こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
今回は59話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
59話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二日酔い②
揺れるように歩いていたオムをようやく振り切り、シアナは部屋にたどり着いた。
シアナはまるで砂漠をさまよいながらオアシスにたどり着いた人のように、幸せそうな顔でベッドの上に倒れ込んだ。
普段は硬いと感じていたベッドが、この瞬間は柔らかく感じられ、彼女を包み込むようだった。
「はあ。やっと休める!」
アルコールで疲れ切った体には休息が必要だった。
シアナは満足そうに目を閉じる。
しかししばらくして、シアナはぱっと目を開けた。
それは、昨夜のぼんやりした記憶が蘇ったからだ。
「なんてこと・・・私、一体何をやらかしたの?」
シアナは震える手を自分の前に出し、凝視した。
この手で、ラシードの頬を掴んで___。
そしてまるで柔らかいパン生地をこねるように引っ張ったのだ。
「馬鹿だ、馬鹿すぎる、シアナ!」
シアナは叫びながら枕を足で蹴った。
どれだけ酔っていたとはいえ、ただの侍女が皇太子にあんなことをしたのは、とても許される行為ではない。
いや、そもそも皇太子の前で酔っ払った姿を見せた時点で、とんでもない失態だ。
「昨日、自分がどうしてあんなことをしたんだろう?」
シアナは考え込んだ。
ジャンヌが引き起こした事件のせいで心身共に疲れ切り、また村での祝祭の雰囲気に酔い、初めて口にしたビールがあまりに美味しすぎて___。
冷静さを失う理由は山ほどある。
しかし、少し時間が経ち、シアナは真っ赤な顔で枕に顔を埋めた。
「全部言い訳だ・・・。」
どんな理由があろうと、侍女が皇太子にあんな失態を犯して良い理由にはならなかった。
シアナがそんなことをしてしまったのは、ただ・・・ラシードが気を許してくれたからだった。
シアナは酔った勢いであったとしても、自分が何をしても殿下が全て受け入れてくれるということを分かっていた。
(私が何をやっても殿下が許してくれるなんて。)
予想通りだった。
それどころか、酔い潰れてしまったシアナのために皇宮全体に休暇日を与えた。
さらに酔いを解消するための特別な食事まで。
信じられないほど優しい配慮だ。
シアナは泣きそうな顔で立ち尽くす。
「はは、殿下に可愛がられて本当に幸運だ。」
そうでなければ、今頃こんな風に快適に横になっているどころか、皇族冒涜罪で牢屋に入れられ、尋問されていただろう。
(二度と殿下に私をペット扱いしないでなんて言わない!)
可愛がられるのはどう?
まあいい。
(権力者の愛情は常に有利だから!)
そう思いながらシアナは心を落ち着け、さらに失敗したことがないか記憶をたどった。
幸いなことに、それ以外には特に問題はなかった。
彼女はそっと歩き、別れる直前にはラシードに優雅に挨拶までした。
「だから大丈夫。・・・たぶん。」
シアナは物事を深く掘り下げるタイプではない。
過ぎ去ったことを後悔することも、未来のことを心配することもなかった。
緊張が解け、一時的に消えていた疲労感が戻ってきた。
まだアルコールが残る体は強く休息を求めていた。
「・・・まずは寝よう。」
険しい表情よりも、一晩眠ってすっきりした精神でラシードに向き合う方がずっと良い。
くう――。
このようにして、シアナは子供のように無邪気な表情で眠りについた。
昨夜、ラシードの頬をつまんで引っ張り、その後彼の鼻先にキスをしたことなど全く想像もしていない様子で。
同じ時刻、ラシードは小さな動物を三匹抱きかかえて椅子に座っていた。
ラシードは白い羽を撫でながら、物思いにふけっていた。
「シアナは今頃眠っているだろうな。」
おそらくそうだろう。
昨夜、シアナは少し酔っぱらっていたのだから。
もちろん、シアナ本人はその事実を否定しているだろうけれど。
[いえ、殿下。私はち~っとも酔ってなんかいません。]
そう言って、片方の腕と脚を同時に動かして歩いた。
別れる際には、まるでラシードがいるかのように虚空に向かってしっかりとお辞儀をするほどだった。
それくらいだから、シアナは昨夜の出来事を一切覚えていないかもしれない。
(私の頬をつまんで引っ張ったことも・・・私の鼻先にキスしたことも。)
実際、それは男女のスキンシップとしては不適切な行動だった。
まるで穏やかな春の日、飛び回っていた蝶が一瞬鼻先に止まったかのように、あるいは風に吹かれて舞い落ちた桜の花びらが髪の毛に乗ったかのように、ラシードはその小さな出来事に心を奪われた。
しかし、不思議なことにラシードはその瞬間を忘れることができなかった。
夜中にそのことを思い出し、まともに眠れないほどだった。
ラシードは美しい表情を浮かべながら呟いた。
「本当に可愛いよ、シアナ。」
抱きしめて腕の中で大切に育てたいと思うほど。
