邪魔者に転生してしまいました

邪魔者に転生してしまいました【38話】ネタバレ




 

こんにちは、ピッコです。

「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【邪魔者に転生してしまいました】まとめ こんにちは、ピッコです。 「邪魔者に転生してしまいました」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介...

 




 

38話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 協力者

「ここにお茶を頼む。」

「はい、かしこまりました、殿下。」

その間に、皇太子は自分の存在にすら気づいていなかった侍従に命じた。

「……ベルチェには温かいカモミールを。」

公爵は仕方なくソファに腰を下ろして言った。

カモミールは本当に鎮静効果がある。

皇太子と公爵の気迫のせいで気を取られていたせいか、皇宮に入ってから感じていた異常な症状もすっかり収まっていた。

それでも私を気遣ってくれる公爵様の姿がとても嬉しくて。

「えへへ。」

私は恥ずかしさも忘れて、まるでバカみたいに笑った。

しばらくして、皇太子の侍従がお茶を運んできた。

「子供用のティーカップはないのか?」

「え?あ、はい。それはございませんが……。」

「ふっ。熱いかもしれないから気をつけろ。」

呆れたようにため息をついた公爵様は、すぐに自分のティーカップにほんの少しだけカモミールティーを注いでくれた。

それでも子供に配慮してくれたお茶はそれほど熱くなかった。

「……それにしても。」

その後、それぞれのカップを一口飲んだ公爵と皇太子は、間もなくして第二ラウンドを始めた。

「ボランティア活動の前にベルジェと会ったことがあるのですか?」

「うん。僕たちはもともとすごく親しい仲だよ?」

「すごく親しい……?」

公爵様の眉がピクピクと動いた。

「しょ、商標登録しに協会へ行ったとき!そのときに会いました!」

私は彼が変な誤解をするのが嫌で、慌てて叫んだ。

「そ、そのときは皇太子様だとは思いませんでした!本当に!」

「そうだったのか。」

私の代わりに公爵がクマのぬいぐるみを抱きしめた。

「君がこんな奇妙な大会に参加していたなんて、全く知らなかった。知っていたら、もっと誠意を込めて支援したのに、まさか“無視してた”なんて。」

今や彼の「無視してた」という言葉も、以前ほどには鋭く聞こえなかった。

そっと身を起こした私は、ぼんやりと言った。

「わ、わたしも参加したこと、すっかり忘れてました!」

本当だった。

公爵が公文書を見せてくれるまで完全に忘れていたのだ。

「僕はちゃんと覚えていたけど。」

そのとき、皇太子がすっと割って入った。

曖昧な暗闇の中、公爵の片眉がわずかに持ち上がった。

「それで、ボランティア活動のときにベルジェの持ち物を買ってくださったんですか?」

「まあ、ちょっとした検査ついでに。恩返しのつもりで。」

「恩返しって……。」

コツコツ。

不穏なノック音が二人の会話を遮った。

ついに別の受賞者が来たようだった。

「入りなさい。」

しかし、開かれたドアから入ってきたのは子どもではなく、大人の男性だった。

それも私がよく知っている人。

「……あれ?ロゴン?」

「帝国の小さな太陽にご挨拶申し上げます。お話の途中に失礼いたしますが、まもなく開催される国務会議に関連して公爵様に至急お伝えすべきことがありまして……」

公爵の補佐官、ロゴンが慌てた顔で早口にまくし立てた。

「構わない。」

皇太子が許可すると、ロゴンはすぐに近づいて公爵の耳元で何かをささやいた。

「……それで、今すぐ向かわねばならないようです。」

「……え?」

