こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
今回は47話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
47話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 外伝②
「疲れた」
ラシードの一言で、御前会議はあっという間に終わった。
会場を出たラシードが向かったのは当然のことながらルビ一宮だ。
ラシードの手には小さなガラス瓶が握られていた。
シアナに作ってもらう茶葉。
そして彼のそばには護衛騎士のソルが大きなチョコケーキを持って立っている。
「こんにちは」
ラシードの登場にルビ一宮にいた懐かしい顔たちがラシードを迎えた。
「なんでまた来たの?」
荒々しい顔でうなるアリスと、両脇にくっついているそっくりな侍女二人。
そして・・・。
「いらっしゃいませ、殿下」
口元を上げて挨拶するシアナ。
しかし笑っている口の形とは異なり、丸い瞳には「本当によほどやることがないようだ」という考えが込められていた。
それが可愛くて、ラシードは思わず笑い出した。
しかし、すぐにラシードの片方の眉がつり上がる。
毎日目にしたルビ一宮の四銃士のほかに、他の存在があったからだ。
アンジェリーナ皇妃とレイシス皇子だった。
「こ、皇太子殿下」
アンジェリーナは驚いた顔で飛び起きる。
「ここにはどうして・・・」
「皇妃様こそ、ここにはどうなさったのですか?」
「わ、私はちょっと遊びに来ました」
「私もそうです」
ラシードはにっこり笑って答えた。
優しい返事だったが、アンジェリーナの顔は解けなかった。
それもそのはず、彼女と9歳しか離れていない息子(実の息子ではなかったが)は、あまりにもぎこちない存在だったからだ。
それに美しい顔と違って、血も涙もない残酷な者だという噂のために、アンジェリーナはラシードを怖がっていた。
(それでも会うことがなくて大丈夫だったのに、ルビ一宮で出会うなんて)
目をぎゅっと閉じていたアンジェリーナは、ラシードの視線が向けられたところを見て、「ああ、」と気がついた。
自分のそばに立っているレイシスは口を大きく開けてラシードを見つめている。
アンジェリーナは当惑してレイシスの肩を抱き締めながら叫んだ。
「申し訳ありません、殿下。話を聞いてご存知のように、レイシスは皇室の礼法を身につけることができませんでした。きちんとした挨拶ができないことをご理解ください」
焦った彼女の声には恐怖が漂っていた。
手振り一つで百人の人を殺すという皇太子が、挨拶もしない弟が気になると言って殺してしまうのではないかと。
ラシードがレイシスを見下ろす視線が長くなると、不安はさらに大きくなる。
しかし、ラシードはその時、全く違う考えをしていた。
(私が12歳の時の姿とは全然違うじゃないか)
ラシードは12歳のとき、すでに大人の威厳を持っていた。
彫像のように美しい顔、剣術を学んで同年代よりしっかりした体格、幼い頃から訓練を受けた気品のある身振り。
年の離れた女性たちも顔を赤らめるほどだった。
しかし、レイシスにはそのようなものが全く見られない。
血の気のない白い顔とほぐれた目、骨の弱い体。
(みっともない奴だな)
18歳の女性が男として見ることなど全くないほど。
それを確信したラシードの瞳はいっそう穏やかになる。
「大丈夫です」
アンジェリーナは優しい声にやっと安堵した。
アンジェリーナは少しため息をつきながら服を整え始めた。
「皇太子殿下もいらっしゃったのですから、私はもう帰らなければなりません」
ラシードはお世辞でも、「もっと後で帰りましょう」なんて言わなかった。
ラシードが持ってきたケーキをセットしていたアリスが泣きべそをかく。
「もうですか?もう少し遊んで・・・」
アンジェリーナは速いスピードで首を横に振りながら言った。
「いいえ、お姫様。十分に長くいました。また遊びに来ますね」
アンジェリーナは一刻も早くここを出たかった。
いくら笑っていても、ラシードはアンジェリーナにとって依然として恐ろしい存在だったからだ。
アンジェリーナはレイシスの手を握る。
「レイ、行こう」
ところが、何かがおかしかった。
普段なら何も言わずに自分についてきたレイシスが両足に力を入れて立っていたのだ。
「レイ?」
アンジェリーナは当惑した表情でレイシスを見る。
アンジェリーナははっと口を塞いだ。
いつも焦点が合っていたレイシスの目が怖いほど集中していたためだ。
ラシードに向けて。
ラシードは目を細める。
戦闘力もない子供の視線なんて怖くもないが(実際、普段は気にもしない。誰がアリが睨んでも気にするだろうか)、普通の人は目も合わせられない自分をじっと見る弟が不思議だった。
