こんにちは、ピッコです。
「もう一度、光の中へ」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
136話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 白い鳥⑨
結婚式を祝った私は、リオテンに長く留まらなかった。
ミナは名残惜しそうにしていたが、彼女にはまだ披露宴の準備が残っており、私も長居するわけにはいかなかった。
私たち一行は、来たときと同じように馬車に乗って、エルミール皇城へ戻った。
違っていたのは、帰りの馬車にルン様の姿がなかったことだ。
彼は私のもとを去ってから、一度も姿を見せなかった。
おそらく私に考える時間を与えてくれたのだろう。
確かに、彼がいなくても時間は淡々と流れていった。
もっとも、時にはあまりにもゆっくり流れて、まるで時間が止まってしまったのではないかと思うこともあったが。
けれども、そんなときでもふと窓の外を見やれば、いつの間にか庭園の景色が少しずつ変わっているのに気づいた。
エルミーロに戻ってから、私はとても忙しかった。
継承式がすぐ目の前に迫っていたからだ。
継承式の準備を進める一方で、皇女としての役割を果たすために、皇宮の大使や社交界にも顔を出した。
それでも時間はまったく足りなかった。
友人たちは「お兄様の伴侶を推薦してあげる」と言ったことを忘れていなかった。
そうして私はさまざまな令嬢たちと会い、そのうち何人かとは友人になった。
兄の結婚のために尽力するのは悪いことではなかったので、皇宮はまるで春のように賑わっていた。
日々は止まることなく過ぎ、継承式まで残りわずかというころ、忙しさもほんの少し落ち着いた。
そんなとき、父と母が私を呼んだのはいつの間にか夏が深まり、外に出ると顔がすぐに火照ってしまうほどだった。
日傘をさして皇帝宮へ歩いていくと、両親が天幕の張られた中庭の庭園で冷たいお茶を飲んでいた。
私を見つけた二人は手を振った。
「お母様、お父様、ごきげんよう。」
私は膝を折って挨拶した。
二人は朗らかに笑いながら、その挨拶を受け入れてくれた。
父と母が口を開く。
「アイシャ、久しぶりに顔を見たな。」
「最近、お前が兄上のお妃候補を探して回っているという噂が社交界で広まっているぞ。」
母の言葉には冗談めいた響きがあった。
私は少し頬が熱くなるのを感じた。
「兄上にふさわしい方を見つけられたらと思っております。」
「その気持ちはわかるが、あまり外回りばかりして体を壊さぬようにな。」
「無理はしないようにね。暑い夏の日に倒れてしまわないか心配になるわ。この前も風邪をひいたでしょう。」
「はい、気をつけます。」
席に着くと、侍従が私にも冷たいお茶を運んできた。
庭園には琥珀色の華やかな蝶が舞っていた。
それをしばらく見つめていた母が口を開いた。
「小さい頃、アイシャは蝶が好きで、毎日追いかけ回していたのよ。」
「私が、そんなことを?」
「そうだったのよ。」
母は声を立てて笑った。
記憶をたどってみたが、やはり思い出せなかった。
もちろん、子どもの頃のことをすべて覚えているわけではない。
父の口元にも微笑みが浮かんだ。
『……本当にそうだったのかしら?』
私は心の中で小さくため息をついた。
笑顔を浮かべた母が口を開く。
「他の意味じゃないのよ。最近あなたが忙しくて、なかなか会えなかったでしょう?少しの時間でもいいから、顔を見られたらと思って呼んだの。」
母の声は温かく、包み込むように穏やかだった。
「一番大事なのは、一緒にいることじゃないかしら。どんなに忙しくても、顔くらいは見せてくれると嬉しいわ。もちろん、私たちはいつだってあなたの選択を尊重するわ。あなたが会いたいと思う相手なら、私たちも異存はないのよ。」
