こんにちは、ピッコです。
「幼馴染が私を殺そうとしてきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

88話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 集合
レリアは首をめぐらせて、彼を見つめた。
オスカーは返答を待っているようでありながらも、どこか予想しているような目をしていた。
返事を聞きたくないけれど、聞かなければならないという顔だった。
実は、オスカーはレリアが何を言うのか、すでに分かっていた。
「嫌だ」と言うだろう、聞きたくない――
その予想される返答を避けたくて、彼女に返事をさせたくなかった。
ちょうどそのとき、レリアの唇が先に動いた。
「それは……」
レリアはオスカーの目を見つめながら考え込んだ。
正直に言うと、オスカーの言う通りにはできない。
この場所は彼女にとって“家”だったから。
でも、オスカーの“生涯の友”であり続けることはできる。
それならレリア自身も望んでいた。
だが… レリアはオスカーについて行くことはできなかった。
オスカーもまた、自分のせいでここに残るわけにはいかない。
彼は皇帝になるべき人だからだ。
レリアはその思いを隠したまま答えた。
正直に気持ちを打ち明ければ、オスカーはじっとしていないだろう。
どこかへ飛んで行ってしまうような、その目つきを見れば分かる。
「私のすべての仕事が終わるまで、オスカー様が静かに待っていてくださるなら、そのときにお答えします。」
「………」
拒絶でも、承諾でもない曖昧な返答に、オスカーの口から風のようなため息が漏れた。
「私がどれだけ優しくするかによって、返事も変わるんだろうな。」
「……たぶん……?」
「……いいだろう、受け入れよう。」
オスカーはすっと自分の首飾りを彼女に渡した。
予想外の反応に、レリアは目を見開いた。
当然、返事を迫ってくると思っていたのに……オスカーは何かに悩んでいるかのように眉をひそめた。
レリアは「なんでもない」と言い残し、首飾りを持ったまま自分の部屋へ逃げ帰った。
そんな彼女の背中を、オスカーはしばらく見つめていた。
そう、君ならどれだけでも……レオ、君なら。
領地に戻った初日の夜が過ぎようとしていた。
そのどこよりも心安らぐ家に戻ってきたのだから、ぐっすり眠って当然なのに、眠れなかった。
オスカーとの会話のせいだろうか。
レリアはしばらく寝返りを打っていたが、ついに起き上がった。
翌日には「年金復権」の大規模アップデートが行われるので、どうせ眠れないのなら事前にアイテム整理でもしておこうと考えた。
どうせ点検中はシステムが使えないのだから。
『おばあちゃんの薬も、前もって作っておかないと。』
レリアはすぐに製作画面に入り、おばあちゃんの病気を治療する薬のレシピを確認した。
【アルツハイマー治療薬】
必要な材料リスト
・アリュームフラワー(アリュームの花)99個(887209/99)
・記憶の破片 10個(10/10)
・古い繊維のかけら(1/1)
・記憶の結晶(1/1)
・炎花の灰 9999個(9872238/9999)
すべての材料がそろった。
ドラゴンが一定時間ごとにランダムで持ってくる草花と火花の素材は、とてつもない量が集まっていた。
その材料のせいで倉庫がパンパンになりそうだった。
「今回のアップデートで倉庫の容量も増えたらいいのに……」
レリアは製作ボタンを押しながら考えた。
【『アルツハイマー治療薬』99個の製作が完了しました!٩(。•́‿•̀。)۶ レシピ図鑑に追加されます!】
「ちょっと待って。なんですって?」
レリアはさっき目の前に現れてすぐ消えたメッセージウィンドウを見て、目をぱちくりさせた。
「見間違えた?99個って?」
慌ててインベントリを開いてみると、「new」と表示されたアイテムが見えた。
ついさっき作った治療薬だった。
だが、なんと本当に数が99個あった。
一度作成するごとに1個ではなく、99個ずつ作成されるアイテムのようだった。
念のためアイテムをタップして説明を確認した。
【アルツハイマー病を治療できるかもしれない奇跡の治療薬!】
※薬の効果はおおむね強く現れます。1本以上服用すると下痢を起こす可能性があるのでご注意ください!(。•̀ᴗ-)✧゚
服用量もたったの1本?