ラシードは尋ねた。
「レイシスは今私の首を切りたいのですか?」
「いいえ!」
ひどい言葉にアンジェリーナはあっという間に顔が青くなって叫んだ。
「では、どうしてこんなに私を見つめるんですか?」
ラシードの無邪気な問いにアンジェリーナは王室の女性の体面など忘れて、速いスピードで答えた。
「その、それがどうも、レイシスが殿下を描きたいらしいのです」
「描きたいんですって?」
「はい、レイシスは目に見えて美しいものを見ると描きたがるんですよ。どうやら殿下が気に入ったようです。純粋な心に行った行動ですので、どうか慈悲深くお許しください」
高貴な者たちは誰かが自分をじろじろ見る見るのを不快に思った。
その姿を描きたいと言えばなおさらだ。
予想通り、ラシードの目が細くなる。
(どうしよう。怒ったみたいだね)
アンジェリーナは恐怖に震えた。
しかし、ラシードがそのような表情をしたのは、あえて自分の姿を描くということに腹が立ったのではなかった。
先日ルビ一宮に遊びに来た時、アリスが興奮した顔で騒ぎ立てた言葉を思い出したからだ。
『レイシスお兄さんはどうしてそんなに絵が上手なの?』
ラシードは何の反応もなく茶碗をすすっていた。
顔も知らない弟がどんな才能を持っていようが、少しも関心がなかったためだ。
しかしアリスのそばにいたシアナが口を開いた瞬間、ラシードのティーカップを持った手が止まる。
『そうです、レイシス皇子殿下の実力は本当にすごいです』とシアナは笑った。
丸い目を輝かせて、小さな口元を綺麗に上げて。
すごく可愛く。
その瞬間を思い出したラシードの目がさらに細くなる。
(一体どれだけ上手に描くの?)
それとなく褒め言葉にけちなシアナがあんな表情をしたのだろうか。
見た目はただのドジっ子みたいだけど。
「・・・」
ラシードはレイシスを見下ろす。
このようにじっと見つめると、普通は顔が青白くなって視線を避けるものだが、レイシスはそのようなこともなかった。
口を開けては何かを渇望する熱烈な瞳で自分を見つめるだけだ。
ラシードとレイシスの雪合戦が長引くと、ルビ一宮には微妙な静寂が漂う。
その間にアンジェリーナはますます顔色が青くなった。
一歩離れていたシアナがその心を読んだ。
このままだとアンジェリーナは怖がって泣き出すかもしれない。
そのような最悪の瞬間が来ないようにシアナが乗り出そうとする瞬間だった。
ラシードが言った。
「見てみたい」
.
「え?」
レイシスの代わりにアンジェリーナが飛び跳ねながら答える。
ラシードはレイシスヘの視線を離さずに話し続けた。
「そんなにすごいという実力がどれほどなのか見てみたいね」
純粋な好奇心などではない。
あえてシアナに自分より高く評価された男に対する稚拙な嫉妬だった。
風と暖かい日差しの中で、ラシドは気怠い顔で椅子に座っていた。
レイシスのモデルになるためだ。
じっとしているのが不便かもしれないが、彼の顔は安らかだった。
いや、ほのかな笑みまで浮かべている。
ラシードのそばでティーポットを持っているシアナのおかげだ。
自分を見つめながら微笑みかけるラシードに向かってシアナが言った。
「モデルの仕事がとても楽しいようですね、殿下」
「おかげさまで」
「・・・」
シアナは冗談を聞いたかのように眉をひそめたが、ラシードは本気だった。
モデルをする前に、ラシードは一つの条件(?)を出した。
絵を描いている間、勝手に動くことができないので、そばで世話をする人が必要だということだ。
それを言って彼の視線が届いたところはシアナだった。
護衛騎士のソルが「それでは私が・・・」と出たが、ラシードと目が合って慌てて手を下ろす。
いずれにせよ、シアナはラシードのそばで世話をしていた。
(世話といってもお茶を注いでくれるということだけど・・・)
いつもとあまり変わらないのに,ラシードは特に機嫌が良さそうに見えた。
(本当にモデルの仕事をするのが面白くてそうなのかな?)
確かに、あんなにきれいな顔をしているから。
誰かが自分を描いてくれるのを楽しむかもしれない、とシアナは思ったが、ラシードが精一杯気分が良くなった理由は全く違うところにある。
人々は全員ラシードの向かいのレイシスに向かっていた。
彼が絵を描く姿を見物するためだ。
「うわぁ。手を何度か動かしただけなのに、瞳ができあがった!」
「あっ、ちょっと驚いた間にまつげができた!」
幼い少年の魔法のような絵の実力に人々は感嘆を禁じえなかった。
毎回ラシードの横にくっついていた護衛騎士のソルでさえ、その隙に挟まってあごが抜けろと口を開けているほどだ。
普段ならラシードは、自分の義務を失った護衛騎士に毒舌を吐くだろう。
しかし、今は全くその気にならなかった。
ラシードとレイシスの初対面。
自分の肖像画を見たラシードの反応が気になりますね。