昇るには早いんだな。』

私はぼんやりと海を見つめた。

果てしなく広がる海の向こうには、黒い夜空が広がっていた。

そしてその空には美しい月が浮かんでいた。

『月……』

私はそれを見て自然とルン様のことを思い浮かべた。

そしてさっきビオン公子が言っていた言葉も思い出した。

『幸せになれる道だって言ってたよね。』

しばらく私は考え込んだ。

でも、さっきも言っていたように、酔っぱらった人間はいつだって大胆なものだ。

私はそれまでためらっていたことを忘れてしまった。

そして私はためらうことなく、ルン様を召喚した。

暗闇に包まれたその場に、まばゆい光とともにルン様が現れた。

数ヶ月ぶりに見るルン様だった。

でも、私が「お久しぶりです」と言葉を交わす前に、ルン様は私から漂う酒の匂いを感じ取って、すでに状況を把握していたようだった。

まるで王宮の教育係のように、小言を言い出しそうな表情になっていた。

久しぶりに会ったのだから笑ってくれたらよかったのに、私は気まずくて唇をぎゅっと結んだ。

「素敵な夜ですね、ルン様。ずいぶんと久しぶりですね?」

「……ああ、久しぶりだな。」

初夏の夜とはいえ、吹いてくる風は少し肌寒かった。

静かな中、暗い波がさらさらと音を立てていた。

私はルン様の黄金色の瞳をじっと見つめた。

その目は、夜空に浮かぶ月よりもずっとまばゆい輝きを放っていた。

その目を見つめていると、私は次第に酔いが少しずつ冷めていくのを感じることができた。私はゆっくりと口を開いた。

「……この間、お元気でしたか?」

ルン様はじっと私を見つめていた。

答えることなく、静かな目で私を見つめていたルン様が言った。

「君は元気だったか?」

私はただ肩をすくめて見せるだけだった。

久しぶりに会ったルン様はやはり変わらない姿だった。

彼が変わっていないという事実に少し安心しながらも、少しむずがゆい気持ちになった。

私はこの一ヶ月だけでも、もう指一本分くらいは成長したのに。

「……ルン様。」

私は戸惑っていたが、ついに私に残ったすべての勇気をかき集めて、口を開いた。

「もうこれ以上……私のそばにはいてくださらないのですか?」

私はずっとこの言葉を言いたかった。

彼が私のそばにこれ以上留まらないこと――それはある意味、当然のことだった。

“ルン”だった頃、彼は私に興味を持ち、人間の世界に留まっていた。

けれど、人間世界に慣れすぎた結果、彼はもはやそんなふうに滞在し続けることができなくなっていた。

精霊王としても同じだった。

彼はすでに私の願いを叶えてくれたし、真面目で律儀な精霊王である彼が、理由もなく私のそばに留まる理由などなかった。

でも、正直に言えば、私は彼が恋しかった。

彼と初めて出会ったのが、ほんの1年前だったなんて信じられなかった。

それほど、この1年の間に起こったことはあまりにも多かったのだ。

彼と初めて出会った夏の日、林のそばで差し込むまばゆい光のように、すべてが輝き、青々としていた。

あのときの私は、そのように美しい存在があるという事実にとても驚いていた。

それから彼と友達になることにして、彼が神殿に入り神官となり、けれど舞踏会で一緒に踊ったり、皇宮の使者になった彼に悩みを打ち明けたりもした。

短い時間だったけれど、私にはとても貴重な時間だった。

彼が精霊王だと知らされた以上、それ以上を望むことはできないけれど、それでも構わないから私はルン様が私のそばにいてくれることを願った。

私は話を続けた。

「……他の人たちも、私が精霊王様を召喚したことを知っているから、昔のようにはいかないでしょう。以前のように人間らしく振る舞わなくてもいいんです。」

人々は庭園の光の中で彼を見つめていた。

けれど、私が今彼を求めることがあまりにも欲張りだということも分かっていた。

「……でも、それでも一緒にいたいんです。」

思わず息が詰まり、私は大きく深呼吸した。

たとえ図々しいと思われても、彼に冷たく笑われても構わない。

彼が口を開いた。

「……それが、君の願いか?」

その言葉を聞いた瞬間、私の目の前に風景が広がった。

赤く染まった空。

彼がいるというだけで、今までで一番新しく感じられた――鼻がツンとするほどに美しい夜。

私はそっと口を開いた。

「……はい。」

心の奥で密かに願っていたその想いを、私はついに彼に伝える。

「そばに……いてください。」

どれほど切実に彼を見つめていたのだろうか。

彼の唇がゆっくりと開かれた。

彼は何と言おうとしているのか、わずかに体が緊張しているのが感じ取れた。

そして彼の口から答えがこぼれ出た。

「……それが君の願いなら。」

私は口をぽかんと開けたまま固まった。

「君のそばにいよう。」

彼は穏やかに微笑んでいた。

