こんにちは、ピッコです。
「シンデレラを大切に育てました」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
224話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 宴会の日
時は早く過ぎ、いつの間にか予定された宴会の日がやって来た。
宴会に並べられる料理を準備するのが試験課題ではあったが、アイリスやロレナが直接料理を作ることはなかった。
二人は王宮の料理人に会い、どんな料理を出すか意見を交わし、いくつかのアイデアを出し、料理の提供順やテーブル装飾に少し手を加えただけだ。
ダニエルの言う通り、すでに王太子妃は決まったも同然だった。
王宮はもちろん、社交界でも人々は「誰が王太子妃になるか」ではなく「どんな王太子妃になるか」について話し始めていた。
「王太子殿下があれほどお気に召しているそうですよ。」
「それならもう決まったも同然じゃない?この国の王と王妃はいつも仲が良いから。」
「ああ、それは妖精の祝福のおかげだな。」
料理の準備がどの程度進んでいるか確認するために足を運んでいたロレナの足取りは、廊下の端から聞こえてくる会話に思わず緩んだ。
彼女は髪をとかしている途中、開いた窓から北側の赤い庭で侍女たちが話しているのを見つけた。
おそらく掃除をしている侍女たちなのだろう、一方の手には羽ぼうきを、もう一方の手にはバケツを持っていた。
「妖精の祝福?」
「知らない?王宮に祝福が伝えられてるじゃない。国王になる者とその配偶者はとても仲睦まじくなるって。」
「そんな祝福があったの?初めて聞いたわ。」と目を丸くする侍女もいれば、知っているとばかりにうなずく侍女もいた。
それはケイシー家の当主くらいしか知らない秘密の祝福だった。
リアンの父である現国王もそうだったし、今は亡き先王もそうだった。
この国の国王と王妃はいつも仲が良く、互いに愛し合っていた。
そのため、王太子妃候補の家族たちは、リアンがアイリスを好いていると聞いても特に気にしなかった。
断言はできなかった。
一度結婚してしまえば、リアンの愛情は自分の王妃へと向かう——それが彼らの考えだった。
実際、歴史上でも恋人がいながらも政治的な理由で別の女性と結婚した王が、その王妃と仲睦まじかったという記録がある。
彼女たちもまた、その点を指摘した。
「でもそれなら、別の方が王妃になっても仲良くなるってことじゃない?」
「そうだけど、どうせなら王太子妃はバンス嬢がいいんじゃない?」
その言葉に、ロレナの表情が固まった。
彼女もわかっていた——試験の結果は、バンス嬢のほうがずっと良かったということを。
ロレナは背筋を伸ばし、その場を離れるために再び歩き出した。
万が一、彼女が彼女たちの会話を聞いたことを知られてしまうのではないかと不安になったのだ。
王太子妃になれなくても構わない——彼女はいつかこの国で最も高い地位を持つ女性になるだろうと言われながら育ち、それに見合った教育を受けてきた。
しかし幼い頃からロレナは、自分と結婚する王太子の姿を想像することはなかった。
王妃となった自分は想像できても、王太子と夫婦になった自分は想像できなかったのだ。
実際、ロレナが王太子妃の試験に参加したのは、一生そうして生きていかなければならないと言われ、それを信じて生きてきたからだ。
王太子妃か公爵夫人、あるいは侯爵夫人になるだろう、と。
ロレナは漠然と自分の未来をそう考えていた。
公爵家には今、彼女と結婚できる人はいなかったが、いずれは身分の高い貴族家に嫁ぎ、その家門を治めるだろう。母がそうであったように。
王太子妃候補の試験に参加したのも、誠実に彼女が試験に臨んだのも、そのためだった。
そう教育され、そう生きなければならないと聞かされてきたからだ。
「これは何です?」
ロレナが厨房に入った瞬間、アイリスの鋭い声が響き渡った。
ロレナは驚いて身を引き、厨房の奥へと首を引っ込めた。
アイリスは山のように積まれた食材の前で腰に手を当て、怒りをあらわにしていた。
その前には食材を納品する男が、腰をすくめてどうしたらよいかわからない様子で立っていた。
「今これを持ってきたんですか?こんなに全部しなびたものを?」
「残っていたのが、それしかなくて……」
「それを言い訳だとでも?」
話にもならなかった。
アイリスは今にも飛び跳ねそうな怒りを必死に抑えた。
よりによって王宮に納める野菜が、すべてしおれているなんて――。
生地が伸びきって、さらにべったりとくっついていた。
こんな不良品を納品するなんて、まるで業者の無礼なやり口そのものだった。
「注文した時は問題ないって言ってましたよね?昨日確認したときも予定通り納品すると言っていたと記憶していますけど?」
一体どういう状況なのか。
ロレナは扉の後ろに隠れて怒りをあらわにするアイリスと、その相手をしてどうしていいかわからない様子の商人を見守っていた。
どうやら急に事態がこじれたようだ。
ロレナは、この状況をアイリスがどう切り抜けるのか気になった。
そのとき、商人とロレナの目が合った。
アイリスは唇を引き結び、商人が持ってきた材料を見回してからため息をついた。
「まずはこれから片付けなければなりませんね。」
そう言って身を翻したアイリスは、後ろでどうしていいかわからない様子の厨房の侍女たちと料理人に向かって、「使えない部分は切り落として──」と指示を出した。
使える部分だけを残して調理しなければならない。
何しろ、宴会は数時間後には始まるのだから。
「デザートはもう作ってありますよね?足りないものがあれば教えてください。」
料理人にそう指示したアイリスは、再び振り返って食材を納品した商人を見やった。
一体どういうことなのか。
彼女の頭の中にも疑念が浮かび上がる。
まさか王宮の宴で使う食材を、こんなにも傷んだ状態で持ち込むなんて?
