シンデレラを大切に育てました【１１８話】ネタバレ

「それより、お願いしたことはどうなりましたか？」

サンドラはミルドレッドの質問に微笑んだ。

自分のおっちょこちょいなミスで呼んできた暗い雰囲気を喚起させることができて幸いだという気がしたためだ。

それにミルドレッドが頼んだことを全部やり遂げたので、彼女は自信満々だった。

「私の知る限りでは、一番口が重くて刺繍の腕がいい人たちよ」

「やると言っていましたか？」

これが一番重要な部分だ。

ミルドレッドはアイリスのドレスに刺繍を入れようと考えた瞬間から誰に刺繍を任せるかを決めていた。

貴族の令嬢にとって刺繍は基本的な素養である。

幼い頃から貴族の家に生まれた少女たちは、きれいな筆記体と立派な剌繍の実力を磨いた。

実際、それは磨きをかけようと磨きをかけたのではなかった。

正確に言えば、することがないので、暇つぶし用に手紙を書いて剌繍をしていたら、そうなっただけ。

しかし、貴族は労働をしてはならず、貴族女性の立派な刺繍実力は、彼女のハンカチや家の中にかけておくタペストリーで表すしかなかった。

「ほとんどは」

サンドラは自信満々な表情で答える。

ミルドレッドが要求した条件は3つ。

貧しい貴族の女性であること。

刺繍の実力が立派であること。

そして口が重いこと。

前の2つの条件だけなら、対象者は非常に多い。

しかし、サンドラはミルドレッドの頼み通り、口が重い人にだけ聞いて、5人のうち4人がすると乗り出した。

よかった。

ミルドレッドは安堵のため息をつく。

やると言って出る人が一人もいないのではないかと心配していたのだ。

そして、誰もしないとしても、彼女は理解した。

「そして・・・」

サンドラはポケットから封筒を取り出し、テーブルの上に置く。

そしてミルドレッドの方へ押しながら言った。

「プレゼントリストよ。一人はできないって。それで全部で4人分」

ミルドレッドは何も言わずに封筒を手に取り、中身を調べる。

彼女は無報酬で貴族妻たちの助けを借りるつもりはなかった。

当然、布に剌繍を施す代わりに贈り物をすることにした。

気持ちとしてはお金をあげたいが、そうすれば彼らが労働として受け入れられそうなのでプレゼントだと婉曲に表現したのだ。

にもかかわらず、5人に1人は「それは報酬だ」と断った。

仕事をして報酬を受ければ労働になってしまうという話だ。

「仕方ないですね」

ミルドレッドはため息をつきながらリストを封筒に戻す。

プレゼントリストのためではなかった。

断った一人のためだった。

「すごい人だね」

サンドラも苦笑いして言った。

むしろ飢え死にしても労働はできないというその夫人の心情を、ミルドレッドと同じくらいサンドラも理解したためだ。

「プレゼントはすぐ送ります。生地を一緒に送りますので、すぐにしてほしいと伝えてください」

「プレゼント」という言葉のためか、彼らが望んだのはほとんどが贅沢品だった。

しかし、貴族にとっては生活必需品。

砂糖、お茶、生地。

この3つがなければ、貴族は社会生活ができないと言っても差し支えない。

ミルドレッドは彼女の頼みを間き入れることにした人々への賭り物を用意するために席を立つ。

「お願いを聞いてくれてありがとう、サン」

「何言ってるの。私の甥が王子妃の試験を受けるのだから。当然物心両面で手伝わないと」

ミルドレッドはマーフィー伯爵邸を出る際、サンドラと深い抱擁をして離れる。

彼女が住んでいた場所でも、昔は両班は仕事ができなかった。

だが、どこでも階級と関係なく貧しい人はいるもので、貧しい両班家の夫人たちは家の中を養うために針仕事をした。

「ここでできないことはない」

ミルドレッドは馬車に乗り込み、つぶやいた。

重要なのは、それが報酬でなければいいということだ。

彼女が4人の人々に送るのはあくまで贈り物なのだから。

「男爵様」

アイリスは書斎のドアを開け、ダニエルを呼んだ。

彼はアイリスがノックをして入ってくるように言われてドアを開けるまで書類を読んでいた。

「お忙しいですか？」

アイリスは、彼女が机に近づくまで書類から目を離さないダニエルに注意深く尋ねる。

彼女は今書斎に入ってきたのが自分ではなく母親だったら、ウィルフォード男爵が立ち上がっただけでなく、直接ドアを開けてくれただろうということを知っていた。

ダニエルは返事の代わりに目だけ上げてアイリスを見る。

彼女はすばやく彼を訪ねてきた用件を話した。

「剣術の訓練をちょっと見ていただけますか？」

難しくない。

でも今？

ダニエルは尋ねる。

「やらせたことは全部やったの？」

アイリスは少し前から王子妃候補試験に備えて新しい勉強をいくつか始めた。

一つ目は現在、この国の人々が使う大陸公用語の他に、ハーマン大陸で使われる公用語であり、二つ目は数学と経済。

彼はアイリスにハーマン大陸の公用語の綴りを百回書くことと数学の問題を出した。

「はい」

もう？

ダニエルは時間を確認し、軽く感嘆する。

同じ分量をリアンにもさせたが、彼はアイリスの2倍の時間がかかった。

「出かけなければならないようだ」

ダニエルはそう言って席から立ち上がる。

ひょっとしたら幸いかもしれない。

彼が出かける前に、アイリスが今日分の分量を全部片付けたことが分かったから。

しかし、彼が剣術訓練を見てくれないという事実にアイリスの顔が暗くなった。

「こうしよう」

ダニエルはアイリスと一緒に書斎を出て話を続ける。

「私の代わりに役に立つような人をつけてあげよう」

「役に立つような人ですか？」

この邸宅にダニエルの他に剣の使い方を知っている人が？

アイリスの顔に戸惑いの表情が浮かんだ。

ダニエルは今、浮いてる考えに笑う。

面白くなりそうだ。

「ウィリアム」

ダニエルの呼びかけでシーツを運んでいたウィリアムはびくぴくと動いた。

どうすればいいのか分からず、ためらうウィリアムのために通りかかったジムが、彼の手に持った荷物を代わりに持ってあげながら言った。

「行きなさい」

ありがとうございます。

ウィリアムはお礼のしるしとしてジムに頭を下げ、ダニエルに近づいた。

ちょっとよくなったね。

ジムはシーツを手に取り、ダニエルとアイリスに頭を軽く下げる。

この家に来て一週間、ウィリアムは誰かが助けてくれてもありがたいという挨拶どころか、見向きもしなかった。

誰かに助けてもらったなら、当然ありがとうと挨拶をしなければならない。

それをジムとゴシンがひどく叱って教えた。

「ウィリアムが君のトレーニングを手伝ってくれるだろう」

「ウィリアムがですか？」

ダニエルの言葉にアイリスは困惑した表情をした。

ウィリアムは剣の使い方を知っているのか？

戸惑った表情をしたのはウィリアムも同じ。

彼は戸惑っているというよりは驚いた表情だったが。

「結構やるんだよ。帰ってきて家に送ってあげるから、それまでアイリスの相手をしてくれ」

前の言葉はアイリスに、後の言葉はウィリアムに言った言葉だ。

ダニエルの言葉に、アイリスとウィリアムはぎこちない表情でお互いを見る。

ダニエルはウィリアムの肩を軽くたたいた後、自分の部屋に上がってしまった。

アイリスはためらい、ウィリアムに口を開いた。

男爵様ができると言ったので信じられるだろう。