じゃあおばあさんを治療しても98本余るってことじゃないか。
レリアは再び製作画面に戻った。
【アルツハイマー治療薬】
・必要な材料リスト
・アールム草 99個(887110/99)
・記憶の断片 10個(10/10)
・古びた繊維の欠片(1/1)
・記憶の結晶(1/1)
・火花の灰 9,999個(9872139/9999)
「……っ!!」
椅子に座っていられず、その場でぱっと立ち上がった。
時々こういうアイテムがある。
一度手に入れると永久に消えず、ずっと使い続けられる素材だ。
このレシピに使われている「記憶の断片」「古びた繊維の欠片」「記憶の結晶」も、そういったアイテムだった。
アールム草と火花の素材は数が減ったが、残りはそのままだった。
レリアの頭の中でポクチュク(爆竹)のような音がパンパン鳴り響いた。
「うまくいけば、1000億シリングの金塊になるかも?!」
もちろんお金も大事ではあるけれど……それよりもっと重要なのは、この治療薬が持つ意味だった。
この薬があれば、多くの患者を救えるだろう。
祖母の病気は、ここでは「神病」と呼ばれていたが、現代ではアルツハイマーと呼ばれる病気だった。
現代でも治療が難しいが、この世界ではさらに治療薬が存在しなかった。
神典では、神の力では治せない長年の病や精神疾患はすべて「神病」として扱われていた。
神が与えた避けられぬ病という意味ではあるけれど……良くない認識を持った者も多かった。
そばにいるだけで病気が移るかのように避けられ、ひどい時には患者の家族まで疎まれた。
神に罪を犯したせいで病にかかったのだと、疎んじ、同情の余地すら与えなかった。
でも、もしこの治療薬があれば……
『信仰の力だけでは済まなくなるな。』
けれど――それも方法を見つけさえすれば問題ない。
レリアは神になったような気分でベッドに横になった。
鼻歌が出てきて、心臓がどきどきと弾んでいた。
シュペリオン領地のクリク家の邸宅。
レリアが領地に戻ってきたという知らせは、シュペリオンの下級貴族たちにもすぐに伝わった。
彼らはレリアが首都ではなく、かなり遠くの場所へ行っていたと聞いていた。
そのため、下級貴族たちの間ではささやきが広がった。
「まさかシュペリオン公爵が、血縁でもないあの娘に爵位を譲るつもりでは?」
「おいおい!あり得ないだろう!」
「その通りです。いくらシュペリオン公爵がお気に入りだとしても、それだけで身分の格差がなくなるはずがありません。」
皆は噂だと片付けたが、レリアの祖母が亡くなったエリザベスとあまりにも似ていたため、不安を感じる人々もいた。
その中で、最初からレリアの存在を好意的に捉えていたクリーク家は態度を一変させた。
奥方は急いでティーパーティーを開き、レリアを招待する準備をしていた。
「シュペリオン公爵がその子の成人式を開く前に、先に根回ししておかないと。」
成人式でレリアが他の男の求婚を受け入れてしまえば終わりだ。
奥方は自分の息子がレリアの相手になってほしいと思っていた。
他の貴族たちはどうにかしてレリアを追い出そうとしていたが、クリーク家だけは違った。
男爵夫人は、エリザベスにそっくりなあの娘を見た瞬間、直感した。
『あの娘がシュペリオンの人々を全部味方につけるわね。間違いないわ。』
それなら排除するよりも、一日でも早く側につけたほうが得策だった。
彼女の直感は的中した。
『ベトボスのあの子が、幼い頃にレリアに横恋慕さえしなければ、ことは簡単だったのに……』
息子が残念ではあるが、まだ機会はあった。
まるで首都に留学して戻ってきた息子が、舞踏会でレリアを見て一目惚れしたように。
男爵夫人はこの機会に、二人の仲を進めることを決心した。
追放しようとしたが、ハピルの件でレリアがかなり長く領地を離れてしまった。
今、彼女が戻ってきたのだから、急いで事を進めなければならなかった。
一方、当事者であるベルボス・クリークは険しい顔で冬の景色を見つめていた。
今朝、レリアが領地に戻ったという知らせを聞いた時、彼はとても喜んだ。
しかし、使用人が妙な一言を付け加えた。
「男を連れてきたと?」
しかもその男は、まるで神殿の石像のように立派で美しくてハンサムだと言われている。
ベトボスは鼻で笑った。
自分だってそんなに見劣りする顔ではなかった。
首都でもそれなりに人気はあったはずだ。