あり得ない。
彼女は商人を鋭く見つめて問いただした。
「誰に命じられたのです?」
「えっ?命じられた?いえ、違います。本当に管理を怠ってしまって……」
何度かさらに問い詰めても、商人の態度は変わらなかった。
アイリスはしばらく彼を見据えた後、低い声で言った。
「調べれば、あなたが誰の指示でこんなことをしたのか分かるでしょう。それでも知らないと言うつもりですか?」
アイリスの詰問に、商人の顔はみるみる青ざめた。
彼は唾を一度飲み込み、震える声で答えた。
「わ、私が本当に管理を怠ってしまいまして……」
「つまり、完全にあなたの責任ということですね。分かりました。この罪は宴が終わった後に償ってもらいます。今は帰りなさい。」
アイリスの言葉に、商人は凍りついたように立ち尽くした。
だが、彼女が背を向けると、ブルブル震えながら厨房を横切り、ロレナのそばの扉から外へと逃げ出した。
「世の中に、こんなことがあるなんて……」
ロレナは慌てて商人から視線を逸らした。
まさか王宮から注文を受けた品を、こんなひどい状態で持ってくるとは――この男はきっと重い罰を受けるだろう。
そうロレナが考えた瞬間、厨房の外で観念した商人は、ロレナに向かって小声でささやいた。
「言われた通りにやりました。約束は守っていただかないと。」
「……何ですって?」
ロレナの目が見開かれた。
驚いて商人を見つめると、彼はなおも怯えた表情のまま、慌てて続けた。
「ご覧になったでしょう。公爵閣下にも、私が指示通りにやったとお伝えください。」
今度はロレナの顔色がサッと青ざめた。
しかし商人は、彼女の表情を確認することもなく、二人が話しているところを誰かに見られるのを恐れて、足早に去っていった。
――公爵閣下に伝えてほしい?
ロレナの頭の中は混乱していた。
彼女は、厨房で起こった出来事を見て、アイリスは運が悪かったのだと思った。
よりによって仕事もろくにできない商人と契約してしまい、そのせいで宴会を台無しにされかけたのだ、とそう考えた。
しかし、商人が仕事をしくじったのは、偶然ではなく意図的に仕組まれたことだった。
その背後には、彼女の父の影があった。
「無礼者……」
ロレナの血の気が引いていた顔に、再び赤みが差し始めた。
惨めで、誇りが深く傷つけられた。
彼女は唇が血で滲むほど強く噛みしめた。
彼女はクレイグ侯爵家の令嬢だ。
由緒ある家に嫁ぐはずの身。
そのために教育を受け、立ち居振る舞いを正しくし、目下には正当に、目上には礼儀を尽くしてきた。
そのすべてが、つい先ほど、商人のたった一言で粉々になった。
誰かの助けを借りたことはあっても、これまで誰かに害を与えることなく、正しく振る舞って生きてきた――そう信じていたのに、
その商人は、彼女の家門が卑劣な行いをしたと口にしたのだ。
直接手を下したわけでもなく、命じられれば従うしかない部下を使って、自分よりも身分の高い屋敷のお嬢様に対して不名誉なことをしたのだ。
その衝撃で、ロレナの体は小刻みに震えた。
彼女は、人々が自分を見て「温室の花」と呼ぶことがあるのを知っていた。
それが良い意味であれ悪い意味であれ、事実だった。
だからこそ、彼女は最も立派な花でありたいと心に決めたのだ。
誰かに害を与えず、正々堂々と戦って負けるのであれば、
それは自分にとって誇りにできることだと、ロレナは思っていた。
「バンス嬢。」
大きく息を吸い込み、ロレナは厨房へと入ってアイリスを呼んだ。
気もそぞろに、状態の悪い食材を確認し、必要なものを整理していたアイリスは、曇った表情のままその言葉を聞き、どこか訳も分からず怒りを含んだようなロレナの顔と視線がぶつかった。
「クレイグ嬢。」
「私の材料をお使いください。」
「……え?」
予想もしなかったロレナの申し出に、アイリスはもちろん、材料を扱っていた侍女や料理人まで驚いて目を見開いた。
皆、商人の背後にクレイグ侯爵が関わっているのではと、なんとなく勘づいていたからだ。
しかしロレナは周囲を一切見ず、まっすぐにアイリスを見据えて告げた。
「私の材料を持ってこさせます。足りない分は、それをお使いください。」
