こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

76話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 生まれ変わるために③
「お入りください、アイザック様。」
グレイスの声に応じてアイザックが部屋に入った。
本来、貴族が皇族を訪れるには事前の許可を得なければならなかった。
そして、皇宮に来た後も応接室に案内されるのが通常だった。
しかし、アイザックは特別だ。
アイザックは特に連絡もなく、いつでもグレイスを訪ねることができ、応接室ではなくグレイスの部屋へ直接やって来た。
それは婚約者の特権。
アイザックが部屋に入ってきた。
柔らかなダークブロンドの髪、端正な顔立ちに柔らかな瞳。
グレイスの後ろに立っていたシアナとチュチュは同時に同じことを思った。
思ったよりも普通。
確かにハンサムではあったが、特に目立つほどではなかった。
「姫様に比べたら、全然及ばないわね。」
シアナとチュチュは同じ考えを共有しながら目を細めた。
グレイスが言った。
「ご苦労さま。あなたたちはもう下がりなさい。」
いくらシアナとチュチュが最近グレイスと特別な時間を過ごしている侍女たちであっても、守らなければならない一線があった。
婚約者との大切な時間を邪魔するわけにはいかなかった。
そこでシアナとチュチュはおとなしく答えた。
「はい。」
チュチュが言葉を付け足した。
「担当の侍女にお茶の準備をするよう伝えます。」
チュチュの言葉にグレイスが笑った。
「やっと気が利くようになったわね。そうしてちょうだい。」
グレイスの褒め言葉に、チュチュは誇らしげな顔で頭を下げた。
こうしてシアナとチュチュは部屋を出て行った。
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アイザックが椅子に腰掛けながら言った。
「侍女たちと仲が良さそうですね。」
グレイスが微笑みながら答えた。
「私を心から気にかけてくれる侍女たちですから。」
「人々を大切にすることは、姫としての美徳の一つです。しかし、節度を保つ必要があります。甘やかしてしまうと、人々に振り回され、威厳を損なうことになりかねません。」
「……はい。」
グレイスは少し困った顔で答えた。
アイザックは普段は無口で落ち着いた性格だ。
しかし、グレイスが彼の気に入らない行動を取るたびに、こんなふうに一つ一つ指摘してきた。
そのたびにグレイスは息苦しい気持ちになった。
『アイザック様は私を心配して言ってくれているんだ。悪い方向に考えないようにしよう。』
グレイスはそう考え、表情を和らげた。
指をもじもじさせるグレイスを見つめながら、アイザックは思った。
『普段とは違うな。』
どんな時でもグレイスはいつも完璧な姿をしていた。
輝く髪飾りをつけ、腰をきゅっと締めた豪華なドレスを身にまとい、裾の下からはつま先の尖った靴がちらりと見える。
だが、今日はそうではなかった。
『髪飾りもなく、ただ一つに束ねた髪に、寝間着のような緩やかなドレスとは。』
誰かはそれをそのままの自然な美しさだと感じるかもしれないが、アイザックには違った。
アイザックは目の前にいる婚約者のその姿に満足できなかった。
『姫というものは、誰の前に出ても完璧に美しく、気品に満ちた姿を見せなければならないんだ。今のように昼寝から目覚めた庶民のようなだらしない格好ではない!』
アイザックはそう言い放ちたかったが、堪えた。
いくら自分の言うことをよく聞く婚約者であっても、グレイスは皇女だ。
そんなふうに思ったことを口にするわけにはいかなかった。
代わりにアイザックは視線を逸らしながら別の言葉を口にした。
「私が突然訪れて驚かせてしまいましたか?」
グレイスは微笑みながら答えた。
「いいえ。私、アイザック様にお願いしていましたでしょう? いつでも私に会いたくなったら、遠慮なくいらしてください、と。」
グレイスはアイザックの突然の訪問を特別なことのように感じた。
義務的な関係とはまったく異なる、優しさのこもった訪れだと。
『まるで子供のように純粋な考え。だからこそ愛おしいのだわ。』
アイザックはそう考えながら口を開いた。
「そうではなく、姫様に会いたくてここに来ました。」
『ドキッ!』
突然、顔が真っ赤になったグレイスを見て、アイザックは続けた。
「そして、少し心配にもなったので来たんです。」
「心配だというのですか?」
微笑みを浮かべながらグレイスが尋ねると、アイザックは言った。
「ライラ皇后陛下から話を聞きました。最近、姫様が部屋からあまり出てこられず、女性たちのティーパーティーにも参加されていないとか。」
「あ……」
グレイスは目をぱちくりさせた。
確かに最近グレイスは外出を控えていたが、それには特に深い理由があるわけではなかった。
ただ、自分の習慣を変えるためだった。
『城の外に出ると、間食をしてしまってすぐ運動もできなくなるし……。』
まさかアイザックがそのことを気にするとは思っていなかった。
『まさか3年前のように、私が体重を気にして部屋に引きこもっているとでも思われたのかしら?』
もしそうなら、そんな必要はないと、むしろ健康のために努力している最中だと説明したい。
しかし、アイザックはグレイスとはまったく違う考えをしていた。
アイザックは眉をひそめながら言った。
「気を抜いてはいけませんよ、姫様。」
「……?」
グレイスは、それがどういう意味なのか分からず、アイザックを見つめた。
「食欲が増えたという話を聞きました。怠惰に食事をしてはだらけてしまい、一日中部屋で横になっていたのでしょう?その結果、眠そうな顔で部屋着のようなだらしないドレスを着ているわけです。」
「……。」
「そのままでは本当に困ります。すぐに以前のような姿に戻っていただきたいものです。ふっくらして華やかだった頃に。」
アイザックの優しい眼差しはそう語っていた。
その瞬間、グレイスは息が詰まるような感覚を覚えた。
しばらく黙っていたグレイスが、目線を下げながら静かに口を開いた。
「そ、それは違います、アイザック様。以前のような状態に戻ることは絶対にありません。食欲が増えたのも野菜を中心に食べているからです。それに、部屋の中で横になっているわけではなく……。」
グレイスは少し言葉を詰まらせた後、口を開いた。
「運動をしているんです。」
想像もしていなかった言葉に、アイザックの目が見開かれた。
「運動ですか?」
「はい。体を動かして、体重が増えないように管理しています。汗をかくと体が軽くなりますし、よく眠れるのでとても良いんです。」
無意識のうちに、運動がもたらす良い点を並べて説明するグレイスを見つめながら、アイザックの表情が硬直した。
『姫様が運動をしているなんて。』
アイザックにとって運動とは、体を鍛えるための行為だった。
それは通常、男性がするもの。
もちろん、女性の中にも体を動かす人はいるが…それは雑事をこなす侍女や農夫たちだった。
彼らの体は一目で分かるほど引き締まっていて力強く、隙がなかった。
グレイスがそんな体に変わることを想像すると、どうしようもなくぞっとした。
アイザックは険しい顔でグレイスの手首を掴み、引き止めた。
「姫様、何を考えてそんなことをしているのか分かりませんが、私は今の姫様の姿が好きです。優雅で上品で美しい姫様として、私のそばにいていただきたい。」
「……。」
「ですから、運動のようなことはおやめください。体重が増えるのを心配されているなら、食事量を控えれば済む話ではありませんか。」
その瞬間、グレイスは胸が苦しくなるような、何かに締め付けられる感覚を覚えた。
だが、グレイスは「嫌だ」という言葉をどうしても口にすることができなかった。
その言葉を言ったことで、愛する男性がどんな表情をするか、誰が分かるだろうか。
グレイスは今にも泣きそうな顔で目線を落とす。