公爵が煩わしそうにロゴンを見返した。

「会議が前倒しになったようです。先に行ってもかまいませんよ、公爵。」

なぜか、この状況をあらかじめ知っていたかのように皇太子が意味深に言った。

公爵は険しい顔で皇太子を一瞥し、あわててロゴンに命じた。

「ロゴン、すぐにベルジェを公爵邸に連れて行きなさい。」

「……。」

「ダメだ。」

しかし皇太子がきっぱりと断った。

「まだ表彰も終わっていないのに、どこへ行くつもりだ?」

「保護者もなしに子供を一人で置いておくのは危険です。」

「ふん。私が何かするっていうのか?」

皇太子は困惑したように呆れた。

「それに公爵がしきりに私の年齢を誤解してるようだけど……」

「……。」

「僕だってまだベルジェと同じ子供だよ。そうだろ、ジョドン?」

驚いたことに、彼は自らそう言いながら自分の補佐官に目を向けた。

「え、ええ……。」

皇太子の補佐官は困惑した顔で返事をした。

「公爵様。ここは私が引き受けますので、どうぞお先に。」

「閣下……」

状況が急だったのか、ロゴンは慌てた顔で公爵をなだめた。

なぜか私はハラハラした。

「私は大丈夫です、公爵様!早く行ってください!」

私は公爵にそっと声をかけた。

公爵の目には私はまだ子供に見えるかもしれないが、私は立派な大人だ。

「ここで表彰を受けて、確認して戻ります!」

「それはダメだ。」

公爵が身をかがめて私と目を合わせた。

「すまない、ベルジェ。急な事態とはいえ……君に顔向けできない。1時間以内に戻る。」

「……1時間?会議って基本4時間はかかるんじゃ……」

皇太子は唖然としたが、公爵は聞こえなかったふりをした。

「すぐ戻るから、どこにも行かずに皇太子の宮殿にいて。ぬいぐるみもちゃんと持っていて。」

「はい!ご心配なく!」

彼はさっきの様子が気に入らなかったのか、私を置いて行くことを何度もためらい、何度も念を押してきた。

実際、言ったとおりぬいぐるみさえあれば特に危険はないはずだったが、それでもそうだった。

「気をつけて、慎重に行ってきてください!」

タッ——ちょうどそのとき、公爵とロゴンが部屋を出て行った。

「はあ……やっと二人きりになったね。」

皇太子は椅子にもたれながらゆっくりと息を吐き、言った。

「それなら、あの時どうして僕にあんな風に睨んだんだ。」

「……」

「ちょっと話でもしようか?」

「ひっ!」

勘違いだった。

公爵がいなくなった瞬間、私は突然危険な状況に陥った。

私はぎゅっと目をつぶり、さっき出て行った公爵の方へと祈った。

『お願いです、早く戻ってきてください、公爵様……!』

皇太子は青ざめた私を見て呆れたように言った。

「今日はなんで睨まなかったの?」

「そ、それは……!」

「見る限り、知らないふりして睨んだわけじゃないみたいだけど。」

その言葉を聞いた瞬間、私は後悔した。知らないふりをすべきだったのに!

『バカ、バカ!私は一体何をしてたの……。』

ボランティア活動で忙しくて、すっかり忘れていた。

皇太子のことなんて全く知らずに、私を怪しげに見つめていた男の子にお守りをあげていたなんて。

なぜか皇太子を見るたびに、何か引っかかるような気まずさを感じていたけれど……。

「俺、なんか不良とでも思ってたのか。」

皇太子は苦笑するように口元を歪めた。

『はあ……仕方ない。』

知らないふりをするにも、弁解するにも、もう手遅れだった。

私は新たに込み上げるため息を飲み込んだ。

私はソファから立ち上がった。

「……?」

そんな私を皇太子が訝しげに見つめた瞬間、ガクンと膝から崩れた。

「す、すみません!」

私は頭を深く下げて必死に謝った。

どうしても震えが止まらなかった。

まだ心臓も見つかってないのに、間違って皇族への大罪で死刑になんてなったら!

