こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

82話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 戻ってきた日常
食品管理室の雰囲気がいつもと違っていた。
今日はシアナが管理侍女として働く最後の日だったからだ。
深緑色の制服を着たシアナは、いつもどおり落ち着いた態度で下級侍女たちに言葉をかけた。
「これまで私の指示にしっかり従ってくれて、与えられた仕事を一生懸命こなしてくれてありがとう。」
下級侍女たちは名残惜しそうな表情で答えた。
「私たちこそ、シアナ様がうまく導いてくださり感謝しています。」
一緒に汗を流しながら働いてきたおかげで、シアナと下級侍女たちの間には深い絆が生まれていた。
何人かの下級侍女たちは、シアナに付いてルビー宮へ異動したいとまで言い出したほどだ。
しかし、シアナはその提案を受け入れることはできなかった。
『ルビー宮にはアリス公主様お一人だけ。侍女はニニとナナ、そして私の3人で十分だわ。』
幸い、下級侍女たちはシアナの意向をしっかりと理解してくれた。
その時、下級侍女の一人であるソフィが一歩前に出て言った。
「これまでお疲れ様でしたという気持ちを込めて、私たちからささやかなプレゼントを用意しました。」
シアナは目を大きく見開いた。
「プレゼント?」
「はい。」
ソフィがシアナの首に掛けてくれたのは、ネックレスだった。
金や銀で作られたものではなく、クルミやピーナッツのようなナッツ類を糸で繋いで作られたものだった。
食品管理室らしいプレゼントに、シアナは笑みを浮かべた。
「ありがとう。働いていてお腹が空いたら、少しずついただくわね。」
和やかな雰囲気だった。
ただし、一人を除いては。
ジャンヌは不満そうな顔で片隅に立っていた。
『もう出て行けよ!この鬱陶しいシアナめ!』
しかし、ジャンヌがシアナと目が合った瞬間、表情は一変した。
ジャンヌは慌てて視線をそらし、両手をこすり合わせながら言った。
「何かお言葉でもありますか、シアナ様?」
シアナはその顔を見て思った。
『反省というのは怖いものね。』
100回の鞭打ちを受けた後、ジャンヌはシアナをライオンに睨まれたハイエナのように恐れていた。
その様子を見ていると、あまり気分が良いものではなかったが、少なくともジャンヌが大人しくなったのは幸運だった。
「ジャンヌ。」
「はい!」
シアナの声に、ジャンヌは肩をすくめながら返事をした。
怯えがにじみ出たジャンヌを見て、シアナは言った。
「もう二度と悪いことはしないで。次は鞭打ちだけでは済まないから。」
シアナの裁量で済んだからこそ、今回はこの程度で終わった。
しかし、次に何かをやらかせば首が飛ぶかもしれなかった。
それは、かつて同僚であったジャンヌを守るための注意だった。
だが、ジャンヌにとっては、明確な脅迫としか聞こえなかった。
ジャンヌは引きつった顔で喉を軽く押さえた。
「はい、肝に銘じます。」
「……。」
シアナはそんなジャンヌを冷静に見つめながら、心の中で呟いた。
『まあ、きっとちゃんとやるでしょう。』
こう言ったのにまた問題を起こすようなら、それはもう仕方のないことだった。
そう考えながら、シアナは食品管理室を後にした。
一人になったシアナは、張り詰めていた表情をゆっくりと和らげた。
点滴を終えた中級侍女から、一介の少女の姿に戻ったシアナは、空を見上げて両腕を広げ、大声で叫んだ。
「やった!ついに私は中級侍女だ!」
教育を終えた今、シアナは堂々とした皇宮の中級侍女となったのだった。
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3週間の間、空っぽだったルビ宮が再び活気を取り戻した。
宮の主であるアリスと3人の侍女、シアナ、ニニ、ナナが戻ってきたからだ。
ニニが言った。
「公主様、私たちがいない間、皇太后様がとても大切にしてくださったようですね。」
ナナが続けて言った。
「認めたくはありませんが、私たちがいなかった間に公主様は以前よりさらに美しくなられたとか!」
3人の侍女が中級侍女の教育のために宮を留守にしている間、アリスは皇太后宮に滞在していた。