「君の願いを叶えるのが、私の役目だから。」

彼の言葉に心臓が大きく跳ねた。信じられず、私はもう一度尋ねた。

「えっ、本当ですか?本当に?」

「私が嘘をつくところを見たことがあるか?」

「い、いえ、それはないですが……。」

彼が嘘をつくはずがない。

でも、それでも信じがたく、私はついに問い返してしまった。

彼の返事を、もう一度聞きたかった。

「……本当ですか?」

「うん。」

「………」

私は嬉しさのあまり、ぱっと笑ってしまった。

彼がそれをはっきりと認めてくれた。

体中が温かい気持ちでいっぱいになった。

「そうですよね。ルン様は私の願いを叶えてくださるんですから。」

だから彼がこの世界に留まることも、きっとわかってくれるはず。

それが私の願いなんだから。

胸の奥から溢れ出す幸せな感情が、今にも弾けそうだった。

これからもずっと、彼が私のそばにいてくれる――それだけでとても幸せだった。

長い間探し続けたその答えを、ようやく見つけ出した気がした。

 



 

「アイシャ、今日はやけに気分が良さそうだね?」

夜明けになると、友人たちはゆっくりと眠りから目覚め、あくびをしながら応接室に出てきた。

そんな中で、ローズが私を見つけて声をかけた。

私はそっと微笑んで見せた。

「そ、そう?」

私はソファに座って、窓越しに見える海を眺めていた。

ルン様は旅が終わり、私が宮殿に戻るその時からすぐにそばにいるとおっしゃっていた。

けれどもそれを今話すには少し早すぎるだろう。

そうなると、夜明けに外出したことも全部話さなければならなくなるのだから。

「いい夢でも見たのね。」

そう言ってごまかすと、ローズは疑いながらも私の肩を軽くつついた。私は口を開いた。

「それより今日は何をしようか?」

指を1本ずつ折りながら考えた。

「昨日は海に行って、夜市に行って、花火も見たし……。今日は水遊び?それともショッピングモールにでも行く?あるいは……何をしようかな?」

気分が弾んで、何をしても楽しい気がした。

思わず明るく笑ってしまうと、周囲の友人たちがぱちくりと目を見開いた。

「本当にすごく素敵な夢を見たみたいね。気分がとてもいいんだ。」

エシュリーが私の隣に座りながら言った。

私は返事をせずに、ただ笑顔を見せていた。

「私はなんでもいいよ!」

ローズがにこっと笑いながらソファに座った。

すでに私の目の前に座って紅茶を飲んでいたクロエも柔らかく笑って言った。

「お芝居を観に行くのもいいわね。」

「そういえば、昨日通りで俳優たちを見たの。」

「お祭りの期間中はとても面白い劇が開かれているって聞いたわ。演劇も面白そうね。」

その場で、今日は中心街の商店を見て、演劇を観て、夜遅くまで遊ぼうと一気に計画を立ててしまった。

それから私たちは出かける準備をするために、それぞれ自分のドレスルームへと急いで戻った。

劇場へ行くのだから華やかに着飾ることを約束し合ったのだ。

そして部屋に戻ったとき、私は自分のポケットからかすかな光が漏れているのを見つけた。

それをつかんで開いてみると、アルセンからの連絡だった。

何の用事だろう?私は魔力を吹き込んで彼の通信を受け取った。久しぶりに見るアルセンの顔が通信球に浮かび上がった。

「アルセン、どうしたのですか?」

またお兄様の知らせを伝えるために連絡してきたのかな?

私は少し笑いながら彼を見つめた。するとアルセンが口を開いた。

――お元気でいらっしゃいますか。

安否を尋ねる声なのに、なぜか胸がチクリと痛んだ。

私は少し不安になって問い返した。

「何かあったんですか?」

――いえ、他のことではなくて……。

アルセンはまるで歯が痛むかのように、言葉を詰まらせた。

――イシス総督閣下が……。

そして彼の話を聞いた私は、思わず目を丸くして、そのあとふっと笑ってしまった。

「まあ、お兄様、すごく一生懸命にお仕事なさってるんですね。」

彼の話ではこうだった。

お兄様は今、イデンベールに行って水道工事や宮殿の補修、道路の財政費をはじめとする大規模な工事はもちろん、こまごまとした行政や予算に至るまで、すべてを細かく監査しているという噂に、やってきた貴族たちは足がすくんでしまったということだ。

どうやらその目が鋭いのか、秘密を隠しきれない貴族たちもイシスお兄様の前に立つと、心臓が締め付けられるような気がするらしい。

いずれにせよ、私のお兄様が皇帝に即位する日もそう遠くはなさそうだ。

私がにこにこ笑っていると、アルセンは不機嫌そうな声で言った。

― そんなに楽しいのですか?私は気分が沈んでいて、今すぐどこか別の場所へでも休暇に行きたい気分ですよ。

「そうなんですか?」

少し考えた後、私はそっと微笑んで言った。

「それなら、私が良い場所を知っています。」

― ……どんなところ?