「私が愚かにも……は、皇太子殿下を見分けられず……!死罪にも値する罪を犯しました!」

「……」

「ど、どうか……せめて命だけは……!」

「ぷふっ。」

その時だった。

ふいに扉の外から風が吹き抜けるような音が聞こえたかと思うと……

「ぷははははっ!お前、本当におかしいな!」

突然響いた爆笑に、私は驚いて思わず頭を上げた。

皇太子が私を見てお腹を抱えて笑っていた。

涙まで流れたのか、目元をぬぐった彼は、笑いを含んだ声で続けた。

「クク、死刑にも値する罪を犯したって?命だけは助けてくれって、それは何だ?」

「そ、それは……」

見逃してほしいという意味だ。

しかし変なことを言って逆効果になるのが怖くて、私はただしおれてしまった。

「もういいから、立て。」

突然の爆笑にどうすればいいか分からないでいた私に、皇太子がやっと笑いを止め、助け舟を出した。

「お前、そんな風にしてると、カリオス公爵が俺を殺しに来るぞ。」

「そ、それは……失礼しました!」

まるで痺れていた足が戻ったかのように、私は勢いよく立ち上がった。

『……とにかく何かしら理由があって見ていたんだろうけど、許されたのかな?』

そっと皇太子をうかがったが、彼が機嫌を悪くしたり、呆れて目をそらすような様子はまったくなかった。

むしろ冷静な表情で席に戻って腰を下ろした皇太子は、私を見て再び笑みを浮かべた。

『まだ若いからああいう笑いが多いのか。ああ、あの年頃って、ただ落ち葉が舞うのを見ても笑える歳だよね……』

ともかく、イケメンが笑ってる姿は悪くない。

「えへへ……」

その場の雰囲気に乗じて、私も気まずくも笑みを返した。

『あれ……?』

ふと、彼の額の左側にかすかに痕跡が残っているのを見つけた。

淡い傷跡。

『そういえば……腕にもまだ包帯巻いてたよね?』

あの日、暗殺者たちの襲撃で負った傷に違いなかった。

私は思わず気まずくなった。

『ああ、まだディアナを呼んでいないのか?』

原作によると、皇太子は神殿での奉仕活動が終わるとすぐにディアナを呼ばなければならなかった。

もちろん今回の神聖な祝福は私が代わりに引き受けることになったけれど……。

ともかく、あの日ディアナの治癒能力がすごかったのは確かだった。

「何をそんなに見てる?」

驚いた目で彼をじっと見つめると、皇太子はくすっと笑った。

「まさか、イケメンだから見惚れたのか?」

「そ、そんなことないです!」

思わず反射的に声を上げてしまい、自分の声に驚いた。

皇太子がちらりと鋭い視線を送った。

だがすぐに、いたずらっぽく微笑みながら言った。

「ふむ……今までブサイクって言われたことはないけどな。」

「そ、それは……。はい、イケメンです。」

客観的にも主観的にも、皇太子は間違いなくイケメンだ。

数いる男性主人公候補の中でも、ブサイクな人はいなかったけど。

『でも、あなたはヒロインの男だ。』

私は心の中でそう線を引きつつも、ぱっと表情の緩んだ皇太子を見つめた。

「そう?やっぱりあの時、俺にちょっと……」

「やめてください!」

「……?」

「私は公子様がとてもとてもイケメンだと思います!」

仕方なかった。

美しくて魅惑的なものの誘惑を振り払うには、それ以上に強いもので対抗するしか!

「フフン。」

私のやけくそな言葉に、補佐官が驚いたように吹き出した。

当然、皇太子の視線もすぐに鋭くなった。

「まだ若いからか……お前、ちょっと目が低すぎないか?それに、公子様は一度結婚して……」

「そ、それがですね!」

私は彼がもっと深く突っ込んで聞く前に慌てて口を開いた。

「治療……まだ受けていないんですか?」

「治療?」

「はい。ディアナに治療を受けるって言ってましたよね。もう祭りも終わったのに、どうして……」

「どうして聖女候補を別に呼ばなかったんだって?」

彼のため息に、私は罪悪感を覚えた。

「まぁ、ほかの聖女候補のおかげでそれなりに運気の回復はできたので。まだあちこち痛むけど。」

「……」

運気の回復くらいはできていて、怪我を耐えられる程度……一部だけ治療してくれた“他の聖女候補”の私は一瞬気まずくなった。

「冗談だよ。そんな顔しないで、君の治療が悪かったって言ってるわけじゃないから。」

無言の私が気まずくなったと思ったのか、彼はくすっと笑った。

「皇宮にもいるのに、動けないほどじゃないんだよ。」

「……ああ……」

「それに今は俺じゃなくても治療してもらう人がたくさんいて忙しいだろう?」

「ディアナですか?」

「うん。」

意外だった。

顔に欲を露わにするバレルテが後押しするなら、皇太子と関係を築こうとディアナを真っ先に送り込むだろうに……。

「それにまだこれも80本以上残ってる。」

私が髪をいじっている間に、皇太子がふと懐から何かを取り出した。

「そ、それは……!」

淡い緑色の液体が入った小さな薬瓶。

それはまさしく私の万病万能薬だった!

