こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

198話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 後継者
ダニエルは机に座って手紙を確認していた。
彼の手紙の確認方法はとても簡単だ。
封筒に書かれた名前を確認し、知らない人や関わりたくない人であれば、封も開けずに捨てる。
そして残った手紙だけを開封して内容を確認するのだ。
もちろん、裕福な貴族たちはこのような作業をする秘書を雇うこともあるが、ダニエルは周囲にできるだけ人を置かない方が気楽だった。
余計な噂が外に漏れないよう慎重にしているというよりは、ルインを信頼していたからだ。
ルインに任せないことは、単に一人でいる方が楽だったからに過ぎない。
もともとダニエルは、自宅では料理人を含め三人の使用人だけを置いて暮らすことに慣れていた。
彼が呼ぶ使用人のゲシンとルイン、どちらも口数が非常に少なく、足音すら立てない者たちだった。
そんな彼らと暮らしていた中で、近隣の山荘に住まいを移したのは、彼にとってももちろん、使用人たちにとってもかなりの変化だった。
「ご主人様。」
ランプを持ったルインが書庫の扉をノックし、中に入ってきた。
彼はまず家の中の戸締まりを確認した後だった。
もちろん家の戸締まりを几帳面にしているものの、年を取って視力が落ちて暗い場所に目が届かない部分を、ルインがこっそり確認していた。
「一通り見回ってきました。ご指示がなければ、これで自室に戻ろうかと思います。」
ルインが許可を求める言葉に、ダニエルはしばらく眼鏡を外して彼を見つめた。
そのおかげでルインは少し緊張した。
ダニエルが眼鏡を外して自分をじっと見つめるときが、彼にとって最も緊張する瞬間だった。
ダニエルは寛大で裕福な主人だったが、ミスには決して寛容ではない。
ルインの頭の中には、自分がミスを犯した場面が一瞬よぎった。
しかし、ダニエルの口から出た質問は、まったく予想外の内容だった。
「侍女たちはどうだ?」
侍女たち?
ルインは、侍女たちがどうだというのか一瞬理解できず戸惑ったが、すぐに口を閉じた。
そしてゆっくりと口を開いた。
「問題ありません。今のところおしゃべりもせず、お嬢様方やバンス夫人に無礼を働いたこともありません。」
彼をじっと見つめていたダニエルは、再び眼鏡をかけた。
特に何も言わない態度に、ルインは胸の中で安堵のため息をついた。
納得の反応だったようだ。
だが間もなく、ダニエルが再び質問を投げかけた。
「周囲は?」
「最近は静かになりました。」
ルインの返答に、ダニエルは椅子の背にもたれた。
それも気に入ったようで、ルインは再び胸の中で安堵のため息をついた。
この家でカイラの絵を見つけた奥様が、その絵を売ってかなりの金を手に入れたという噂が広がると、近隣の山荘付近に悪い人々が寄りつき始めたのだ。
チムとミルドレッドが戸締まりを徹底しているが、それだけでは十分ではなかった。
ミルドレッドが拒んだ悪人どもは、下手をすれば窃盗や詐欺を働く者たちだった。
モアとダニエルは粗野な連中に比べて、アシュリーを引き入れようとしたロニーはまだ可愛げがあった。
「わかった。中に入って休んでもいいよ。」
ダニエルはそう言って、再び机の上に置いていた手紙を手に取った。
この家に来てから傭兵をもう一人雇うか悩んだが、やはり必要なかったようだ。
そのとき、誰かが再び書斎の扉をノックした。
ルインが身をひねって扉を開け、周囲を見回してすぐに戻ってきたモドが、報告のために書斎の前に立っていた。
「周囲を確認しました。異常はありませんでした。」
モドの報告もルインのそれと大きくは変わらなかった。
ダニエルは手紙に視線を固定したまま、頷いた。
「わかった。中に入って休んでもいいよ。」
モドは無表情な顔で軽く頭を下げて戻っていく。
元々感情の変化が少ない者である。
