シンデレラを大切に育てました

シンデレラを大切に育てました【228話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【シンデレラを大切に育てました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

228話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 展覧会

城でバンス夫人に爵位が与えられるという噂に、社交界は騒然となった。

どれほどの騒ぎかというと、彼女の長女が王子妃になるという噂や、次女が展覧会に絵を出品することになったという噂さえかき消されるほど、その影響は大きかった。

社交界の人々は集まるたびに、いったいどんな爵位を授かるのか、バンス夫人はどんなことをして女性の身で爵位を得たのかと話題にしていたが、それは社交界に限ったことではなかった。

貴族でない一般の人々も、集まれば同じような話をしていた。

もちろん、男の貴族だけが集まるクラブでも話題は同じ。

「娘にしか継がせられないらしいぞ。」

「へえ、息子じゃないのか?誰が継ぐにしても、私生児の心配はなくていいな。」

「それにしてもなあ、爵位を持つ夫人だなんて、どんな男が好き好んで相手にする?面倒くさいだけだろ。俺に子育てしろなんて言われたらどうする?」

根も葉もないことを言うデイルに、隣にいた友人が呆れたように言った。

「目を覚ませよ、友よ。バンス夫人の長女は王子妃だ。」

「アイリス・バンス?ちょっと待て、それじゃ爵位はどうなるんだ?」

「次女に行くだろうさ。名前は何だったかな?花の名前だったはずだが?」

二文字の名前だった。何だったか?ローズ?リリー?名前を思い出そうとする男たちのそばで、背の高い男が音もなく近づいてきた。

彼は胸の前で腕を組み、短く言い放った。

「リリー。」

「そうだ、リリーだ!リリー・バンスだった。」

「じゃあ次は次女が爵位を継ぐってことか?」

「まあよかったな。その女、ちょっと変わってるらしいし。絵を描くとか何とか。爵位でもあれば、行き遅れて野垂れ死ぬことはないだろう。」

そう言ってケラケラ笑うデイルの横で、友人は険しい表情で口をつぐんだ。

二人のそばに来た背の高い男に気づいたからだ。

だがデイルは気にも留めず、なおも言い募った。

「せめて美人ならまだしもな。性格もきついって話だし、嫁の貰い手なんてあるのかと思ってたけど、まあ良かったな。」

「まあ、そんなに性格がひどいかは分からないけどな。」

友人の自信なさげな反論にも、デイルは頷きながら続けた。

「展覧会に絵を出すらしいぞ。笑える話だ。」

展覧会に作品を出すこと自体は名誉なことだ。

だがそれは画家にとっての話であって、貴族の女性が?