「捨てなかったんですか……?」

私は皇太子がとっくに捨てたと思っていたその薬を──100本以上もあったそれを──持っていたことに驚いた。

捨てられたと思っていた。

それが私には涙が出るほどのことだけど、正直に言うと、たかが子どもが万病万能薬を100本も飲んでいたなんて、ちょっと笑える話じゃない?

「なんで捨てる?君は100ゴールドが惜しく見える?」

「あ、いえ? それは……」

だが皇太子は不思議そうな目で私を見て瓶の蓋を開けた。

そしてそれを一気にゴクゴクと飲み干してしまった。

「はぁ……」

一息で一気に飲み干した彼は、手の甲で口をぬぐいながら言った。

「これ、ただの水に色をつけただけかと思ってたけど……思ったより効果あるな。夜通し泣いても平気だったし?」

「おかげで私も十分な効果を得られました、お嬢様。」

そのときまで黙っていた皇太子の補佐官が、そっと割って入り笑った。

「水は……入れてません……」

私は控えめに答えた。

もちろんそんなことを考えたことがなかったわけじゃないけど、あの子のひらめきは思ったよりも優れていた。

「そうだな。だから創業コンテストで1位を取ったんだろうな。」

皇太子がまたしても爽快に笑った。

すると、冷たかった表情が次第に柔らかく変わっていった。

少し前まで公爵の言葉を全く受け入れようとしなかった人物だとは思えなかった。

私はそんな皇太子を少し不思議な目で見つめた。

『そういえば……原作でも情に厚かったっけ。』

皇太子は男性キャラ候補の中で最も情に厚い方だった。

表面上はカリスマが溢れていたが、自分の女性には限りなく優しい男。

教皇は親切だったがどこか馴染めず、エドウィンは無口で堅物な騎士タイプ。

そして第二皇子は、言ってしまえば本当に狂ったやつだった。

だから原作を読んでいる間、私は常に皇太子派だった。

私は彼が男性主人公であることを望んでいた。

『幼い頃から紳士的で情に厚い性格だったんだな。』

原作の中の彼の性格を思い出すと、かえって混乱してしまった。

『でも、原作通りなら今頃ヒロインと出会ってなきゃおかしいよね? なんでまだヒロインが登場してないの?!』

だから、半分だけ癒やしておいたのだ。なぜまたこの場に私がいるのかというと、不思議で……!