私は最近の出来事を思い返した。
仕事に追われる日々の中で、母や父と過ごす時間がほとんどなかったのは事実だった。
そこで二人に言った。
「これからはもっと頻繁に顔を出します。それに、戴冠式が終わればしばらくはかなり時間に余裕ができますから。」
私は言葉を濁した。
「……一緒に旅行でも行ってみませんか?」
考えてみれば、両親ときちんと旅行らしいことをしたことがなかった。
帝国の支柱と呼ばれる皇帝と皇后である二人は常に忙しく、共にどこかへ出かけるにはあまりにも危険が多かった。
けれども、兄上が皇位に就けば、二人も少しはその重責から解放されるだろう。
私は心の中で年数を数えてみた。
あと7年?いや、それより短いかもしれない。
私の寿命はあとどれくらい残されているのだろう。
二度目の人生でも、私は長くは生きられないのか。
『それでもいい。』
私はかすかに笑みを浮かべた。
できることがあるうちに——できる限り愛する人たちとの思い出をたくさん作りたいと思った。
「旅行だなんて、考えただけで素敵だね。」
「戴冠式が早く終わるのが待ち遠しいわ。」
笑みを浮かべる二人は、とても幸せそうだった。
いつの間にか、橙色の蝶が私たちの周りをひらひらと舞っていた。
それは穏やかな午後の情景だった。
私は心の中で考えを巡らせた。
長く生きられなくても構わないと思えるほど、愛する人たちと出会えた。
そして、その人たちを自分の手で守ることができた。
もう二度と会えないと思っていたルン様とも、こうして再び会うことができたではないか。
もちろん、彼が私に告げた言葉を思い返せば胸が痛む。
それでも、自分の選択を後悔はしていなかった。
『……だから、これでいいの。』
熱い夏の風が私の髪をそっと揺らした。
風には青々とした草の匂いと花の香りが混じっていた。
両親に会った帰り、私は自分の宮殿へ戻らず、宮殿の裏手にある東山へ登った。
日差しが強く、目の前が霞むほどだった。
やがて東山の頂に着いた私は、周囲を見渡した。
もしかしてという淡い期待を抱きながらだったが、やはりそこにルン様の姿はなかった。
あの日以来、彼は政界から姿を消したのだ。
人影のない静かな東山には、野の花だけが咲いていた。
「……」
私はしばらく立ち尽くしてから、東山で一番大きな木に背を預けて腰を下ろした。
草で服が汚れるかもしれなかったが、不思議と今はそんなことは気にならなかった。
そして座ったまま、皇女宮の景色が目に映った——
中へ入ると、細かくではないが、少なくともどんな建物があるのか把握できる程度には見渡せた。
この位置から皇女宮を眺めるのは、いつもとは違った趣があり、しばらく眺めていた。
近くの建物の開いた窓から、人々の姿が見えた。
働いている侍女が何人出入りしているのか数えているうちに、ふと昔の記憶がよみがえった。
考えてみれば、この小高い丘にはたくさんの思い出がある。
幼いころはイシス兄様とここに登って、本を読んだり、日差しを避けて昼寝をしたりしたものだ。
子どもが遊ぶには特に特徴のない小さな丘だったが、それでも兄様と一緒にいられることが嬉しかった。
少し成長してからは、廷礼会の人々と共に修練の場として使ったこともある。
皇宮の森とつながっているため、この辺りの植物は豊かだった。
私が健やかに成長できたのは、精霊たちの力を授かったおかげだろう。
そして最近は……
『……いつもルン様と一緒だった。』
彼を探すとき、私は決まってこの場所へ登ってきた。
すると彼はいつも、どこかを眺めながらここに座っていた。
宮殿を用意しても、彼はこの東山をより好んだ。
眠らず、食事も取らず、「寝室や食堂など不要だ」と言っていた。
横顔を見つめながら、私は彼が眺める景色にまで嫉妬したものだ。
時には、彼がいったい何を考えているのか気になることもあった。
