こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
今回は55話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
55話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇太子の要求
皇太子の応接室。
手入れされた木々や花の上に深紅の絨毯が敷かれている。
美しい光景だった。
そこでシアナは静かに跪いていた。
「シアナ。」
シアナはゆっくりと顔を上げる。
小さな動物三匹(白いフェレット、茶色のリス、鳥)を肩に乗せた美しい男性が立っていた。
応接室の主人、ラシードだ。
ラシードはシアナの向かい側に座りながら口を開く。
「朝日が昇るころには少し怒りっぽくなっていたのに、日が高くなるころにはその怒りっぽさがすっかり消えていたんだね。」
「・・・っ!」
シアナは目を大きく見開いた。
彼女の顔は無表情ではなかったが、他人に感情を簡単に見せるタイプでもない。
宮廷で長い時間を過ごしたことで、自然と感情を隠す術を身につけていたからだ。
だが、ラシードはその感情をあまりにもうまく読み取るのだった。
シアナが困ったような顔で尋ねた。
「どうして私の気分がそんなによく分かるんですか?」
実際、ラシードは人の感情を読み取る方法を知らない。
いや、知る必要がないのかもしれないが・・・。
ラシードは自分の膝に乗せた白いフェレットの毛を撫でながら言った。
「小さくてかわいい生き物たちがどんな状態にあるか簡単にわかるように、君のことも似たようなものじゃないかな?」
「・・・」
シアナは言葉を失った。
『なんなのよ。私がこの小さな生き物たちと同じだって言うの?』
軽口を叩こうと思ったが、ラシードの真剣な表情を見ていると、それが本気なのだと感じた。
『はあ・・・。本気で聞いた私が間違ってたわね。』
シアナは自分が余計なことを言ったような気がして、小さなため息をついた。
ラシードはそんなシアナをじっと見つめながら再び尋ねる。
「問題はうまく解決した?」
「・・・はい、閣下のご助力のおかげです。」
ラシードがシアナに提供した食料品のおかげで、問題は滞りなく解決された。
残っていた食料品は必要としている下級侍女たちに分けられることに。
そして、ジャンヌは・・・シアナから鞭で100回叩かれた。
ジャンヌは最初は間違いを認めて謝罪したが、その後シアナに対してあまりにも酷いと文句を言い、さらに後には再び間違いを認めて許しを乞うた。
「お願いです、お願いですからもう叩かないでください、シアナ様。本当に痛いです・・・」
ジャンヌは子供のように泣きじゃくった。
しかしシアナは手を止めることなく、100回すべてを叩き終えたとき、ジャンヌは力尽きて床に崩れ落ちる。
数人の下級侍女たちが近寄り、そのようなジャンヌを助け起こした。
彼女たちの目には、ジャンヌに対する怒りはすでに消えていた。
脚が青あざだらけになるまで叩かれたジャンヌに対するわずかな同情心、そしてシアナへの畏怖がそこに混じっていた。
シアナはその視線を見つめながら冷たい声で言った。
「みんな見たでしょ?皇宮の侍女として、義務と責任を果たさない者は決して許されないわ。」
シアナの脅迫めいた言葉に、下級侍女たちは頭を下げる。
その日が終わるまで、下級侍女たちはシアナに一言も声をかけることはなかった。
そしておそらく、明日も同じだろう。
彼女たちにとってシアナは、もはや親しみやすい相手ではなく、恐怖の対象だったのだから。
新しい人生、それは決して簡単なものではなかった。
しかし・・・。
シアナはまだ鞭の柄が残る手のひらを下ろしながら話した。
「気分がすごく重たいですね。自分の手で誰かを叩くなんて。」
「そう・・・。」
ラシードは短い言葉で、シアナが今日経験したことを黙考した。
ラシードは目を伏せて尋ねる。
「後悔している?」