それも前例のないことだ。

だからこそ友人も、リリーが展覧会に出品するという話は馬鹿げていると思っていたが、口には出さなかった。

場の空気が一気に冷え込んでいるのに、デイルは気づかずにしゃべり続ける。

「ケイシーもいい歳なんだから、判断が鈍ってきたんじゃないか?そんな女を画家にしようだなんて……」

「デイル。」

ついに見かねた友人が、デイルを制止しようとして口を開こうとした。

だが彼は相変わらず気づかぬまま、リリーとフィリップをけなした。

「ケイシーもやりすぎだよ。あんな若い女を持ち上げて、婚期を逃させる気か?」

「デイル。」

男は、本気で「気づくことも知性のうちなのか」と考えながら、デイルの肩を軽く叩いた。

普段からこの友人が空気も読まず軽口を叩く性格だとは思っていたが、それが自分の首を絞めることになるとは夢にも思っていなかった。

もしかすると両親が、デイルとはあまり付き合うなと忠告していたのも、こういうところを見抜いていたからかもしれない。

デイルは友人の険しい表情を見て、ようやく気まずそうな顔をした。

「俺、何かまずいこと言ったか?」

その問いへの答えは、彼の背後から聞こえた。

冬のように冷たい声だった。

「他人の結婚相手を心配するとは、ずいぶん余裕がおありのようですね、デイル・アルバート卿。」

その言葉でようやく、デイルはなぜ友人の表情があれほど険しかったのかを悟った。

ぎこちなく振り返ると、いつの間にか背後に立っていたダグラスの姿があった。

「ケ、ケイシー卿……」

「あなたの結婚が、どれほど思い通りに進むか楽しみですね。」

そう言いながら、ダグラスはデイルの肩をがっしりとつかんだ。

ぐっと力が入り、デイルの足が一瞬ぐらついたが、倒れはしなかった。

「い、いだっ!」

次の瞬間、デイルが悲鳴を上げるのと同時に、ダグラスは彼を突き放すように手を離した。

驚いて後ずさるデイルの友人に向かって、何でもないことのように言い放つ。

「治療費は我が家へ請求してください。」

「治療費だって?」

友人は呆然としながらデイルを見下ろした。

デイルは床に倒れ込んだまま震え、ダグラスに掴まれていた肩を押さえている。

「正気かよ……?」

ダグラスがそのまま踵を返して立ち去ろうとすると、デイルは慌てて口をつぐんだ。

自分の言葉を聞いたダグラスが引き返してきて、反対側の肩の骨まで折られるのではないかと恐れたのか、その声は隣の友人にしか聞こえないほど小さかった。

「馬鹿だな……」

友人は舌打ちし、デイルに言った。

「馬鹿なのはお前だろ。数日前に、リリー・バンス嬢に手を出した男が、鼻の骨を折られるほど叩きのめされたって話、俺にしてきたのはお前だろ?」

鼻骨だけで済んでまだマシな方だ。

歯も何本か折られたらしい。

噂話が好きなデイルは、その話でも興奮して大げさにしゃべっていたくせにデイルの顔が真っ赤に染まった。

これで少しは口を慎むだろう。

友人は無事だった彼の肩を軽く叩きながら、そう思った。

 



 