けれども、もう確かめることはできない。
推測するに、おそらく精霊界のことを思っていたのだろう。
『私のそばにいるのは、辛かったのかもしれない。』
私は苦笑した。
私にとってここは慣れ親しんだ場所だったが、ルン様にとっては居心地が悪かったのかもしれない。
彼がこの丘に登ったのは、人目を避けるためだったのだろうか。
『……だから契約を解消してほしいと言ったのだろうか。』
彼の言葉が頭の中で何度も反芻された。
私は膝を抱えた。
悲しいことは考えたくなかったが、最近は何を考えても最終的にはルン様のことに行き着いてしまう。
やめなければと思いながらも、どうしても抑えられなかった。
丘の上で、突然強い風が吹いた。
私は髪が乱れるのを押さえながら、風が過ぎ去るのを待った。
『……あ……』
そのときだった。
風の中に、嗅ぎ慣れた香りが混じっているのに気づいた。
それは他の何にも紛れようのない、水の匂いだった。
私はふと顔を上げた。
「……!」
目の前には、久しぶりに見る“彼”が立っていた。
相変わらずの水色の髪と青緑色の瞳、そして口元に浮かぶ穏やかな笑み——水の精霊王ハイネン様だった。
「ハ、ハイネン様。」
私は慌てて立ち上がり、彼に挨拶をした。
いつものように爽やかに笑うハイネン様だったが、彼がこうして私を直接訪ねてくるなど、これまで想像もできなかったことだ。
だからこそ、私は動揺を隠せなかった。
彼は親しげな口調でこう言った。
「この間、元気にしてた?」
「……はい。ハイネン様はお変わりありませんか?」
私は慎重に彼の表情をうかがった。
彼がどんな用件でここに来たのか探るためだ。
だが、表情を見なくても、何となく答えは察しがついた。
『……ルン様のことだろうか。』
彼が私を訪ねる理由として、それ以外は思い浮かばなかった。
最近ルン様は長い間廷礼会に戻ってきていたし、ハイネン様がその様子を気にしていてもおかしくはない。
ハイネン様は肩をすくめた。
「俺はいつもと変わらないさ。」
その穏やかな返事に少し安心しかけたところで、彼は続けた。
「ただ、ルミナナスが色々と問題を抱えていてね。」
「……」
私は思わず息を止めてしまった。
「……あの、もし問題というのがあるなら……?」
考えてみれば、同じ精霊王であるハイネン様なら、私よりもずっとルン様のことをよく知っているはずだ。
それなら、なぜルン様が変わってしまったのかも知っているのではないだろうか。
そう思うと、胸の鼓動が早まるのを感じた。
そのことを尋ねると、彼は迷うことなくうなずいた。
「もちろんだ。」
「……!!」
私は彼の答えを切実な思いで待っていた。
彼は一息ついて、こう言った。
「ルミナスの奴が、私たち二人の契約のことを嗅ぎつけたらしい。」
その答えを聞いた私は、目を見開いた。
「……契約って?」
彼が何を言おうとしているのか、最初は見当もつかなかった。
だが次の言葉を聞いて、ようやくハイネン様の意味を理解した。
「ほら、俺が君に魔法陣を教えただろう?」
「……魔法陣……?」
彼が私に教えてくれた魔法陣といえば、一つしか思い当たらない。
ハイネン様は困った表情で続けた。
「あれ、不正な方法で精霊王を召喚したっていうんで、ルミナナスがかなり怒ってるんだ。俺としては、それで代償は十分払ったと思ってたんだけどな。」
『……あ。』
彼は、私とハイネン様の契約のことを知ったのだ。
正当ではない契約。
それを否定するつもりはなかった。
たとえ生命力を代価にしても、契約のために別の魔法を使ったのは事実だから。
「……でも、どうして?」
私は思わず彼に尋ねた。
ルン様は、私が彼を召喚した直後にもその事実を知らなかった。
今になって突然気づくとは考えにくかった。
するとハイネン様が答えた。
