こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

189話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 3人の候補者⑧
私は、こういうときだけ仲が良くなるムーアとクレイグを心の中で皮肉りながら、軽く息を吐いて口を開いた。
「お恥ずかしい限りです。」
そして、アイリスに振り向いて手で合図しながら促した。
「陛下からいただいた宝石なので、最大限に活用させていただきました。」
アイリスが体をひねると、彼女の背中に施された髪飾りが姿を現した。
前面の華やかさとは対照的に、長い髪をきれいにまとめたアイリスの背中は控えめで洗練されており、リリーがデザインした髪飾りが背中中央にある切れ込みから際立つように見えた。
その輝きがさらに品格を引き立て、見る人を引きつけた。
「見事だ。」
「伝統的でありながらユニークですね。」
王と王妃の称賛が続いた。
私が思い描いた狙い通りの結果で、これほど劇的ではなかったものの、期待以上の反応だ。
両家の言い争いのおかげで、アイリスの髪飾りが意図せず注目を集めてしまった。
二人の関心がアイリスに集中し、クレイグ侯爵とムーア伯爵が不愉快そうな表情を浮かべているのを見て、私は内心ほっと息をついた。
そのままにしておけば中庸の評価で終わっただろうに。
その後、私たちにとっては楽しい食事の時間が続いたが、クレイグ侯爵とムーア伯爵が周囲の人々の顔色が良くないことを気にしている様子だった。
私はそんなことに気を使う余裕もなかった。
王は私とダニエルにビールの供給について質問を投げかけ、幸いなことにそのたびに私は前向きな答えを返すことができた。
王妃は私とアイリスに対して、どうやってあの宝石を使ったのか、アイリスが動くたびにその胸元で星が輝くような光を放つのは何なのか、熱心に聞いてきた。
そして、彼女はその情熱を見て、王妃自身も宝石をあしらったドレスを一着作ることを決めたようだ。
もちろん、クレイグ侯爵とムーア伯爵にも王と王妃から時折質問が投げかけられた。
しかし、彼らの娘たちには何も聞かれなかった。
「それにしても、バンス家は以前も楽しいティーパーティーを開いて私を楽しませてくれたね。今回もとても楽しみだ。」
王妃の称賛に、アイリスの顔が再び赤く染まる。
その間に私はロレナにちらりと目を向けた。
あの子がロレナ・クレイグなのか。
柔和な顔立ちをしていて、他の候補者の顔を改めて見ることができた。
金髪に青い瞳を持ち、やや気の強さを感じさせるプリシラとは対照的に、ロレナは明るい金髪と青い瞳を持ち、非常に美しい少女だ。
もちろん、プリシラも美人だし、うちのアイリスも美人には違いないけれど。
しかし客観的に言えば、ロレナが候補者の中で一番美しく見えた。
クレイグ侯爵の息女であり、美人ともなれば、羨ましい限りだ。
容貌はプリシラやアイリスより少しだけ、ほんの少しだけアシュリーに近い印象だった。
そんなことを考えているうちに、食事が終わりデザートが出てきた。
「バンス夫人とバンス家のご子息はキュウリが食べられないと聞きましたが、本当ですか?」
王の問いに私は驚いて彼を見つめた。
その話がそこまで広まっているとは。
一方でムーア伯爵夫人とプリシラの表情が少しだけ緩むのが見えた。
「恐れ入ります、陛下。食べられないというわけではなく、少し苦手なだけです。」
「そうか?キュウリのサンドイッチが好きではないと言っていたね。それで首都のキュウリサンドイッチの流行が終わってしまったそうだ。」
「過分なお言葉です。私は首都の流行を終わらせるほどの人間ではありません。ただ偶然、他の人たちと嗜好が一致しただけでしょう。」
「そうなのか?」
質問するのは王だけではなく、王妃の顔にも疑念の色が浮かんだ。
私は前に出された花の形に整えられた果物が載ったタルトを見て微笑み、王と王妃に向かって話した。
「キュウリに苦味を感じる人が思ったより多かったのではないでしょうか。」
王と王妃の視線が絡み合う。
意外にも最初に口を開いたのは王だった。
「確かに、キュウリは少し苦いな。」
「まあ、それでキュウリサンドイッチを薦めても食べなかったのですね。」
意外とキュウリを嫌う人が多いものだ。
私は何も言わずにただ微笑み、そんな私に王妃が困惑したような笑顔で話した。