「ダグラス、もう帰っていたのか。」

ダグラスを出迎えたのは、屋敷にいたケイシー侯爵夫妻だった。

この時間に父が家にいることを不思議に思いながら、彼は挨拶をする。

「ただいま戻りました。」

彼の記憶では、今日は母がクレイグ侯爵夫人の茶会に出席する予定だ。

父は特に何も言っていなかったので、普段通りの予定――つまり城へ行き、その後クラブで夕食をとってから帰宅するはずだった。

何かあったのだろうか。

何か言いたげな母の表情に、ダグラスは足を止めた。

「あなた……」

そう言いかけて、ジェネーブは一度口を閉じた。

リリー・バンスに対する息子の態度がどれほど頑ななものかを知っている以上、軽々しく話すわけにはいかない。

彼女は、ワトソン伯爵夫人の姪メリー・ワトソン嬢に対して、ダグラスがどんな態度を取ったかを思い出した。

あの日、息子は庭に彼女を置き去りにしたまま立ち去ってしまったのだ。

あの無礼な振る舞いに、ジェネーブがどれほど謝罪したか分からない。

その後ダグラス自身もメリーのもとへ出向いて謝罪したが、彼女にとっては耐えがたい屈辱だったに違いない。

「こちらへ来て、座りなさい。」

親のこの一言ほど、子どもを緊張させる言葉もないだろう。

母の声に、ダグラスはぴんと背筋を伸ばした。

自分が何をしでかしたのか思い当たらないまま、必死に記憶を探る。

そう考えながら応接室に入り、ジェネーブの向かいに腰を下ろした。

「この前、スチュワート伯爵夫人の茶会に出席したそうね。」

どうしてそれを知っているのか。

ダグラスは動揺を顔に出さないよう気をつけながら答えた。

「少し立ち寄っただけです。」

「ふむ、伯爵夫人に会いに行ったのかしら?」

当然違う。

だがダグラスはあえて何も答えなかった。

息子が沈黙を貫くと、じれったくなったジェネーブがついに口を開く。

「まだバンス嬢の後を追い回しているの?」

母の問いに、ついにダグラスの目がわずかに揺れた。

追い回す、か。

最近では向かい合ってお茶を飲む程度には関係が進展している。

もっとも、その程度の距離感など、彼女にとっては友人以下かもしれないが。

とはいえ、それもあくまで友人の範囲に過ぎない。

相変わらず息子が何も言わないため、ジェネーブは思わずため息をついた。

いったい何が問題なのだろうか。

彼女の息子は完璧だ。

人それぞれ子に求める基準は違うだろうが、ジェネーブは自分の基準ではなく、他人の目から見てもダグラスは申し分ない人物だと思っている。

容姿は優れ、家柄も良く、性格も穏やか。

この程度そろっていれば十分すぎるだろう。

しかも酒に溺れることもなければ、賭博にのめり込むこともなく、女性に手を上げるような男でもない。

むしろ理想以上の息子だ。

そんな息子が、どうしてあの風変わりな娘に心を奪われているのか。

ジェネーブにはどうしても理解できなかった。

いっそ他の夫人たちのように、「あの娘が純情なうちの息子をたぶらかしたのだ」とでも言えたなら、どれほど気が楽だったことか――そう言えたなら、まだ気が楽だったのに。

だが現実は、リリー自身が結婚に興味を持っておらず、ダグラスを自分の人生の前に立ちはだかる障害物のように扱っているという有様だ。

「お前の母から聞いたが、まだバンス家の次女の後を追い回しているそうだな。」

今度はケイシー侯爵が口を開いた。

その言葉に、ダグラスは否定もできず、ただ小さく頷いた。

息子の態度にジェネーブはこらえきれずため息をつき、ケイシー侯爵は低く不満げな声を漏らす。

応接室の空気が一層重く沈んだ。

侯爵は腕を組み、まっすぐに息子を見据えて再び口を開く。

「ダグラス、仮にだ。我々があの娘を受け入れるとしよう。」

滅多にないことだが、ケイシー侯爵夫妻がリリーを自家の嫁として認めると仮定するなら――父が何を問題にしているのかが見えてきて、ダグラスは身構えた。

ダグラスはすぐに答えた。

「彼女はこれからも絵を描き続けるでしょう。画家として活動していきます。」

侯爵の目がすっと細められた。

もともと口数の少ない人物だが、こういう場面ではなおさら言葉を選ばない。

立場ある者ほど遠回しに言う必要がなくなるのだ。

「いや、そういうことではない。」

そう言って侯爵は身を乗り出し、ダグラスをまっすぐ見据えた。

真剣な表情で問いかける。

「仮に我々がバンス嬢との結婚を許したとして、その後――彼女がどうなるか、お前は考えたことがあるのか?」

「フレデリック。」

ジェネーブが慌てて夫の名を呼んだが、その言葉はすでにダグラスの耳に届いていた。

