こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

179話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ケイシー侯爵家⑦
「客人に対して失礼なことをしなくてよかった」と、ジェネーブはほっと胸をなでおろした。
「食事は口に合いましたか?」
「ええ、とても美味しいですね。おっしゃる通り、シェフの腕前が素晴らしいようです。」
ミルドレッドの褒め言葉に、ジェネーブの気分は上がった。
彼女は桃のパイを食べながらリリーをちらりと見て、再びミルドレッドに話しかけた。
「私が若い頃に使っていたリボンやピンがまだ残っているんですよ。若い人たちに使ってほしいのですが、娘もいなければ姪もいないので、まだ私の引き出しの中にしまってあるんです。」
「そうですか。」
ミルドレッドが軽く頷きながら答えた。
アイリスは、ジェネーブが何を言おうとしているのか分からない様子で彼女を見つめていた。
普段、このような話題のとき、ジェネーブは自分が持っているものを子供たちに譲りたいと言うことがよくあった。
若い頃に使っていたリボンなどがその例だ。
ピンやリボンであれば、それなりに高価な価値を持つ優れた品であることは明らかだった。
「夕食を食べた後、娘たちに見せてみるのはどうでしょう?好みに合うものがあれば、贈り物として差し上げたいのですが。」
ジェネーブの言葉に、アシュリーが目を輝かせながらミルドレッドを見つめた。
「贈り物?」と期待に満ちた彼女の顔にミルドレッドは微笑み返した。
そして、アイリスとリリーも表向きには何も言わなかったものの、心の中で同じ期待を抱いていることをジェネビーブは察した。
「本当にありがたいですわ、侯爵夫人。ありがとうございます。子供たちも喜ぶことでしょう。」
ミルドレッドの挨拶にアシュリーが声を弾ませた。
その様子を見たジェネーブは、アイリスやリリーも満足そうにしているのを確認した。
リリーとアシュリーが話し合う場を作るために、一度離れるのもいいかと思ったが、子供たちがこんなにも嬉しそうな姿を見せてくれると、動けない気持ちも湧いてきた。
彼女は子供たちに渡すリストに、ヘアピンやリボンだけでなく、イヤリングや指輪といった小さなアクセサリーも追加した。
「こちらへどうぞ。」
食事を終えて席を立つ前に、侍女が子供たちをジェネーブの個人応接室に案内した。
侍女たちはジェネーブが事前に用意していた、若い頃に彼女が使っていたリボンやヘアピンだけでなく、イヤリングや指輪も持参し、子供たちに見せた。
若い頃に使っていたものなので、豪華すぎることはなく、どれも上品で可愛らしいアイテムだったが、全て高品質な品だった。
アシュリーは宝石が輝くリボンを持ち上げて感嘆の声を上げた。
「なんて綺麗なの! 素敵!」
「本当に気前の良い方ですね。」
アイリスは小さな宝石が輝く指輪を手に取り、興奮した表情を見せた。
3人の目の前には広げられた品々がかなりの量あり、ケイシー家の歴史を感じさせるものだった。
家に来る前から使っていたものや、後で買ったものを含めて、ジェネーブが用意した品々は、本棚やティーテーブルをすっかり覆うほどの量だった。
「これ、全部持って行ってもいいの?」
リリーの質問に、アイリスがふと苦笑いして肩をすくめた。
全部持って行くのはダメだよ。この中から選んで、いくつかだけ持って行っていいんだ、と彼女は妹たちに軽く注意を促した。
「本当に欲しいものを一つか二つだけ選んで。あんまり多く選ぶと欲張りに見えちゃうから。」
「三つはダメ?」
アシュリーの質問に、アイリスの動きが止まった。
そうね。一つか二つなら許されるけど、三つ選んだら欲深いって思われるかな?