「私はそのほろ苦さが好きだね。シャキシャキした食感もいい。」
「キュウリの食感とほろ苦さって、確かにいいですよね。」
すぐにムーア伯爵が相槌を打った。
私はクレイグ侯爵夫人が相槌を打つのを待ってから口を開いた。
「苦味が苦手な人もいれば、逆に苦味が好きな人もいるでしょうね。人の好みというのは本当に多様ですから。」
「そうだね、君の言う通りだ。」
王妃の返事のおかげで雰囲気が和らいだ。
もちろん、今回もあくまで我々の一族の雰囲気の話である。
クレイグ侯爵夫妻とムーア伯爵家の雰囲気が再び沈黙したからだ。
まあ、それにしても王と王妃も疲れるだろう。
自分たちの一言で場の空気が上下するのだから。
当然、王と王妃のバランスを保たなければならないこちらも疲れるのは同じだが。
「陛下、シャンパンでございます。」
桃のパイを食べていると、従者が氷を入れた桶と共にシャンパンのボトルを持ってきてそう言った。
王がグラスを勧めると、彼は人々の前でシャンパンを一杯ずつ注ぎ始めた。
「お母さま。」
アシュリーが周囲の視線を避けるように小さな声で私を呼んだ。
どうしたのかと思ったら、彼女はシャンパンを飲んでもいいか聞きたいらしいことに気づき、私はそっとグラスを差し出した。
「味見だけしてごらん。」
そもそもお酒は大人から教わるものだという考えがある。
若い場でお酒を飲んで羽目を外さないように教えるためである。
子どもが初めてお酒を口にするのに、今のような場面以上にふさわしい時はないだろう。
私の許可にアシュリーはもちろん、リリーの表情も明るくなった。
一度も飲んだことがないので怖がっているが、実際に飲んでみればわかるだろう。
お酒はそれほど美味しいものではないのだから。
「きっと美味しいでしょう。」
そのとき、ダニエルがまるで私の考えを読んだかのようにそう言った。
本当?
驚いた私は彼の顔を見上げた。
子どもたちは王が許可を出したらすぐにでもグラスを手にするのではないかという表情で王を見つめていた。
「花の香りと甘いほのかな味が特徴のお酒なんですよ。」
「お酒が美味しすぎると問題ですね。」
「子どもたちが好きになったら困りますか?」
「いいえ。たくさん飲んで酔っ払うのが心配です。」
家でならまだしも、ここで酔っ払ったら面倒だ。
私の言葉にダニエルは微笑んで、再び落ち着きを取り戻した。
「まさか、一杯で酔っ払うことはないでしょう?」
「お酒の匂いだけで酔う人もいるそうですよ。」
ダニエルの目がわずかに細まった。
そのとき、王が自分の杯を掲げて言った。
「乾杯だ。試験が見事に終わることを願って。」
「ありがとうございます。」
乾杯と言われたので、てっきり杯をぶつけ合うのかと思ったが違った。
人々は杯を空中で軽く掲げ、それから自分の口へ運んだ。
ああ、これが乾杯なのか。
私は子どもたちの様子を伺いながら、自分の杯を見つめ、やがて口へ運んだ。
ダニエルの言葉通り、甘い液体が口の中に広がり、そして花の香りがふわりと鼻をくすぐった。
美味しい。
そう感じながらダニエルに目を向けると、彼はこちらをじっと見つめていた。
やがて目が合うと、彼はにこりと笑った。
「ところで、陛下。」
そのとき、クレイグ侯爵が口を開いた。
アイリスとリリー、アシュリー以外の他の家の子どもたちにとっても、こんなに美味しいシャンパンは初めてだったようで、皆興奮して話に花を咲かせていた。
「何かな?」
王が許可を与えた。
クレイグ侯爵は周囲を見渡しながら尋ねた。
「これだけ皆が集まっているのですから、次の試験について陛下の深いお考えを少しでも教えていただければと思います。」
そういえば、ダニエルが試験は三つに分かれ、その後さらに二つ追加されると言っていた。
私はクレイグ侯爵の提案に心が踊った。
前もって知ることができれば準備する時間も増えるからだ。
そんなことを考えていたのは私だけではなかったようで、他の人々も目を輝かせて侯爵を見ていた。
「なるほど。」
王は軽く頷きながら、私たちを順に見回した。
王妃を一度見つめた彼は、王妃が微笑みながら杯を掲げると再びクレイグ侯爵に向かって視線を戻し、こう語り始めました。
「ここにいる皆が素晴らしい品格と余裕を兼ね備えていることは明らかだ。王妃と私はその二つの美徳を目にする機会を心待ちにしている。」
品格と余裕?