「でも、クレイグ嬢は……」
アイリスが「あなたはどうするのか」と問うように言うと、ロレナはかすかに笑った。
卑劣な真似をして勝つよりも、堂々と負ける方がましだ。
彼女が再び「大丈夫」と言おうとした、その時――突然、厨房の人々が背筋を伸ばし始めた。
ロレナはアイリスの表情がぱっと明るくなるのを見て、後ろを振り返った。
いつの間にか、厨房の入り口にミルドレッドが立って中を見回していた。
「お母様。」
「何事ですの?」
ミルドレッドは騒がしい厨房の中を見回しながら入ってきて尋ねた。
アイリスの正面に立つロレナの様子は、傍から見ると二人が言い争っているように見えた。
アイリスは素早く一歩後ろに下がりながら答えた。
「商人が材料を間違えて持ってきたんですが、クレイグ様が親切にも自分の材料を使っていいとおっしゃってくださったんです。」
ロレナの顔に、わずかな笑みが浮かんだ。
その表情を見たミルドレッドは、アイリスの横に積まれている材料に気づき、険しい表情で眉をひそめた。
彼女が印章を使うのを見て、ロレナの心臓はずしんと沈んだ。
しかし、ミルドレッドはロレナを見やり、にこりと微笑んだ。
「ありがたい申し出ですね。でも大丈夫です。念のために余分に注文しておきましたから。」
「余分に……ですか?」
その問いはロレナではなく、アイリスが口にした。
ミルドレッドは扇子で口元を隠しながら答えた。
「万一に備えて、別の店にも頼んでおきました。そちらを持ってこさせますわ。」
それで十分だった。
アイリスの顔色は一瞬で明るくなったが、ロレナの表情はますます暗くなる。
ミルドレッドの言葉は明白だった――彼女はクレイグ侯爵家が卑劣な手を使うと予想し、事前に手を打っていたのだ。
「それなら安心ですね。ありがとうございます、クレイグ嬢。」
アイリスの挨拶を受けたロレナは、つまらなそうに厨房の外へ出て行った。
もし彼女の家の者が正当に行動し、副料理長が先に準備していたと言ったのであれば、ロレナも笑顔で準備がいいと褒められたかもしれない。
しかし、クレイグ侯爵の行動は正当ではなく、ロレナはアイリスや副料理長の前で、準備がいいと誉めそやすほど愛想よく振る舞うこともできなかった。
「私、偏見を持っていたのかもしれませんね。」
ロレナが去ると、アイリスはミルドレッドにそっと近づき、声を潜めて話した。
ん?とミルドレッドが何かを言いたげに見たが、すぐにアイリスは再び小声で続けた。
「クレイグ様が商人をそそのかして、悪い材料を送らせたんだと思っていたんです。でも、クレイグ様はむしろ自分の材料を分けてくれようとしていたみたいなんです。」
「クレイグ家が商人を抱き込んだ可能性もありますね。」
ミルドレッドは侍女に、事前に用意しておいた余分な料理の材料を持ってくるよう命じ、それから再びアイリスに視線を向けた。
そして、感情をまったく感じさせない穏やかな表情で言った。
「クレイグ侯爵家が裏で手を回したかもしれませんが、クレイグ嬢ご本人は知らなかった可能性もありますわ。」
アイリスの顔に驚きが浮かんだ。
そんなことがあるのだろうか?
娘に知らせずに、そんな真似ができるのか。
彼女の表情は引き締まり、毅然とした口調で言った。
「クレイグ嬢は将来、王太子妃になるかもしれませんから、知らないふりをしているのかもしれませんね。」
「その可能性もありますが……」
ミルドレッドはそっと手を伸ばし、アイリスの手を握った。
そして柔らかく微笑みながら言った。
「自分の娘には悪いものを見せたくない、ってこともあるでしょうね。」
思いもよらぬ指摘に、アイリスはまた驚いた表情を浮かべた。
ミルドレッドはそんな娘にさらに付け加えた。
「人間には多面性があるから。他人には冷たい人が、自分の子どもにはとても優しいこともあるんです。」
アイリスの脳裏に、伯爵夫人とプリシラの姿が浮かんだ。
そしてクレイグ侯爵とロレナの顔も。
なんだか不思議な気持ちになった。
外で見せる顔と、家の中で見せる顔が違うことはあるけれど、それがここまで違うというのは興味深く感じられた。