「カタンチャ王国のレチェというところで、こぢんまりとしているけれどとても素敵な街なんですって。友人たちの話では、ロマンチックな出会いも期待できるそうですよ。」

そして私は、ひと言付け加えた。

「今ここに来れば、エルミール帝国にたった一人しかいない、無敵に美しくて、賢くて、世紀の戦略家である皇女様に出会えるかもしれませんよ。」

もちろんその皇女様とは、私自身のことだ。

私の話にあきれたような顔をしていたアルセンは、思わず吹き出して笑った。

――そうですね。

「ね、言ったでしょ。」

私たちはお互いに顔を見合わせて、少しのあいだ笑い合った。

そして私は手をポンと叩いて言った。

「あ、そうだ、これはどうですか?」

彼と話しているうちに、いいアイデアが思い浮かんだのだ。

「イデンベレとエルミール帝国の間に移動魔法陣を作る事業があるんです。そこに志願してみるのはどうですか?」

ちょうどお祖父様がイデンベレにいらっしゃるので、二つの首都を結ぶ移動魔法陣を作ってはどうかと、たびたび父に提案が上がっていたのだという。

もともと父はゲートに関心があり、継続的に投資もされていた。

ただ、そのような距離に魔法陣を作るのは非常に挑戦的であるため、適任者が見つからず、ずっと宙ぶらりんの状態だったということだ。

「あなたは魔法の研究を本当に好きですから。」

アルセンがこの仕事を任されれば、彼にも新たな目標ができるだろう。

私が笑いながらそう言うと、アルセンは通信球越しにじっと私を見つめた。

私は微笑みながら彼を見返した。

「……どうしてそんな顔をなさるのですか?」

―……いえ、何でもありません。

彼はわずかに微笑んだ。

――皇女さまのおっしゃる通りです。

「えっ?」

――生きていれば、生きていてよかったと思える日がいつか来るものですね。

彼は意味深な言い回しをした。

いずれにしても、彼がそう言ったということは、魔法陣プロジェクトに対して前向きな意志を持っているようだった。

戻ったらお兄様に必ずご報告しなければと思いながら、私は通信を終えた。

「もう!まだなの?」

外から友達の呼ぶ声が聞こえた。

私は急いで侍女を呼び、着替えを手伝ってもらうようお願いした。

友達はもうすでに準備を終えていたようだった。

そしてそのとき、ローズがドレスルームからそっと顔を出した。

「アイシャ、それから思い出したけど話があったの。」

「うん?」

「あるじゃない。これからは社交界にもよく出てみるのはどう?」

ローズは指をいじりながら言った。

「友達が君に会いたいって、もう大騒ぎなんだから!アイシャは今まであまり社交界に顔を出さなかったじゃない。」

「……ああ。」

私はローズの言葉を聞いて、少し考えてみた。そしてすぐに微笑んで言った。

「うん、いいよ。」

ちょうど私もまた社交界に出て人々に会ってみようと思っていたところだった。

私の返事を聞いたローズの目が大きく見開かれた。

「本当?本当でしょ?」

「本当だってば。もうドレスを選びに行かなくちゃね。」

「うん!」

ローズがはしゃいでドレスルームから駆け出していった。

バタバタとした音と一緒に、ローズが他の友達と話している声が聞こえてきた。

「ところで、アシュリー!今日は“お姉さん”って呼ぶことにしたの覚えてる?」

「ろ、ローズ。ほんとに?」

「ローズお姉さんって言うの。ほら、クロエにも“お姉さん”って呼んでみて。」

「そ、そうだけどなんだか照れくさいよ……。」

私は思わず笑ってしまった。

遠くに行ったおじいさまはどんなふうに過ごすだろう。

そして、友達はどんな大人になるだろう。

魔法陣プロジェクトやアルセンはどうなるだろう。

ビオン公子は領地を立派に治めていくのだろうか。

私は、そしてルン様はどうなるのだろう。

未来のことは誰にも分からない。

でも私は、すぐには訪れない未来を考えるよりも、今この瞬間を楽しむことにした。

着替えをすべて終えた私は、さっきのローズのようにドレスルームを飛び出した。

北棟にはシルエットが見える3人がいた。

「わっ、アイシャ!」

私を見て喜ぶアシュリーが見えた。

私がアシュリーを助けてくれると信じて疑わない顔だった。

私はいたずらっぽく笑ってみせた。

「“アイシャお姉ちゃん”って呼ばなきゃ?」

それは心の奥からあふれ出た笑いだった。

窓の向こうには青空が広がっていた。

今日も空はとても晴れていた。

 



 

 

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