「いいえ、全然そんなことはありません。私は中級侍女ですから。」
中級侍女は、部下を取り仕切らなければならなかった。
そして、人を扱うということは、甘く見てはいけなかった。
皇宮のように厳格な場所ではなおさら。
間違った時は、きちんと叱らなければならなかった。
『もう二度とこんな過ちを犯させない。』
そのため、ほかの下級侍女たちが見守る中でジャンヌを叩いた。
彼女は同じ過ちを繰り返してはいけないという厳しい警告を受けた。
ラシードがシアナをじっと見つめたまま言った。
「わぁ、怖い。」
その言葉を聞いたシアナは驚いたように目を大きくした。
「今、誰に言っているんですか?」
「もちろん君だよ。」
シアナは返す言葉がなかった。
「私が怖いんですか?」
「うん、さっきの表情、本当に・・・下級侍女たちが震え上がっていたよ。」
それは事実だったが、シアナはどうしても目線をそらしながら納得することができなかった。
『戦場で亡くなった人の数が夜空の星の数ほど多いと語る人に、そんなことを言われるなんてね。』
シアナは悔しいという顔でじっと沈黙を守った。
「面白い冗談をおっしゃいますね。」
ラシードはその様子が愛らしいと思ったのか、軽く笑った。
「本当さ。」
それは真心からの言葉だ。
先ほどのシアナの表情はまるで別人のように怖ろしかった。
だからこそ良かった。
普段は春の花のように穏やかな女性が、必要な時には冬の棘のように強くなるその一面が。
「・・・!」
ラシードの顔を見たシアナは思わず目を見開いた。
ラシードは時折、こうして自分を見つめてくる。
まるで世界に一つしかない宝石を見つけたような、眩しい黄金の光をたたえた目で。
以前はそんな視線を受けるたびに、ただただ気恥ずかしく、重荷に感じていた。
しかし、今は以前とは違った。
顔が少し熱くなって、胸が少し苦しくも感じられる。
『はぁ、どうしてこんなことをする必要があるのかしら。この人があまりに美しいからよね。』
シアナは目をぎゅっと閉じ、開き直るように気を落ち着けて言った。
「失礼しました。不必要なことをたくさん話してしまいました。」
冷やかしに来たわけではない。
ラシードを訪ねた理由は別にあった。
シアナは紙を一枚ラシードに差し出した。
「今朝、陛下に購入していただいた食料品のリストと価格をまとめた書類です。合計で計算すると、なんと9980ゴールドでした。」
とんでもない金額だった。
週給50ゴールドの中級侍女の給料を一切使わず貯めたとしても、4年かかるほどの額。
借金をコツコツ返しても終わらないほどだったが、それを「相談」と書いて「圧力」と読むかのように、坦然とジャンヌを説得した。
説得に成功したシアナは100回の罰則として、この問題をジャヌが全額負担することを約束させた。
「事態がうまく進んで、お金をすぐに調達できるようになりました。3日後には全額をお支払いします。」
しかし、それはどういうわけか奇妙だった。
数年かけて返済しなければならないはずのお金を一括で払えると宣言したにもかかわらず、ラシードの顔は不気味に無表情だった。
ラシードは、シアナが整理した紙を見つめ、口を開いた。
「私は物の代金をお金で受け取ったことがないんだが。」
「・・・!」
シアナはその一言に目を丸くする。
当然、お金で支払うべきだと考えていたからだ。
なぜなら、今までラシードがシアナに与えてきた無形のもの(宮殿の話など)とは違い、食料品は形があり価値が明確な品物だったからだ。
しかし、それはただの思い込みに過ぎなかったようだ。
シアナが困惑したように目を細めた。
『いつも通り、お茶を代わりにくれるような価値を期待しているのだろうか?』
もしそうだとしたら、どれだけの見返りが必要になるのか見当もつかない。
9980ゴールド相当のお茶だ。
何千もの皿を出しても足りないかもしれない。
そんなことを必死に計算している間に、ラシードは少しだけ赤みを帯びた顔で言った。
「俺と・・・してくれ。」
「・・・!」
シアナの目が大きく見開かれる。