しかし、ラシードは知っていた。
そんなことをすれば、シアナが逃げてしまうだろうということを。
絶対に急がずに動かねばならない。
甘い食べ物と快適な座席で、少しずつ少しずつ誘わねばならない。
両足で自ら近づいてくるその時まで。
「だから、我慢するよ。」
しかし言葉とは裏腹に、ラシードの顔は切ない表情をしていた。
心の中で湧き上がる感情を抑えるのが難しい様子だ。
シアナは軽く伸びをして、晴れやかな表情で立ち上がる。
「わあ、頭痛がすっかり消えた。体も軽くなった。」
夕食も取らず、ぐっすりと眠っていた。
二日酔いが治まったシアナは、静かに食品管理室へ向かう。
(昨日一日中休んだのだから、今日はちゃんと働かなきゃ。・・・そして、仕事が終わったら皇太子様にも会いに行こう。)
とても気まずく、申し訳なく、恥ずかしかったが、自分が思わず皇太子の頬を伸ばしたことについて、しっかり説明をする必要がある。
決心したシアナは、一日中一生懸命働いた。
予期しなかった休暇のおかげで活気を取り戻した下級侍女たちも、同じように熱心に働いていた。
その中にはジャヌもいる。
シアナに叱られ、怪我を負った足を引きずりながらも、ジャヌは休まず働いていた。
そんな彼女の姿を見て、シアナは思った。
(少しは正気に戻ったみたいね。それならそれでいいけど。)
そう考えながら、シアナは作業を終えた。
シアナはいつもより早く仕事を終えた後、皇太子宮を訪れた。
「ようこそいらっしゃいました、シアナ様。」
皇太子宮の侍女はシアナを自然に応接室へ案内した。
侍女はシアナが皇太子殿下と事前に約束をしたのか、どんな用事で来たのかを尋ねることはなかった。
必要なことがあれば呼び出すような態度で、簡潔に挨拶をして退出するだけだった。
まるで貴賓でも来たかのようだ。
(来るたびに慣れないのよね。いったい殿下が私についてどう話しているのかしら?)
シアナは困惑した表情で椅子に座る。
少しすると、ラシードが姿を現した。
「いらっしゃい、シアナ。」
シアナが約束もなしに突然訪れたにもかかわらず、ラシードは少しも驚いたり、不愉快な態度を見せたりしなかった。
ラシードはまるで待っていたかのように微笑みながらシアナを見つめる。
ラシードの笑顔を見たシアナは、両手を合わせて深々と頭を下げた。
「殿下、先日は本当に申し訳ございませんでした。酒に酔って、大変な無礼を働いてしまいました。」
ラシードがくすくすと笑う。
「どんな失礼をしたのか覚えている?」
「もちろんです。」
シアナはラシードを見つめたまま、小さな声で続けた。
「殿下の頬を掴んで、ぷにゅっとつねりました。最近、食材管理室で働いているときに小麦粉の反応を何度も確認していたせいか、無意識のうちに手が動いてしまったようです。」
ラシードが興味津々の表情で尋ねた。
「それから?」
シアナは目をぱちくりさせた。
何度思い返しても、他に失礼をした記憶はなかった。
シアナはラシードの視線をうかがいながら尋ねた。
「・・・それ以外に、私がまた何か失礼をしましたか?」
ラシードが目を細めた。
「まさか、記憶にないのか?」
「・・・。」
シアナはこれまで感じたことのない不安を覚え始めた。
しかし、どれだけ記憶をたどっても、頬をつねった以外に思い当たることはなかった。
(まさか、私が殿下の髪を掴んで一晩中振り回したりしたのでは・・・?)
あり得ることだった。
シアナはラシードに大きな恩義を感じていたわけではなかったが、彼の言動にほんの少しだけ不満を抱いていたせいで、そんな恐ろしい行動に出てしまったのではないかという不安を抱いていた。
視線をさまよわせ、何も言えずにいるシアナを見て、ラシードは「はあ」と小さくため息をついた。
「君が謝罪に来たというのに、何をしたのかも分からないとは。自分が何をしたのか、ちゃんと知っておくべきだな。」
「・・・その通りです。」
「もし思い出せないなら、俺が教えてやるよ。」
「・・・?!」
ラシードの両手がシアナの両頬に触れた。
「ちょ、殿下?!」
シアナは慌てた表情で声を上げる。
しかし、ラシードは止まらず、シアナの頬をそっとつかんだ。
それだけでは終わらなかった。
ラシードの顔がさらに近づき、しっとりとした音がする。
ラシードがシアナの赤らんだ鼻先に口づけをしたのだ。
シアナはそのまま硬直した。
(な、な、な、今これどういうこと?!)
ラシードはシアナを見下ろしながら言った。
「一昨日、君は俺にこれをやったんだ。」
「・・・!」
「俺はあまりに驚いて、眠ることもできなかった。」
「・・・。」
「でも謝る必要なんてないさ。俺は少しも不快に感じなかったからね。むしろ・・・。」
ラシードが身をかがめ、シアナの耳元で囁いた。
「とても、良かったよ。」
(ぎゃあああああああああ!)
シアナは心の中で叫び声を上げた。
(王宮よ、消えてくれ!)
シアナはラシードにきちんとした別れの挨拶もできず、逃げるようにして宮殿を後にした。
顔が火照るほど赤くなったシアナは決心した。
(もう二度と酒なんて飲まない!)