私はその言葉の意味が分からず戸惑いながら、思わずその場に目を向けた。
周囲がざわつき始める中、何を示しているのか分からない声が次々と響く。
深い意味がありそうで、実際には何も深くないようにも感じられる言葉だ。
「最近、ウィルフォード男爵が皆の注目を集めるに値する振る舞いをしたとか?」
王の言葉の意図を掴めない中、それに応えようと立ち上がったのは王妃だった。
彼女の説明により、人々の視線が自然とダニエルへと移る。
ダニエルは、王妃が何を言おうとしているのか理解している様子で、柔らかな微笑みを浮かべていた。
その微笑みには、深い思慮と共に、ユーモアも感じられる。
「本当かどうかは分かりません。ただし、素晴らしいことですね。」
「いやいや、病院でギャラリーを開くなんて、素晴らしいアイデアだった。おかげで、その病院は今後数年分の運営資金を集められたと聞いています。」
「全て、参加してくださった素晴らしい方々のおかげです。殿下も大きな助けをくださりました。」
リアンも寄付をした?
それは知らなかった。
私はアイリスの驚いた表情を見て、彼女もそれを知らなかったことを悟った。
「彼のような人がいて、この国の未来も安心ですね。」
王はそう言いながら、他の人々を一通り見回した。
その視線には「分かっただろう?」という暗黙のメッセージが込められているようだった。
他の人々もそれを一瞬で理解した様子だ。
次の試験は、自主活動に関するものになるようだった。
「これはもっと難しくなりそうね。」
私はきらきらと目を輝かせるクレイグ侯爵とムーア伯爵を見ながら考えた。
慈善活動はどこまでが純粋な意図を持って行われるべきかという行動だ。
これをどうやって採点するのだろう?
回数?使ったお金?救済を受けた人数?
難しい。
どれだけ多くのお金を使ったとしても、それが実際に困っている人々を助けるために使われたのか、それともそうではないのか。
自分たちの慈善活動で救済を受けたとされる基準をどうやって設定するのだろうか?
私の疑念が表情に出ていたのか、王妃が何か気づいたように尋ねた。
「バンス夫人、何か気になることがあるようだね?」
「いえ、陛下。陛下がお決めになったことを私が心配するわけがございません。ただ、その基準がどのように定められるのかを考えておりました。」
「そうか。」
王妃と王の視線が重なった。
あれは一体どういう意味なのだろうか。
私は二人の顔に浮かんだ表情を読み取ろうとした。
それは「面白い」とも取れるし、「期待が高まる」という表情とも取れる。
「基準について心配しないでいい。どこまでいっても、その本質に忠実であれば良いのだ。」
慈善活動の本質か。
私は微笑みながら杯を掲げた。
本質とは、どこまでも「救済」にある。
そして困難に直面した人々を助けるのは、王妃の責務でもある。
場の雰囲気は穏やかに落ち着いた。
全員が私の質問をきっかけに、どの基準で勝者を選ぶべきか、慈善活動の本質とは何かを考え込む様子だった。
王と王妃はそんな私たちを微笑みながら見守り、やがて席を整えた。
その頃には空も静かに青みがかり、朝の食事が終わりに近づいていた。
式が終わるや否や馬車に乗り込んだアイリスは、さぞかし疲れていることだろう。
帰路につく馬車の中で、アイリスがうとうとしている様子を見ながら、私は次にどんな慈善活動を行うべきかを考えていた。
本当ならダニエルと話し合いたかったが、彼は別の馬車に乗って先に行ってしまった。
この馬車は私専用のもので、ダニエルも一緒に乗るべきだったと今更ながら思った。
そんなことを考えながら、ふと視線をアイリスに向けると、彼女の頭がこっくりと揺れ、ついには隣に座るアシュリーの肩にそっともたれかかっている様子を見て、私は思わず微笑んでしまった。