『いったいどんな男を連れてきたんだ。』
ベトボスは唇を噛みしめた。
不安ではあったが、どんな男であれ関係なかった。
試練のない愛など存在しないものだ。
彼は毅然として屋敷を出て、シュペリオン城へと向かった。
正式に彼女に会いに行くつもりだった。
幼い頃の無礼を謝り、立派な姿を見せなければならない。
昼食後、レリアは突然「お客様がいらした」と言われ、1階の応接室へ向かった。
祖父と叔父は領地の用事で外出中で、今はオスカーと二人でお茶を飲んでいたところだった。
『お客様?私に会いに来る人なんて…?』
祖母や叔母なら「お客様」とは表現しないはずだった。
レリアは戸惑いながらも使用人の案内で階段を降りた。
後ろからはオスカーが彼女に続いていた。
そのとき、背後から荒々しい声が聞こえた。
「ちっ、思ったより早く来たな。」
悪意のこもった言葉に、レリアは驚いて立ち止まった。
振り返ってオスカーを見つめた。
「……なんでもないよ。」
オスカーは燃え上がるような目をしながらも、落ち着いた口調で辛うじて答えた。
昨日「絶対に怒らない」と約束してから、オスカーは本当に落ち着いていた。
その結果、ムキになって問い詰めたり、無理に答えを求めることはしなくなった。
その視線は今も彼女を食い入るように見つめていたが……とりあえずは抑えられる範囲内だった。
レリアは微笑んでから再び応接室へと向かった。
侍従がドアを開けてくれ、応接室の中に入ったレリアはそのまま崩れ落ちた。
「……っ!」
広い応接室のソファにはぎっしりと人が座っていた。
三人の男がピシッと腰掛け、彼女の方をじっと見ていた。
彼女を訪ねてきた客人は、カーリクスとその仲間、ロミオだった。
中でも一人の顔が明らかに歪んでいた。
カーリクスだった。
「おい!!! お前、ここで女装して過ごしてたのか?!そのドレスの裾は一体どうなってんだ?」
あまりの驚きに口をぽかんと開けたまま、何も言えなかった。
カーリクスは舌打ちをしながら彼女の方へと歩み寄り、彼女を上から下までじろじろと眺めた。
じっと見つめる彼の表情は、徐々に険しくなっていった。
「いやでもさ……めちゃくちゃ馴染んでるじゃん?誰が見ても本物の女だって思うぞ。」
その間、グリフィスとロミオは冷ややかな目でレリアの肩越しにオスカーを睨みつけた。
レリアはもう一度、ひとところに集まった友人たちを見渡しながら、思わず額を押さえた。
いや…どうして…いったいなぜ…。
会えてうれしいのは確かだけど…。
すぐに戻ってくるおじいちゃん、カリウスおじさん、おばあちゃん、おばさん、大おじさんたちの顔を思い浮かべると頭が痛くなった。
いったい何て説明すればいいの?それに、まずは…どうやって来たの?」
「ここ、どうやってわかったんですか?」
レリアはロミオに尋ねた。
彼はただ肩をすくめるだけで、何も答えなかった。
「なんで私たちを置いて、二人だけで逃げたの?」
「なぜ出て行ったのか、説明してもらわないといけないな。」
黙って座っていたグリフィスが冷たい声で問いかけた。
「二人で出たわけじゃなくて…私が一人で出たところ、オスカー様が私のあとをつけてきたんです。」
事実を述べたが、「つけてきた」という言葉に反応して、オスカーの眉がぴくりと動いた。
「じゃあ、お前が一人で出て行った理由は?俺たちに隠してることでもあるのか?」
「……。」
グリフィスが席を立ち、レリアに向かって足音を響かせながら歩いてきた。
彼がすぐ目の前に来た、そのとき——
パチン。
レリアの後ろに立っていたオスカーが、さっと前に出て彼女の前をふさぐように立った。
オスカーはさらに近づこうとしていたグリフィスの胸を軽く押し返した。
グリフィスは呆れたように鼻で笑った。
オスカーの行動にロミオの表情も険しくなった。
得体の知れない緊張感で応接室の空気が重くなった。
レリアも驚いて目がクラクラした。
この場で自由にしているのはカーリクスだけだった。
グリフィスは顔をしかめたまま尋ねた。
「今、何をしているんだ、オスカー?」
「近づくな。」
「……は?」
「レリアに近づかないで。」
オスカーはまるで壊れた人形のように、同じ言葉を繰り返していた。
二人は鋭い視線でにらみ合い、レリアは戸惑っていた。
「な、なんで…今…。」
どうして二人は喧嘩しているの?