「最近、ルミナスが君に接触したとき、君の体の生命力が異常なほど減っていることに気づいたそうだ。」
「……生命力が減っていたって?」
私はゆっくりと、ルン様の態度が変わったときの状況を思い返した。
あのとき、私は確かに大人になる魔法の薬を飲み、足元がふらついて倒れそうになった——
『……あのとき、彼が私を治してくれたんだ。』
私は、自分の顔色がさっと変わるのを感じた。
あの薬を解析した皇宮の魔法使いが言っていたではないか——過去と現在の情報を読み取り、未来の姿を予測する、と。
今の私は、年齢に比べて生命力がはるかに少なかった。
もしその情報をもとに未来の姿を描き出していたとしたら……
大人になった私は、当然ながら残された生命力がほとんどなかったはずだ。
そこまで考えが及ばなかった自分が愚かに思えた。
同時に、あの時の記憶がよみがえる。
——彼が私を治療したあと、信じられないものを見るように私を見つめていたことを。
『……あの時、気づいたのね。』
私は息をのんだ。
「……ルン様は、そのことで怒っていたんですね。」
だからあの時、態度が変わったのだ。
「……私が、不正な方法で彼を召喚したから。」
ようやく、彼の態度の理由が理解できた。
正当ではない方法で自分を召喚し、利用した——彼はそう思ったのかもしれない。
彼にとって、私は契約者ではなく、力もないのに精霊王を召喚しようとした欲深い人間にすぎないのだろう。
あのとき私が復讐のためにどれほど必死だったとしても、それは言い訳にはならない。
指先が冷たくなるのを感じた。
ハイネン様が静かに言った。
「ルミナスは、君との契約を終わらせたいと思っている。」
それは、私が直接ルン様から聞いた言葉だった。
私は唇をかみしめた。
「……ルン様がそれを望まれるのなら。」
私には、そうするしかなかった。
ハイネン様が尋ねた。
「本当にそう思っているの?」
私は罪人のように深くうつむいた。
「……はい。」
平静を装って答えたが、胸の痛みを抑えることはできなかった。
ハイネン様はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「精霊王との契約を意図的に破棄したらどうなるか、知っているか?」
「……いいえ。」
精霊王を召喚した者など、これまでに一人もいなかった。
だから契約を破った者についての話を聞いたこともなかったのは当然だ。
私はただ、自分が死ねば契約は自然に終わるものだと思っていたに過ぎない。
ハイネン様が言った。
「精霊神の怒りを買って、二度と精霊を見たり触れたりできなくなる。」
「……!」
「おそらく精霊たちとは永遠に別れることになるだろう。」
私は思わず口を開けたまま固まった。
声が震えそうになる。
「自然界の精霊たちも、ですか?」
「ああ。」
ハイネン様の目は真剣だった。
その言葉が嘘だとは到底思えなかった。
『……もう二度と、精霊たちに会うことも、見ることもできなくなるってこと?』
精霊たちは、生まれてからずっと私のそばにいてくれた。
両親や兄、友人、誰よりも近くて親しい存在——それが精霊たちだった。
『永遠の別れ……。』
それこそが、私が禁じられた方法で精霊王を召喚しようとした理由のすべてだったのに——
それは罰と言えるのかもしれない。
あまりにも的確に、私の心をえぐっていた。
ハイネン様は私をじっと見つめ、慰めるように続けた。
「でも君は、もう精霊たちを必要とすることはないだろう。復讐ももう終わったんだから。」
「……それは……」
彼の言葉は間違ってはいなかった。
もう私は精霊たちの力を借りる必要はない。
大陸随一の帝国、エルミールの皇女として、私を守る騎士は数え切れないほどいる。
そして何より、私を宝物のように大切にしてくれる家族は、いつでも私が傷つかないよう心血を注いでくれていた。
