こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
65話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 犯人は誰?⑥
次の日、グレイス皇女の宮殿に送られてきた食材の量はまだ十分に多かった。
しかし、シアナはあまり気に留めていなかった。
食料を盗み食いした犯人が宮殿の主であるグレイス皇女自身であるなら、大事にはならないと考えていたからだ。
それは誤った判断だった。
数日後、下級侍女のソフィアがシアナのもとに駆け寄りこう言った。
「シアナ様、話を聞きましたか? グレイス皇女殿下の宮殿で大変なことが起きたそうです。」
「大変なこととは?」
「宮殿の食材を盗み食いしていた人がいるとか。よりによって低級侍女たちが一致団結して犯人を捕まえたそうですよ。」
「・・・。」
シアナは不吉な予感を感じた。
ソフィアがさらに話を続ける。
「チュチュだそうです、皇女の宮殿に新しく配属された新入りの侍女ですね。」
「・・・!」
シアナは言葉を失った。
「やっぱりそうだと思ってたのよ。下級侍女だった頃から、チュチュはとにかく食い意地が張っていて、食べ物に目がなかったもの。宮殿の豊富な食材を見て我慢できずにこっそり食べたんでしょうね。うっ。」
シアナは下級侍女たちの前で騒ぎ立てるソフィアの口に乾いたパンを押し込んで黙らせ、物置から出た。
「シアナ様、どちらへ行かれるのですか。」
追いかけてきたソフィアにシアナは言った。
「急ぎの用事ができたから行ってくる。私の代わりにここを見てて。」
もともとシアナはこういう形で自分の仕事を他人に任せることはない。
しかし、どうしようもなかった。
『チュチュが泥棒だなんてありえない!』
数日中に何かが起きるのは明白だった。
シアナは急いでグレイス皇女の宮殿へ向かう。
シアナを出迎えたのは侍女のビビだった。
ビビはシアナに目を細めながら言った。
「今度は何の用ですか?食材泥棒ならもう捕まえました。これ以上、私たちの宮殿に構う必要はありませんよ。」
冷たい態度のビビに向かって、シアナが言った。
「チュチュは犯人ではありません。」
予想外の言葉にビビは目を見開いた。
しかし、少し経つとビビは腰に手を当て、シアナを睨みつけた。
「それは侍女様のご意見でしょう!」
ビビが口を開いた。
「わかったんですが、侍女様とチュチュは見習い侍女時代の同期なんですね。それで数日前も調査をいい加減に終わらせたんですか?チュチュを庇うつもりなんですね。」
「・・・。」
「だからまた事件が起きたんです。公女様に届けるために作った料理に手を出したんですよ。これ以上見過ごせないので、私たちは犯人を突き止めました。チュチュ、あの卑劣な生意気者のことです。」
「チュチュが犯人だという証拠はあるんですか?」
シアナの言葉にビビは肩を動かすことなく、目に力を込めて言った。
「証拠はありませんが、疑惑はありますよ。宮殿の侍女の半分がチュチュを疑っていますから!」
シアナは内心で溜息をつく。
予想以上にチュチュは侍女たちに妬まれているようだ。
『これほどとは思わなかったら、あんなに軽率に調査を終わらせるべきではなかった。』
何があったにせよ、事態は進んでしまった。
今からでもチュチュを助けなければならない。
「チュチュに会わせてください。詳しい話を聞いてみたいんです。」
しかし、ビビは首を横に振った。
「ダメです。」
「どうして?」
「チュチュは今、部屋に閉じ込められている状態ですから。」
その言葉に、シアナの顔が冷たく強張った。
「犯人だと確定されたわけでもなく、ただ疑いがあるだけで部屋に閉じ込めたんですか?」