原作通りに進んでいないこの状況に、不安を感じるのも無理はなかった。

「ところで、そのクマのぬいぐるみがあの時殿下を助けたっていう……悪霊が取りついたあのぬいぐるみのことですか?」

突然、タイインの声が耳元で響いた。

ハッと我に返ると、皇太子の補佐官が好奇心を帯びた目で、私の腕に抱かれているクマのぬいぐるみを見つめていた。

どうやら皇太子の側近である彼は、私があの日助けたことをすべて知っていたようだ。

「はい!その通りです!」

私は何気なく肯定しつつ、ちらりと皇太子の目を窺った。

正直、彼を危険から助けたのは事実だが……あまり見栄えの良い場面ではなかったからだ。

「一緒に遊ぼ? 一緒に遊ぼ? 一緒に遊ぼ? 一緒に遊ぼ?」

「このまま腕と脚を一本ずつ引きちぎってみたらどう?」

私は今でも、テープのように壊れた言葉を繰り返すそのぬいぐるみを、必死に見つめていた皇太子の姿を忘れられない。

しかし幸いにも、皇太子はその無慈悲だったクマのぬいぐるみに対して敵意は持たなかった。

「魔法なのか?」

その問いに、私は首を横に振って答えた。

「いえ!少数民族の……呪物だそうです!精霊的な!」

「おお、精霊…… 工芸が気に入ったのか?」

「はい! 起きたらまたお見せしましょうか?」

「いや、大丈夫。」

即座に返事が返ってきた。

「排泄がつらそうだから、起こすところだった。」

彼が慌てて付け加えた。

微笑みを浮かべている口元はそのままだったが、なぜか微かに震える声だった。

『チクショウ、しびれたな。』

「ヒヒッ。」

寛大な心で理解してくれたように笑うと、ついに皇太子が穏やかな表情で口を開いた。

「不思議だなあ。」

「はい。本当に不思議です!」

「いや、それじゃなくて、お前のことだよ。」

「えっ? 私ですか?」

「うん。あの車椅子のせいで仕方なく支援してるのかと思ってたけど…… 工芸の細かい部分までちゃんと作ってくれてたんだな?」

やはり皇太子は皇太子だった。

彼は本当に鋭く、私の状況を把握していた。

ディアナの介入だと思っていたが、こうまでカリオスが良い待遇を受けているとは、少し不思議に思った。

実は私自身も同じだった。

前世なら想像すらしなかったことだ。公爵様が私のために忙しい時間を割いてくれたなんて……。

「……残念ですね。それだけでもなければ、私が先に持って行ったのに。」

複雑で妙な感情が胸に沈んでいたが、不意に皇太子がひそやかに呟いた。

「……えっ?」

「なんでもない。」

聞き取れない風の音に慌てて振り向くと、彼はただ微笑みながら私を見つめていた。

「そういえば……あの時、私を助けてくれたこと、ちゃんとお礼も言えてなかった気がする。」

言おうとしたその瞬間、彼の視線が私に向けられた。

「ありがとう、ベルチェ。」

心臓がときめくほど穏やかな微笑みだった。

私は彼の笑みに少しぼうっとなった。

なぜか以前の豪快な笑い方とは違って見えた。

『女主人が刺繍をするときにふっと咲いたバラのような笑み……まるでそれみたいだ。』

私はふと込み上げてくる戸惑いを言葉にしてしまった。

いい気分なわけがない。

ヒロイン候補が主人公を前にして、なんで私にそんな微笑みを見せるんだろう。

「君に恩返しがしたいんだ。」

「……え? い、いいですけど!」

混乱の中に呑まれていた私は、キリアンの言葉に少し遅れて返事をした。

「慢性痛用の貼り薬も100本も買ってくれたじゃないですか。」

「その工芸品だって100ゴールドだよ。私の命の価値としては少なすぎるんじゃない?」

「そ、そうだけど……」

「だから、君に一つ提案をしたいんだ。」

もじもじしていると、キリアンが待っていたかのように言った。

「提案ですか?」

「うん。君、メインストリートに店を開いて本格的にフェアリーハーブの事業を始めようとしてるだろ?」

その言葉に私は目を見開いた。

「そ、そんなのどうして……」

「祭りが終わってから毎日メインストリートに一緒に通ってたじゃないか。」

そうだ。

鈍感なあの子は、私が毎日金貨だけを使って遊んでいると思っていたようだけど、私もちゃんとやっていた。

でも、同業者さえも気づいていないことを、どうして彼が知っているの?

「す、ストーカー……?!」

「競技大会の参加者の動向を確認するために、不動産の利用なんかは自動的に報告されるようになってるんだ。」

「……ああ。」

一気に青ざめた私は、あわてて言い訳をした。

「ふ、ふふん……ストッキーや、トッキーや~どこに行くのかしら~……」

「テナント物件、結局見つけられなかったんでしょ?」

幸いなことに、キリアンは私の冗談のような独り言を聞こえなかったふりをしてくれた。
私は無言で串焼きを突き刺した。

「はい……」

「君が望むなら、ひとつ譲ってもいいよ。テナントだけじゃなくて、ビルごと。」

「はっ! な、ビルごと……?!」

さっきまで「分明、そのくらいでやめてほしい」と思っていたけれど、“ビルごと譲る”という言葉を聞いた瞬間、彼が違って見えた。

『お金も足りないって時に、これはまさに棚からぼた餅じゃないか!』

命の恩人を騙して受け取るのはちょっと良心が痛んだが、まあいいか。

『もともと良心なんてとっくに捨てたし!』

「く、くださるなら、遠慮はしません……」

「代わりに、君にやってほしいことがある。」

「え? 何のことですか?」

「難しいことじゃないけど……」

言葉を濁したキリアンがニコッと笑いながら続けた。

「君の店を訪れる貴族たちから役に立ちそうな情報を集めて、俺の秘密資金をちょっと作ってほしいんだ。」

「ひ、秘密資金……?」

「うん。もちろん君のお金でやってくれってわけじゃない。君の店に置いておく俺の私財を渡すから、それを君が回してくれればいい。簡単でしょ?」

「はあ……」

口が自然とぽかんと開いた。

『簡単に操れると思って!5歳の子ども相手にそんなことさせるなんて、このクソガキ!』

ようやく私は、皇太子がなぜ「子ども起業競技大会」みたいなものを直接主催したのか理解した。

『協力者を作るつもりだったのか。』

 



 

 

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