怒りそのものがなかった、という方が正しいだろう。
彼は傭兵として働いていた頃も、優れた実力と感情の起伏が少ない性格で有名だった。
ルインは、なぜあのモアがダニエルの側近になったのか気にはなっていたが、モアがそんな話をすることは一度もなかった。
そしてそれは、ゲシュンも同じだった。
ミルドレッドに軽んじられていたが、彼が自分の言う通りに国でもてはやされるほどの実力者であるのは確かだった。
ダニエルの使用人として働く者たちは、皆それぞれの分野で名の知れた人物であり、金だけでは雇えないような人材だった。
ルインはモアに「なぜ行かないのか」という表情で自分を見つめたまま、書斎から出ていく様子を見守っていたが、再び書斎の扉を閉めた。
彼が去らなかったことに気づいたダニエルが何かを察したように、椅子にもたれた。
「質問をしてもよろしいでしょうか?」
「どんな質問だ?」
ダニエルはルインが軽率な質問をしないだろうということを知っていた。
たまにアイリスやリリー、アシュリーは軽率な質問をすることがある。
彼女たちはまだ幼くて純粋だからだ。
ダニエルはバンス家の子供たちがする程度の軽率な質問なら受け止める余裕があったし、その余裕の大半は誰よりも率直な質問を投げかけたリアンのおかげでできたものだった。
「バンス夫人と結婚されるのですか?」
ルインの質問に、ダニエルの目が見開かれた。
ルインは軽率な質問をするような子ではないと思っていた。
彼が自分の判断を撤回しようとした瞬間、ルインが素早く両手を挙げて見せながら話を続けた。
「すみません、私の言いたかったのは……バンス夫人、つまりマダムと結婚してここで暮らしていくのか、それとも主人の邸宅で暮らしていくのかをお聞きしたかったのです。」
「それが重要なのか?」
「もしここで暮らすつもりなら、冬の準備をしたいです。」
ルインの言葉にも一理あった。
この家は冬に特に寒い。
だから冬が来る前に補修を終えるには、今から準備しなければならない。
ダニエルは再び眼鏡を外した。
なるほど。
ダニエルはその考えに至っていなかった。
この邸宅で暮らし続けるなら、あの古びた床や壁を修繕しなければならない。
屋根に至っては言うまでもない。
何しろずいぶん昔に建てられた家なので、この階で温かい水を使おうとすれば、毎回使用人たちが水を運んでこなければならない。
そのついでに温室も建て直せばいい。
しばらくの間、廃墟となっていたが、彼の頭にミルドレッドが愛おしそうに花を世話する姿が浮かぶと、そこを完全に整えてあげたいという思いが湧いてきた。
「考えてみよう。」
ダニエルの返答にルインは頭を下げてその場を離れた。
ダニエルの視線は再び手紙に向けられた。
縫製作業室で働く人々に関する簡単な報告が書かれた手紙だったが、もはやその内容は彼の頭には入ってこなかった。
自然と、ダニエルの脳裏にミルドレッドが浮かんできた。
黒髪をまとめた髪に、緑の瞳を持つ美しい女性。
初めて会った時、その美貌に目を奪われなかったと言えば、それは嘘になるだろう。
彼は、もしミルドレッドがその気になれば、三度目の結婚も可能だっただろうと考えていた。
たとえ大きな娘が三人もいたとしても、それが障害になるとは思わなかった。
ミルドレッド自身は子どもたちの存在を短所と考えているようだが、それでもミルドレッドは魅力的だった。
美しく、貴族の出身で、多くの才能を持つ女性を、いったい誰が拒めるだろうか。
もちろん、ダニエルのように若くて裕福な男性貴族との再婚は難しいかもしれない。
しかしミルドレッドほどの特別な貴族であれば、十分に可能だっただろう。
そこまで考えたダニエルは、まるで鳥の目が覚めたかのように手の力を抜いた。
握っていたペーパーナイフが彼の手の中からカランと音を立てて落ちた。
「なんてこった。」
ダニエルは舌打ちしながら、曲がったペーパーナイフを机の端に押しやった。
明日ルインにいくつか注文しておくように言わなければと考えながら、再び手紙に視線を戻した。