「……」
それでも、納得できず言葉を飲み込んだ。
胸の奥に鋭い刃を突き立てられたような感覚が広がる。
まるで自分の手足を切り離されるような痛みだった。
精霊と永遠に別れることになる——そう告げられた衝撃は大きかった。
いや、それ以上に、精霊を失う痛みのほうが勝っていたかもしれない。
ハイネン様がゆっくりと言葉を紡いだ。
「考えたところで答えは変わらない。」
「……」
「もうルミナスを行かせてやれ。」
私はハイネン様を見上げた。
なぜだろう——これこそが、ハイネン様が本当に伝えたかったことのように思えた。
彼の青緑色の瞳は、何か言い知れぬ光を宿していた。
「君は人間で、彼は精霊だ。」
その事実は、いつも私の胸を締めつけていた。
私と彼の間には、決して埋まらない距離がある——頭では分かっていても、精霊王であるハイネン様から改めて聞かされると、衝撃はさらに深かった。
まるで夢から現実に引き戻されたような気分だった。
「じゃあ、私はこれで。言うべきことは全部言ったから。」
私は彼に挨拶をする間もなかった。
来たときのように、ハイネン様は突然姿を消した。きっと精霊界へ戻ったのだろう。
彼がいなくなった後も、私はしばらく山の上に立ち尽くしていた。
いつの間にか雲が太陽を覆い、辺りは薄暗くなっていた。
この山で精霊たちと駆け回り、修練に励んだ記憶がまだ鮮やかに残っている。
ルン様と過ごした、あの温かな午後の時間も思い出された。
――私が未熟だった。
空を見上げる。今も自然の精霊たちは空中で遊び回っている。
私はそっと手を差し伸べた。
彼らはいつも私を好いてくれていたから、くすぐったそうに笑いながら、ためらいもなく私の手の上に降り立った。
――ルン様との契約を終わらせなければ。
もうこれ以上、彼に負担をかけないために。
私は崩れ落ちるように腰を下ろし、木にもたれかかった。
侍女たちと護衛騎士は、少し離れた木陰で私を待っており、私は完全にひとりきりだった。
そのときになって、ようやく悟った。
私は、自分に嘘をついていたのだ。
二度目の人生でも長くは生きられない——そう分かっていても、「それでいい」と思おうとしていた。
愛する人たちと出会い、この手で守ることができたのだから、短い命でも悔いはないはずだと。
けれど……私は、手が小刻みに震えてくるのをはっきり感じた。
『違う……本当は嫌だ。』
たとえ利己的で、欲深い人間だと後ろ指をさされようとも——私はそれを否定できなかった。
『本当は……死にたくない。』
胸が締めつけられるようだった。
家族や愛する人たちと、もっと長く生きていたい。
もし私が死んだら、彼らはきっと深く悲しむだろう。
長く苦しまない方がいいのに。
――ルン様に会いたい。
別れたくなかった。
彼を手放さなければならないとわかっていても、胸が裂けるように痛んだ。
指先から徐々に力が抜けていく。
それは、あまりにも体が震えていたからだ。
母も父も、最近の私の体調の悪さを心配していた。
彼らの不安を含んだ瞳を見るたびに、この秘密が露見してしまうのではと怯えた。
イシス兄様がこれから築いていく帝国の姿を見ていたい。
ただの継承式だけではない。
彼が新しく作り上げていく帝国を、長く見守り、助けていきたい。
きっとその帝国は、眩しいほどに輝くだろう。
友人たちが幸せに暮らし、それぞれの夢を叶えていく姿を見たい——そう思った。
かけがえのない大切な友人たちだから、彼らが笑顔でいてくれることを心から願った。
そして、私も少しずつ年を重ね、ある日は悲しい出来事があり、またある日は嬉しい出来事が訪れる——そんな、平凡だけれども穏やかな日々を送る機会が……
もし私にも与えられるのなら。
「……死にたくない。」
虚ろな声が、山の上でひっそりとこだました。







