こんにちは、ピッコです。
「メイドになったお姫様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

94話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇太子のパートナー
皇太子宮の舞踏会場。
ラシードとシアナは顔を合わせ、挨拶を交わした。
その日はダンスの練習が終わる瞬間だった。
シアナは軽く曲げていた腰を伸ばし、ラシードと目を合わせた。
「お疲れさまでした、殿下。」
ラシードが目を穏やかに細めて言った。
「君だからこそだ。」
優しい微笑みを浮かべながら、軽く息を吐き声をかけるシアナが続けた。
「ダンスの練習は今日が最後です。動作とステップを忘れないように気をつけてくださいね。」
その言葉に、笑っていたラシードの顔がわずかに真剣なものへと変わった。
シアナは明日から皇太子宮に来なくなる。
それは、薔薇の花の舞踏会が3日後に迫っているからだ。
舞踏会まであまり時間がないため、ラシードは忙しかった。
舞踏会の前に到着するゲストたちを迎えなければならず、舞踏会の準備事項も確認する必要があった。
それにもかかわらず、ラシードは別れを惜しむように、猫のように控えめな表情で言った。
「本当に行かなきゃならないのか?どんなに忙しくても、少しくらい時間を作れるだろう?」
しかし、シアナはきっぱりと言い切った。
「はい、どうしてもそうしなければなりません。忙しい殿下をこれ以上煩わせたくありません。それに、舞踏会の準備のための時間も必要です。」
それは事実だった。
これほどの規模の舞踏会に参加するためには、女性たちはたくさんの準備をしなければならなかった。
シアナにとっては特にそうだった。
薔薇の舞踏会では、誰もシアナの正体を知ることができないような姿で現れる予定だったからだ。
それを思い浮かべたラシードは、ますます興味をそそられた。
目の前にいる、この可愛らしく愛らしいシアナが、まったく違う姿で現れるというのは全く想像がつかなかったからだ。
「仮面をつけるわけでもなく、魔法使いの力を借りるわけでもないと言ったよな。じゃあ、一体どうやって別人のように変わるつもりなんだ?」
シアナは微笑を浮かべた。
プレゼントを準備した子どものような無邪気な笑顔だ。
「三日後の薔薇の舞踏会の時にわかるでしょう。」
「……」
呆然と自分を見つめるラシードに、シアナは優雅にカーテシーをして挨拶をした。
「それではその日、お会いしましょう、殿下。」
侍女ではなく、皇太子のパートナーとして。
・
・
・
薔薇の舞踏会当日。
早朝に起きたシアナは窓を開けて、爽やかな空気を吸い込んだ。
今、シアナがいるのは宮殿の外にある別邸だった。
シアナの要請で護衛騎士ソルが準備してくれた隠れ家だった。
皇太子の秘密のパートナーとして、より完璧に務めるために。
彼女が完璧なパートナーとなるための準備だった。
『ルビー宮から直接会場に行くよりも、宮殿外で馬車に乗り換えて会場に行く方が、外部から来たゲストのように見えるだろう。』
シアナは腕を軽く振りながら考えを巡らせた。
午後の舞踏会に参加するためには、今から準備を始めなければならない。
コンコン
扉が開き、二人の女性が入ってきた。
シアナの着付けを手伝うために来たリニとナナだった。
「お目覚めですね、シアナ様。」
「朝食はどうなさいますか?」
シアナは軽く首を振った。
「朝食は控えます。」
今日は一日中締め付けられるコルセットと、豊かなパニエのせいでトイレに行くのも大変になるだろうと予想し、何も口にしない方が良いと考えたのだ。
リニとナナの後ろに控えていたアリスが驚きの表情を見せた。
「お腹が空いた。」
シアナが目をぱっちりと開いた。
「公主様、もうお目覚めですか?」
まだ早朝だった。
普段なら公主様がぐっすり眠っている時間帯だった。
化粧台の横にあるソファにどっかり腰を下ろしたアリスが言った。
「言ったじゃない。最初から最後まで見守るつもりだって。」
確かにシアナを助ける手際は悪いアリスだが、彼女がここまでついてきたのは、どうやらシアナの準備する様子を興味深く観察したいからのようだった。
「ふふふ、こういうのすごく好き。ロマンス小説に出てくる平凡な主人公が一晩で華麗な公主に変身するなんて!」
シアナの変身を想像して瞳を輝かせるアリスを見て、シアナは「もう、しょうがないわね」と小さく笑った。
シアナはリニとナナに紙を渡した。
「今日の装い、ヘアスタイル、そしてメイクアップについて簡単なイメージスケッチを描いてみました。」
リニとナナは感嘆した表情でシアナを見つめた。
「確かに、これだけ変身すればシアナ様だとは誰も気づかないでしょうね。」
「ドレスともすごくよく似合いそうです。」
シアナが微笑みを浮かべた。
「それでは、始めてみましょうか?」
リニとナナはやる気満々の表情で頷いた。
まず、リニが化粧道具を手の中で軽く回してからウインクした。
「メイクアップはリニにお任せください。この日のために、首都で一番腕の立つ化粧師の元で技術を学んできたんですから。私の手にかかれば、たとえシワのあるおばあさんでも清楚な15歳の少女に変えてみせます!」
リニは自信たっぷりに宣言し、熟練した手つきでメイクを始めた。
確かに、この一ヶ月間の肌ケアの努力が報われる瞬間だった。
シアナの肌は子供のように滑らかで、化粧がとても映えていた。
次はナナの番だった。
ナナは熱く温めたアイロンを持っていた。
そのどっしりとした道具は、無造作に見える髪を見事なヘアスタイルに変えるためのものだった。
ナナが微笑みながら言った。
「ヘアスタイルはナナにお任せください。艶やかでしなやかな髪を、ふんわりとしたカールに仕上げる魔法をお見せします!」
ナナの手は繊細に動き始めた。
基礎のセットから色味の調整まで、そして髪の一束一束に波打つウェーブを作る作業は、かなりの時間を要するものだった。
その間、ソファに座っていたアリスは、三人の仕上がりを興味津々に観察しながら退屈そうに足を揺らしていた。
どれだけの時間が経ったのだろうか。
「公主様、公主様。起きてください。」
リニの声に、アリスは目をゆっくりと開けた。
まだ眠気が残る薄暗い空気の中、髪を丁寧に整えて立つシアナと、彼女の後ろでリボンを結んでいるナナの姿が見えた。
次第に光が差し込み、シアナの姿が鮮明に浮かび上がってきた。
「……!」
その光景を目にしたアリスは、世界で最も感動的なものを見たかのような表情を浮かべた。