父の言うことはもっともだ。

ダグラスは静かに頷いた。

彼は愚かではない。

これまで二度も婚約しては破談になった経験が、その重みをよく知っている。

リリーと婚約したとしても、彼女が自分ではない別の誰かに真の想いを見出す可能性があることも、理解していた。

「父上のおっしゃるのは、バンス嬢が私と婚約した後でも、他の男性に心を奪われるかもしれない、ということでしょうか?」

その言葉に、ジェネーブは思わず夫の手を強く握った。

完璧だと思っていた息子が、また女性に拒まれる場面を見るのは耐えがたい。

彼女は、ダグラスがフィリップのように結婚そのものを諦めてしまうのではないかと恐れていた。

彼女がその令嬢に想いを寄せていると知ったとき、胸が弾むほど嬉しかった。

よりにもよって、その相手が侯爵夫人の座を煩わしいものとしか思っていないような娘でさえなければ、どれほど良かったことか。

「そうか。」

フレデリック・ケイシーはダグラスの問いに頷き、さらに続けた。

「バンス嬢は、それほどの価値がある娘なのか?」

たとえ誰と婚約しようと、彼女はダグラスではない別の誰かに真の愛を見つけるかもしれない。

運が良ければ、その“誰か”がダグラスである可能性もゼロではないだろうが。

それがケイシー侯爵夫妻の考えだった。

どうせ叶わぬのなら、息子がここまで執着する必要はない。

せめて相手がどこかの王国の王女のような、申し分ない身分の娘であれば、「よくやった」と慰めることもできただろう。

だが、リリー・バンスは――世間一般の目から見れば、そこまでの格ではないのだから。

世間一般から見れば、気難しい性格の風変わりな令嬢にすぎない。

幸いにも姉は王子妃となったが、母親は女性でありながら爵位を求めた厚かましく癖の強い人物で、そんな家の娘と婚約しても良い結果にはならないだろう。

「はい。」

だがダグラスは、考える間もなくきっぱりと答えた。

価値があるかどうか?何もしないで座っているだけの人間に、どうして価値があると言えるのか。

自分の両親がここまで見当違いなことを言えるのかと、内心驚きを覚えていた。

「ダグラス。」

そこでジェネーブが口を挟んだ。

息子の方へ身を乗り出し、慎重に言葉を選びながら語りかける。

「あなたがあの令嬢を想っているのは分かっているわ。でも、仮にうまくいったとしても、私たちの家は由緒ある侯爵夫人を迎える立場になるのよ。」

だがそのとき、ダグラスの表情に困惑の色が浮かんだ。

息子の顔を見たジェネーブは、それ以上言葉を続けることができず、ためらった。

ダグラスはいずれケイシー侯爵となり、この家を継ぐ身だ。

ならば家のために相応しい妻を選ぶべきではないか――そう問いかけるつもりだった。

だが、その言葉を息子に向けることができなかったのだ。

「それが、我が家のためになるかどうかを聞いている。」

父の言葉で、ようやくダグラスは母が言おうとしていたことを理解した。

つまり両親は、家のためにその想いを諦めろと言っているのだ。

もっとも、それは決して珍しい話ではない。

貴族の結婚は家同士の結びつきに近く、互いに家格に見合う相手を選ぶものだからだ。

そして、そうして結ばれるほうが、むしろうまくいくことのほうが多かった。

王と王妃もそうだったし、ケイシー侯爵家やクレイグ侯爵家も例外ではない。

似た環境で育った者同士は、価値観も自然と近くなるものだ。

ジェネーブが懸念していたのはそこだった。

リリーとダグラスは、関心の向きも育ってきた環境もあまりに違いすぎる。

どれほどダグラスが彼女に歩み寄ろうとしても、限界がある。

仮に結婚に至ったとしても、リリーの姓はバンスではなくケイシーになるのだから。

「私は、これまで家のために最善を尽くしてきたつもりです。」

そのとき、ダグラスが重々しく口を開いた。

両親の言葉にわずかな苛立ちを覚えたのか、その表情は固い。

これまで両親の望むままに二度も婚約し、「模範的な息子」として振る舞ってきたのだから――家名に泥を塗らぬよう剣の腕を磨き、王子の師としての役目も果たしてきた。

思い返せば、自分が何を望んでいるのかを真剣に考えたことは、ほとんどなかった。

それが当然だと思い、そうあるべきだと信じてきたのだ。

幸いにも、自分に求められることに適性があっただけの話だ。

だからこそ、ダグラスはリリーのことをすごいと思っていた。

自分の才を見つけることさえ難しく、育つには恵まれた環境にあった自分とは違い、彼女は絵という才能に気づき、それを育てることすら困難な環境の中で、大切に磨き上げてきたのだから。