「それでどうするんですか。あの子をそのまま放置しておけば、またこそこそ盗み食いするかもしれないでしょう。」
ビビはシアナの顔を一瞥しながら、冷たく言葉を続けた。
「これ以上、この件に関わるのはやめてください。宮殿内でチュチュをもっと厳しく尋問し、それでも自白しなければ警察に通報するつもりです。調査を進めていけば証拠も見つかるでしょう。」
全く話にならない。
警察署はこのような取るに足らない事件を詳細に調査することは絶対にない。
ましてや犯人として通報されたのは、後ろ盾も何もない下級侍女の一人。
大勢の中で、チュチュに罪を押し付け、なすりつけるのはたやすいことだった。
警察署にとって重要なのは、侍女の潔白を明らかにすることではなく、皇宮の煩わしい揉め事を消し去ること。
そして、それがグレイス皇女の侍女たちの望むところだった。
「下級侍女一人を排除するために、冷淡な手段を使うなんて。」
シアナのエメラルド色の瞳が冷たく光った。
(何なのよ、これは。)
シアナと向かい合っていたビビは、何かに押されるように後ずさりする。
シアナは自分よりも背が低かった。
丸い顔は可愛らしい印象を与え、少し垂れた目は柔らかだった。
だが、一体なぜだろうか。
シアナを見上げると、まるで怒りに満ちた皇族のように彼女が怖く見えた。
ビビが感じたように、シアナは頭のてっぺんまで怒りに満ちているようだった。
しかし、シアナは感情を抑える。
『今はこの人と対峙するときじゃない。』
警察に通報した瞬間から、事態はさらに複雑化してしまう。
その前に、チュチュにかけられた濡れ衣を晴らさなければならない。
『そうするにはグレイス皇女様にお会いするしかない。』
今、この状況を最も簡単に解決できるのはグレイス皇女だけだった。
それは皇女の宮で起きている問題だったからだ。
もし皇女が侍女たちに、混乱を広げるのではなく冷静に対処するよう命じたなら、チュチュを犯人に仕立て上げようとしていた侍女たちも、その口を閉ざすはずだ。
シアナは言った。
「グレイス皇女様にお会いしたいです。皇女様に訪問のお願いをお伝えください。」
ビビは呆れた表情を浮かべた。
「馬鹿げた話ね。一介の中級侍女が皇女様に会わせてもらえるわけないじゃない!」
「そう思う?」
「え?」
シアナはそれ以上問い詰めることなく、背を向けた。
ビビのこの反応は予想通りだった。
たとえ何度お願いしたとしても、同じ結果になるだろう。
『無駄に時間を費やさず、別の方法を探そう。』
グレイス皇女に会う最も早い方法は、皇女が信頼する人物の力を借りて場を設けてもらうことだ。
『アリス皇女様に助けを求めてみるか・・・。』
シアナは視線を下ろした。
『アリス皇女様は皇位継承者としての後ろ盾を得ているけれど、まだ弱い。』
アリスが会ってくれると言ったところで、グレイス皇女がすぐに従うとは限らない。
むしろ拒絶される可能性もあった。
『それならアンジェリーナ皇后陛下に助けを求めれば・・・。』
今回もシアナは視線を伏せた。
レイシス皇太子の件でアンジェリーナ皇后とは距離が縮まったものの、今のような些細な頼みごとをするのはまだ早い。
シアナは小さな声でつぶやいた。
「皇太子殿下にお願いすれば・・・。」
実のところ、アリス皇女やアンジェリナ皇后よりも、ラシードが最初に頭に浮かんだ。
しかし、簡単に彼を頼るわけにはいかない。
『殿下にこれ以上お世話になるなんて、さすがにやりすぎよ。』
以前、ジャンヌの事件を解決する際にも助けを借りたばかりなのに、また頼るのはあまりにも図々しい。
シアナも少し気が引けた。
『でも仕方ないわ。』
シアナは目をきつく閉じて悩んだ後、ゆっくりと目を開けた。
『彼らに頼らずにグレイス皇女に会う方法がある!』