見かねたロミオが席を立ち、口を開いた。
「それよりもレリア、来る途中で見たんだけど、神殿で君を探してるみたいだったよ?」
「えっ?」
「ユリアナ皇女とルート・カストリル、二人が君を訴えたらしい。偽の聖物を作って、本物を盗んだって。」
「…はっ!」
レリアは呆気に取られた。
ある程度は予想していたものの…こんなに早く神殿に密告されるとは思いもしなかった。
「お前が私の親戚だと偽っていたせいか、道中で出会った神官が私を追跡してきたんだ。」
「………」
レリアはなおも睨まれているオスカーとグリフィスを通り過ぎ、ロミオのもとへと向かった。
まさか神殿でロミオの後をこっそりつけてきたわけじゃないよね?
「お前の行き先を教えた。レイモンド卿は本国の故郷へ帰ったと。」
「…ああ。」
「今ごろ神殿はローズベリー帝国の田舎に移されたのかな?」
レリアは安堵のため息をついた。
「やっぱり…やっぱりロミオ様ですね!」
レリアは純粋な感謝の気持ちを込めて、両手で彼の手を握って振った。
たった一言の称賛でロミオの表情がぱっと明るくなった。
「一人で出ていった理由もそれだったのか?」
「……」
レリアは口を閉ざした。
前からそうだったが、ロミオは本当に…心を読みにくい人だった。
「そうかそうか、どれほど大変だったろう。だからこそ、本当に俺に言ってくれればよかったのに?」
ロミオはレリアの隣に座ると、彼女の肩を軽くポンポンと叩いた。
いつの間にかオスカーとグリフィスは、レリアとロミオを睨みつけていた。
カーリクスはレリアに近づいて、彼女の前にあるテーブルにドサリと座りながら言った。
「まったく、お前というやつは。俺があれほど言っただろ?お前はもう俺の弟なんだからな!それなのに、なぜ一人でそんな重い荷を背負うんだ?」
「……」
「それと……見たぞ。」
カーリクスは重い表情で視線を伏せた。
見たって……?何を?
しばらく何かを言おうと口ごもっていたカーリクスが、ついに口を開いた。
そのときだった。
【最終クエスト完了!✧。٩(ˊᗜˋ)و✧*。 報酬を受領します!】
〈報酬アイテム〉
・特別レシピ
【system: 特別レシピ習得完了!】
【特別レシピ:不滅の視力回復薬】
※神の「許し」が作った霊薬! 高度な視力を与えてくれる霊薬です。目の前がかすんでいる人には特効薬!♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
連打でメッセージが表示され、最終クエストが完了したことを知らせた。
カーリクスの好感度クエストも最後まで完了したのだ!
レリアはうれしさに微笑みながら、だんだん薄れていくメッセージウィンドウを見つめた。
「お前…俺のために薬瓶を置いて行ったんだって? 信じられないやつだな。」
カーリクスは感慨深げな表情で彼女の肩に手をポンと置いた。
だがその手はいつの間にか近づいてきたオスカーによってピシャリと払いのけられた。
カーリクスはそんなオスカーを気にも留めず、レリアを見つめた。
「……」
しかし、レリアの表情はよくなかった。
彼女の眉間にしわが寄ってきた。
しばらくして。
レリアの顔に絶望が広がった。
するとレリアは突然立ち上がり、両手でカーリクスの頬を包み込んで顔をぐっと近づけた。
「……!!」
隣でロミオが驚いて息を呑む音が聞こえた。
ロミオは、レリアがカーリクスにいきなりキスをしようとしているのだと勘違いして、びっくりしたのだ。
驚いたのはオスカーとグリフィスも同じだった。
だがレリアは、カーリクスの顔を両手で包んだまま、近づいて彼の瞳をじっと見つめていた。
鼻が触れそうなほど近い距離だった。
いちばん驚いていたのはカーリクスだった。
「………」
カーリクスもまた、レリアが自分にキスしようとしているのかと思った。
いくら妹のように思っているとはいえ……キスなんて?
それはちょっと違うんじゃないか?
突き放そうとしたが……体がピクリとも動かなかった。
レリアのまつ毛が鼻先に近づいたとき、息が詰まるように感じた。
「いや、なんでこんなに勢いがすごいの…?心臓がドキドキしてる。」
予想外の行動で皆を驚かせたレリアは、唇をきつく噛みしめた。
彼女の表情は苦悶で歪んでいた。
オスカーがもう我慢できず、二人を引き離そうとしたそのとき、レリアが口を開いた。
「…今、左目が見えないのは本当ですね?」
「……」
急所を突かれたようなカーリクスの表情が、氷のように固まった。