「だから――一度くらいは、私が本当に望むものを選びたいのです。」

ダグラスのその言葉に、ジェネーブとフレデリックは視線を交わした。

息子の言うことは正しい。

これまで彼は一度も問題を起こしたことがないのだから――気難しい貴族たちでさえ羨むほど、非の打ちどころのない息子であり後継者だった。

「それが結婚なのか?」

父の問いに、ダグラスの顔にわずかな笑みが浮かんだ。

どこか諦めたような、しかしはっきりとした意思を宿した表情だった。

「いいえ、違います。結婚は――私が望むだけでどうにかなるものではありませんから。」

「ふむ……」

フレデリックは重く息を吐いた。

リリー・バンスを気に入っているわけではない。

淑やかさに欠ける点も、家を守ることに関心が薄い点も、大きな懸念だ。

だが一方で、息子が「一度くらい自分の望みを通したい」と言うなら、それを頭ごなしに否定する気にもなれなかった。

「……考えておこう。もういい、下がれ。」

父の言葉に、ダグラスは静かに頷いて立ち上がった。

ようやく重苦しい場から解放されたものの、自室へ向かう足取りは軽くなかった。

生まれて初めて両親に逆らったこと、しかもそれが想いを寄せる女性に関わることだったという事実が、彼の胸に重くのしかかっていた。

 



 

「どう思う?」

ダグラスが部屋を出るや否や、フレデリックはジェネーブに問いかけた。

額に手を当ててため息をついていた彼女は、顔を上げて答える。

「気が重いわ。」

「ダグラスのことじゃなくて、あの娘のことだ。リリー・バンスの。」

――リリー・バンス。

その名を聞いて、ジェネーブは再び彼女の姿を思い浮かべた。

栗色の髪を持つあの娘のことを。

取り立てて目立つところのない令嬢だった。

むしろ平均よりやや劣ると言っていいくらいだ。

そう評しながら、ジェネーブは小さく首を振って口を開いた。

「正直に言ってもいいかしら?」

「もちろん。」

夫の言葉に、ジェネビブはかすかに笑った。

飾り気がなく、まっすぐな性格の娘。

少しばかり風変わりな、リリー・バンス。

「少しだけ、あの子のことが気に入っているの。」

「そうか。」

フレデリックの目がわずかに細められた。

予想外の答えに、ジェネーブは身を寄せて彼の腕に手を置く。

「あなたも分かっているでしょう?私は、あの子を好きになれるなら、相手が誰であっても構わないって言っていたの。」

そう言いかけて、フレデリックは「気に入ったのか」と尋ねようとした。

だが、それより先にジェネーブが言葉を続けた。

「でも――あの子は、ダグラスと関わりがなければ、もっと素直に好きになれていたと思うの。」

もし別の縁で、ケイシー家ともダグラスとも関係のない形でリリーと出会っていたなら、きっとジェネーブはためらいなく彼女を気に入っていただろう。

画家になりたいという夢も同じだ。

家柄や立場に関係なく見れば、応援したいと思えるほどに勇気のいる選択だ。

もしかしたら彼女の絵をいくつか買ってやりたいとさえ思ったかもしれない。

だが――ケイシー家に嫁ぐとなれば話は別だ。

家を背負う立場として、まず考えるべきはその役割を果たせるかどうか。

画家の嫁など、到底受け入れられるものではない。

「あなたが気に入ったのなら、人柄そのものは悪くないのだろうということだな。」

フレデリックの言葉に、ジェネーブはふっと笑みをこぼした。

そう、人としては悪くない。

父のいない家で、少し風変わりな母のもとで育ち、なおかつ画家を志すという貴族令嬢としては不利な条件の中でも、リリーは十分にまともな娘だった。

「でも、あの子は一つ勘違いしているわ。」

続く夫の言葉に、ジェネーブは怪訝そうな表情を浮かべる。

フレデリックは反対の手を伸ばし、自分の腕に置かれた彼女の手にそっと重ねて言った。

「画家は世にいくらでもいるが、ケイシー侯爵夫人は一人しかいない、ということだ。」

 



 

 

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