そしてその間に何があったのか、アリスは以前にも増して輝いて見えた。
「いや、別に……。」
口元を手で隠してはにかむアリスを見て、シアナも尋ねた。
「皇太后様とどのように過ごされたのか、教えてください。私も気になります。」
皇太后は約束通り、アリスのために多くのことをしてくれたのだった。
帝国で最も有名なパティシエを招いて、毎日違うデザートを作らせたり、貴重な本、ドレス、宝石、楽器などの様々な贈り物をアリスに与えた。
しかし、アリスはそれを素直に喜ぶことはなかった。
アリスは皇太后の愛情に対して強い不信感を抱いていたからだ。
そのため、アリスはわざと反抗的な態度を取ることもあった。
食事の時間には礼儀を無視して無作法に食べたり、皇太后が呼んだ家庭教師たちに悪戯を仕掛けて授業を台無しにしたりした。
皇太后から与えられる贈り物も気に入ったものだけを選んで持ち帰り、それ以外のものは必要ないと断った。
それでも、皇太后は一切不機嫌な表情を見せることはなかった。
「さすが強情な性格の老婦人ね。」
アリスは眉をひそめながら言った。
「おばあ様は思ったよりも私のことを気に入っているみたい。」
「……」
「まあ、私じゃなくて亡くなった娘が恋しいから、こんなに優しくしてくれるんでしょうけど……」
複雑な表情を浮かべるアリスを見て、シアナは視線を落とした。
アリスの言葉どおり、皇太后が最初にアリスに心を開いたのは、昔亡くなった娘への想いが理由だった。
しかし、それからすでに数か月が過ぎていた。
娘への想いに没頭していた感情が薄れつつあり、理性が戻り始める頃合いだ。
さらに、アリスの姿もまた、皇太后の亡き娘を思い出させるものとは全く異なっていた。
やんわりと微笑むこともなく、美しい言葉を紡ぐこともなく、ただ言いたいことをそのまま口に出すわがままな公女であるだけだった。
それでも、皇太后がアリスに向ける愛情には揺るぎがなかった。
「皇太后様は本当に心からアリス公女様のことを……」
『あなたを大切に思うようになるはず。』
そしてたぶん、アリスもそれを感じているだろう。
『きっと本人は全くそんなことはないと否定するだろうけど。』
最初の出会いは良いものではなかった。
生まれつきの孫娘に対して何の関心もなかった皇太后に対し、アリスは自分の生存のためにその皇太后を利用しようと考えたのだ。
それだけだろうか。
皇太后はアリスに多くの罪を犯した。
特にアリスの親族であるローズマリーが命の危機に瀕していたとき、その助けを拒んだことは簡単には許せないものだった。
そのことを理解し、アリスはさらに皇太后を徹底的に利用しようと心に決めた。
皇太后が亡くなる瞬間、実はあなたが憎いと言い放つつもりだったのだ。
『でも、最も支えとなる人物とそのような関係を続けるのは良くない。』
それは他でもない、アリスのために。
シアナはアリスが憎しみや絶望という牢獄から抜け出せることを願っていた。
簡単ではないだろうが、アリスなら乗り越えられるはずだ。
『未熟で幼い王女様のように見えるけど、実際は誰よりも大人びた方だから。』
アリスが目を大きく見開いた。
シアナがアリスの額の痛みを和らげるために頭を撫でたからだ。
シアナが笑顔で言った。
「それでも私たちがいない間、大変だったのにちゃんとやり遂げたじゃないですか。さすが私たちの王女様。」
「ふん、分かってるわね。私がどれだけお前たちに会いたかったか分かる?」
アリスの言葉に、ニニとナナが一斉に目を丸くした。
「ふふっ、王女様が私たちみたいな者を見たがっていたなんて信じられないです。」
「本当に、私は今回の人生でやりたいことを全部やり遂げた気分です!」
「じゃあ、お前たちは消えなさい。私一人で王女様をお守りするから。」
おどけた双子の会話を見つめながら、アリスはシアナにこっそり囁いた。
「ねえ、あの二人、中級侍女の教育を受けて帰ってきたら、さらに変になってない?」
シアナが答えた。
「教育期間中、空き時間がたくさんあったみたいで、小説をもっと熱心に読んでたみたいですね。それに出てくる男主人公が女主人公に執着して、そんなセリフをたくさん言うんですって。」
アリスが眉をひそめた。
「なんだ、それって私のキャラクターじゃない。」
シアナは思わず笑い出してしまった。