その時、侍女がリリーにそっと耳打ちしにやってきた。
彼女はアイリスとアシュリーに聞こえないよう配慮しながら話した。
「お休み前にお部屋に伺いますね。」
「なぜですか?」
「なぜ」という質問に、侍女は何も言わなかった。
ただリリーに事前に伝えておくようにという指示を受けただけだった。
夜、他人の家で寝ているときに誰かがドアをノックして驚かないよう、前もって知らせておくというジェネーブの配慮だ。
侍女は言われた通り、リリーが眠る前に訪ねてきた。
そして、リリーが気に入ったアクセサリーを選ぶ2時間前に、ジェネーブの個人応接室へと彼女を案内した。
「遅い時間に呼び出してごめんなさい。驚かせてしまいましたか?」
ジェネーブはリリーを待っていた。
リリーは彼女が勧めるまま、ジェネーブの示した椅子に座り、緊張しながら礼儀正しく挨拶を交わした。
侍女が来るという話がどういう意味なのか、リリーはすでにミルドレッドに尋ねてみた。
ジェネーブがそのことを知っているかは分からなかったが。
リリーと彼女の弟妹たちが話をしたいと思っていると母親から聞いたおかげで、リリーは多少の覚悟をしていた。
「こんな遅い時間にお呼びして申し訳ありません。リリーさんと弟妹たちとお話がしたかったんです。」
これに「大丈夫」と答えるべきかどうか?
リリーの頭に小さな疑問が浮かんだ。
こういう時は「大丈夫」と答えるべきだが、実際には全く大丈夫ではなかった。
プロポーズを断った男性の母親が、家族を招待して歓待し、夜遅くに呼び出して話をしようとするとは……。
不快だ。
「他の方に迷惑をかけずに質問してもいいですか?」
「それが聞きたかったんです。私と家族を招待してくださったので。」
リリーの返答にジェネーブの表情が緩み、態度が和らいだ。
少し直球すぎる返答だったが、礼儀をわきまえた態度に心を動かされた。
彼女は腰をきちんと伸ばし座ったリリーを新しい目でじっくり観察した。
姿勢は悪くない。
いや、素晴らしいと言える。
きちんとした姿勢と反比例するような柔らかな表情、そして少し引き締まった顎と落ち着いた口元。
家庭教育がしっかりしている様子がうかがえる。
ジェネーブの視線を避けることなく受け止めているのも好感が持てた。
おどおどせず堂々とした表情。
さらにそこには、適度な謙虚さと少しの好奇心を含んだ緑色の瞳。
ジェネーブはリリーの髪が柔らかく、肌が荒れておらず、指先まで手入れが行き届いているのを確認した。
着ている服は最新の流行や最高級品ではないが、流行に流されないシンプルなデザインで、清潔感ときちんとした印象を与えるものだった。
プレゼントを選ぶとき、リリーが小さな緑色の宝石が光るイヤリングを選んだという話を聞いて納得がいった。
センスや礼儀といったものは教えれば身につく。
しかし、どんな場面でも物怖じせず、自信を持ちながらも慎みを忘れない態度や気品は、短期間では習得できるものではない。
「私の息子のプロポーズを断ったと聞きました。」
やはりそうだったか。
リリーは内心で安堵の息をついた。
彼女の母親がプロポーズを断った理由を尋ねることもできたが、もしその理由を話さなかったのであれば、それは話したくない事情があるからだろうと考えた。
なぜみんなそれを気にするのだろう。
たとえどんなに立派な人物であっても、彼女が嫌なら嫌だ。
それは当然のことだ。
王族であっても、リリーが嫌だと感じる相手であれば拒否する権利がある。
アイリスもまた王妃候補としてその名前が挙がったことを知った際、それを受け入れるべきか、それとも辞退するべきか悩んでいた。
女は裕福な家の男性と結婚したいという希望を持っていたが、それでもなお迷っていた。
「はい。お断りしました。」
「バンス卿の奥様は、バンス卿が結婚する気がないと言っていましたよね?」
「はい。その通りです。」
そうだったのか。
ジェネーブは知らず知らずのうちに安堵の息をついた。
ほっとした。彼女は前向きに考えた。
ダグラスを嫌いで断ったわけではないのだ。








